君と一緒に現実逃避の夜闇へ。
そうやって無計画に駆け出したから、今の自分は病院で長くリハビリする結果になっている。
遅くなったけど、君に伝えたいことがある。
とは言っても、心のなかは複雑だ。
泣きべそをかいていた自分だったら、ありがとう。
決心した後なら、ごめんね。
すべてを知ったときなら、よくもだましてくれたな。
今は……許さない、に近いかな。
あんな高い崖から飛び降りたのだから、五体満足にはいかない。自業自得だと医者には言われたよ。
夜間飛行のマネごとをしたのか? なんて茶化された。
あの頃の僕らは真剣だった。まだ未熟な精神だったけど、それなりに結論づけて、あのようなバカな事をした。
その結果、二人から一人になったわけだけど。
……ここまで歩くまで、それなりの時間を要した。
2年。それでもこのざまさ。
身体を引きずるような感じで、いつまで経っても全盛期になってくれない。
この崖――君と一緒に飛び降りた所だ。
2年経っても、変わらないな。
思えば、抱きしめるような姿勢がバカだったみたいだ。
恋人でないのに恋人のマネごとをして。瞬間的シックスセンスで、最後に添い遂げようとでも思ったんだろうって。
どうやらクルンと一回転半でもして、僕が上になったようだ。それで君が最初に激突して、クッションみたいになって……これ以上はよそう。頭が痛くなってきた。
足を引きずってここまで来たわけなんだけど、これからもリハビリを続けるよ。本音を言えば、今すぐにでも君の後を……と言う意思でここに来たんだけどね。
もう一度いうが、君のことは許さない。
こんな身体にしたのに、先に逝って、無責任だ。
でも、どうやら君は飛び降りる前に救急車を呼んだそうだな。入院生活のときに警察が来て、君のスマホの履歴情報を調べていたよ。それで発覚した。
遺書を残さないって言ったよな。どうしてと僕が聞いても、理由を話さなかった。その理由、ずっと考えている。よくもだましてくれたな、から、許さないに変わるまで考えた。
遺書を残すくらいなら、代わりにこれを、と僕は解釈した。
だから、君のことは許さない。
それ以上に僕のことが許せないから。
1/7/2025, 9:54:38 AM