『勿忘草(わすれなぐさ)』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
お出掛けの約束を破った事は
仕方ないから許してあげる
私をおいて何処か遠くへ
逝ってしまった事も許してあげる
だからどうか 、 ── 私のことを忘れないで
青い、ちいさな花が足元に咲いている。
この花の名前はなんだったか。
ずっと前に君に教えてもらったこの花の名前を僕は忘れてしまったみたいだ。
君は花が大好きで、一年中花を見かけるたびに僕に馬鹿みたいに楽しそうに、数えきれないほど多くの花の名前を教えてくれた。この花だってその中の一つ。
だけど僕は花に興味なかったから、覚えてる花の方が少ないよ。
でもさ、君だって僕が教えた虫の名前全然覚えてくれなかった。お互い様だ。
・・・この花の名前は忘れちゃったけど、この花を見つけた時の君のまるで花が咲いたかのような笑顔は、忘れてないよ。
忘れてない。
覚えてる。
ずっと。
『勿忘草(わすれなぐさ)』
こんな可憐な花に
悲しい名前をつけたのは誰?
いつもパンを買うお店の屋根のような
優しい青色
健気で、ちょっと神秘的で、
忘れようはずがない
勿忘草(ワスレナグサ)
勿忘草がどんな植物か想像できなくて、すかさず調べると、青くて小さい花が主に出てきた。花言葉は「真実の愛」
「誠の愛」「私を忘れないで」だそうだ。
「私を忘れないで」と言いたい人がいる、父だ。反抗期はなかったけれど、父と喋ることがなんか気恥ずかしくて、普通に喋れるようになったのはとても最近だった。
人は失うことでしか大事なものを確かめることができないというのは本当にその通りだと思う。
運転姿も振袖姿も見せることができないまま、私は父を失った。
お父さん、どうか私を忘れないで。
勿忘草を模った指輪。
花弁は青玉髄、花芯は金。
それを持って僕は、君にプロポーズをする。
君の愛を確かめるみたいに。
今日、私は死んだ。病死だ。
発見した時にはもう手遅れだった。
病院生活は意外と楽しかった。
違う病室の子と沢山のことを話した。
でもやっぱり、もう少しだけ
貴方と一緒にいたかった。貴方と生きていたかった。
彼の幸せを願いたいのに、私を忘れてほしくない。
彼の幸せが私であって欲しいと思ってしまう。
ある春の日。
静まり返った病院の一室でピーと音が響いた。
机の上には
彼に宛てた手紙と勿忘草。
「勿忘草」
青色の一本線が目尻駆け
今日の私が焼き付けばいい
(勿忘草(わすれなぐさ))
忘れたいことは、いつまでも頭から離れず
忘れたくないことは、すぐに色褪せてしまう。
人間の不思議な習性。なんでだろうね
あなたとの最後の日
あなたとの初デートの場所
あなたとのお揃いの時計
あなたと暮らしたこの家
あなたと
一緒に過ごした日々
あなたと共に
過ごした
全ての
記
憶
を
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
パチッ
「××、?」
私の目の前には
男の人がたっていた
その横には
私のお母さん
あれなんで私、病院なんかに
てか
『あなた、誰ですか?』
ちいさなコップにお水を入れて
こぼさないようにゆっくりね
ちいさなおててで摘んできた
青くてかわいいお花の名前
忘れないでね
忘れないよ
覚えてる?
あなたと通ったこの道を
あなたの笑顔
あなたの涙
ずっと記憶に残したい
愛してる
勿忘草(わすれなぐさ)
呆(ほう)けた母の いつもの電話
ゆう子 学校に行ったまま 帰ってこん
川に はまっとらーせんだろうか
人さらいに あっとらーせんだろうか
ゆう子が泣いとる 早う乳やらないけん
母よ 母よ ゆう子は私
あなたの電話している 相手がゆう子
ゆう子はもう 結婚して子供がいる
母にとっての孫を 母は
ゆう子だといって離そうとしない
私 母に愛されていないと思っていた
だけど こんなにも愛されていた
あの日の私を
あの日の母を失った今 わかるなんて
過ぎ去りし日の母
思い出の中の ゆう子
アメリカには「祖父母の日」があり、
孫が花などをプレゼントする習慣がある。
定番の花は、勿忘草。
『勿忘草』
いつまでも覚えている。貴方のあの優しい手の温もりを。穏やかな声の響きを。忘れられるはずがなかった。
青く小さな花の名前は、貴方から知ったのだ。
こんにちは、言葉(ことは)です。
私は現在、両親のお花屋さんを受け継いで、妹の氷華(ひょうか)と一緒に経営しています。
花を見るのは楽しいし、心も落ち着く。だから私は花が好きなんです。
カラン、コロン
あ、お客さんですね。いらっしゃいませ。
「...あの、すみません」
「はい」
「その......俺、花をプレゼントしたいんですけど......どんなのを渡したらいいですか...?」
茶髪の少し髪の長い、優しそうな男性です。大切な人へのプレゼントでしょうか?
「相手の方が喜ぶようなお花にしましょう。例えば...その方の好きな色の花などありますか?」
「あ...青色とか、水色が好きです」
「成る程...」
「...あの、その...彼女、花言葉とかよく知ってて......想いの入った花がいいかなって...」
「失礼ですが、どのような想いでしょうか?」
「えっと......この前告白されて...同じ気持ちだって、返事をしたくて...」
「わぁ、素敵な話ですね...!」
「ありがとうございます...」
寒色系で想いを伝えられる花...
「...この花はいかがですか?」
「これは?」
「勿忘草と言います。花の色によって花言葉が違うんです。この青い勿忘草の花言葉は『真実の愛』『誠の愛』です。夫婦やカップルの記念日などによく送られています。ドライフラワーにして、栞にも出来るんです。どうでしょうか?」
「...これにします。これでお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
花束を丁寧に優しく。私からも、気持ちが伝えられますようにという願いを込めて。
「お待たせしました」
「わ......凄い綺麗...!ありがとうございました」
「いえいえ」
「また来ます......今度は彼女と」
「楽しみにしています」
カラン、コロン
お客さんの足取りが凄く軽くなっている気がしました。喜んで貰えてよかったです。
いいお話が聞けそうです。楽しみだな。
お題 「勿忘草(わすれなぐさ)」
出演 言葉 玲人 氷華(名前)
フェリーやタワービルなんかを見たとき、自分がいかに無能でちっぽけな存在であるかを思い知らされるよね、
「ねぇ、勿忘草の花言葉知ってる?」
「えー知らない」
「『真実の愛』っていう花言葉なんだよ」
「そーなんだ、素敵だね」
「でしょ、あともうひとつあるんだけどね……」
ある日、俺の彼女は空を飛んだ。
これがきみとした最後の会話だった。
きみは空を飛ぶ少し前、好きな花の話をしたよね。
君が好きな花は
"勿忘草"
『勿忘草』
私を忘れないでという。
勿論だと笑いながらどこか他人事のように返事をした。
嘘つき。
忘れるのは私じゃない。貴女の方だ。
恨みがましい呪文が口をついて出そうになる。
お別れの品にと香水を送るのだ。勿忘草。
嫌いな香りじゃないはずだ。
実際につけてくれた時は安心した。気に入ったのかコロコロと笑う。
毎日つけるねと笑う君にほくそ笑む。
きっと香水が香るたびに君は私を思い出す。
勿忘草
「この花が好き」
そう云ったのは誰だっただろうか。母親だったか、それとも隣に住んでいた幼馴染だっただろうか、はたまたクラスが一緒だった影の薄い同級生だったか。小さな花弁が北風に吹かれて、今にも散ってしまいそうなか弱い見た目をしているが、以外にも図太いらしく花弁一つ土の上には落ちていない。耐寒性に優れた花ではあるが、花期は春頃だったように記憶している。
めずらしい。
しげしげと眺めて、はて、どうしてそんなことを知っているのかと不思議に思う。園芸に興味はないし、花に関心があるわけでもない。なのに、なぜ。
「花言葉って知ってる?」
ああ、そうだ。誰かがこの花を育てていたのだ。しかし、それが誰だったのか思い出せない。致命的だ。姿も、声も、覚えていない。だというのにこの花に感する記憶だけは一丁前に覚えている。
勿忘草、花言葉
調べてみるとすぐに検索結果が出てきた。あっ、
勿忘草。花言葉は、「真実の愛」「誠の愛」
それから「私を忘れないで」だ。
初めて見た時、えらく控えめな花の癖に重たい愛を望んでいるなぁと思った。人は忘れゆく生き物だ。懐かしい、と思う程深く遠くで忘れてしまう。いつかの旅出を共にして、どこかの海辺へ流して一人立ち直り、新しく出会い生きた者と進み行く。
それなのに、忘れないでだなんて、大層な重い思いなことで。
俺は、人に執着しない。嫉妬も勿論しない。
人は変わりゆく生き物だからだ。
幾ら俺が望んでも、人は変わっていく。
呆気なく、手のひらで掬った砂のようにサラサラと隙間から零れていくように、俺がどれだけ囲っても、縋っても変わるものは変わる。
嫉妬も執着もしない。できない、が正しいのだろうか。
でもまあ寧ろ、俺以外と幸せになってくれるなら、大満足だ。
俺なんかじゃ、幸せに出来ないってことは最初から分かってたから。
「幸せになりたいよ」
そう零すお前は、相も変わらず薄っぺらい身体をしていた。
白く細長い手には何本もの管が繋がっているのが見えて、俺はただ座ってお前の手を撫でる。
何も出来ないのだ。俺には、何も。
「お前の、幸せって何」
酷い言葉かもしれない。けれど、本当に俺には分からないのだ。
「あはは、酷いなぁ。何度も言っているじゃないか。君に、愛されることだよ」
「またそれか」
「またそれかっていうか、これだけしかないっていうか」
はぁ。
俺の溜息に、ピクリと肩を揺らしたのが見える。細い指が、俺に触れようとするから、思わず「止めてくれ」と呟いた。
「ごめん……」
「……俺は、恋愛感情が分からないんだ」
「うん。知ってるよ。恋愛に関する感情や記憶が無くなる病気でしょう」
「あぁ。まだ、治療方法が見つかってないんだ。だから、見つかるまで、待ってくれないか」
「はは、私の肺炎がこれ以上酷くなる前にお願いするね」
態とらしくコホコホ、と軽い咳をしてみせて微笑んだ。
それが、最期に見たお前の、笑みだった。
今、俺の手の中にあるのは、多分お前が吐いた花。
肺炎で苦しい中花吐き病にかかれば、体への負担は相当あったハズなのに、気付かなかった俺が許せない。
「勿忘草」だなんて、重い思いを置いていきやがって、って文句を言ってやりたくなった。
けど、もう、お前は居ない。
こんな小さな花を置いて、どっか行っちまった。
あぁ、いや。俺が、殺したんだろうか。
お前の幸せになれなかったから、お前を幸せに出来なかったから。
ゴホッ……
いきなり体が地面に引き寄せられたように重くなった。と、同時にとてつもない吐き気に襲われる。
胃から迫り上がる何か。
喉に近づくにつれ、形になっていくのが分かった。
あ、吐く。
我慢する余裕すらなく、喉を通り、口を抜け、床にボトボトと、何かが落ちていく。
それを見て、目を見開いた。
「なぁんだ……。俺も大概、お前が好きだったってか」
俺が吐いたのが、お前と同じ名前を持つ「紫苑」だなんて、皮肉なもんだな、全く。
───────
恋愛感情消失病(適当〜な創作奇病)の唯一の治療方法は、別の奇病にかかること。
花吐き病は、吐かれた花に接触して感染する。
片思いを拗らせると発症する訳で、お前は俺のことが好き。で、俺も実はお前が好き。
俺は恋愛感情に関連するものが無くなるから、気付かないのよ。でも、最後、お前の最期の花に触れて感染。
無事に恋愛感情消失病は治るのね〜Happy〜!
はは、でも好きな御相手はもうこの世には居ないよ。
恋をして花を吐き、実らなければ死に至る病。
存在すれば美しくも残酷でしょうね。きっと。
私は、花を吐くことはないと思いますが、吐くのなら美しい花を吐きたいものですねぇ。
花へ自分の想いを込めて、贈る。
青く小さな花たちが、あなたの胸で咲いている。
私を忘れないで、なんて花言葉、あなたはまさか知らないでしょう。花にはめっぽう疎いあなただから、こうしてそっと贈ったのです。
そう、とてもきれいな花だから、あなたへ贈ったのです。