死にたい少年と、その相棒

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  /優しくしないで

トン、と地面を蹴った。
正しく言えば、乗っていた椅子を蹴った。

足がつかなくなって、首にかけたロープに体重がかかる。
一瞬の衝撃に脳が揺れて、喉が締まる苦しさに喘いだ。

——また、失敗した。
目から涙が零れた。
苦しくて、痛くて。
藻掻くように空気を蹴ったところで地面に足なんかつかなかった。
意識も失えず、ただ中途半端に首が絞まる苦しさに喘いだ。

後遺症だけが残って生き延びるなんて、絶対に嫌だった。でも、痺れ始めた指ではロープとの間に隙間を作ることも出来なかった。
呑み込めない涎が口から零れ、涙と一緒に床を濡らした。

この世界は、僕に優しくない。


※※※※


目を覚ました時、真っ先に目に入るのは、趣味の悪い黒い天井だった。
「おー、起きたな。相変わらずタフなこった」
「……うるさい」
彼の声に眉を寄せ、声を出す。腕を持ち上げ、拳を作って広げる。
「意識も耳も、運動能力も問題ねぇっぽいな」
深く息を吐き出して持ち上げた腕をベッドに落とした。
「君が、助けたの?」
「あんまりにも苦しそうに藻掻いてたからな。まぁ俺の優しさだ」
「……君からの優しさなんていらないよ」
「でも、あのままじゃ死にぞこなったうえに後遺症残ったぞ」
視線を逸らして溜息を吐き出せば、彼が笑った。
「失敗ばっかり。いつになったら死ねるんだろ」
「さぁな。俺からの優しさは要らねぇみたいだし、殺してやることも出来ねぇしな」
恨めしく睨む。意地悪な言葉に彼に背中を向けて布団を被った。

「お礼なんて、絶対言わないからね」
「期待してねぇよ」

5/3/2023, 2:37:21 AM