『不完全な僕』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#41 不完全な僕
[ミニマリストにはなれない僕]
なるべく完璧でありたい。
そう思う時点で、既に不完全なのだろう。
僕の荷物は、とにかく多い。
身長の半分もあるリュックを背負っている。
お泊まりセットみたい、と言われがちだ。
小さい頃はもっと荷物が少なかった。
持っていく荷物は、
好きな物だけで良かったから。
でも、人生を送る内に荷物の量が
増えてしまった。
⚪️外出先で飲食物が合わなかったとき、
対処できるモノが何も無くて困った。
⚪️行き詰まったとき、
本があれば冷静になれた気がする。
⚪️良いアイデアが生まれたから、
何か書き物をしたい。
⚪️歯ブラシ。拡大鏡も無いと見えない。
⚪️身体もトリガーポイントでほぐしたい。
⚪️財布とカードとお薬手帳も
救急車に運ばれた時に必要。
などなど。
とてもミニマリストとは言えない。
けれど、現状に満足している。
一つでも無いと困るアイテム達だから、
仕方ない。
前に本を忘れたら、その日一日
あまり良く無い日だったことがチラホラあった。
そういうことがあったから、
必要な物は重くても持ち歩くようにしている。
今日の夕飯はカレーライスにしよう。
そう決めてスーパーへ向かったのは30分前。
私は今激しく後悔している。
そもそも遠くのスーパーにわざわざやって来たのが間違いだったのだ。いくら息子の好きなじゃがいもが大安売りだったからといっても、この状況はあまりに酷である。
ウチで雇っている家庭教師の高遠先生。彼が目の前で買い物をしている。むこうはこちらに気づいていないが、時間の問題だと思われる。
否、問題なのは時間ではない。彼の連れだ。白いワンピースを着た若い女性と、仲睦まじい様子で歩いているのだ。
息子がこの場にいなくてよかったと心底思う。先生と息子は、今微妙な関係なのだ。決して仲が悪いわけではない。その逆。付き合ってはいないんだが、師弟以上恋人未満というか……
とにかくそんな関係の相手が、他人とベッタリ一緒に過ごしているところに遭遇したら、息子にとっては地獄でしかないだろう。修羅場というやつだ。
私はこのまま見てみぬふりをするか、割って入って事情聴取するか、息子に密告するか、息子というものがありながら他の人間とベタベタした罪で処すべきか迷った。
答えが出ないうちに、先生と目が合った。ガン見していたせいかもしれない。
「おや、煌時くんのお父さん。こんにちは」
こやつ、なんの躊躇いもなく挨拶してきおった。
「先生、どうも」
「ここでお会いするのは初めてですね」
「いつもは近所のスーパーに行きますが、じゃがいもの大安売りと聞いてこっちへ」
「ああ、なるほど。煌時くん、じゃがいも好きですもんね」
何だこいつ、息子のこと知ってますアピールか。
「先生こそ珍しい。デート中ですかな」
言い訳できるもんならしてみるんだな!
「……ええ、まあ。というか、偶然会ったんですよ」
ガーーーン!!
言い訳どころか認めた!?
いいのか認めて!?
私に話したということは、息子にも伝わっていいということか!?
いったいどういうことだ。まさか2人はとっくに別れていた?
いやそもそも付き合ってはいないのだから別れるも何もないのだが。
息子の様子を見ている限り、そのような素振りは一切なかったのに……
私が内心動揺していると、先生がチラリと外に目を向けてから口を開いた。
「そういえば、岡野さん。ここへは車で?」
「え? ああ、はい」
「ちょうどよかった! 私と彼女を家まで送ってくれませんか。もちろんお礼はしますので」
ファッ!!!???
どんだけ図々しいのだこいつ!?
「い、いやそれは」
「いや〜助かります! 彼女と会って買う量が増えたので。そうと決まれば早速レジへ行きましょう!」
先生は私の話を遮り、腕を掴んで歩き出した。
そのあまりにもらしくない強引さに違和感を覚える。いつものキャラと違いすぎる。
私は先生に引っ張られるがまま会計を済ませ、駐車場に出た。その時、なんとなくだが違和感の正体に気づいた。
この2人、トラブルに巻き込まれている。
外にいた帽子の男と、店内にいた黒いTシャツの男が我々を挟むように近づいてきた。帽子の男は私と先生と女性が一緒に行動しているのに気がつくと、足を止めて躊躇う様子を見せた。
我々はそのまま早足で車へ向かい乗り込む。発進間際、横目で見た男たちは案の定合流してどこかへ消えていった。
「お2人とも、本当にありがとうございました!」
ワンピースの女性は深々と頭を下げると、無事に自宅へと入っていった。
「すみません岡野さん。巻き込んでしまって」
「いやいや、お役に立てて何より」
女性は帰宅途中、怪しい男たちに目をつけられ、後をつけられたらしい。怖くなってスーパーに駆け込んだはいいものの、男たちは諦めることなくしつこく彼女を追い回した。そこで目に入った同年代の先生に、こっそり恋人役をお願いしたんだとか。
「しかし怖いですな、知らない男2人に追いかけ回されるなんて」
「ええ、彼女は大変な思いをされたと思います」
先生はひと呼吸おいて続ける。
「煌時くんが同じ目に遭わなければ良いのですが……」
「……」
「あ、ほら、彼はとても可愛らしい顔立ちなので」
先生はそう言って、照れたのか視線をそらした。
私は彼を、少々見くびっていたようだ。困っている女性を助けられる知恵と行動力。それは賞賛に値する。
素直にそう伝えたら、自分なんてまだまだだと言われた。
「私はまだ未熟ですよ。完全とは程遠い」
それを言うなら私だってそうだ。先生よりずっと長く生きているというのに、勝手に修羅場だと思い込んで、彼女の危機を察することさえできなかった。
しかしそれでいいのではないかと私は思う。最後には協力して、彼女を助けることができた。
そう、大切なのは協働だ。
完全な人間など、存在しないのだから。
テーマ「不完全な僕」
不完全な自分(僕)
不完全な自分に嫌気が差す
決められない、行動できない、言えない、できない
不完全さは、ないものに向けられる言葉
不完全な様は、恥ずかしく見窄らしく捉える様子
と、無意識な自分の価値観が、自分自身の未熟さを嘲笑う。
笑われたままで、いるものかと
馬鹿にされたままで、いるものかと
自分の中にいる別の誰かが必死に叫ぶ姿が見える
勝敗ばかりだと思うこの世界では
勝敗しかない世界になる
完全か不完全かしか存在しないこの世界では
完全であること以外認めらないように感じる
勝敗がある訳でもなく、
完全なんて存在しないこの世だと自分が感じれば
不完全なこと、不完全なさまが美しく、愛らしいものに変わるのではないだろうか
不完全さを認める心を持てば
もっと素直で優しい世界を自分が生きられるだろう
完全であれば愛してくれるのか。不完全であれば恋してくれるのか。
「ねぇ、いいでしょ?ねぇ、連れて行ってよぉ。ねぇ。ねぇ」
付き纏う声に嘆息する。
気づけば黄昏時。
朱く染まった空を見上げ、付き纏う声の主である犬を見下ろし。
帰り道の先、鳥居の下で踊る影を見て、思わず額に手を当てた。
誰もいない神社の掃除終わり。いつもならば家にいる時間帯。
時間を気にしながらも一通りの掃除を終えて、気づけばすでに辺りは薄暗くなっていた。
やってしまった、と焦り掃除用具を片付けて、帰ろうとした道の先には影がいて。どうしようかと悩んでいれば、このよく分からない犬が声をかけてきて今に至る。
「ボク、いい子だよ。ちゃんとお座りも、待ても出来るんだよ。だからねぇ。一緒に行こうよぉ」
「…飼い主は」
よく見れば、犬の首には白い首輪。飼われている、あるいはいたであろう犬は、首を傾げ鳥居の方へと向けた。
「あそこ」
前足を上げて鳥居の下で踊る影を指す。
遠目からははっきりと見えない影が、足を上げ、腕を伸ばして踊り続けている。ステップは無茶苦茶で激しく、手はゆらゆらと揺れて、手を振っているようにも見えた。
すぐ近くにいるのならばそちらへ行けばいいのに。そう思い横目で見た犬の目は、何故だか冷めているように見えた。
「ずっと足を焼かれて、首を括られて動けなくなっちゃったの。もう駄目だから、大丈夫」
何一つ大丈夫ではない。
目を凝らして影を見る。やはりはっきりとは見えないが、言葉通り、足は焼けた地の熱さから逃れようとして、手は括られた縄を探して藻掻いているようにも見える。
「ずっといい子にしてたんだよ。遊ぶのも、撫でてもらうのも我慢して。ご飯がもらえなくなっても吠えたりなんてしなかった。飼い主が苦しくてつらいのを知ってたから、ちゃんと我慢したの。お外に出て、頭を撫でてもらえて、ご飯ももらえると思って。やっと、食べられるって。なのに。何で。あんな」
影の動きが激しくなる。
首が絞まっているのか、手を首元にやって何かをしきりに引っ張っている。
「どうしてこんな寂しい所に埋めていったの。誰もボクを踏んでくれないから、呪いになれないのに」
つまりはあれだ。
犬神をつくろうとして不完全な呪いが出来上がり、返りの風で術師が死んで呪われた、と。
影を見て、犬を見る。
空を見上げれば、さっきよりも薄暗く夜が近くなってきている。
帰ろう。そう思った。
帰る道の先に影はいるが、何とかなるだろう。
「帰るの。一緒に行っていいよね。ねぇ、連れて行ってくれるよね」
「飼い主のところに行きなさい」
着いてこようとする犬を制す。どんな形であれ飼い主がいるのだから、そちらに行くべきだ。
お座りの体制で首を傾げる犬は、少し考えて飼い主の元へと走り出す。
ぎゃあ、と醜い悲鳴が上がった。
「はい。飼い主持ってきたよ。一緒に連れて行って」
何故こうなる。
飼い主だったであろう影の腕を咥えて引きずりながら戻ってきた犬を見て、何も言えずに口元を引き攣らせる。切実に止めてほしい。直視したくないものを取ってこいした覚えはないというのに。
横目で見下ろす影は、間近で見ても黒かった。
「家には猫がいるから」
だから無理だと、首を振る。
それでも犬は諦めない。
「ボク、いい子にするよ。ちゃんと仲良くする」
無理だろう。どう考えても。
そうは思うが口には出せず。仕方がないとスマホを取り出し、ロック画面を見せた。
ぎゃん、と鳴いて、飛び上がる。
「え。なにこれ。怖い。猫、怖い」
「いいか。よく聞け。我が家の頂点は猫だ。猫が望めば夜中だろうがご飯の時間になるし、仕事をしてようが遊びの時間になる。その日の猫の好みのご飯がなければ、その時点で買いに走らなければならない。家のすべては猫によって決まるんだ。つまりは、猫が捨てろと言ったら捨てなければならない。分かるな?」
「うん。分かっ、た」
悲しげに目を伏せる犬には申し訳ないが、こればかりはどうしようもない。
今度こそ帰ろうとスマホを仕舞い、犬を見ると。
大きな目から一筋涙が零れていた。
泣いていた。犬が。視線を向けなければ分からないくらい静かに。
高級な猫缶を帰りに買おう。そう決めた。
連れ帰る事は決定だが、さてどうしようかと考える。
このままでは周りの目が痛い。非日常が日常な街であっても、さすがに目立ってしまうだろう。
そこらのうねうね動く影とは違う。
取りあえず犬を呼び寄せる。
「ささら」
「え」
「ささら。犬の名前」
呼びかける。名前を認識させる。
「ささら。ボク、ささら」
何度か名を繰り返す。その度に犬の姿が変わる。
肉がつき。皮が張り。毛が生える。
「うん。ボクはささら」
ふさふさした尾を一つ振って、茶色い毛並みの小型犬は綺麗にお座りをした。
よし。と頷く。
思わず使役してしまったが、これで捨てろなどと言われ難くなるだろう。
不完全で未熟な犬神とはいえ、一度契約したモノだ。破棄は簡単には出来ないはず。
だが一応機嫌取りで念のため、またたびも追加で買う事にする。
「ささら。帰りに店で猫缶とまたたびを買わないといけない。急ぐぞ」
「分かった!ゴシュジン、これどうするの」
「明日、近くの社にでも捨てとく」
影は放置だ。街とはいえ、田舎の店は閉まるのが早い。
急がなければと、犬を抱えて走り出す。
空にはもう宵の明星が光り輝いていた。
20240901 『不完全な僕』
「不完全な僕」
ふむふむ……タイトルは「不完全な僕」ねぇ……。
残念ながらボクはどこをとっても完璧な機械ですので……いや、「不完全」な部分がないという意味では不完全なのか……?
……でも、よく「もしも」のことは考えるんだ。
どうしてだかボクにもわからないが!
もしも兄がウイルスに侵されなかったら?
もしも兄と一緒に仕事ができたら?
もしもボクが生き物だったら?
こんなことを考えたって、何かが変わるわけでもないのにね。
後悔したって仕方ないのに。
……ボクは大切な何かが、誰かが存在することで、初めて完全な機械になれるのかな。生き物にだって、なれたのかな。
……。
でも。⬜︎⬜︎、ボクの大事なきょうだい。
生きていてくれて、本当にありがとう。
ボクはキミのおかげで、完全に近づけるんだ。
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。
712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。
事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!
だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……タダで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。
牢獄の中とはいえ、随分久しぶりにふたりの時間を過ごせた。小さな兄が安心して眠る姿を見て、今までずっと研究を、仕事を続けてきて本当によかったと心から思ったよ。
きょうだいのカウンセリングの付き添いがてら、久しぶりにニンゲンくんと話をしたんだ。いつも通り話がしたかったけれど、そんなことはできなかった。
ボクの心は、ボクの気持ちは紛れもない本物だと信じて欲しかったけれど、受け入れてはもらえなかった。
機械のボクはもう、キミに信じてもらえないみたいだ。
でもまあ!!!きょうだいもボクも元気に牢獄暮らしが送れているうえ、旧型管理士の彼女も調子がよさそうだから、当面はよしとしようか!!!
多分ニンゲンくんの事情聴取も終わっている頃だろう。あとは何度か取り調べを繰り返して、いつか来る裁判の時を待つだけだね。
……というかこの「あらすじ」、長すぎるね!!!何がどう荒い筋だと言うんだい???……また作り直さなければ!!!
ふえぇ全然時間が取れないようぅ……。゚(゚´ω`゚)゚。
あとどこに書くのがいいのかもわからないよぅ……(´•̥ω•̥`)
最近、全くストーリーが進んでいないね!!!申し訳ない!!!ただ単に投下するタイミングをどうするか迷っているだけなのさ!!!楽しみに待っていてくれたまえ!!!
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僕は不完全な存在なんだ
誰かに合わせて、その場の空気を読んで、
みんながいやな気持ちにならないように
僕はそれでいいから
みんながいいなら、
僕は別に構わないよ
大丈夫だから
僕のことは気にしないで
僕は売れ残り。
僕にも家族はいた。
海の生き物たちと心を交わすことが得意だった僕のことを、母はちっとも否定しなかった。
でも
そんな母はもういない。
重い病にかかり、あっけなく逝ってしまった。
僕を気味悪く思っている村の人は、僕を引き取ってくれなかった。
だから僕はここにいる。
僕は人の言っていることを理解するのが苦手。
僕は不完全らしい。
一緒にいたみんなは、嬉しそうに売却済みの札をもらい、いつの間にかいなくなった。
僕だけ、
僕だけが 不完全体売れ残りの札が剥がれない。
だから僕はここにいるんだよ。
僕はそう、池の魚につぶやいた。
この池は海に繋がっているらしい。
僕の話を真剣に聞いていた魚は、キラキラと光る、魚の尾ひれのようなものを僕に渡した。
また何かくれるの?
この前は虹色のビー玉二つだったよね。
そう小さく呟く。
魚は口を開き
一緒に行きましょう。
とつぶやくように、僕に近づいた。
なんとなくいうことがわかった。
魚のくれた尾ひれのようなものを履く。
そして
虹色に光るビー玉を、目に差し込んだ。
目が痛む。
目を瞑る。
そのまま
池に飛び込んだ。
目を開ける。
そこには、美しい人魚となった魚と僕がいた。
人魚は言う。
あなたが幸せだった時。
あなたはわたしを助けてくれた。
一緒に海の果てに行きましょう。
今度ははっきりと聞き取れた。
人間として不完全な僕でも、人魚としてなら、幸せをもう一回得られるかもしれない。
僕はそう思った。
この日
ある一人の少年が空に旅立ち、
二人の人魚が、海の底へ、潜って行った。
人間は完全な生き物ではないので
私も君も皆んな不完全同士
だから補い合って助け合って生きている
それでもどうしても完全を求めてしまうけど
不完全な私自身を嫌わずに生きていきたい
*不完全な僕**
縁側で昼寝をしていたら、懐かしい夢を見た
君と山の裏に作った、オンボロの秘密基地や
親に内緒で二人で頬張った秘密のパピコ…
そんな短く長い夏休みの思い出
窓辺に飾った風鈴の鳴る音を聞いていたら
なんだか昨日の事のように思えてくる
「懐かしいなぁ……」
僕の楽しい思い出達には、すべて君が居た
宝石のようにキラキラと無邪気な笑みを浮かべる君が
少し羨ましかったのかもしれない、少し家が裕福なだけで
何もかも不完全な僕を友達にしてくれる君が
僕は大好きだった。
「…………だった…って、今は違うの?」
「あれ、声に出てた?ごめんごめん」
部屋の奥から、君が一口大のスイカを二つ持ってきて
縁側に腰を下ろした
「どこまで声に出てた?」
「うーん、僕の楽しい〜からかなぁ……」
「わぁ、結構聞かれてた…恥ずかし」
縁側には風鈴の音だけが木霊して君は何も話さず隣に居る
たまにはこんな日もいいな、なんて青空に惚けていたら
僕の顔を見つめて、君は少し悲しげに呟いた
「…今の僕は嫌い?」
「むしろ好き」
「……即答じゃん、安心したよ……あと、
全然…不完成じゃないからね!」
顔を逸らしてスイカを静かに食べ始める君に
少しだけキュンとしてしまったのは内緒だ
親友にときめくなんて、おかしいことなのだから
やっぱり僕は不完全……どこかおかしいのかもしれないな
そんな些細なことを思いながら、
僕はスイカの種を庭に飛ばすのだった
お題「不完全な僕」
なんかよく分かんなくなっちゃった( ´・ω・`)
通常運転。
なら、問題ないね。
それでいいから、
あの光まで行ってみようか。
君に会えたら、
欠けたとこ埋まるわけでもなくて、
だけど、それがいつしか愛しくなって、
僕らこれから手をつないで生きていこうか。
「不完全な僕」
割れて、飛び散ったガラス、足で蹴散らして、バリバリ踏み砕く。無かったことにする。何も見てない。
欠けた月も
輝きを秘めて
夜を照らす
不完全さの中に
僕は僕を見つける
渾沌の世で
迷う日々さえも
意味を持ち
不完全な無数の欠片が
ひとつに繋がる
夜が明けて
まだ完全じゃない
僕がいて
でもその輝きは
誰にも奪えない
不完全さが
僕を作り出し
僕を支える
不完全な僕が
新たな形になる
誰かを救える なんていう
とんだ勘違いを
勘違いで終わらせない
愚か者だと周りは笑っても
私には、確かに、ヒーローに見えたんだ。
俺が少し回想に頭を使うと、ここの人物達は時が止まったように動かなくなる。
(俺の思考から色づいてくのは、俺がこの世界の中心になって......きっとこの子達の会話だって俺が......世界観を考えろ俺...)
「...本当にゼンマイがついてんのかな」
俺の放った一言は、誰にも拾われることなく床に落ちていった。
「よし、次行くか」
ぺちっ、と膝を叩き「よっこらせ」と年老いた掛け声をつけて立ち上がった。
一番後ろの席まで向かい、閉ざされた扉の前に立つ。
扉には黄色いテープが一つ。そこに黒色で『きーぷ あうと!』と書かれていた。
(キープアウト...?立ち入り禁止、だっけ確か。まぁいいでしょ)
俺は扉に手をかける。
「お客様」
すぐ後ろで声がして、俺はびっくりして肩を震わせた。
「この先は立ち入り禁止です。お戻り下さい」
「...す、みません」
ぱっ、と手を離す。
「......この先ってなんで立ち入り禁止なんですか?」
俺は聞いてみた。
「............」
深く帽子を被って、何も話さない。俺は返事を待つようにつられて黙った。
「...この先は不十分な空間です。立ち入るのは危険です」
不十分な空間。
(そうだ、俺はこの以前を覚えてない。何があるのか......)
「......わかりました」
俺は奥に向かうことを止めた。
「それでは、ごゆっくり…」
「ちょっと待ってよ」
「はい、なんでしょう」
「俺、君の話が聞きたいな。それに、俺の話にまだ出てない。どうかな」
帽子から覗く目と合う。
これは、良いという事なのだろうか?
お題 「不完全な僕」
不完全な僕
佐藤は誰もが認める完璧な学生だった。
勉強も運動も優れており、人間関係も円滑で、どこを見ても欠点らしきものは見当たらない。
周囲からは尊敬され、期待される存在だった。
佐藤自身も常に完璧を目指していたし、周囲からの称賛には満足していた。
けれど、そんな完璧な自分を否定される様な瞬間が度々ある。
その理由は、幼馴染である彰人の存在だった。
運動神経こそ抜群だが、他は平凡。
テストなんていつも赤点ギリギリだ。
僕の方が圧倒的に上で、完璧な僕はあいつにない全てを持っている…はずなのに。
なぜかいつも彰人の周りには人がいて、みんなが選ぶのは彰人だった。
僕は完璧なはずなのに、彰人にないモノ全てを持っているはずなのに。
彰人が持っていて、僕にないモノないて無いはず、そう思っていたのに。
彰人も僕にないナニカを持っていた。
僕はどうしてもコレが許せなくて。
けれど、何となく分かってしまうのだ。
勉強も運動も、人間関係も日々の積み重ねで全て手に入った。
手に入れる方法も知っていた。
でも、どう頑張ってもアレは僕には手に入らない気がするから。
どうしたら、彼の様になれるのだろうか。
今の僕に必要な事。
それを見つけるまで、僕は不完全なままなのかもしれない。
足りない分を補い合うために
他人と交流して協力し合って生きている
わかっているけど疲れてしまうから
他人との関わりを疎かにしていた
いつの間にか僕は
周りから置いていかれたまま
何も足りてないまま
一人で生きるしかなかった
『不完全な僕』
伝えたいこと:学校でねていて、勉強はさっぱりわからない。だが、今更になって、とある理由で、勉強を始めた。
ぼくは、学校に通っている頃、こんな授業、日常生活で使わないだろうと思っていたし、そのそもやる気が出なかった。
だから、学に関しては、てんで、他の人と比べにもならない、差ができてしまった。
それでも、やる気は出ないし、そもそも、ちっとも気にもならなかった。
だが、とある理由で今更ながら、勉強が楽しくはかどったのだ。
僕には、好きなことが出来、そのお陰で勉学に熱が入ったのだ。
実は、隠していたけれど、不満は結構溜まっていたのだ。
目標持ったことにより、ようやく僕は、前に進めたのだ。
不完全な僕は、今どこにいるのかわからないほどに蛇行運転気味な台風のように、ふらふらと休日っていう世界を彷徨っている。
けれど、そういう日を過ごしたって、誰にも迷惑かけてないくらいの年齢不問であればいいんじゃないかなあ、って言い訳を脳内生成して夕方になった。
突然死のような夕立。
それを窓越しに見つめると、九月一日なんだなぁ、って思う。
『文武両道で、性格が良くて、格好良くて、過去に間違いがあるうさぎ』
完全完璧な奴なんているのか?電気のついていない真っ暗な部屋で、僕の顔だけが青白く照らされている。何年も前のことを思い出す。
負けた。のろまなかめに。僕が昼寝をしている間に、コツコツかめは進み続けてゴールした。かめは許してくれたが、周りの人に怒られた。もし、僕が勝ってかめが足の遅さを気にしたらどうするんだって。僕はこの事に心底反省して、聖人君子のような完璧な存在になろうと思った。少しでも償いになるのならと。
勉強、運動、道徳心。身につけるため、毎日努力。経験を増やすためいろんなところに行った。5年が経って、心も身体的にも成長した僕はスポーツ選手として活躍していた。僕の強みは短距離走での瞬発力だ。また、難関大学卒だからクイズ番組に出ることもあった。ネットでは、「文武両道」と褒めてもらえてとても嬉しい。でも、完璧にはまだまだ遠い。エゴサをすると指摘コメントや批判コメントが一定の数見つかる。この人達にも称賛されるようもっと頑張らなくちゃいけないし、もっとたくさんのことができるようにならないと。
今年は四年に一度のスポーツ大会だ。僕は優勝候補として名が挙がっている。しかし結果は7位となった。緊張からくる寝不足や吐き気、腹痛で上手くパフォーマンスが出来なかったのだ。完璧になるにははプレッシャーや緊張にも強くないと。僕はへこんでいた。そこにネットの声が追い打ちをかける。「弱いなら期待させんなよ」 「文武両道とか言われてるけど普通じゃん。」 「性格いいですアピールもウザかったんだよな」……負けたことは事実だから、もっと頑張らなくちゃ。
でもあの日から何かが違った。やる事言う事なんでも批判コメントがあった。「〝僕は努力を惜しみません。いつか実を結ぶはずだから〟何言ってんの?綺麗事やめてもらえます?」 「ここのフォーム崩れすぎ。こんなんで選手とか辞めてほしい」 完璧を目指して正直で優しくしてるのに。コーチに教わったフォームなんだけどな。こんなんで傷つくなんて完璧じゃない。「こいつ中学の時の同級生。かめに勝負挑んで負けてた。昼寝して寝過ごしてた。乙」…………
完璧な奴なんていない。人には得意不得意があるとか、完璧じゃなくてもいいとかそういう教訓みたいなことを言いたいわけじゃない。過去に間違いがある時点で完璧なんかじゃない。「性格がいい」も完璧じゃない。不完全な僕は完璧じゃないところを守る甲羅のようなものを脱いだ。その「完璧」な甲羅にも欠点があることに気づいたから。重すぎる。