『優しくしないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
優しくしないで
「優しくしないで、私もう子供じゃないんだから!」なんてふとお父さんに18の頃言ってしまった。
でも、本当は嬉しかった
あの頃は嬉しくて嬉しくて浮かれてた 当然のように
でも、今頃後悔しても遅いって分かってる
でもお父さんは最後まで優しくて
もうわずか2ミリくらいの瞳で 父子家庭の私に
「お前に今までさんざん迷惑かけて、悲しませてごめん。許しておくれよ最愛の娘」って
迷惑かけたのも悲しませたのもわたしだ。ごめんなさい、ごめんねお父さん
優しくしないで
「××〜?」
俺を呼ぶ声がする。
返事をしたいけど、したくない。俺がここにいるって知られたくない。公園の遊具の中に隠れているダサい姿を見られたくない。
分かっている。こんなところにいないで、さっさと家に帰った方がいいって。雨も降り出してきた。小雨のうちに帰った方が被害が少ない。
そう思っているうちにだんだんと雨粒は大きくなってきて、結局俺はここから動けなくなった。
いつもそうだ。
分かっているのに動けない。足が固まる。今回だってあんな最低なヤツ、とっとと別れた方がいいと思っていた。周りにもそう言われていたのに、ずるずると関係を続けてしまった。
その結果、他に本命が出来たからと捨てられた。
「あー、もうほら、帰ろうよ」
だというのに、コイツは何で俺を迎えにくるんだ。お前は関係ないのに。いつもそうだ。俺の愚痴を延々と聞いて、最後に「それでも好きなんでしょ?」と笑うのだ。
そうだよ、好きだよ。好きだから別れたくなかったんだよ。
「雨、強くなるよ」
周りがどれだけアイツのことを否定してきても、コイツだけは何も言わなかった。アイツのことを肯定することもなかったけど。
「帰る……」
「ん。立てる?」
差し出された手を掴む。
優しくすんなよ。好きになるだろ。
なんつって。
幼馴染のコイツだけは絶対ない。
「××?」
「なんでもねぇよ。あーあ、酒飲みてぇ」
「いいじゃん、飲も飲も!」
するりと組まれた腕は振り解かない。いつものことだからな。
【優しくしないで】
そんな顔で見ないでよ。君の良い笑顔とか良い声とか見たくないし聞きたくない。結局同情だったんだろ。眼前に映る広告に対して心の中で悪態をつく。
「コンビニでも寄って帰るか。」
このお酒はいつもお疲れ様のため。このおやつはないとやっていけない気がしてしまうから。鍵の開ける音。時刻はとっくに深夜一時を回ってしまった。
「おかえり。」
「ただいま、美味そうなお酒じゃん。」
今日、あったこととか。聞かせたいこととか。いつからかそんな会話もなくなった。もしも、時計の針が巻き戻せるならそんなことにはさせなかったのに。笑顔でただいまって言って酒飲みながらお笑いに爆笑して。そんな風に出来るほど心に元気はない。
「母さんから連絡来てた。元気にしてるかって。」
「まぁ、元気なんじゃない?」
それ母さんに言いなよ、と笑われた。この人は気にしてないんだろうか。俺が言ったこと。無音にならないためのテレビが場を明るくしようとする。全く、優しくしないでほしい。
「まだ、怒ってんの。私がアンタ連れ出したこと。」
「全然。でも、連れ出したんじゃなくて誘拐でしょ。」
真面目な顔をしながらボケるなと言われて小突かれるのは何回目だろう。笑顔が不自然になってしまったのは誰のせいだろう。あの時、連れ出してなんて言わなければ君は今頃幸せになっていたかもしんないのに。
「相変わらず、この人と姉さんって顔似てるね。」
「そんな短期間で顔変わってたまるかって。あと、そんなこと言うのアンタくらいだよ。無理に戻れとか言う気ないから。ずっと、ここにいてもいいから。」
姉さんと呼べと言った若いおばさん。その優しさに甘えただけの俺。反抗期の時からうちの親は少しおかしい気がするなんて思い始めちゃって。芽生えた嫌悪感なんてものは収まることを知らなかった。
「よく、家出ること許してもらえたよね。甥っ子誘拐するような人なのに。」
笑って見せると少しだけ後ろめたそうに微笑んだ。実の姉が少しだけおかしい気がすると思っていたって誘拐した日に車の中で教えてくれた。
「いやぁ、私生活力ないからかなぁ。」
「はぁ、小間使いにしてらぁ。でも、同情なんだろ。」
心がチクりと鈍い痛みを訴えた。あの女優さんに似てる姉さんほとても美人できっと俺がいなきゃ恋人だって出来てた。
「小間使いにしてない! と思うんだけどしてたかな。あと、最後の方聞こえなかったんだけど。」
ほっとけないから仕方ないじゃんか。可愛い甥っ子にそんな顔させたくはないからさ。ぎこちなくでいいから笑ってよ。同情とかじゃなくてただ、幸せになれよって呪いとエゴじゃどうもダメらしい。
私が風邪をひいたから、
あなたは楽しみだったライブを蹴った。
俺はいいから、元気出して。
そう言って、あなたは安心させるように微笑む。
私が料理下手だから、
あなたは疲れた身体で火を操る。
俺は大丈夫だから、ゆっくりしてて。
そう言って、あなたは少し照れながら微笑む。
私がぼんやりしていたから、
咄嗟に庇ったあなたは怪我を負った。
見た目ほど痛くないよ。
そう言って、あなたはベッドの上で微笑む。
私が弱すぎるから、
生きているだけでいいよ、とあなたは言う。
全部俺に任せてくれていいから。
そう言って、あなたはまた微笑む。
しんどいくせに。
無理してるくせに。
あなたはいつも笑ってくれる。
その目の奥に映る人の形をした悪霊が、
私はたまらなく大嫌いだった。
貴方に優しくされる度、私は私が分からなくなる。
自分が惨めで、何もできなくて、最低なヤツだと思ってしまうんだ。
だから、
だから私に優しくしないで。
自己肯定感が低いあまり素直な褒め言葉とか肯定の言葉とか全部お世辞だと思っちゃうんだよね。でも褒められたいし認められたいし、優しくしないでなんて思えないのはやっぱ私も人間なんやなって。
【優しくしないで】
「た、頼む、もうそんなに優しくしないでくれ!」
俺は後輩に向かって手を合わせ、懇願した。
「なーに言ってるんですか先輩、こんなに愛らしい存在、誰だって優しくせずにはいられませんよ」
後輩はにこにこと笑いながら、残酷なほどに優しい手つきで撫でまわす。
「だ、だめだ、それ以上されたらっ!」
「先輩、声が上ずってますよ〜。なにがだめなんですか〜?」
「ミーちゃんが、俺よりおまえに懐いちゃうだろーっ!」
ミーちゃんは俺の大切な家族だ。世界で一番可愛い一歳。もうすぐ二歳。三毛猫だから、マイ・プレシャス・エンジェル・ミケコと名付けた。愛称はミーちゃん。家族になって数ヶ月、まだお互いが慣れなくて、俺とミーちゃんのあいだにはぎこちない距離があった。最近ようやくちょっとだけ撫でさせてくれるようになったミーちゃんはいま、後輩の膝の上で丸餅のように丸くなっている。後輩の優しい手つきで顎や背中を撫でまわされ、とろんと瞼を落として夢心地だ。
俺はミーちゃんから遠く離れた地で、カメラ越しの光景に歯がみすることしかできない。
「そんな、二十代の若者にあるまじき怖い顔で睨まないでくださいよ。そもそも先輩みたいないかつい声と体のコワモテ野郎は、猫ちゃんの好みじゃないんです。私みたいな、声も体も柔らかいお姉さんのほうが好きに決まってます」
「だからって、ミーちゃんの心を奪わなくても!」
「いいじゃないですか、しばらく私がお世話する子なんですから。ほーらミーちゃん、百戦錬磨のお姉さんが、たーっぷり可愛がってあげますからね〜」
「お、俺のミーちゃんが、悪い女に誑かされるー!」
俺はホテルの一室で、ノートパソコンに向かって頭を抱えた。
ミーちゃんと家族になってからは、外泊の必要な仕事はもう絶対に受けるもんかと心に決めていた。だが、どうしても断れない出張の仕事が入って、大切なミーちゃんを後輩の家に預けざるをえなくなった。後輩は実家で猫を飼っていたこともあり、猫の世話には慣れている。だからこそ頼んだのだが、あそこまで猫の扱いに長けているとは、誤算だった。
この仕事、一刻一秒でも早く終えて、さっさとミーちゃんのもとへ帰らねばならない。これ以上、後輩にでろでろに溶かされたミーちゃんを見たくない。俺が後輩のアパートの扉を叩くまで、どうか、俺を忘れずに待っててくれ、ミーちゃん!
俺は頭いっぱいにミーちゃんのことを思い浮かべながら、柱の陰で銃を構え、ターゲットに照準を合わせた。
あいつはまだ俺に気づいていない。犬のように這いつくばって、昨晩の獲物の残りを貪っている。
ここは廃病院。化け物が出演する怪談には、うってつけの場所だ。だが、目の前で人間を食らっている化け物は、ばかげた怪談ではない。B級映画の撮影でもない。ばかばかしいほどに、現実だ。昨晩も、俺がノートパソコンの前で頭を抱えているあいだに、肝試しのガキどもが犠牲になった。生き残ったやつの証言のおかげで、この場所が割りだせた。
人間とそっくり同じ姿をして、牙と爪だけが異様に発達したあの化け物は、〈外道〉と呼ばれている。外道は人を襲い、血を啜り肉を食らう。多少知恵が回るから、日中は人目につかないよう、こうした廃墟に隠れている。
あいつら外道を見つけ出し、殲滅する。それが俺の仕事だ。
外道は連鎖する。外道に噛まれて生き残った人間が、外道に変化することがあるのだ。たちの悪い――いや、そんな言葉じゃ生易しい、あまりにも邪悪すぎるウイルス、のようなもの。だから根絶やしにしなければならない。しかし、その命を奪うには、銀製の弾丸を心臓に直接撃ちこむ必要がある。俺のように訓練された専門の外道ハンターでなければ、成し得ない仕事だ。
今後狩るのは近場の外道だけ、と宣言した俺にわざわざこんな遠方のターゲットが回ってきた理由なら、心当たりしかない。ボスは知っているのだ、俺が今回のターゲットを絶対に断らない、どころか、他のハンターを押しのけてまで飛びつくことを。ボスは俺の育ての親だから、俺のことをよく知っている。外道に食い荒らされた、俺の昔の家族のことも。
ターゲットがふと顔を上げた。俺が隠れている柱をまじまじと見つめる。――気取られた! だが、俺は真正面からあいつの顔を見たくて、このときを待っていたんだ。
忘れもしない、ずっと追い続けていたその顔。母さんと父さんと妹の、仇。
俺は銃を構えたまま柱の陰から出て、あいつの前に全身をあらわした。
「久しぶりだな。やーっと見つけたぜ」
見つけたのは公安で、下請けハンターの俺は、ボスから情報を聞いてすっ飛んで来ただけだけどな。
ゆらりと立ち上がったあいつが、食事の邪魔をした俺を睨みつける。その眼に、人間だったころの理性は欠片も見えない。
だから、この引き金は、俺が引かなきゃいけないんだ。
「さよなら、そしておやすみ、兄さん」
「ミーちゃん! 俺だ! 開けてくれ!」
「ちょっと! そんなに叩かなくたっていま開けますから! っていうか呼び鈴あるんだから使ってください!」
後輩が不機嫌な顔でさっとドアを開け、俺を引きずりこんでから、素早く閉める。
「み、ミーちゃんは? ミーちゃんはどこだ!?」
「ノックの音にびっくりして隠れちゃいましたよ。愛の力で捜してください」
後輩は冷たくそう言って、さっさとリビングに引っこんでしまう。
「み、ミーちゃん……」
俺はよろよろと後輩の家に上がって、ミーちゃんの捜索を開始した。
バスルーム、いない。台所の戸棚の中、いない。冷蔵庫と壁の隙間、いない。リビングのソファの下、いない。
「まさか仕事終わって直接来たんですか? 怪我とかしてませんよね?」
俺の焦りなど知らぬげに、後輩はリビングのミニテーブルで悠々と頬杖をついている。
「俺を誰だと思ってる」
「ミーちゃんの奴隷にして、一撃必殺最強ハンター」
はい、その通りです。本棚の中、いない。カーテンの向こう、いない。テレビ台の下、いない。テレビの裏、――いた!
「ああ〜ミーちゃん〜」
俺が手を伸ばしたら、ミーちゃんは毛を逆立ててびくっと飛びあがり、ますます奥に引っこんでしまった。
ま、まさか、もう俺のこと忘れちゃったの……?
「なにやってんですか」
後輩があきれ顔で息をつく。
テレビ横から俺を押しのけ、手にした細長い袋を振る。
「ミーちゃん、おやつタイムだよ〜」
とたんに、ミーちゃんがテレビ裏から飛び出してきた。
「俺の愛が、ちゅーるに負けた……?」
「見つけるとこまではできたじゃないですか。あとは猫スペシャリストの私にお任せあれ」
後輩はちゅーるの袋を振って、ミーちゃんをリビングの餌入れまで誘導した。ミーちゃんはミャーミャーと必死に鳴いて、何度も後輩に飛びついている。ああ、俺のミーちゃん……すっかり悪い女に誑かされてしまって……こんなミーちゃんの姿、見たくなかった……。俺はリビングの片隅で、そっと涙を拭った。
ミーちゃんは皿に出されたちゅーるを熱心に舐めきって、口の周りもペロペロと舐めたあと、ようやく俺を視界に入れて、なんだおまえか、という顔になった。覚えててくれてよかった。さきほどの警戒心も解いてもらえたようだ。
「ミーちゃーん、おいでー」
俺の猫撫で声は、耳をぴくりと動かしただけで無視。お腹いっぱいになって眠くなったのだろう、さっきまで後輩が座っていたクッションまでとてとてと歩き、可愛い欠伸をひとつかましてから、でろんと横になる。
ああ、このそっけなさ、いつものミーちゃんだ。たとえ後輩に誑かされていようとも、可愛さに変わりはない。むしろのびのびしててますます可愛い。
このかけがえのない家族のために、俺は心に決めたことがある。
「もう、ハンターは引退する」
「そうですか。ということは、ようやく、目的を果たせたんですね」
ミーちゃんと俺のあいだでちょこんと座っていた後輩が手を伸ばし、俺の頭を撫でまわした。
「辛いお仕事、お疲れ様でした」
「いまの俺に、そんなふうに優しくするなよ……」
「ふふ、泣きそうですね。落ちこんでるときには、猫が効くんですよ」
後輩が笑ってミーちゃんを持ち上げ、俺のあぐらの上に仰向けで置いた。
ミーちゃんは耳をぴくっと動かしただけで、嫌がりもせず、そのまま目を閉じてうとうとしている。
「――っ! は、はじめて、ミーちゃんに優しくしてもらえたっ!」
「いえ、ミーちゃんはただ眠くて、動くのが面倒なだけです。先輩に優しいのは、私だけで充分ですから」
「……え?」
「ふふ、なんでもありません。せっかくなので、今日は引退祝いのパーティでもしましょうか。ちょうど、たまたま、偶然、先輩の好きなお酒があるんですよ」
後輩は俺を誑かしかねない悪い笑顔を浮かべて、弾む足取りで台所に向かっていった。
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5/2お休みしたので、今日は書きました。
次はGW開けの5/8ごろに。
●知らないふり●
最近の私の生き甲斐は、
遠距離恋愛をしている
大好きな彼からの電話。
私の大好きな、
柔らかで優しい彼の声。
優しい言葉。
最近、電話ばかりで、
しばらく会っていないけれど、
ちゃんとご飯食べてるかしら?
今度会いに行きたいなって言ったら、
お母さんが入院中で看病が忙しいから、
私にかまってあげる事ができないから、
ごめん。だって。
ああ、残念。
会いたかったのにな。
でも、お母さんの看病を
一生懸命頑張る所も大好き!
でも、彼はお母さんの
医療費や入院費に困ってるんだって。
彼と電話をする度に、
…私の貯金が消えていくけど
それは、いいの。
彼のことが大好きだから!
でもね、そろそろ私の貯金が
底を尽きかけているの。
今日も彼からの電話。
大好きな声。優しい言葉。
でも、彼方と…終わりたくないから、
もう…〇〇〇〇〇〇〇。
fin.
#今回のお題は
【優しくしないで】。↑
でした。
『優しくしないで』
そう言われたのは、僕が中学に入学した時。
僕の隣の席になった子は、少し厳しいものの、理不尽ではなく、正論であった。
信頼できる人だと思った。
僕は入学して以来、『優しい僕』を演じていた。
だって、優しいことしか取り柄がないから。
物を譲ったり、提出物を纏めて出すのが、いつからか普通になっていた。
小学生の頃から、『人には優しく』と何度も言われてきた。
自分を押し殺してでも、そうした。
そんなちっぽけな僕がいじめられるのは、何ら不思議では無かった。
ある時はお金。
ある時は暴行・暴言。
お金は持ってくることが禁止されているため、持っていく訳にはいかない。
それに大事な貯金だ。だったら援助交際でもしてろ、下衆。
…と、少し口が荒くなったが、実際その方がいい。お互いに。
それで向こうが勝手に撃沈していけばいい。
暴行はまあ、抵抗するだけ無駄として。
暴言は、語彙力が非ッ常に低レベルだ。
馬鹿とかカスとかゴミとか、本当それくらい。
どっちなんでしょうね、馬鹿でカスでゴミな人は?
…で、いつも心がけているのは『無反応』。
反応を楽しんでる野郎は勝手に消える。
でも、これは根本的解決には至らないだろう。
どうせ他の奴が犠牲になる。
もう少しきつい物がないだろうか…?
それに、やってる奴は対して強くない。
争いは同レベルでしか起きないと聞いたが、本当にそうだと思う。
なんなら、自分より弱そうな奴を探している訳だ。
本当に強いなら、自分よりでかい存在と戦えばいい。
『俺つえー!!』アピールは二次元の話にしろ。
で、本日も放課後、無事にいじめられてた訳なのだが。
そこに、隣の席の子がやってきた。
『てめえら、何してんの?』
非常に低い声でした。ええ。
面倒事を避けたい奴らは速攻で逃げた。どっちが弱者なんだか。
それで事情聴取されまして。『ふーん…。』って感じだったけど。
ちなみに僕が『優しい僕』を演じていたのは、入学式の時からバレていたようで、
『優しくしないで。あんたには優しい以外の取り柄があんでしょ。』
と言われました。本当の僕を肯定してくれた、唯一の人。
証拠も準備万端。
さて、どっちが強いか、白黒つけようか。
『優しくしないで』
優しくしないで/2023.05.03
その優しさにお前の腹の内が見えてんだよ
何を思って近づいてきてるか
丸見えなんだよ
気持ちが悪い
優しくしないで。
あなたがいないと生きていけないなんて、そんな弱い人間になりたくない。
悲しいこと。
辛いこと。
やるせないこと。
耐えられないこと。
何かあるたびにあなたの顔を思い出してしまう。
抱きしめて頭を撫でて「大丈夫だよ」と囁いてほしくなる。
こんな私を作ったあなたが憎い。
▷優しくしないで
優しくしないで、
と言いたい時ってあるよね、
それは私もあります。
1人になりたい時ってあるよね。
優しくされればされる程、自分は
甘くなる。
社会で生きていけない。
そう思う人、いますか
そんな人は
みんなにほどほどに優しくしてあげて
厳しくした方がいいかもだけれど
たまには優しく、ね
/優しくしないで
トン、と地面を蹴った。
正しく言えば、乗っていた椅子を蹴った。
足がつかなくなって、首にかけたロープに体重がかかる。
一瞬の衝撃に脳が揺れて、喉が締まる苦しさに喘いだ。
——また、失敗した。
目から涙が零れた。
苦しくて、痛くて。
藻掻くように空気を蹴ったところで地面に足なんかつかなかった。
意識も失えず、ただ中途半端に首が絞まる苦しさに喘いだ。
後遺症だけが残って生き延びるなんて、絶対に嫌だった。でも、痺れ始めた指ではロープとの間に隙間を作ることも出来なかった。
呑み込めない涎が口から零れ、涙と一緒に床を濡らした。
この世界は、僕に優しくない。
※※※※
目を覚ました時、真っ先に目に入るのは、趣味の悪い黒い天井だった。
「おー、起きたな。相変わらずタフなこった」
「……うるさい」
彼の声に眉を寄せ、声を出す。腕を持ち上げ、拳を作って広げる。
「意識も耳も、運動能力も問題ねぇっぽいな」
深く息を吐き出して持ち上げた腕をベッドに落とした。
「君が、助けたの?」
「あんまりにも苦しそうに藻掻いてたからな。まぁ俺の優しさだ」
「……君からの優しさなんていらないよ」
「でも、あのままじゃ死にぞこなったうえに後遺症残ったぞ」
視線を逸らして溜息を吐き出せば、彼が笑った。
「失敗ばっかり。いつになったら死ねるんだろ」
「さぁな。俺からの優しさは要らねぇみたいだし、殺してやることも出来ねぇしな」
恨めしく睨む。意地悪な言葉に彼に背中を向けて布団を被った。
「お礼なんて、絶対言わないからね」
「期待してねぇよ」
優しくしないで
“もう、これ以上
優しくしないで。”
この言葉を聞いてハッとした。
自分の思いやりだと思ってたことは
相手にとってはただの押し付けだったのか。
優しくしたいから、優しくした。
それはてっきり相手のためだと思ってた。
でも違う、ただのエゴ。
自分のためだったんだ。
なんだかとても後ろめたい気持ちになった。
優しくしないで
そう言う人に限って本当は優しくしてほしい
優しくしたら「優しくしないで」と言う
黙っていたら「心配じゃないの」と言う
どっちにしてもダメ
じゃあどうすればいいのか?
この答えは一生でない
「優しくしないで」
取り繕う優しさになんの価値があるか
本性を知りたい
優しさという仮面を脱ぎ捨てて
人は皆仮面をつけている
その仮面をつけた君に優しくされたって僕は嬉しくなんかない
だからはっきり言う
優しくしないで
いつまでも いつまでも この時間が続けばいいな
変わらずに 二人だけの 今があればそれだけで…
つまらないことで誰かを傷つけて
そんな自分が嫌になって
キミに会いたくなっても強がって
弱い自分に蓋をして
励ますようにキミは怒ったね
言いたくないことをぶつけてくれる
傷つくと知ってても怒ってくれた
そんなキミの優しさに甘えてた
不甲斐ない僕の隣で不意に見せる
沈んだその顔を見てあの日心に誓ったよ
もう使わせないよ その優しさは
せめてキミ一人くらい笑わせる
今よりも強くなるからね
あたりまえのように幸せを感じてた
隣に居るから大丈夫って
忘れるたびにまた求めては
いつの間にか見えなくなって
出会った日の気持ちが蘇る
焦って手探り触れた手は今も
変わらず隣にあることに感謝した
いつまでも いつまでも この時間が続けばいいな
変わらずに 二人だけの 今があればそれだけで…
「第一印象って、対人関係にせよこのアプリでのお題にせよ、バチクソ強烈だと個人的に思うんよ」
昨日は緑茶の日で八十八夜。関係者様毎度お世話になっておりますと、一日遅れで無駄に三つ指などつく某所在住物書きである。
「『優しくしないで』。エモ系のお題よな。初恋のひとにメンタルボッコボコにされた真面目ちゃんに、『あのひと思い出すから優しくしないで』って言わせてみろよ。インスタント3分5分でエモが組めるぜ」
実際、似た物語進行で俺よりドチャクソ上手い投稿見つけたし。物書きはポツリ呟き、頭を抱え、
「エモなお題にはゼロエモで全力抵抗したくなんの」
全力抵抗したくなるのに、第一印象がもう「失恋」だからさ、等々ポツポツうなだれて……
――――――
筆者が「優しくしないで」の題目でエモい展開を書きたくないがゆえの、強引で珍妙な物語。
都内某所、某アパートの一室で、人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者が、ベッドにうつ伏せで寝そべって、職場の後輩たる女性に跨がられている。
「痛……っつ!……あだだだだ!」
「ほらー!ココがイイんでしょ!イイんでしょー!」
マッサージである(健全)
事実としてただのマッサージである(大事二度)
世はゴールデンウィーク。最大9連休のど真ん中。
「腰と首が折れる、頼む、もう少し優しく、」
「しゃらっぷ」
「がッ……ぐ!!」
食費節約――もとい、上司に規格外な量の仕事を押し付けられ、ゆえに自室で休日も仕事を続けているであろう先輩が、心配で、心配で。「心優しい後輩」たる彼女が「真面目な先輩」のアパートを訪れると、
見よ、案の定この青空広がる晴天に、部屋でどうやら徹夜の事務作業中である。
聞けば食事も出来合いで簡単に済ませているとか。
『先輩肩とか腰とか凝ってない?』
「心優しい後輩」は察した。
『ちょっと揉んであげる』
ここで手伝ってはいけない。非情こそ選択肢である。
優しくしては、この真面目で優秀な先輩は、在宅での過重労働を今後も単独で続けるであろう。
例の、上司にゴマスリばかりして、面倒な仕事を全部部下に丸投げする某係長が、悪しき心を改めるまで。
「今度一人っきりで勝手に無理してたら、また肩揉み腰揉みするから。優しくしないで全力で揉むから」
先月から仕事続きの背筋首筋は凝り固まっており、押すたび掴むたび叩くたび、苦痛に悲鳴が上がる。
「懲りた?懲りたよね?もう一回は要らないよね?」
せいぜいこの後揉み返しで、1日くらいぐっすり休養してれば良いよ。その方が体のためだよ。
分からせ業務(健全)を完遂した達成感に、後輩はパンパン、両手を高らかに叩き鳴らす。
「で、ごはんどうする?」
ぐったりの先輩は何も言わない。
ただ、何に対してのそれとも分からず、頭を小さく数度だけ振り、肯定あるいは承諾ないし、降参かもしれぬ態度を、静かに後輩に示すのみであった。
優しくしないで
今日も変わらず学校に行く。
昨日のことは
何もなかったことにしよう。
「おはよ〜昨日ダイジョブだった?やなことされてない?」
昨日と変わらず声をかけてくる。
「うん。ダイジョブだよ。ありがと!」
違う。
「そっか…よかったぁ~!」
ごめんね。
「なんかあったらちゃんと言ってね!私がぜーいんぶっ飛ばしてやるから!」
「……いつもありがと。嬉しかったよ。」
だから
「もう話しかけないで。」
怖いから。
みんなは言ってる。あいつは優しいやつ。
あいつはいつも笑顔で、
席をお年寄りに譲って、
忘れ物をした人に物を貸してる。
でも、ツイッターの裏垢があるらしい。
みんなは言ってる。あいつは嫌なやつ。
あいつはいつも無愛想で、
友達はいないし、
嫌なことを言われたこともある。
でも、この前将来の夢は医者って言ってた。
みんなのこころの中。
見える優しさ、見えない優しさ。