勿忘草
時折思い起こす、記憶の断片とも言えないような、かすかな夢のようなものがある。その一つが、勿忘草。
小さな笑い声に、目を覚ましました。どうやら、草原に寝転がって眠っていたようです。
束ねた小さな青い花を胸元で抱え、私の隣で笑ってる人がいました。その白く柔い手が、棘のない緑の茎だけでなくて、垂れた青い花に触れていました。まだ夢心地の私はほうけていて、ただそれを眺めていました。
その人は愛おしげに勿忘草に触れ、私は勿忘草とその白い手を眺めていました。いくらそうしていたでしょうね。その人はそんな私に気がついて、私に花を差し出すのです。
恥じらっているのでしょう。顔を伏せられて、よく見えません。けれどもその頬は、赤く染められているのがわかりました。
そうして「忘れないで。」だなんて囁いたのです。
その言葉で私は、その青い花が勿忘草だと思い出し、全てが夢だとわかるのです。
そんな情景が忘れられないでいる。
きっとそれは全くの妄想。あるいは、つまらない映画のさして記憶に残らないワンシーンに決まっている。
私はあなたを忘れた。
本当、夢なのでしょうから。
2/2/2026, 1:23:30 PM