『入道雲』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ある古い書物の一節にて。
入道雲の上には巨人が住むという言い伝えがある。
それは黒いダイダラボッチのような黒い巨人だ。
その巨人は悪さはしない。たまに風を起こしたり、入道雲からひょっこりと顔を出して下の世界をみたりする。人を助けることもある。
昔は神として崇められた。最近では驚かされて、怖がられる存在となってしまった。
この巨人は見た目とは裏腹に、心の優しい巨人なのだ。
ー オリジナル小説・ドゥコ作中の書物ノン・ドゥカ・ドゥコから ー
「入道雲ってさ 夏にも多いけど 大雨の前にも多い雲だよね」
「夏もワクワクだし、雨も部屋でごろごろできて良いよねぇ。」
「でも夏は暑いし、雨の日はなんにもできない。」
「結局、どの道を選んでも不幸も幸運もある時があるんだよね。」
「そんな状況でも生きてける君には尊敬しちゃう、な」
「表向きはワクワクするけど胸焼けするくらい暑苦しい方か
ひんやりしてて何もできないかもしれないけど落ち着けるような方、
君はどっちを取るのかな?」
窓から覗く入道雲を眺めながら
動かなくなった俺の彼女の体は
口だけを動かして俺に語りかけてきた。
「お前となら、どっちでもいいよ。」
溢れ出る涙と共に、君の少しずつ閉じる瞳。
「入道雲、最後に見れてよかった。」
「「愛してる」」
生気の無くなった頬に
静かにキスをした
#入道雲
「あっつー、」
近くのコンビニで買ったアイスはこの暑さでぽたぽたと音を鳴らして地面に落ちる。
最後の一欠片を口に含んでから見た空は白い入道雲が辺り一面に広がっていた。
今年の夏も、似たような夏。
日射しにうんざりして、デケェ雲見て、ひまわり畑を横目にして、アイス齧りながら、独りきりの家に帰る。
よく、考えることがある。この日常を壊す方法。
例えば、おまえに「好きだ」と告げてみるとか。
でも、壊せないままでいる。この手で終わらせるまでもなく、日常なんてものは、どうしようもなく壊されてしまっているし。
ただ、オレは、かつての夏の残りカスを握っている。
入道雲。
入道雲を
撮ると
迫力があるなあって
思ってた。
でもその中では
土砂降り。
梅雨早く明けて。
外のイベントが
増えてくから。
「入道雲」
「魚」
「え?どこにいるの?」
「ドーナツ」
「ん?食べたいの?食べる?」
「綿あめ」
「綿あめは流石に持ってないなぁ」
「かき氷」
「鞄に入れてたらぐちゃぐちゃになっちゃうよ」
「雲」
「えー。気づいてくれたの?この雲ストラップ!」
「怪獣」
「ウギャア!」
「さっきから何言ってるの?」
「あんたこそ何いってんのよ」
「雲だよ。ほら、あれが魚。そんで、ドーナツ。横に綿あめ、かき氷。でも、これ全部雲なんだよなぁ」
「ふーん。怪獣は?」
「怪獣は本当」
「あっ、ホントだ。……ぎぃやぁぁぁ!」
空を見上げれば入道雲。
大きな綿あめみたいな入道雲。
端っこでもいいからちぎって食べてみたい。
甘い甘い入道雲。
入道雲。
漫画に出てくるみたいな
入道雲の中に入ってみたかった。
すっぽり抜けたら何があるか
ワクワクしてた
コーンとスプーンで
すくってソフトクリームが
出来たら最高だよね。
『入道雲』
あの雲……中に絶対ラピュタがあるネ!
もくもくと空に浮かんでいる入道雲。
本格的な夏が始まって、
私の青春のページも今めくられたみたいだ。
#入道雲
空を見上げた。
窓から。
あのでかい雲はなんだろうか。
あぁ入道雲だ。
私の心も入道雲の様に
広かったらなぁ
お題【入道雲】
暑い光に包まれながら青い青い空を見上げる
そうしているだけでも、首筋にじんわりと汗がにじむ
デジャヴ…。
だんだんと、イライラしてきた
こっちは大変な思いしてんのに…。
お前は気楽でいいよな、ただ浮かんでいるだけでいいんだから。
でも、なぜだろう
そう感じることができる自分を、誇らしくも思えた…
お前にはできないことだ。
ぼくは、初夏の太陽に見守られながら熱せられた歩道を見据えた
その首筋には、汗がにじんでいる
「あ、入道雲だ!」
目を輝かせて言った。
「早く建物の中に入るぞ」
「えー」
頬を膨らませてるのがかわいい(ノロケ)
#入道雲
入道雲は綺麗だけど、終わった後、土砂降りになるよね。
人の心も同じだと思うんだ。
綺麗だった心にだんだんヒビが入ってしまう。
嫌な心になってしまうから。
だからこそ今を大切に生きてみようと思うんだ。
ほろ苦くて癖になる
風にたなびいた煙草が入道雲に滲んでいる
ちりちりと音をたてずほろりと崩れてゆく
鮮やかにめらめら沸き立つ掌におさまった熱
濃い青が灰に沈む、苦い味を頭に殴り付けるように
また貴方のことを考えている
煙草一本分、悔やみきれぬ愛を憎んで
灰皿でちいさな炎をにじっている
子供の頃は夏の日差しに照らされた
眩しく光る海の遥か先の空で
おまえさんがどんどん膨らんで行くのを見ながら
よく一緒に遊んだっけ
たけどどうだい?
近頃のおまえさんったら
太平洋のこっち側からじゃ
山のある方に越しちゃったじゃないか
なんだか性格も昔と変わっちまったね
悲しくなるよ
もうあの頃には戻れないのかい?
《 入道雲 》
入道雲
夏だな
それより暑いアイスでも食べたいや
日差しが眩しくて僕は空を見上げた
雲だ。大きな入道雲
なんだかずっと見てたらわたあめに見えてきた
そういえば来週祭りがあったけ?
あの子と行けたらな
入道雲
「雨の匂いがする」
真っ青な空を彩るように綺麗に浮かんでいる、無限に綿菓子だけ食べられそうな雲を見上げて君は呟く。
首を傾げた。僕には意味がわからなかったからだ。
「雨の匂いってなに?」
二つに分けられるアイスを君と分けながら蒸し焼きにされそうな蒸し暑い通学路を並んで歩く。
君は自転車を歩いて引いて、僕をみるとクスッと笑った。
「知らないの? 人生損してる」
そんなに大事か? と一瞬過ぎった疑問を首を払って忘れる。君はたまに不思議なことを言うからだ。
僕が考えが及ばない何かを知っていた。
「湿ったちょっと冷たい風が吹くんだよ。匂いも草や土が湿る匂いがする。通り雨が来るかも」
「じゃあ早く帰れよ。アイスなんか食べてないで」
君はまだ半分くらいあるチューブ型のアイスを吸いながら、どこか歌い出しそうに笑う。
「雨の中、チャリをぶっ飛ばして帰るのも楽しいよ。家の洗濯物VS雨の勢い。今日は洗濯物が勝つ」
「なんでわかるんだ?」
君はフフンと誇らしげに鼻を鳴らした。ドヤ顔というやつで、不思議なことを言うときに君がよくする笑顔。僕は嫌いじゃない。
「勘。野山で暮らしていたからわかるよ。この辺の匂いは故郷とは少し違うけど」
今年の春に転校してきた君はちゅーっとアイスを吸いながら空をみた。早く降れ、とどこか期待している目で戦いを待ち遠しく感じているような、そんな目つき。
「入道雲でわかるもんじゃないか? 雨降るかもなぁって」
僕も同じように空を見て呟くとふくらはぎに弱い衝撃があって君に振り向く。蹴られたみたいだ。ムスッ面をして僕を親の仇みたいに睨みつけてきた。
「つまんないなお前は。もっと日々に彩りを感じて生き給えよ」
また変な口調になったな、とだいぶ慣れてきた古くなったり最新の流行語になったりする君はフンッと自信満々に鼻を鳴らした。
「じゃあ勝負しよう」
「何を?」
珍しくキョトンとした君が振り向いてきた。本当にわからないような表情なので、少し優越感を覚えてしまう。
「俺は雨の勢いに賭ける。勝負は君の家まで。僕はダッシュするから、君は自転車でも走るのでもどっちでも選ぶといい」
考えるように目を瞬いて、君はニカッと春の太陽みたいに笑った。賭けに乗ってきた、とまた少し優越感を覚えてしまう。
「いいね、ダッシュならイーブン。受けて立とう!」
「っし、行くぞ、よーい、」
「「ドンッ!」」
走り出した青空を入道雲が覆い隠してきていた。
「入道雲」
白き影が空に立ち塞がり、黒き影が前を塞ぐ。
空のアート。
おんなでも おとこでも
なかった
遠い遠い夏の日
笑っていた わたしは
何者でもないということを
楽しんでいた
白く輝く入道雲は
うれしさに ふくらんで
嘘偽りのない日々に
いつも明るく光っていた
あの日々には
まだみんながいた
いつの日か
思い出がこの先の
わたしを支えてゆくことを
子どものわたしは知らない
#入道雲