『君と一緒に』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
影で、あの子が酷い言葉を言われた。
あの子が密かに思いを寄せていた、同級生に。
ぎり、と奥歯を噛みしめた。皮膚が破れ血が滲んで、その不快さにさらに表情が険しくなる。
――表情の変わらない。人形のような女。
同級生は何も知らない。あの子がどんな思いでいるのかを。
表情をなくしてしまうほどの出来事があった事など、同級生達は知る由はないのだ。
分かっている。分かっていると己に言い聞かせる。
息を吸い、吐く。何度も繰り返す。
周囲に渦を巻き始めた風が誰かを傷つける前に、心を静める。
「大丈夫。私は、大丈夫だから」
優しい子は、そう言って己の背を撫でる。きっと泣きたいだろうに、泣く事も忘れてしまった子が、只々哀しい。
「そんな事言わないでよ。全然大丈夫なんじゃないんだから」
「大丈夫だよ。本当にもう気にしていないから」
そこまで言われてしまえば、それ以上は何も言えなくなってしまう。少しばかり恨めしげに優しい子を睨めば、背を撫でていた手が頭を撫で始めた。
「ありがとう。一人でないから、頑張れるんだよ」
――一緒にいて。一人にしないで。
幼い頃の子が望んだ、たった一つの望み。
それ以外は望まない。今も同級生に対して何かを望む事はない。
いっそ望んでくれたのなら、己のこのどろり、と濁る胸の内もいくらか晴れる事だろうに。
ふっ、と短く息を吐く。頭を撫でる子の手を取り、両手で包み込みながら目を合わせた。
「今日はこれからお家に帰って、お外には出ないでいてくれる」
「また、あっちに出かけるの?」
「うん。このままだと抑えきれないから」
僅かに瞳を揺らす子に笑いかけ、そのまま手を引いて家路を急ぐ。
離れたくないと、いつもよりも強く繋がれる手に、ごめんね、と囁いた。
はぁ、と深く息を吐いた。
空を見上げれば、大分明るくなっている。あの子は一人で眠れているだろうか。
首を緩く振り、辺りを見た。
何もない。文字通り、木の一本から草一つも、何もかも泣くなってしまっている。
「こりゃあ、また。随分と派手に暴れたもんだな」
ばさり、と翼をはためかせ、男が呆れたように笑った。
引き攣った笑みを一瞥して、仕方がない、と言い訳をする。
「だってあいつ、あの子の事人形みたいだっていったんだもん」
「その度に戻って暴れんなよ。禁域を作り過ぎだ」
「現世で暴れてもいいなら、そうする」
「止めてやれ。今だって開けた穴から、漏れ出してんだろうが」
だって、だって、と言い訳を重ね。その度に反論が返ってきて、次第に何も言えなくなる。
横目で見える、何もない空間にいくつも空いたひび割れから、目を逸らすように空を見上げた。
「もう帰る。あの子が待っているから」
「さっさと帰んな。んで、もうこっちにくんな」
追い払うように手を振られ、ふん、と鼻を鳴らして空を舞う。
まだ荒れる風を掻き分けて、あの子の待つ家まで只管に急いだ。
「昨日の夜、家から南の地区で激しい暴風と雷雨があったんだって」
眉を寄せて何かを言いたげな子を、笑顔で誤魔化す。誤魔化されてはくれていないのだろうが、小さな溜息の後に何かを言われる事はなかった。
「あ。あいつだ」
校門前。どこか草臥れた顔をして歩く同級生が視界に入り、僅かに眉を寄せる。立ち止まりかけた子の手を引き、その横を追い抜いた。
それでも気にしてしまう、優しい子を先に教室へ行かせ、同級生に振り返る。
「おはよう。昨日は大変だったみたいだね」
冷めた声音に、何故か傷ついた表情をされる。
慰めの言葉でもほしいのか。自分は簡単に誰かを傷つけているというのに。
込み上げる激情を、手を握り締める事で耐え。同級生を見据えて、でも、と言葉を続けた。
「よかったね。家族は無事だったんでしょ。あの子の時は、あの子以外は駄目だったのに、運が良かったね」
言いたい事だけを言って、くるりを踵を返し教室へ向かう。
背後で同級生が何かを言っているが、既に興味はなかった。
急がなくては。教室で一人でいるあの子が、寂しがってしまう。
もしかしたら、先ほどの同級生のような酷い事を言う誰かが現れるかもしれない。
それを思うと、自然と足は速くなる。昇降口を抜けて、教室までを駆け抜けた。
「おまたせ」
「廊下は走っては駄目だよ。危ないから」
「ごめんね」
叱られて謝罪の言葉を口にしつつ、席に着く。
「彼と、何話してたの?」
小さな声に、視線を向ける。揺れる瞳の奥に不安が見えて、安心させるように笑いかけた。
「昨日は大変だったねって」
「それだけ?」
それだけ、と笑う。
言いたい事は山ほどあるが、昨日の雨風で気持ちは大分収まった。望まれていない事に、手を出しはしない。
「あっちでは禁域をまた一つ作っちゃったけど、こっちの影響は抑えていたから大丈夫だよ。これでも成長しているからね」
「成長しているっていうなら、まず暴れないようにしないと」
「これでもたくさん我慢しているんだって」
我慢して、鎮められるものは鎮めて。抑えきれなくなれば、その前に現世から離れる。
それだけで現世への影響は殆どなくなる。
今回のは偶々だ。暴れる尾が偶然空間を引き裂いて、それが偶然同級生の住む場所に繋がっただけ。
「こんな事、もうしちゃ駄目だからね」
「分かってるよ。大丈夫」
「誰も私みたいにはなってほしくないもの」
本当に優しい子だ。そして誰よりも強い子だ。
傷つけるだけの風と雨に全てを奪われ。その風雨を憎むのではなく、共にいて欲しいと望む、何処までも優しい可愛い子。
望まれたその時に、妖として目覚めたばかりのこの身はまだ、内で荒れ狂う風を制御しきれない。
その度に怖ろしい記憶を思い起こさせているというのに。最初の望みは、ずっと変わらない。
「私にはあなたがいるから、大丈夫なの。だからずっと一緒にいてね」
「いいよ。応えてあげる。一緒にいようね」
差し出された小指に、小指を絡める。
指切りげんまん、と可愛い子が歌うのに合わせて手を揺らす。
段々と賑やかになる教室。先ほどの同級生も来たようだ。
また一日が始まる。どんなに風が強くとも、雷雨が来ようとも、それは変わらない。
僅かに綻ぶ愛しい子の表情に、思わず吹き抜けた風が窓を叩く。
驚き目を見張る子に叱られる前に、誤魔化すように笑った。
20250107 『君と一緒に』
42君と一緒に
ただ触れていたくて
傍にいたくて
その場所へ駆けた
あなたに逢いたくて会いたくてしかたがなくって
その場に懸けた全てを賭して
追い架けて愛欠けて
たった一言間に合わなかったね
「私、映画行きたいんだよねー」
「おー、いいじゃん」
「あとディズニーにも!」
「今週末晴れるみたいだし行ってきたら?」
そうじゃない。
私は心の中でため息をついた。
お題「君と一緒に」
「君と一緒に」
「ニンゲンくん!」……なんだよこんな寝る前に。
「おや、眠たかったかい?すまないね!」
「少しだけ、聞いてくれないかな?」
「ニンゲンくん、いつもありがとうね。」
な、なんだよ急に。
「ふふっ、お礼を言ってみたかっただけさ!」
「初めて会ってからしばらくは素っ気なかったけれど、一緒にいるうちに随分優しくなったよねぇ。」
優しく……なったんだろうか。全然自覚がないけど。
「ボクも、キミと一緒にいるうちになんだか心が柔らかくなっていくような、なんだか懐かしい気持ちが芽生えてきたんだよ。」
「キミのおかげで⬜︎⬜︎もずっとご機嫌なうえ、お父さんにまで会える場所が確保できた。嬉しいことこの上ないよ。」
「だから、これからも一緒にいてほしいな。」
「……いいかな?」
……好きにしたらいいよ。
こっちこそ、色々ありがとう。
これからも、よろしく。
「えへへっ!これからもよろしくね!」
「あっ、もう眠いんだったね!おやすみ。ゆっくり寝るんだよ!」
おやすみ。
これからも一緒にいたい、なんて言われたのは初めてだ。
……ちょっと嬉しい。
こちらこそ、これからもよろしく。
君と一緒に日々を過ごしてきた。
お腹の中に宿してから、18歳の今日まで。
私そっくりに絵本を諳んじる幼少期から、まともに返事をしてくれない思春期まで。
もうすぐ共通テストだね。夜遅くまで塾通い。高校3年生の受験ってこんなに大変なんだと、君を通して学ばせてもらっている。
受験は団体戦なんだって。皆んなで頑張るものだって。
お母さんのチカラは非力と言うか、何の役にも立っていないかもしれないけれど、ちゃんと応援しているから。頑張れガンバレって言うのも君にとって五月蝿く感じそうだし、応援って難しいね。
美味しいご飯だけは作るから、後悔しないように頑張ってください。
君と一緒に
hと付き合ってすぐの時、hはおれに「自分は何をしたらいいのか」と問うてきた。そのときおれはなんにも考えずに、「恋人らしいことできたらいいね」とか何とか返した記憶がある。思い返すとその言葉がだめだったのかもしれない。その次の日から、hは無理をするようになった。
"暗躍"をしなければならないおれは、たいていの日は寝るためだけに深夜だけ支部に帰っている。そんなおれに会おうとhは3時頃まで玄関で座って待っていたらしく、その後帰ってきたおれは玄関で倒れ込むようにして寝てしまっているhを見て心臓が飛び出る思いをした。sやkが声をかけたと聞いて、安心して帰るとまた玄関先で死んだように寝ていてびっくりする。深夜になるとおれも眠くて眠くて予知が全然役に立たなかった。そんなことが何度もあって、hの生活リズムはどんどん狂っていった。ごはんをあまり食べなくなって、ふらふらすることも多くなった。
yもsもtも、支部の全員が不安そうにしていた。
何度目かにそれがあった次の日、おれは18時頃に支部に帰った。おれと目が合ったhは、やつれた顔をしつつも顔を輝かせておれの傍に寄ってくると、思いきり抱きしめてくれた。
「j、おかえり………あの、それ、が、ずっといいたかった」
ちいさく肩を震わせるhを抱きしめ返して、
「無理をさせたよな、ごめん、h」
「おれは、離れててもどっかでhが生きている、って思いながら生きていられたらそれでいいんだよ、何もいらないから、hはどこかでずっと笑っててよ」
涙を流しているhの背中を擦りながら、俺は小さくそう言った。hはゆっくり頷いて、俺の胸で静かな眠りに落ちていった。
hの心臓が穏やかに動くのを感じた。
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君と一緒に j × h
(視点 : 左)
ずっと一緒にいたい、と涙を流したあの人とは、満開の桜を見ることはできなかった。私と一緒にいることに、役目が終わったとでもいうように、あの人は別れを告げた。「ごめん」と、たった一言だけ言って、あとは何も言わなかった。ずっと一緒にいたいと言ってくれた時と同じ表情で、今にも泣き出しそうなほど顔を歪めていたけれど、泣きそうなだけで、あの人は最後まで涙を見せなかった。緊張すると鼻を触る癖があった。私はあの人が何回触るのかを数えるのに夢中で、どうして別れという選択をしたのか、肝心な理由を聞きそびれた。そもそもあの人が誰だったのか、私はちゃんと知っているのか分からない。その程度の関係。その程度の存在といってしまえば、そうなのかもしれない。
目を開けると、黒光りした墓石に私の姿がぼんやりと映る。夢を見ているようだった。墓誌の一番最後に刻まれた名前をそっとなぞる。
「ずっと一緒にって言ったくせに」
指先で感じる凹凸に、あの人の姿を脳裏に思い出す。私のそばで生きていた、あの人のことを。
寂しさとか虚しさとか漠然とした不安とか、そういう見えないものの存在を忘れるほど、きっと、あの人が私の心をそばで守ってくれていた。
ふいに、風が吹く。満開になった桜の木が花びらを撒き散らして、美しい花吹雪を起こした。
「ねぇ。見てる?」
そう言って、ゆっくりと墓石を振り返る。静かな沈黙が自分に跳ね返ってくるだけだった。
「嘘つき」
ぽつり、と涙が頬を伝った。
#君と一緒に 「明日も明後日も、その先も」
君と一緒に
今日も狭いシングルベッドで愛しい彼女と一緒に眠る
「幸せだ…」
俺の腕枕ですやすや眠る彼女の顔を見つめていて思わず零れた言葉に口角が上がる
こんなに誰か1人を深く愛せる事を知ったのは君と一緒にいるからだ
これからも彼女ただ1人を深く愛していこうと改めて覚悟する
──どこへだって行ける。
(君と一緒に)
保全します。
明日からは書けるはず……です。
No.209『君と一緒に』
君が死ぬって言うなら君と一緒に死んであげる。
なんでか、だって?
そんなの、君を1人にさせたくないから。
それだけだ。
君と一緒に現実逃避の夜闇へ。
そうやって無計画に駆け出したから、今の自分は病院で長くリハビリする結果になっている。
遅くなったけど、君に伝えたいことがある。
とは言っても、心のなかは複雑だ。
泣きべそをかいていた自分だったら、ありがとう。
決心した後なら、ごめんね。
すべてを知ったときなら、よくもだましてくれたな。
今は……許さない、に近いかな。
あんな高い崖から飛び降りたのだから、五体満足にはいかない。自業自得だと医者には言われたよ。
夜間飛行のマネごとをしたのか? なんて茶化された。
あの頃の僕らは真剣だった。まだ未熟な精神だったけど、それなりに結論づけて、あのようなバカな事をした。
その結果、二人から一人になったわけだけど。
……ここまで歩くまで、それなりの時間を要した。
2年。それでもこのざまさ。
身体を引きずるような感じで、いつまで経っても全盛期になってくれない。
この崖――君と一緒に飛び降りた所だ。
2年経っても、変わらないな。
思えば、抱きしめるような姿勢がバカだったみたいだ。
恋人でないのに恋人のマネごとをして。瞬間的シックスセンスで、最後に添い遂げようとでも思ったんだろうって。
どうやらクルンと一回転半でもして、僕が上になったようだ。それで君が最初に激突して、クッションみたいになって……これ以上はよそう。頭が痛くなってきた。
足を引きずってここまで来たわけなんだけど、これからもリハビリを続けるよ。本音を言えば、今すぐにでも君の後を……と言う意思でここに来たんだけどね。
もう一度いうが、君のことは許さない。
こんな身体にしたのに、先に逝って、無責任だ。
でも、どうやら君は飛び降りる前に救急車を呼んだそうだな。入院生活のときに警察が来て、君のスマホの履歴情報を調べていたよ。それで発覚した。
遺書を残さないって言ったよな。どうしてと僕が聞いても、理由を話さなかった。その理由、ずっと考えている。よくもだましてくれたな、から、許さないに変わるまで考えた。
遺書を残すくらいなら、代わりにこれを、と僕は解釈した。
だから、君のことは許さない。
それ以上に僕のことが許せないから。
【君と一緒に】
彼らは幼なじみの仲だった。いつも二人でいた。
男の子二人なのに、いつも大人しい遊びをしていた。
ずっと二人でいるのかと周りは思ってた。
ある日、一人がもう一人に告白をした。
ずっと恋愛対象として見ていたらしい。
「ごめん。君と一緒にはいられない」
そういって断ったそうだ。真摯に。
そして断った彼はある女の子に告白をした。
女の子は迷った。彼ら二人を見ていることが、彼女の安らぎだった。
儚い彼らの間に入ってはいけないと思った。
しかし何度も告白された女の子はとうとうその気持ちに答えることにした。
失恋をした男の子は絶望の末、泉の中に飛び込んだ。
しかし命を絶つことはできなかった。
私は、私は兄様を裏切ったの?
兄様は何も教えてくれなかったのに。
そんな目でこっちを見ないでよ。兄様。
ああ、どうしてこんなことに。
君と一緒に
いつも君と一緒にいると癒される
いつも君と同じことをしてなんだか幸せ
君が夢の中に出てくる
『君と一緒に』
あの日あの時、僕は君と一緒にいた。
それは他ならぬ君が一番よくわかっていることだ。
なのに、なぜ君は僕を責めるように見ているのか。まったく理解できないね。
例えばの話。
君が抱いている疑念が正しかったとして、僕はどうやって事に及ぶ事が出来たのだろう。
この街の住人であの大学の卒業生は君だけだ。他の皆にはそこまでの頭も経済力もないからね。
事件現場にはあの大学の卒業記念バッジが落ちていた。
もう一度言うけれど、この街であの大学を卒業しているのは君だけだ。当然あのバッジを持っている住人もいない。君を除いては。
さて、決定的ともいえる証拠の品のおかげで君は拘置所に留め置かれた。
その間、君のご両親が僕のところへやってきてね、頭を下げて頼まれたんだ。なんとしてでも息子を助けてたい知恵を貸してくれ、と。
君は随分と僕のことを買ってくれていたようだね。ご両親に君が僕をいつも褒めていたことを聞かされて面映ゆかったよ。
ならば僕はその友情に応えなければならない。
だからちょっとだけ、そう、ちょっとだけ、ご両親に零したんだ。もしもの話をね。
もしも近日中に、似たような殺人事件が連続して起きたとして、そのいずれにもあの大学の卒業バッジが落ちていたとしたら、君ではない誰かの手による連続殺人事件と警察は考えるのではないか、と。
だって君は拘置所という完全なアリバイが証明される場所にいるのだから。
ご両親は知らなかったようだが、僕はあの大学の卒業記念品を取り扱っている洋品店を知っている。ここから電車に乗って1日で往復して帰ってこられることも。
大事な思い出の品を失くしてしまって買い直す人間が、多くはないがそこそこいることも。
ところで、僕はあの大学で君と同期だった男とよく似ているらしい。その彼が、つい最近バッジを買い求めたらしいが、不思議な縁だね。
さて我が友よ。
もう帰ろう。ご両親が待っているよ。
愛情深いお二人に早くその顔を見せてあげなくては。
町中に警報が鳴り響き、人々は家のドアを固く閉めた。
警察が町の出入り口を固め、ねずみ一匹の逃走も許さない。
無線での声と怒鳴り声、そこから少し離れた路地に走り抜ける2つの影。
「おい、どうする?」
肩で息をしながら一人が囁いた。
「全部の門を封鎖された。警察がここまで多いと思ってなかったぜ。迂闊だったな、相棒。」
そう言ってもう一人の肩を叩いた。
「ああ。だが、諦めるにはまだはえーぜ。」
相棒と呼ばれた一人は空を仰いだ。
空は雲が一つもなく、暗い路地からは美しい星が見える。
こいつといる時はいつだって満点の星空だな。声に出して言わないが、これまでの泥棒人生こいつがいなかったら、生きることはできなかっただろう。
最初は生きるために食糧を盗んだことが始まりだった。悪ガキとして町の住人からつまはじきにされ、施設を追い出された。その後、盗むの時のスリルや計画通り盗めた時の興奮が自分たちの唯一の娯楽となり、いつのまにか警察に追われるようになったのだ。
一つ間違えれば死ぬような瞬間を生き抜く中で、悪友や兄弟とかではない、自分の分身としてお互いを信頼しあっていた。
ただ、今回は計算が狂った。
何が原因かは分からない。とにかく答えを間違えた。
この路地は袋小路になっている。2人とも捕まるのも時間の問題だろう。
彼は空を見上げたまま、相棒に伝えた。
「なあ、おれは夜空を見飽きたよ。」
顔を見つめる。
「お前、まさか」
「お前と一緒でよかったよ。」
そう言って彼は思い切り相棒にぶつかり、肩を一瞬抱くと、するりと大通りに走った。
「おい!!!」
手に持っていたはずの宝の袋がない。
そう思った瞬間、銃声がした。
君と一緒に
君と理由なく会えるのも後3ヶ月もない
卒業してしまえば学校は別になる
君は夢に向かって進むのだろう
理由がないと会えないけれど
それでも小さな支えになっていたい
これからたくさんのことを君と一緒に
君と一緒に
どれだけ寒くても君がいてくれたら耐えられる気がしてくる
だから私は、君とずっと一緒にいたいと思うよ
【君と一緒に】
書けそうにないのでこのお題はパスさせていただきます
後で書けるようなら書きたいとは思っています
君がくれた星の欠片が手の中で温まっていく
なんだか君の手を握っているような気がした
冷たい風にひとり泣かないでね
遠くにいても一緒に歩いていくよ
#君と一緒に
だれかがだれかを呼ぶ声がする
水平線の 地平線の そのまた向こう側から
波と波の間の 束の間の夢のような
きみのなめらかな腰の曲線を 指でなぞる
淡いクリーム色の唇は 大事なことばを
ぎゅっとしまい込んでいるみたいだ
そして曇りのない漆黒の眼は ぼくを水底の階段へと誘う
おちてゆく 雫
白く光る きみの指とぼくの指
絡まりあって 輪郭をなくし
うすぼんやりと 闇に呑まれる
虫たちは 沈黙のうちに気配を殺す
水気を含んだものが 足元から這いあがる
きみは 腐った人形になり
ぼくは 荒削りな石像になる
だれかがだれかを呼んでいる
切実に 言葉のない世界で