『勿忘草(わすれなぐさ)』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
妻は62歳で他界した。晩年、彼女は認知症になった。だんだんと、ベランダに飾っていた大好きな花の世話が出来なくなっていった。私は花には興味がなかったから「今はそんな大変なことしなくていいよ」と無神経な事を言ってしまった。妻は悲しそうに「これだけは忘れたくない」と言って時々思い出したようにベランダへ出て水やりをしていた。
私は今、一人ベランダで枯れた花を見つめている。花など興味はなかったが、初めて妻の育てた花の名前が気になって図鑑を買ってきて調べた。枯れていて分かりづらかったがどうやら「勿忘草」という花らしい。花言葉は「私を忘れないで」だそうだ。
私は、妻に忘れて欲しくないと必死だったが、それは彼女が伝えたかった事だったのだ。
それから毎日私は、妻の好きだった勿忘草を育てている。その花を見ると、彼女が笑っている顔を思い出すから。
〈勿忘草〉
出逢った日のこと。
好きな食べ物、色、匂い、言葉。
何でもない日のこと。
共に笑い、喜び、楽しみ、感情を共有した。
私を、忘れないでいて。
「勿忘草」
私には恋人がいた。
彼は、いつも優しくて、とてもいい人だった。
歩く速さを自然と合わせてくれる人だった。私が立ち止まれば何も言わずに待ち、視線がショーウィンドウに向かえば、さりげなく「見ていく?」と聞いてくれる。そんな些細な気遣いを、私は愛していた。
彼が一緒に街に行こうと誘ってきた。
私は喜んでその誘いに頷き、特にこれといった目的もなく、ゆったりと二人で時間を過ごした。
賑わった商店街に入る。
何やら前方が騒がしい。人々がざわつき、次第に道の中心が空いていく。
その隙間を縫うように、一人の男が走ってきた。
手には、刃物が握られている。
「危ないっ!」
彼が私を突き飛ばした。
何が起きたのか、すぐには理解できなかった。
転んだ衝撃で視界が揺れ、遅れて振り返る。
そこに、血溜まりの中でうずくまる彼がいた。
何を、しているのだろう?
なんでここに、こんなに血が……。
あぁ、そうか。
彼は私を庇って、刺されたのだ。
この出血では、もう助からない。
そう思った瞬間、胸の奥がひどく冷えた。
誰かが叫ぶ声が聞こえる。
鼓膜が、やけに強く震える。
うるさい。
うるさい。
うるさい。
喉が焼けるように痛い。
息が、うまく吸えない。
――――叫んでいるのは、自分自身だった。
その後のことは、よく覚えていない。
気づけば私は、ふらつく足で自宅に戻っていた。
机の上に、手紙が置かれている。
一輪の、小さな花が添えられていた。
それは、彼の筆跡だった。
『先に謝らせてほしい。本当にごめん。
今日こうなるように、少し前から準備してたんだ。
君に危害が行かないようにしっかり人選したんだよ。
これを読んでるってことは、無事に家に帰って来れたんだね。
よかった。
目の前で僕が死ねば、君の中に僕だけが残ると思ったんだ。
君の人生に僕を刻み込めると思ったんだ。
ありがとう。
君に看取られる僕は、きっと幸せ者だ。』
手紙を置く。
視線が、花に落ちた。
小さくて、淡い青色の花。
彼が好きだと言っていた花だ。
「勿忘草」
花言葉は、「私を忘れないで」。
私にとってこの花は、最後に彼が遺した最上級の呪いだった。
今日、送別会だった
貰った花はオレンジ色のミニバラ。
花言葉は絆
帰ってから小さな花瓶を出して生けた
切り花はそれほど長持ちしないけど
こんな事がないとなかなか貰うこともない。
花言葉ーと言えば、もしこちら側から贈るとしたら
「私を忘れないで」で
勿忘草かな
英語の名前もForget me notで
和名ワスレナグサ。
まんまだな?と思ったらドイツ由来の物語が元になってるらしい。
ちょうど2月7日、私の誕生花だったから覚えてる。
春の花なのに、なんでこんな時期?と思った気がする。
60歳の誕生日まであと5日。
定年を待たずに会社を卒業した私は、そっとシニア向けの求人誌を開いた
明日からまた、初心に帰って就職活動だ
§勿忘草
勿忘草
時折思い起こす、記憶の断片とも言えないような、かすかな夢のようなものがある。その一つが、勿忘草。
小さな笑い声に、目を覚ましました。どうやら、草原に寝転がって眠っていたようです。
束ねた小さな青い花を胸元で抱え、私の隣で笑ってる人がいました。その白く柔い手が、棘のない緑の茎だけでなくて、垂れた青い花に触れていました。まだ夢心地の私はほうけていて、ただそれを眺めていました。
その人は愛おしげに勿忘草に触れ、私は勿忘草とその白い手を眺めていました。いくらそうしていたでしょうね。その人はそんな私に気がついて、私に花を差し出すのです。
恥じらっているのでしょう。顔を伏せられて、よく見えません。けれどもその頬は、赤く染められているのがわかりました。
そうして「忘れないで。」だなんて囁いたのです。
その言葉で私は、その青い花が勿忘草だと思い出し、全てが夢だとわかるのです。
そんな情景が忘れられないでいる。
きっとそれは全くの妄想。あるいは、つまらない映画のさして記憶に残らないワンシーンに決まっている。
私はあなたを忘れた。
本当、夢なのでしょうから。
[勿忘草]
嫌い。嫌いよ、あなたなんか。
私の心の中にズカズカ入ってきて。
「君は今日も美しいね」
「あなた、毎日同じことを言っているけれど。飽きないのかしら?」
「飽きるなんてとんでもないよ!君の美しさは一日二日で言い表せるものではない!」
「………変な人」
最初からおかしな人だった。
私がどれだけ冷たくしても、そっけなくあしらっても、愛おしそうに私を見て笑った。
「ねぇ、私みたいな愛想のない女に構わないで、別の女のところに行けばどう?」
そう言うと、彼は少し目を見開いた後、眉をへにゃと歪ませて少し悲しそうな顔をした。
「他でもない君が、俺の愛を否定しないで欲しい」
私の目を真っ直ぐ見つめて。
「俺は君しか愛せないし、愛そうともしない」
「…………そう。あなた、顔だけは良いから。てっきり他に女を誑し込んでると思ってたわ」
「ひどいなぁ」
私、あなたに何もしてあげれなかったし、優しくもなかった。
なのに私を見るだけで、自分がこの世で一番幸せですみたいな顔して。
「ほら見てご覧。勿忘草だ。綺麗だなぁ」
その日は温かくていい天気だった。
「知ってるかい?この花の花言葉を」
「知らないわ、花言葉なんて。女々しいだけじゃないの」
「はは、そう言うと思ったよ」
なんでこの花を私に見せたの。
「心臓がね、昔っから悪くてね」
雨が降って、ジメジメした嫌な日だった。
あなたはいつもみたいに笑った。
「そこの、そう、その引き出しに手紙があるから、」
俺が死んだら、読んでくれる?
ひくりと、喉が震えた。
いつも飄々としていた彼は、あっけなく死んだ。
棺の中のあなたは、ひどく静かで。
軽口を叩くあなたが、少し名残惜しい。
葬式が終わった後、彼に言われた通り、引き出しを開けた。
中には一通の手紙と、押し花が挟まれていた。青い、小さな花。
その手紙には、
"愛している。君が俺を忘れない限り"
「この花の花言葉はね、"真実の愛"、"誠実な愛"…」
「……あなたが好きそうな言葉」
「俺のことをよく分かっているじゃァないか」
そう言って、あなたは勿忘草を私の掌に置いた。
「それとね、」
「"私を忘れないで"」
最後まで私の中に居座るのね。
………だいっきらい。
「ねぇ私病気でさ。あと1年なのかそれ以上なのかよく分からないけどこのまま君より早く居なくなりそうなんだよね。」
一息で言い切った彼女の唇は少し震えていたが目に涙は見えなかった。
「だからさ、なんかこういう時って別れるみたいな感じになるじゃん。別れて、相手の未来の幸せを守るみたいな。私たち結婚するとかそんな話してこなかったし、まだ半年しか付き合ってないじゃん。一生を誓えるかとかそういうのは重いよなーみたいな。なんかさ、だからやっぱ」
「別れる、、?笑」
矢継ぎ早に話した彼女を見ながら混乱は止まず何も言えない僕はただ立ちつくしていた。たしかに結婚するとかはまだ考えていなかった。好きだし落ちつく、この2点は紛れもない事実だけど40年50年と続くだろうこの先の結婚生活を考えると踏み切れる段階ではなかった。1年くらい付き合ったらぼちぼち…なんて考えてはいたものの唐突のタイムリミット宣告に未だ口は開かない。
そんな僕を見透かして「いや~別れとこうか、あんまり迷惑かけたくないし」と彼女はいいながら少し笑う。
「迷惑じゃないよ」と絞り出した声で僕の気持ちは全て見透かされてしまったのか、「優しいね」と返される。
一言も話せなくなった僕を駅に促し彼女は手を振る。終電、明日も仕事だから乗らないと。「少し考えさせて」とだけ最後に呟いて電車に乗った僕に通知が来る。
勿忘草が写るアイコンに「ありがとう、元気で」と並ぶ言葉。
その後既読はつかずLINEスタンプをいくつ送っても全て持っているの表示。少しほっとした自分が確かにいたことに気付いた。
「勿忘草(わすれなぐさ)」
逸話があって
この名前がついたんだね。
この花に限らず
逸話を知るのは好きなんだ。
知る前と後では
全然違うからね。
ま、
良い事ばかりじゃないけど。
【勿忘草】
家電量販店にて。
私は洗濯機売り場でドラム式洗濯機の説明を受けていた。
店員「〜であるからにして。この機能でこの価格は実に驚異的で、しかもハンマーで叩いてもすぐには壊れない上に木製の〜」
店員のどうでもいい話を聞きつつ、私は気になっていたことを聞いた。
私「ここに子供が入らないようにと注意書きがありますが、じゃあ大人なら入ってもいいんですか?」
店員は適当に答えた。
店員「まぁ、そう書いてあるのなら入っても良さそうですね。知りませんけど」
それを聞いた私は素早く洗濯機の中に飛び込んだ。
私「うっひょ~。この狭さがたまんねぇぇぇーー」
ギチギチ。
今日のために子供の頃から体操教室に通ってきた甲斐があった。
私が充実感に満たされていると。
子供「ママ、何これ?」
子供がやって来た。まずい、余計なことはするなよ。
しかし私の願いは届かず、クソガキは洗濯機のドアを閉めるとスタートボタンを押した。
私「あああああああああぅあぅあうあぅあ」
しかし幸いなことにすぐに母親が駆けつけてきた。
母親「まあ、なんてこと!」
良かった。助かる。
母親「でもこの人ブサイクだし助けない方が世の中の為になるかも」
私「!!!!!!!!!!」
結局、良心の呵責に耐えられなくなった母親が隣にいた店員に事のあらましを伝え、洗濯機の停止ボタンを押したのは完全に手遅れになった後のことだった。
ちなみに店員はまだ洗濯機の説明を続けていた。
#100「返却期限」
山のように人の言葉を借りる
返却期限までに返せるかわからないから
今日も延長を繰り返している
他人から借りた言葉でしか
わたしは自分の感情を表せない
まるで赤ちゃん、みたいだね
あらゆる罵詈雑言を自らの頭で、表現で
振り絞って怒り狂うヒトの方が
よっぽど大人に見えてしまう
物書きに向いていない
俯瞰した物語に、結局酔ってしまっている
だからいつまでも大人になれないのだよ
借りたものを全て返すには
大人にならなきゃいけないのに
今日もわたしは、ワガママなわたしのためだけに
他人の言葉の羅列を読み取った
「ピッ」
勿忘草(914.6)
私を忘れないで。
真実の愛。
真実の友情。
勿忘草の花言葉である。
ここ数日、ちょい長めの小説が書けていました。
妄想が捗っていたり自分の中で盛り上がっていると、お題をこじつけて色々書けるものです。
今回も上記花言葉を使って腐った話が妄想できたのですが、ちょっとお腹いっぱい気味なので小休止。
と、思ったのですが、お風呂に入ったら妄想が進みました。いつもそう。寝不足になるのに…。
残しておこう。
ちょっとだいぶ腐ってます。注意。
勿忘草(オリジナル)(秘密の手紙続編)(腐)
仕事を終えて我が家に帰り着くと、テーブルの上に、小さくて青い可憐な花が複数枚散らばっていた。
「かずくん?」
「おっ!お帰り、聡」
「これ、どうしたの?」
「ああ、これ、今日の仕事のお土産」
幽霊は物に触れられないのだが、彼が持つ仕事専用不思議スマホに、封筒に入るサイズの物であれば出し入れできる機能がついており、かずやは最近、それを使って時々こうしてお土産を持って帰ってくる。
僕は小さな花を大事に拾い集めた。
クローゼットの奥から、大事にしまってあった小さな瓶を取り出す。
「あ!それ!」
「懐かしいでしょ」
小学生の頃、かずやがハマっていた球団のグッズだ。
自分にくれたのをどう使ったものか、しまい込んでいたのだが、小さくて今回の花瓶にちょうど良い。
水を入れ、花を挿す。
花が少なすぎてパラパラ広がってしまったが、それもまた良し。
僕らはテーブルを挟んでしばらくその花を見つめあった。
side:聡
青い勿忘草。花言葉は真実の愛。
仕事のお土産だと言っていたけれど、誰かがこれを贈ったのだろうか。
しかしどうしてかずくんはこれを僕へのお土産にしようと思ったんだろう?彼、花言葉とか詳しくなさそうだし、お花にも興味ないと思うんだけどなぁ。
まぁ、男に持って帰るなら青が良いかな、くらいのテンションかな?
それにしても…すごく嬉しそうな顔してお花見てるなぁ。お花好きだったのかなぁ。意外。それとも懐かしい球団グッズの方かな?喜んでくれたのなら嬉しい。しかし…穏やかにそうやって微笑んでると格好良いなあ。僕でもドキドキしちゃうぞ!このイケメンめ!
side:かずや
青い勿忘草。花言葉は真実の愛。
聡への恋心を自覚したは良いが、とても言えるものではない。そこに今日の依頼と来たもんだ。
面と向かって言えない気持ちを花言葉で贈るなんて、なんて奥ゆかしいんだ!最期なんだからちゃんと言え!と思っちまったけど、ふたりの間ではなんか納得してたから、あれはあれで良かったんだと思う。
なんか感動して、俺も聡に贈りたくなったんだ。
伝わらなくていい。むしろ伝わらないでくれ。
ただ、俺の気持ちとして、彼にあげたかった。
自己満足だ。
俺が昔あげた子供のおもちゃのような瓶を大事に取っておいてくれた事も嬉しい。
花の向こうで聡が嬉しそうに笑っているのも良い。
ああ、可愛い。好きだなぁ。
#勿忘草
「私ね、この花好きなんだ。
小さくて可愛いでしょ?」
「そうだね、君みたいだよ」
「んふふ、何キザなこと言ってるのよ…」
「…っ そんなつもりじゃ…」
「わかってるわよ。
あなたってそういうこと言う人だって知ってるから」
「それ、褒めてるの?」
「褒めてるわよ、そういう所が大好きなのよ」
目の…前の君は…何故笑って…いるの
僕は…こんなにも…苦しいのに…
何故…僕の胸は…こんなに温かくて赤いの…
ごめん…僕が…悪かった…
君のこと…大好き…なのは…本当…だっ…
私のこと忘れないでって言ったじゃない
私という恋人がいて、何故他の女と愛しあっているのよ
でもこれで私だけのあなただわ
「速報です。マンションの一室で男女の遺体が
発見されました。手を繋いでいる男女の遺体には
勿忘草の花束が握られていました。
警察はどちらかが無理心中を図ったとみて
捜査を進めています。」
【勿忘草(わすれなぐさ)】
「おい、これやる」
そう言って彼がぶっきらぼうに差し出したのは白い可憐な花だった。
「え?きみが私に花?天変地異の前触れ??」
その行動は普段の無骨な彼の姿からはとても想定できないもので。その唐突さに、私は目を見開いて彼を見つめることしかできず。
「うるさい。いいから受け取れ」
彼がずいと花を顔に近づけてくるので、私は戸惑いながらもそれを受け取った。
見上げる彼の顔は普段と同じ仏頂面で。何を考えてるのか全然わからなかった。
その次の日、彼は唐突に村を旅立った。村人は誰も彼の旅立ちの理由を知らなかった。私だってわからなかった。だから調べた。あの花の意味を。もしかしたら何か分かるかもって。
あの花は、勿忘草(わすれなぐさ)という名前だった。
花言葉は「私を忘れないで」。
意味がわからなかった。急にいなくなっといて、忘れないでって。私と彼は生まれたときからの筋金入りの幼馴染で。家も隣でいつも一緒で。表情が少ない彼は何を考えてるか分からなくて怖いって嫌われがちだったけど、私は逆にそれが落ち着くから好きで。
忘れるわけ、ないじゃん。こんな花なんて残さなくたって。忘れないよ、私。
そうじゃなきゃ、彼がいなくなってこんなに寂しいはずないもの。
数年後、魔王討伐の勇者パーティーが結成されたとの報が王都から届いた。
そのパーティーの勇者は、彼だった。
新聞の一面で相変わらずの仏頂面の彼。
新聞では“クールな勇者”として紹介されていた。
私は少し笑った。あれはクールなんて呼べるものでもないだろうに。
勇者パーティーの活躍は連日報じられ、こんな辺境の村でも彼の活躍を知らぬ者はいなかった。
嫌われがちだった彼は、今や期待の勇者様だ。
また新聞の一面に載っている彼を見て、ふと思う。
彼はどうして私に「忘れないで」なんて花を残したのか。
今なら彼の旅立ちの理由は分かる。勇者として魔王と戦うための修行に出たのだろう。でも、なんで、それを私に伝えずに、花だけ残したのか。
目を閉じて、記憶の中の彼を思い出してみる。
背の高い彼の顔をいつも私は見上げてて、上から私を見下げる彼の顔は仏頂面なのに全然怖くなくって。それはきっと、彼が私に心を許してくれてたからなんだろう。彼と過ごす日々は穏やかで、あたたかかった。
新聞の一面を飾る華々しい勇者様じゃない、不器用で本当はあたたかい彼を、私は覚えてる。
写真の中の彼に語りかける。
「大丈夫、きみのこと、ちゃんと覚えてるから」
届かない呟きは空に溶けて消える。
記憶の勿忘草が、ふわりと風に揺れた。
勿忘草という草があるのだろうか。
よく聞く言葉だが
見たことはない。
ねるねるねるねという言葉も
よく聞くが
やはり自分で練ったことがない。
とすると、あるいは
勿忘草はねるねるねるねなのだ。
そういう逆説だって
成り立ち得るのだ。
“勿忘草とねるねるねるね”
普段はこういうものに惹かれない。
特にアクセサリーみたいな着飾るものは興味がないと言うか、めんどくさいなーと思っちゃう。
おしゃれに興味がないわけじゃないんだけど、よくわかんない。
それなのに。
オンラインショップのダイレクトメールのおすすめに、水色の小さい花が集まったイヤリング。それが目に入った。
俺と恋人を繋いだ好きな色に小さい花が数個集まったイヤリングを付けた彼女を想像したら、愛らしさが増しているなと。
無邪気で、色素が薄い彼女。
着ている服も白や薄い水色を好んで着るから、それより濃いこの花のイヤリングは絶対に似合う。
そう思ったら、思わず手に取って会計を済ませてしまった。
ただ可愛い花のイヤリングと思っただけだったんだけど、オンラインショップに書いてあった商品タイトルは「勿忘草のイヤリング」で。
なんとなくで調べた花言葉がちょうど良くて胸が踊った。
青い勿忘草の花言葉は「誠実な愛」で。
俺が彼女に贈りたい気持ちだった。
おわり
六二七、勿忘草
「今日、卒業式だね」
『うん…なんか寂しいよね』
「卒業式に飾る花、なににした?」
『んーと、私は…サネカズラかな、ってサネカズラ植物か』
「あははっ、私は勿忘草!」
『あーあのちっちゃいきれいな花?』
「そう!花言葉が良いな〜って」
『なんて花言葉?』
「えーっとね……」
私達は沢山の思い出を語りながら卒業式は終わった。
「「みんな、今までありがとう!僕達、私達の友情はホントだよ」」
私達はみんな一つ一つ良いところや楽しかったことを話した。
そして最後になってやっぱり、みんなとは本当の友達だったということがよくわかった。
「いつまでも、友達だよ」
祖母の庭に春になると
小さな青い花が咲いていた
おばあちゃん、この花なあに?
と聞くと
おばあちゃんはふうわり笑って
勿忘草って名前なのよ
真実の愛って花言葉が
好きなの
と、そっと花たちを撫でる
その指先のシワが大好きで
勿忘草は祖母の記憶
私も庭一面に
いつか勿忘草を植えるだろう
でもそれは白色
あなたを忘れないの花言葉に
祖母を委ねて
勿忘草
「別れよう」
『え…な、んで』
唐突に告げられた別れ。
「好きな人ができた、他に」
『は……?』
なにそれ、私じゃ満足できなかったってこと…?
告白してきたのはそっちなのに。
まあ、今じゃたぶん、私のほうが好きなんだよね。
冷めたってこと?
何がいけなかった?
女として見れなくなったってこと?
他の女の子のほうが魅力的に見えたってこと?
なんで、ねえ、なんで、
言いたいことを全部飲み込んで、我慢して
『そっか……わかった』
「…っ」
なんで、やめてよ、泣かないで。
泣きたいのはこっち、なんであなたが泣くの?
「これ……」
『え…?』
あなたが渡してきたのは小さい花束。
別れるときに花束渡す奴いるの…?
勿忘草。
バカなの?ねえ、知ってる?
勿忘草の花言葉。
「私を忘れないで」
「真実の愛」
「真実の友情」
別れるときに渡す花じゃない。
でも、私は知らなかった。
あなたがこの花束を、この勿忘草を私に渡してきた意味を。
ごめんね、気づいてあげられなくて。
今日は、あなたが亡くなって一周忌。
もちろん添える花は勿忘草。
言ってよ、癌なら、最後までいっしょにいたかった。
1人で苦しまないでほしかった。
大丈夫。
忘れないよ。
貴方が最後に託した想い。
私を想ってしてくれた行動が、結果的に、貴方を届かない場所まで連れていってしまった。
もう謝ることも、許されることもない。
けれど私は、この命尽きるその時まで、貴方を決して忘れない。
私に似合うと言ってくれた、この青い花と共に。
「お題 勿忘草(わすれなぐさ)」#140
鮮烈にあなたの脳裏に焼き付いて、一生あなたの脳味噌で生きてみたい。
こんなわたしのことなんて忘れて、全部なかったことにしてほしい。
わたしは勿忘草なんて無くたって、あなたのこと、忘れられやしないんだけど。
〈勿忘草〉