『君と一緒に』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
季節外れの来訪者
どこから来たのか、いつから居るのか
そんなことを考えていても仕方がない
窓をひらき出ていってくれないかと懇願した
壁に張りついた君も緊張しているのか
背後から有り合わせのあみを仕掛ける
どうしても君と一緒には居られない
/ 君と一緒に
おたま、よし。器、よし。
…ビール、よし。
我が家の大晦日の夜は、すき焼きと大昔から決まっている。
一人暮らしをして初めて迎える年末。
仕事の都合でどうやら帰省は年明けになりそうだったので、今日は正真正銘、初めてのおひとりさま年越しだった。
一人分の夕食なんて簡単に済ませることも出来たけれど、やはりこれを食べぬことには一年が締まらない、と一念発起し、動物の名前が付いたクリスマスカラーのカップ麺や「手打ちあり升」と書かれた蕎麦屋ののぼりを総スルーして、人形町にあるちょっとお高い、いやかなりお高級なお牛肉様を買いに行った。
「息子が嫁と孫連れて帰ってくるのよ」と、オホホな微笑みを浮かべたご婦人方が列を成す店内で、明らかにおひとり様の量だけ買うのが居たたまれずに、見栄を張って400gのお肉様を注文した。
…高かった。
今日はこれを一人で全部喰う。
炬燵の中心に据えられたカセットコンロの上で、鍋がグツグツ煮えている。そっと木蓋を外すと、もわあっと湯気が立ち上ぼり、割り下の煮詰まるいい匂いがした。
私は缶ビールを開けて、さっきまで冷蔵庫で冷やしておいたグラスに注ぐ。シュシュシュポーっと音を立てて、黄金色の液体が満ちていく。
さてと。
「いただきます」
私は荘重な儀式のように手を合わせ、ビールを一口飲む。それから爆発物処理班のような慎重さでもって鍋のお肉様を持ち上げると、そっと口に含んだ。
ジュワ~っと音が聞こえるかと思うくらいの肉の旨味が口いっぱいに広がり、あっという間にとろけていなくなる。
あまりに美味しくて、それからしばらくは無言で食べ続けた。見栄を張って沢山買っておいてよかった。
点けっぱなしのテレビは、いつの間にかニュースから紅白歌合戦に変わっており、世の中が本格的に一年の店仕舞いを始めたんだなあ、とほろ酔い気分でぼんやりと思った。
半分ほど食べ終えた鍋を眺めながら、ふと、何かが足りない、と思う。実家の母にレシピを訊いて、我ながらかなり忠実かつ美味しく作れたと思うのだけれど(最優秀主演女優賞はもちろんお牛肉だが)、昔食べたのはもっとこう……
「あ!」
私はいそいそと立ち上がり台所へと向かう。
冷蔵庫を開けると、ポケットから卵を取り出した。
お肉様の威光が眩すぎてすっかり忘れていた。
すき焼きには卵。これも大昔から決まっている。
炬燵の角で叩いて、器に割りほぐす。
火が通り過ぎてクタっとしてきた春菊とともに肉を卵に浸して一口。
「ん~まっ」
これこれ。黄身と一緒に食べないと。
既に二人前近いすき焼きがお腹の中で膨れていたが、それでも夢中で箸を進める。
紅白そっちのけで鍋と格闘していると、大学時代の友人からLINEが届いた。
〈おつー、今日も仕事ー?〉
〈いや、家で一人すき焼きしてる〉
〈マジ?〉
〈まじ〉
間髪置かずにゆるい顔のカワウソがぎゃはははと笑うスタンプが届く。私はムッと拗ねた表情の黄色いくまのスタンプを送り返した。
グラスの底に残った最後のビールをちびりと飲む。
なんとなく鍋の写真を撮って、家族のグループLINEに送ってみた。
またピロンっと通知が浮かんで、
〈てか一人なら呼んでよー〉
と、細い目をつり上げてプンプンしているカワウソのスタンプと共に届く。怒っているのに愛嬌のあるその表情に、スマホの前で同じ顔をしている友人の姿を想像してしまって思わず吹き出す。
〈来年は─
来年は。返事を打ちながら、早くも一年後の年の瀬に思いを馳せる。来年の大晦日はどこで誰と、どんな夜を過ごしているだろう。
大晦日の夜はすき焼きと、大昔から決まっている。
一人でもいいけれど、独りじゃないともっといい。
誰かと食べるすき焼きは、高級なお肉じゃなくたって、きっととても美味しいから。
─君と一緒に─
彼女に猫耳と尻尾が生えた。
今はこたつでみかんを食べている。
「ねこちゃん」
「にゃっ」
器用に皮を剥いている。私の分も用意してくれて、一緒に食べている。
顔には出ていないが、尻尾を揺らしながら美味しそうに食べていて、すごく可愛い。
お題
「君と一緒に」
君と一緒に
みすゞ記念館に
行こう
雪の道を
歩こう
僕の唯一は君だけだ
君は僕に笑ってくれて
幸せをくれたんだ
僕は君しかいらない
君もきっとそうだよね
でも僕はもうここにはいられない
それでも僕は君と一緒にいたいから
連れて行く
ずっと一緒だよ
お題関係なし ご報告
名前を「Snow❄」から「ฅロアンฅ」に変更しました
ご承知のほどよろしくお願いします。
ドロドロと黒く溶けている。あまりにも醜い。
世界が病気で溢れた。世界中の人がドロドロと溶け始めた。僕の周りの人間もどんどん感染していく。だが、皆変わらずに生活している。僕はそれが不思議で仕方がなかった。だがそれ以上に怖かった。
「僕もあんなふうに醜くなってしまうのかな」
親友のディアに聞いてみた。
「さあ。でもいつか変わってしまうだろうね。僕もルースも」
嫌だ。僕は美しいままでいたい。そしてなにより美しいディアに醜くなって欲しくない。だが、もう世界中の人が醜くなってきている。
「ねぇディア。僕は君に美しいままでいて欲しいんだ。ずっと美しいままで僕と一緒にいて欲しいんだ。」
心の底からの願いだった。そう言ったらディアは微笑んだ。
そして僕らは海に溶けた。ずっと美しいままで、ずっと一緒にいるために。僕らは世界で1番美しい。
追記
解読者へ
世界は病気に満ちていた。皆汚かった。だが、溶けてなんかいなかった。ルースは病気だった。心の様が容姿として見えてしまう目の病気。本人は気づいていなかったのだけどね。僕がそれを隠していたから。でも、病気なのはルースだけじゃないだろう?僕だって君だってなにかの病気だ。だが、あまりに病気が溢れるものだからそれに気づかなくなってしまったんだろうね。
結局は皆汚いということだ。ルース以外はね。
ディアより
「君と一緒に」
なんで、嘘ついたの?
なんで、傍にいないの?
なんで、来てくれないの?
なんで、約束破ったの?
——なんで、まだ生きてるの?
形をかえて
姿をかえて
君の命が尽きるまで
僕の命をあげるから
君と一緒にこの世を生きて
消えるときは一緒に
せーので君と一緒に
近くのショッピングモール。4Fの一角にあるゲームコーナー。その一角と通路を区切る壁の前で、小さな双子が居た。
双子の頭より上の位置に、中を見れるガラスのない窓枠があるのだが。
「みえない」
「みえませんね」
ぶすっ、とした一方。片割れはそんな一方の背後に回って持ち上げてやった。……同じ身長だからそれほど目線が上がるわけでもなく。
一方はくしゃりと顔を歪めた。
「みッ、みえました、か……っ?」
「み゛え゛な゛い゛ッ‼」
あー……泣くぞ、あれは泣くぞ……。
俺を含めた周りはチラチラ、じーっと視線を双子に釘付けられた。手を貸すのは簡単だが、不審者とか誘拐犯とか昨今は色々と厳しい。
ヘタに手を出せない。
ひっくひっく、と我慢できたかと思われたが――――「びゃぁあああッ‼」
やっぱりだめだった。
あわあわし始めた片割れが、(おそらく)親を捜してキョロキョロとする。しかし、見当たらないようで。
火がついたように、ぼたぼたと涙する一方を見てきゅっと口許を結ぶ。
何をするのか、と俺たちは固唾をのんだ。
ぐしぐしと一方の涙を拭ってやり、その場で四つん這いに。
「のってください! たぶん、みえます!」
「ふぇ……えぐっ……」
ぐすぐすと泣きながら、もこもことよじ登り、一方は片割れの背に乗る。そうして窓枠からぴょこ、と顔を出した。
これで中が見える! よかったなぁ!……と思ったのもつかの間、先ほどよりも強く泣き始めた。ギャン泣きだ。
片割れの上で一方が窓枠にしがみ付きながらわんわん泣いている。
「ぢがゔの゛ぉお‼ み゛え゛な゛い゛‼」
「え、え……あ、…あぅ…」
念願かなって見えたというのに、何が見えないのか。俺たちも片割れも訳が分からず狼狽える。どてんと床に落ちた一方と、混乱して涙を目一杯に溜める片割れ。
満場一致で早く親が来いッッ! と心で叫んだ俺たち野次馬。
「ここに居たのか‼」と男の声。
随分走っていたのか、ダウンジャケットを腕にかけて、セーターの袖をまくり、汗を浮かべている。どうやら、双子は親の許を離れてしまっていたらしい。
男――双子の父親は、泣き崩れる双子をなぐさめながら立たせた。
勝手に居なくなっちゃだめだろ、と叱りながらも心配したことを口にして。
双子はえぐえぐとしがみつく。「どうしたんだ?」という父親の問いかけに、ビッと壁の向こうを指差した。
「ああ、見たいのか」
父親が双子を両腕に抱き、そのままひょいと持ち上げて見せる。
すると、一方はあの泣き喚きようが嘘だったかのようにキャッキャッと喜んだ。片割れも目を輝かせて。
ぎゅ、と一方が片割れの服を握った。
「みえる?」
「うん。……すごい、です」
「んふ、すごい! すごいね!」
ああ、なるほど。
一緒に見たかったわけか。
#君と一緒に
わたしがいつまで生きられるか
わからないように
きみがいつまで生きられるかも
わからないのだから
こうして仲よく
身を寄せ合っていられる時間を
無駄にしちゃいけない
きみをもっとだいじにしなきゃ
きみをちゃんとしあわせにしなきゃ
そう思うのに
いつか消え去ってしまう明日を思い
ふいに足がすくんでしまう
きみとわたしは
今ここにある
それだけは確か
見えない明日じゃなく
見てきた昨日でもなく
今だけを
きみと一緒に
#君と一緒に
ことが終わった夜に私が寝てる時
貴方がこっそり私に向けて発した言葉
「君と一緒にこの先もずっと居たい」
この言葉言ってくれた時、嬉しかった、胸が高鳴った、
けど、ごめんやっぱり私まだ、
愛が足りないみたい
貴方が、大切だけど、
あなたの愛じゃ、私は満たされないみたい
ごめんね、君と一緒に入れなくて
君と一緒に
「ディズニー行かないスか?」
せっかくのオフだというのに、わざわざ人の多いところに出ないかという。最近練習もハードだし、それに加えて自主練だってしているのだから、たまのオフくらい体を休めて欲しいんだけど。
「普段の練習に比べたらディズニーなんてなーんの疲れもないっスよ!ほらコレ、仕事でもらったんス。行かなきゃ勿体無いっしょ、ね?」
梓結っちと行きたいんスよ〜、なんて言われたら、すぱりとノーなんて言えるわけなくて。
君と一緒に
居られるなら
どんな事でも
乗り越えて行ける
手を離さないで
いつも1人でいるような気がした。
それは多分、思い込みで、周りからはそうは思われていないというのはわかっている。
クラスで一人ぼっちというタイプではなかった。
良くも悪くも、誰とでも話すことができたし、誰のことも避けたりはしなかった。
大人と会話するのも得意だ。
テストの点も、平均点かその下を取れる。
中肉中背で、髪の色は黒で、癖毛でもない。
でも、『皆』と同じ側、『皆』の中に入れている気はしない。
それは今だってそうだ。
『皆』の側というのは、屈託なくハロウィンを楽しめる側であり、
結婚とか恋愛について、根拠なく『幸せなもの』と考えている側であり、
国際スポーツ大会を見ながらビール片手に騒ぐことになんの葛藤も覚えない側だ。
そちら側ではないという強い確信。
何度か『皆』の側に行こうとしたが、その都度、
寝込んでしまうか
吐いてしまうのだった。
いつも、1人でいるような気がする。
それは今も変わらない。
ただ、こちらを覗き込んで尻尾を振る君がいる。
君は『皆』なんて気にしない。
美味しいご飯を勢い込んで食べる。
投げたボールを追いかけて
風の匂いを嗅ぐ。
雨の音に耳を傾けつつ、昼寝をし
雪の動画を不思議そうに眺める。
今この瞬間に全力で取り組む。
1人かどうか、『皆』の側かどうかなんて頭にないだろう。
だからいい。
どうか少しでも長く、
君と一緒に。
「カミナリ、怖い。」
青白い顔でそう言った姉ちゃんが、とても小さく見えた。
いや、実際、身長は150cm。僕より10歳上、でも、20cmほど小さい。
「怖くないよ。子どもじゃないんだから。」
「同じ布団で寝てもいい?」
「…えぇ。」
「ひとりは嫌。」
「いいけど…。」
シングルベッドに僕と姉ちゃん。
「電気消すよ?」
「…」
大学を中退してウチに帰ってきたのは、先週のことだ。
両親は激怒。そりゃあ、なんの相談無しに医学部を中退するなんて、怒るわなぁと。
何があったのかなんて聞けない。聞いちゃいけないと勝手に思っている。
とても偉大で、いつも僕の目標だった姉ちゃん。
でも、そこには今までのような明るさはなく、ただ何かに怯えているようだった。
「ねぇ、…ギューってして。」
「…うん。」
僕は姉ちゃんのご要望通り、ギュッと抱き寄せる。
「ドキドキ、する?」
「…ちょっとね。」
「あんたが産まれたとき、抱っこしたの覚えてる。お母さんになった気分だった。ほろほろと壊れてしまいそうな赤ちゃんだった弟に、こうやって抱っこしてもらうのもいいね。」
背中がムズムズした。それと同時に、何だかよく分からない、幸福感で胸がいっぱいになった。
そして、姉ちゃんは手で顔を覆い、僕の胸の中でしくしくと泣き始めた。
「姉ちゃんにこのくらいのことしかできないけど、ずっと味方だからね。」
カミナリと強くなる雨音にかき消されていたかもしれない。
ひどく傷ついて帰ってきた姉ちゃんを強く抱きしめた。
君と、七草と、一緒に
春の七草粥はとても美味しく、食べると幸せになる。
仲間の皆の分を買うと大量になるため、大変だが、喜ぶ顔を想像するとそんなのは気にしていられない。
かつては無病息災を願い、七種類の野菜を入れた汁を食べていたのだとか。先人の智恵が、昔から人々を元気にしていたようだ。
私たちもこれに習い、無病息災を願い、仲間と、そして大切なあの人と、七草粥を食べたい。
君と一緒に
君と一緒に、いろんなことがしたい。
大好きと言っていた近場の砂浜海岸に行くこと。
家で二人きり、映画を見ること。
互いの声を聞いて、心を温めること。
「ねぇ、一緒にしたいこと、ある?」
冷たくなった彼女の頬に手を当てふと尋ねてみる。返事がないことなんて、頭の悪い僕でもわかる。
「いっしょに、したいこと…あった?」
美しい世界を見せてあげたかった。
一緒に笑って、悲しんで、あたたかくなりたかった。でも、もうそんなことなんてできない。
最後に僕の家で育てたシオンの花を一輪、棺の中に入れた。
「忘れないからね」
君と一緒に、なんて嘘。
僕はいつでも、独りぼっち。
『君と一緒に』
「貴女は価値のある時間の使い方をしているかな?」
「……」
──ペラ
「……あぁ、いきなりごめんね、少し気になって」
「……」
──ペラ
「そうだなぁ……うん」
「……」
──ペラ
「お金は価値のある使い方をしなければならない、それはどうしてか分かる?」
「……」
──ペラ
「そうしなければお金の価値が無くなるから、当然だよね」
「……」
──ペラ
「貴女の時間も同じじゃないかな?貴女が今過ごしている時間の価値は貴女自身が決めるもの」
「……」
──ペラ
「だから私は貴女に聞いたの」
「……」
──ペラ
「貴女は価値のある時間の使い方をしているかな?」
「……」
──パタン
「……つまり何が言いたいの?」
「…………私と一緒に居て楽しいのかな?って」
「……そんなに心配しなくても、私はこの時間が好きよ」
「でも私の体が弱いせいで、二人で話すか本を読んでるだけだし……」
「……貴女と一緒に居られるだけで、私にとっては価値があるわ」
「……そっか」
「……そうよ」
「……」
「……顔、赤いわよ」
「……うるさい」
君と一緒に見上げた夜空
あれから何年が経ったのだろう
頭に浮かぶのは冷たい頬の君だけだ
君も瞳を閉じて僕と見れてるかな
夜空を濡らした涙は僕の心を揺らしたのだ