だれかがだれかを呼ぶ声がする
水平線の 地平線の そのまた向こう側から
波と波の間の 束の間の夢のような
きみのなめらかな腰の曲線を 指でなぞる
淡いクリーム色の唇は 大事なことばを
ぎゅっとしまい込んでいるみたいだ
そして曇りのない漆黒の眼は ぼくを水底の階段へと誘う
おちてゆく 雫
白く光る きみの指とぼくの指
絡まりあって 輪郭をなくし
うすぼんやりと 闇に呑まれる
虫たちは 沈黙のうちに気配を殺す
水気を含んだものが 足元から這いあがる
きみは 腐った人形になり
ぼくは 荒削りな石像になる
だれかがだれかを呼んでいる
切実に 言葉のない世界で
1/7/2025, 9:25:56 AM