『何でもないフリ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
なんでもないフリ
顔で笑って 心で泣いて
ワタシノキモチ ボロボロヨ
そんなフリなんか出来ません
何でもないフリ
何年か前、父が退職する少し前だったかと思う。母が言った。
「お父さんはいつも同じように帰ってくるよ。仕事から帰って来る時、いつも態度が変わらなかった。……偉かったよね」
父は仕事の愚痴を家で言う人ではなかったので、いろいろあることを察したうえでの母の言葉だった。
自分が家庭を持ってから、その意味がよく分かるようになった。不機嫌を家に持ち込まれると周りはまあまあ気を遣う。
何でもないフリは、父の意地と家族に心配をかけまいとする思いやりだったのだろう。
高校卒業からずっと同じ小さな会社で働き続けた父。有給休暇などなかった。
長い間お疲れ様でした。でも心配をかけないようにされるのも心配なんだよ、お父さん。
#115
パパは悲しいことがあっても何でもないフリをする。
だからわたしも気づかないフリ。
だけど、放っておけないから、いつもよりちょっと優しくしてあげる。
「わたしのチョコレート、パパにあげるね」
「どうしたんだい? 君の大好物なのに」
「甘いものは疲れが取れるのよ」
「そうだな……」
パパは何かに気づいたみたいにふふっと笑うと、チョコレートをぱくりと食べた。
「大丈夫、もう元気になったよ」
わたしの気づかないフリは、まだまだ特訓の余地があるみたい。
『何でもないフリ』
ぼうず、よく聞け
ソフトクリームのクリームが落ちても
顔色一つ変えない
大人になるってのはそういうことさ
知ろうとしないもの
ホントは興味津々で
手を伸ばせないもの
すぐそこにあるよ
なくてもいいと思っているもの
ないものねだりもするのにね
想像してみて
形になるよ
あなたが何でもないフリをして撃ち抜いた僕の左肩が、今年の冬もしくしく痛む。
いっそ心臓に当ててくれたらよかったのに。
あの日僕が取り落としたナイフは、きっとまだあなたの家に転がっている。
痛みよりも強く、苦しみよりも長く、刻まれたあなたの印は癒えない。
さよならと言えないままで、微笑みだけ遺してあなたは去った。
僕が追いかけることを疑いもしないで。
許しと裏切りと愛は同じものだと、僕らは知っている。
「何でもないフリ」
見せてはいけない この動揺を
気づかれてはいけないこの焦りを
さりげなくさりげなく
彼女の視界に入っていかなければ
「俺、美咲に昨日告られたんだけど」
予備校帰り、反対方向の美咲の背中が曲がり道に吸い込まれると、彼は言った。さっきまで三人で話していたときの、二人の妙な気まずさに、何かあるのではと思ってはいた。
「そうなんだ。付き合うの?」
少し不機嫌なような、突き放すような物言いになってしまったかもしれない。
「考えとく、って言った。でも明日にでもオーケー出すつもり」
僕ら三人は、同じ高校で、同じクラスで同じ塾で、そして同じ最寄駅だった。やけに顔を合わせる二人と一人、よくつるむようになるのは自然の摂理だった。美咲は男の中にいても物怖じしない、そんな明るさの中に、時々美咲も女の子なんだ、と感じる瞬間があって、そんな美咲に彼が惹かれているのは分かっていた。
「どうして、すぐに返事しないのさ」
「だって、高校卒業したら、違う大学になるだろ。今よりも会えなくなる中でやっていけるかな、とか思うよ」
いいややっていけるさ、その言葉は胸のなかに飲み込んだ。自分がひどく惨めになるような気がして。
ずっと、彼が美咲を見る目に嫉妬していた。美咲が入ってくるまで、僕は平穏だった。一人で本を読んでいる僕に話しかけてくれた瞬間から、僕にとって、彼の隣を独り占めできる日々は、何物にも変えられなかい生活だった。僕の方を向いて笑うその顔に、何度も心がはねた。
「そうか。上手くいくといいな」
「ありがとう。頑張ってみるよ」
どうせ分かっていた。彼に僕と同じ気持ちは返せないということ。僕の方を向いて、彼は笑った。僕の言葉が心からの祝福だと信じているかのように。以前のように心ははねず、その笑顔は僕に刺さる。でも、覚えておきたいと思う。僕と彼も、学校が分かれる。会えなくなる中で、きっと今まで通りにはいかないのは僕らの方だ。
何だかなみだが出そうで鼻をすする。これは、寒いからだ。友達の恋が実ったことを自分のことのように嬉しいと思っているからだ。僕の恋が終わったことが悲しい、なんてひとつも思ってなどいない。
何でもないフリ。要するに強がりか。男はいつだって見栄をはって生きているのさ。
強がりとか見栄と解釈したけどよく考えたら失敗を誤魔化す時なんかも含まれるか。
何か失敗して、これなんかヤバいっすね。自分関係ないっすけど。みたい態度取る奴。まぁ俺なんだけど。
誰にも見られてなくてかつ誰がやったのかわからない状況だとしらばっくれちゃうんだよね。
とはいえ本当にやばいミスは流石に報告するけど。軽いミスでばれない状況ならという前提。
こういうミスを報告しない奴を出さないためにミスを報告したら褒める、みたいな制度を導入してる場所もあるんだっけか。
しかし昨日の夜は雨だったけど全然寒くないな。冬の雨の日といったらそれはもう凍えるような寒さになると思うんだけど暖かい。
こう毎日暖かいと何だか感動するね。冬なのにあったけぇーって。
ただ冬支度を色々したのにほとんど使わずに終わりそうなのはちょっと寂しかったりもする。寒いよかいいけど。
『何でもないフリ』
この退屈な世界では無関心を貫けなくなった奴から消えていく
自分一人が何をどうしたって世界は変わりっこないのだから
何でもないフリをして日々を無意味に過ごしていれば良いのに
何でもないフリ No.7
幼馴染みの、亮介。
出会って10年、私たちも大人になった。
久々に公園のベンチでたまたま出会って、亮介はコーヒー片手に手を振って来た。
昔は二人ともコーヒー苦手だったんだけどな。
改めて大人になったことを実感する。
どこか昔の亮介の面影があったから、すぐに誰か分かった。デニムの羽織がよく似合う。……なんだか照れくさくて、褒めることは出来なかったけど。
ベンチで二人並んで座って、しばらく話をした。
最近どう?とか、身長伸びたね、とか。しょうもない話ばかりだったけど楽しかった。
急に亮介の体が固まったから、真剣な話なんだと思って、私もつい固まった。亮介の口から出たのは、恋愛相談だった。
え、って思った。
何でか分かんないけど。……すごくショック、だった。
「隣人なんだ」って言ってた。
私は固まったまま何も言わなかったから、亮介はどうした?って聞いてきたけれど、ううん、なんでもないよ、って笑って返した。
何でもない。
……はず。
猫は何でも無いフリをする。
会話もできないのに何でも無いフリをするので、
こちらはむやみやたらと話しかける。
機嫌はどう?
体調はどう?
喉乾いてない?
出すものだしてる?
何でも無いと、猫はムッとする。
若干、わかるようになる。
何でもないフリってすごく難しい。
でも何でもないフリしてれば、周りは
いつもと変わらない対応をしてくれる。
だから私は今日もまた何でもないフリ
#何でもないフリ
#1
強がり。そんな言葉で片付けて仕舞えれば楽なのに。
素直になることすら出来ないまま自分の恋路を終えた。
ただひたすら、嫌われたくないその一心で距離を置き遠ざけた。
自分が悪いことなんてわかっている。だが、どうする事も出来なかったのだ。
そんな私は今日も何でもないフリ。
何でもないフリ____
2023.12.12
12/11「何でもないフリ」
ずっとずっと好きで、好きで、好きで、大好きで。
手を繋いだり、抱きしめたり、抱きしめられたり、キスしたり、その先も何度も想像してる。
今だって、机に頬杖をつきながら、アイナの横顔を盗み見て、想像してる。
「ん?」
気づかれた。にっこり笑う。
「どしたの、アイナ。急にこっち見て」
「いや、なんか視線感じた気がして…。まあ気のせいか」
想像だけじゃとっくに物足りない。いっそ気づいてくれればいいのに。
(所要時間:8分)
12/10「仲間」
ろうそくの灯りの下、複数の男に囲まれ、1枚の紙とにらみ合いながら、親指の先をナイフで傷つけた。
金が必要だった。どうしてもだ。そのためになら何でもする。連れて来られたのがここだ。
血判状に指を押し付ける。向かいに座っていた男が、紙を取り上げる。
「これであんたは、抜けられない」
無表情だった男が、ニイッと笑った。
「よろしくな、兄弟」
(所要時間:6分)
12/9「手を繋いで」
「大丈夫、怖くない」
そう言われて、おずおずと手を出す。中途半端に伸ばした手を、キロと名乗った少年は掴んだ。
「行くよ」
引っ張られて歩き出す。
スマホを見ていてうっかり落ちたマンホールの底に広がっていた世界。地下世界か、あるいは異世界なのだろうか。
不安はいっぱいだが、キロの手は温かかった。
(所要時間:6分)
12/8「ありがとう、ごめんね」
拾った時は、ほんの小さな子猫だった。
初めてミルクを飲んでくれた時は、本当にほっとしたっけ。
だんだん近くに来てくれるようになって、体を擦り寄せてくるようになって。
甘えた声も出してくれるようになった。
仕事で凹んだ日も、恋人と別れた日も、キミがいてくれたから頑張れた。
キミと出会ってからずっと、キミは家族だった。
「…お隣さんの家に警察が…」
「…強盗が入ったらしくて…」
「…亡くなったとか…」
今まで、ありがとう。
置いて逝って、ごめんね。
(所要時間:8分)
何でもないフリ
父が入院した。
私は父の病気が発覚してから親身に寄り添ったりアドバイスをしてきた。
でも、もう何もしなくていいのだ。
看護師さんやお医者様が世話を焼いてくれる。
何でもないフリをして看病をしなくていいのだ。
正直面倒だった。
DVばかりする父に優しくする理由がなかった。
しばらく休みたい。何でもないフリをするのは疲れるのだ。
今日も6人の男をくわえた。
計15万。
メタボおやじと腕を組みながらバリアンから出る。
駅に向かって歩いてるとユイトが見知らぬ女とパシャから出てくるのが見えた。
「ああ、ユイト、またあたしに隠れておイタしたのね。」
クソ客と笑顔でサヨナラして事務所に向かう。
お金を受け取ると今日で退店すると言って店を出た。
スタッフさん、絶句してたな。ふふ。
いつもはそのままユイトとのデートに向かうけど、うん、まずはドンキで買い物だな。
ビルの地下にあるお店につながるうす暗い階段。
10センチヒールを響かせながら考える。
今夜のデートは盛大にいこう。
ピンドンでシャンパンタワー。
ユイト喜んでくれるかな。
えっと、こういうのなんて言うんだっけ。
何とかの…おみやげ、ん?何とかのみやげ?
忘れちゃった。
まいっか。
あたしはズッシリとしたドンキの袋を持って
ピンク色に照らされたお店のドアを、開く。
家に帰ってドアを開けても
目の前にもう貴方は居ない
お帰りって出迎えてくれる貴方は居ない
当たり前の事が当たり前では無くなった事が
これ程辛いなんて思いもしなかった
貴方が居なくなって
どれだけ救われてきたか思い知らされる
貴方がニヤッーと鳴くだけで
幸せな気持ちになれた笑えた
ドアを開けるのが怖いな
貴方を探してしまうから
寂しさにつつまれてしまうから
涙が止まらなくなるから
もう一度貴方に会いたい
大好きな昊空に
もし
不倫されて
別れたくないと
それを
望むなら
何でもないフリをして
普通の生活をしていく
傷つかない
フリをして
責めたてないで
作り笑顔で
私は
とんでもなく
努力して
家庭を守ってきた
これからは
自分の思いを無視したりしないよ
「私に何でもないフリして誤魔化せると思ってるの?!」
こんなことを結構な声量で立ち上がりながら言うものだからカフェでの視線が彼女だけでなく僕にまで突き刺さってくる。
「てか急に何?その何でもないフリして誤魔化せると思ってるのってやつ。僕なんも隠してないんだけど。」
「え〜絶対隠してると思ったのに」
「勘で言っただけ?だとしたら迷惑すぎるんだけど。」
僕の冷たい言葉にも彼女は笑っている。
いつも彼女は笑っている
僕は彼女が何でもないフリをしていても
気づけないのだろうか
─────『何でもないフリ』