『冬晴れ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
冬晴れ
冬に晴れると気持ちがいい。
私は寒さに強いから庭で愛犬と戯れるのは凄い好きな時間。
からりと晴れた空。
冷たい空気はほんのり甘く感じた。
「いい天気だよなぁ、ほんと」
へらへら笑っていれば、頭上から拳が降ってくる。ばきっ。目の辺りを殴られたけどまったく痛くなかった。
嘘だ。めちゃくちゃ痛い。容赦なく殴りやがって、いてぇな。
ばきっ。ぽた。ばきっ。ぽた。
「……泣くのか殴るのか、どっちかにしろよなぁ」
一週間ぶりの冬晴れの日、俺は最期を迎える。
息を吸うたびに傷が引っ張られて激痛をもたらし、吐くたびに温かい血が流れ出ていく。
背中側の湿った感触から、絶対に死ぬとわかる。助かる希望も可能性も、残念ながらありはしない。
「ふざけんな。お前、お前、絶対に帰るんじゃなかったのかよ」
「ははっ、俺、知ってるぞ。死亡フラグってやつだ」
自分で死にますって言ってたようなもんだよな、あれ。今思えばずいぶんとバカなことを言っていたと思う。
もう二度と戻れるはずがないのに。妻子の待つあの家に。小さな手が俺の頬に触れる。母になった妻の慈愛に満ちた笑顔。
あぁ、思い出したら、止まらない。
帰りたい。帰りたい。戻りたい。戻りたい。
もう二度と会えやしない。触れることはできない。
娘の成長も、妻のたくさんの表情も、なにもかも知らないまま、俺の時は止まる。
あ、とりーーー
手を空に伸ばす。何を掴みたいんだろう。
理解する前に、俺の意識は途絶えた。
親愛なるあなた
おはようございます
今朝の目覚めはどうでしたか?
わたしの方は相変わらず
朝は低血圧でなかなか起きれないし、
朝ごはんは食欲がわかず食べられないのです
ところで、窓の外はご覧になりましたか
雲ひとつ無い冬晴れですよ
今まで色んな空を見てきましたが、
こんなにあっぱれな青色は見たことがありません
こんなに見事な冬晴れの下にいると、
そのまま溶けて消えてしまいたくなります
なんて
こんなことを言ったら、
あなたはどんな顔をするのでしょうね
その大きな目を見張って、
私を心配してくれますか?
ねえ、わたし、今日のために
たくさんのてるてる坊主を逆さまに吊るしたんです
でも、悉くわたしの願いは叶いませんね
どうぞ笑ってください
どうせ叶わないのなら、
逆さまのてるてる坊主にもうひとつ願い事を
あなたの旅路が最悪でありますように
旅先でこっ酷い目に遭いますように
そして、
どうか、
あなたの心だけでも
わたしの元に帰ってきてくれますように
冬晴れ
冬晴れって不思議だ。
なにもかもリセットされて、
清々しい気持ちになる。
夜明け
マンションのエントランスを出ると、空はまだ夜で、静かな青信号の向こうに浮かぶ鈍色の輪郭が、かすかに、赤く色づきはじめていた。
振り返ると月は夕焼けの位置にあって、
昨夜見た金星の位置には、それとは違う何か明るい星がポツリと浮かんでいた。
寒かった。
同じくらい静かだった。
オレはロングコートの襟を立てて、時折吹いてくる冷たく重い風に耐えた。
トラックが荷台を鳴らして青信号を通過していく。
そのあとを目で追うと、いつのまにか鈍色だった雲は底面から炎上をはじめていて、それが朝焼けのはじまりだった。
#冬晴れ
冬晴れ
寒さの中の太陽は
暖かさと雪解けをくれる
綺麗な青空は
雪景色の中によく映えて
昔に一度だけ見れた
樹氷と青空を思い出す
この時期は天気がいいと
それだけで嬉しくなる
冬晴れ
わたしの住む地方は冬は乾燥して晴れの日が多く、洗濯物干しを満喫できます。育った街では味わえなかったことです。
先月、冬晴れのベランダで洗濯物を取り込んでいたら、東の空に透けたお月さまが。
知らんぷりして出でた感じでね、
笑ってしまいました。
乾燥した冬晴れ、わたしは好きです。
自分の知識不足で「冬晴れ」なんて言葉今初めて知りました。
調べてみると冬場のよく晴れた穏やかな日という意味らしい。
日本で何年も暮らしていたけれど意識していなかったことにも意味ってあるもんだな。日本語って独特だけど綺麗ってあらためて感じたよ
良く見られたいっておもったから
毎日楽しそうにしてるよ。
優しい人だって思われたいから
平気で思ってないこと
簡単に言葉にするよ。
だから毎日毎月、毎年
虚しくなるのか。
誰かの隣にいたくて
好かれるためだけに作る自分は
どこまでも利己的だ。
誰かのために楽しそうにしてるんじゃない。
誰かのために言葉を作ってるんじゃない。
全部全部、自分のためだ。
こんなんじゃいつまで経っても
優しい人になんてなれないよね。
澄み切った空気は少しだけ舌先が痺れるような味がする。呑み込む唾液も温度がない。通り過ぎる笑い声を遮りたくて冷えきった耳朶を守る素振りで耳当てを装着した。ホッと息を吐く。溶けていく白い靄は塵ひとつない空気を汚しているようで気分がいい。自分の存在をようやく主張できた気がしたのだ。ちっぽけな解放感は足取りを軽くさせて、子供のように霜柱を踏みこませる。柔らかな氷の砕ける音は耳あてが邪魔で聞こえない。けれど靴裏から伝わってくる、サクサクと潰れていく感触だけでも十分に満たされてしまった。見慣れた光景を忘れたようにはしゃいで、子どもの自分を取り戻していく。なんとなく耳当てを外した。積もった雪を集めて笑い合う子どもたちの声は優しく鼓膜を揺らす。耳朶は冷たくなっていたが寒くはなかった。ゆったりとした時間を味わいながら漂うようにまた歩いた。
「冬晴れ」
凍えるような季節の中に、
仄かに淡い暖かさが身に沁みるように、
僕の心も淡い暖かさが包んでくれる。
昨夜降り続いた雪は朝には止んでいた。
窓から外を眺めると、あたり一面真っ白である。
日が昇りキラキラと輝いている。
その真っ白な雪の上を黒い影が走った。
黒猫だ。
まだ誰も踏んでいない雪の上に小さな足跡が残る。
穏やかな冬の朝だった。
テーマ:冬晴れ #54
「まだまだ寒いなぁ…」
私は手を擦って縁側に座った。
鳥たちのさえずりが遠くから聞こえる。
「こんな日にはやっぱり、熱いお茶が飲みたくなるねぇ…」
私は横においた湯呑に入ったお茶に手を付けた。
「はぁ……。あったかい」
私は湯呑を包みこむとふぅ~っと息を吹き、湯気を飛ばす。ふわふわと舞う湯気が私の視界を曇らせる。
ズズズッと音を立てて飲むお茶は、格別だった。
『なんや…。ひーちゃん。やっぱりここにいたのか』
そんな声が聞こえた気がして、思わず横を見る。もちろんそこには誰もいない。
「おばあちゃん」
私は呟いた。ひーちゃんと私のことを呼ぶのはおばあちゃんだけだった。私の名前は玉城(たまき)なのに、おばあちゃんはひーちゃんと私のことを呼ぶ。
鳥の雛のような大きい目をしているから、とおばあちゃんは言っていた。
そんなおばあちゃんはもうこの世にはいない。
半年前、この世を去った。でも私はまだ、その現実を受け止められずにいた。
まだおばあちゃんが近くにいる気がする。
まだおばあちゃんは生きていて、ひょっこり出てくるんじゃないかって思っている。
「あ、今日は冬晴れやなぁ…」
私は独り言を大きく呟く。
『冬晴れ』という言葉もおばあちゃんに教えてもらった。おばあちゃんは私のこと見てくれているんだろうか。こんなに者家の殻になってしまっている私を…。
私はもう一度、お茶をズズッと飲む。
視界が曇った。
全く、湯気は私の視界を曇らすのが好きやなぁ…。
「消えるならこんな日が良いな」
彼女はベランダで煙草をふかしながら言った。
外は朝日に照らされた、雪が輝いていて、
「雲海みたいで綺麗じゃない」
それはいつか乗った飛行機からの景色に似ていた。
「天国の景色もこんな感じなのかな」
感嘆で漏れた息が白く輝く、
魂に色があるなら、きっとそれはこんな色だろう。
「綺麗でもやっぱり朝は冷えるね」
そう言って笑う笑顔には、
一つの陰りすら見つけられなかった。
「でも、こんな朝が好きだな」
私も冬晴れの朝が好きだよ。
「日の有り難さがわかるじゃない」
そうだね、
でも、寒くないと、
暖かさの価値がわからないのは、
悲しいことだと思うよ。
「こんな朝に思い出して」
笑顔で吐いたタバコ混じりの白い息は、
白銀に輝いて、
それは命そのものに思えた。
#冬晴れ
綺麗だから言葉にはしないでおこうと思う
『冬晴れ』
夜半から降り続いていた雪は、朝にはすっかり晴れてカーテンから漏れる朝日が眩しい程だった。
キン、と澄み切った空気を吸い込むと、肺が少し痛い。急いで暖房のスイッチを入れ、思いっきりカーテンを開けると、さんさんと降りそそぐ陽の光に案の定、結露が輝いていて憂鬱な気分になる。
(また拭き掃除…)
晴れ渡った空の青さが実に憎々しい。
どんなに晴れていても洗濯物が外に干せるでなし。
冬晴れは、結露との戦いという意味で中々喜べない――――日中暖房代が浮くのは嬉しいが。
(ほっといてカビるのもヤだし)
朝のひと手間、私は、急いで乾いた布で窓を拭きにかかった。
『冬晴れ』
「今日もいい天気だね~」
彼女が空を仰いで嬉しそうに笑う。
「そだね。」
今日から仕事始め。久しぶりに出勤し、姿勢を正して恭しく年始の挨拶などをして回る。
後輩である彼女にも形式的に挨拶して、お互いにクスッと笑った。正直、周りにはもうバレているが、そこはもう皆大人なので、温かく見守ってくれている。
ランチに二人で外へ出て、冬のシンと冷えた空気を深呼吸する。彼女の嬉しそうな笑顔の輝きは、冬晴れにも負けていない。
「少し散歩してから戻ろうか。」
「うん!」
こうしてただ肩を並べて歩くだけで、自然と気持ちが安らいでいく。年始早々の急務の束の間に、ひと息つけるだけでも楽になる。
はぁぁ、と吐き出した白い息に手を擦り合わせ、そっと彼女の手を握った。
目を合わせて微笑む彼女に微笑み返す。
ひとときの冬の散歩道に、あたたかな癒しを貰った気分だった。
数週間ぶりの晴れがやってきた。
少し雲がかっている、何とも言えない晴れ。
外はまだ雪が積もっていて、まだ溶けきっていない。
メッセージには彼からの新着が一件。
「久しぶりに会わない?」
久しぶりにって言うけれど、彼の会うはきっと、
最後にする"会う"だと思う。
彼が浮気していることは、薄々気付いていたのが
確信に変わっていた時期だった。
スマホと財布、彼の他の浮気の写真も持って、
「じゃあ、いつものカフェで。」
メッセージにそう入れて、私は家を出た。
『雨を忘れて』
渇いた季節がやってきて あかぎれ滲みるアルコール
土埃が舞っている もぐらが忘れたサングラス
雨を忘れた空を見る 僕らは何に期待してるんだろう
思わず三度見の渇水の空
冬晴れ
肺いっぱい吸い込んだ
朝の冷たい空気
ランチへ向かう足の
背中をそっと押す北風
澄みきった暗闇に
ハッキリと浮かぶ星と月