三日月』の作文集

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三日月』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

1/10/2023, 2:34:09 AM

あなたが、ふと空を見上げたのは薄暮時だった。そろそろ茜色が闇に溶けて、夕日のほとぼりがすーっと濃い青色になじんでゆく。
 いわゆるブルーアワー。
 その独特な雰囲気の中をあなたと並んで歩く。

 たまには道をそれてみよう、と入った路地裏で首尾よくにおいに惹かれたパン屋。おしゃれな紙袋に小麦のフレーバーを溜め込んで。

 「あ、二日目」
 「え?」

 見上げているあなたの視線を辿れば、西の低い空に浮かぶ瘦せた月。

 「あのね、昔のカレンダーでね、太ってく月はね三日の月」
 「え、今あなた、二日って」
 「月始めはね、ゼロ、イチ、ニって始まるんだよ。だから三日月は二日目。一日目の二日の月って、見えないの」
 「へ、へぇ……」

 そこから始まるあなたの三日月ウンチク。

 「べつの宗教ではね、三日月からひと月が始まるんだよ。そういうお国はね、国旗に三日月があるの」

 「三日月はね、クレセットって言うの。あのね、音楽のクレシェンドの語源」

 「アルテミスがね、三日月で方角を教えてくれるの。弓の形なの。そうしたらね、迷わない」

 後ろ手に組んで、たのしそうにそう話すあなた。ぶっちゃけ内容はぜんぜん頭に入らないけれど。いつの間に三日月博士になったのか。
 めんどく――――、奇特な人。
 面倒くさいだなんて言ってません。
 言ってませんったら。

 チラ、とわたくしが持っている紙袋に一瞥。

 「ねえ、きみがさっき買ったパン、なあに?」
 「パンですか? クロワッサンですけれど」
 「んふ、それも三日月が語源」
 「そうなんですね! 知りませんでした」
 「あのね、国旗に三日月のあるお国と戦って勝ったの。その戦勝記念。国旗とおなじ形をたべて、食ってやったぞ! って」
 「考えるものですね」
 「きみのクロワッサンはねマーガリン。まっすぐなのはね、バター」
 「区別のための形だったんですか、これ」

 何となく、まじまじと紙袋の中身を見た。
 見ただけでマーガリンは分からないのに。どうしてか、気になってしまう。

 くすくす、と笑うあなたが見れたので。
 まあ、良しとして。

 「月始め二日の三日月。ひと月にね、一回しか見れないの。空の上に昇るとね、月の角度が変わるからね真っ暗。お月様見えないんだよ」
 「エッ、そうなんですか?」
 「だから見れたらラッキー。幸運。みんな使う。ゲン担ぎ。ねえ、願いごと、どうぞ」
 「エッ、え、いきなりですね?」

 いきなり言われると普段願っていることも、分からなくなる。そして、思い出せない。
 あなたを見ればさっさと願ってしまっていて。
 おいてゆかれないように何とか、何とか、絞り出す。――――明日のお掃除ですべてのほこりを一掃できますように。
 ……本当に、これでいいのか、わたくし。

 また、くすくす。

 「言えた?」
 「い、言えました……」

 にやぁ、と意地悪な笑顔。
 これは碌な願いごとが言えていないのを見透かされている。

 「あっ、あなたはどうなんです?」
 「んふ、願いごとって言ったら叶わないんだよ。だからひみつ」

 いつの間にか、街路灯や建物の向こうのネオンがその光彩を強くしていて。三日月だって見えやしない。
 道路照明のちょうど真下のあなたは、生き生きとしている。それはもう、至極に。

 わたくし、もてあそばれましたね……?




#三日月

1/10/2023, 2:28:47 AM

いつもより早く起きてしまったんだ。

普通なら二度寝してしまうくらいの時間。
外はまだ夜の闇。

何気なく部屋のカーテンを開けてみた。
空に見えたのは切れ味の鋭い三日月。

これからまた満月に向かって行くんだな。
なんだか今日も頑張れそうな気がした。

1/10/2023, 1:34:03 AM

空には三日月
ずっと 会いたかった
あなたとは
いつまで経っても会えない

見失った あなたの面影を
探していたけど
いつしか あなたの存在すら
忘れていってしまう

あなたを失った 三日月の夜
もう会えないって 信じたくなかった
あなたを失った 三日月の夜
もう会えないって 信じたくなかった

空には三日月
ずっと 探していた
想いは微かに
見えなくなりつつあるらしい

見失って気付いた恋しさを
時間(とき)が運び去っていく
遠い記憶の彼方に
あなたの声を聞く 三日月(こ)の夜

あなたを失った 三日月の夜
もう会えないって 信じたくなかった
あなたを失った 三日月の夜
もう会えないって 信じたくなかった

#三日月

1/10/2023, 12:53:30 AM

三日月の形をした狂喜は

      夜に紛れ込んでいる。

     白色灯  時々  赤色

     今日も今日とて安寧な一日を

         さよなら

1/9/2023, 11:53:44 PM

三日月の上に乗ってみたい
あの綺麗な光っている月に
あの人と乗ってみたい
月のようなあの人と一緒に
そう考えていたら月は沈んでいた

1/9/2023, 11:17:29 PM

三日月
「二階堂くんが三日月狼やるんだってね」
「ああ」
「楽しみだな」
「俺と二階堂、どっちがかっこいいと思う?」
ぱちくりとまつ毛を揺らして、「それは三日月狼として? それとも男性として?」と伺う翡翠に「どっちも」と返して、ウイスキーを煽る。三日月でない丸い氷がころりと空になったグラスの中で音を立てた。くすくすと声を転がす翡翠に、俺は眉を顰めるしかない。
「なんで笑うんだよ」
「ふふ」
楽しみだなあ、とまた、心からの言葉を灯しながら。翡翠はぶすくれる俺の唇に唇を合わせた。

1/9/2023, 11:16:44 PM

三日月って、意外と細いのよね。よくイラストなんかで見る三日月って、たぶん、五日月くらい。

なのに、なぜ三日月とよぶ?
氣になったので、ちょっと調べてみたら、月が最初に見え始める頃が三日月で、むかしは、そこから日付けを逆算していたとか。
月が基準の暦のころ。

そういえば、わたしが月のことを意識するようになったのって、和暦手帳を使うようになってからだ。

新月が朔日で一か月がはじまる。
そこからだんだんと満ちて満月になり、だんだんと欠けてまた新月へと向かう。

エネルギーがどうとか、そういうことはいまいちわからないけど、目に見える月の満ち欠けで日付けが変わっていくっていうのは、単純にすごくわかりやすい。

だからかな。
和暦手帳を使っていると、勝手に自然のリズムと調和していくんだろうな。会社勤めしてないときは、そういうことも感じやすかったのだけど、今は、どうよ?

会社勤めしつつも、そのリズム感じられたら、いいなぁ。
どこにいてもどんな状況でも、自分の心地いいリズムで生きるのがいい。

もっと意識してみよう。

1/9/2023, 11:02:37 PM

「信じられない!!」

「あっちょっと待って!」

待てるわけないでしょ
大好きだった彼が浮気なんて
急いで家を飛び出した私は
スマホしか持ってなかった。

帰ってきた時に靴がなかったのは確かだった。
しっかりそこまで考えられたのに
私が帰ってくるのは考えられなかったんだ。
LINEで送った,少し遅くなるなんて
どのくらい遅くなるのか分からないのに。

彼とはお付き合いして5年,
最近同棲したばかりだった。
私が気づかなかったのは鈍感だっただけ?
他にもお付き合いしている女の人がいたりするの?
結局浮気してるのには変わりないんだけど。

「これからどうしよう」
財布も持ってないし
とりあえず公園に行こ
スマホがさっきからなり続けてる。
「うっさいな」
彼の名前が表示される。
どうせ「ごめん」とか
「浮気なんてしてない」とかの電話でしょ。
私,言い訳なんて聞く余裕ないよ

良かった雨なんて降ってなくて。
でも降ってたら悲劇のヒロインにもなれていたかも
さっきの状況を思い出して
涙が溢れそうで空を見上げた。
あいつのために流す涙なんてない。
そう思ったって涙は流れてしまう。
見上げた夜空には
小さくちりばめられた宝石と
大きくて綺麗な三日月があった。

良かった満月じゃなくて
だって大きくて美しい月が
私を照らしたら醜い私が酷く写ってしまうでしょ。
そんなの耐えられないから。
満月の夜だったら
月が照らさない場所にきっと隠れたわ。

良かった新月じゃなくて
だって真っ暗で姿を表さない月が
私の心を写しているようで嫌になってしまうでしょ。
そんなのどうしても耐えられないから。
新月の夜この先どう進んでいいのか分からなくて
大切なものを落としてしまいそうだから。

良かった三日月で
だって輝いている部分と暗い部分があるんだもん。
少しの光で私をどこかへ導いているようで
私を少し安心するから。
大きな暗闇が私の闇を隠してくれているようで
安心できるから

今は何も考えないで月を見ていようかな





─────『三日月』

1/9/2023, 10:57:28 PM

三日月が私を見て微笑んでるように見える
手を伸ばせば届きそうな距離。
貴方は三日月のように輝いていて私は貴方の元に行けるだろうか

1/9/2023, 10:49:30 PM

娘が編み物をはじめた。

好きな人でもできたのかと思って聞いたら、

「三日月にマフラーをかけてあげたい、寒そうだから」

と答えた。

満月はかけにくいからいいやとのこと。

はぐらかされてる気がしたけれど、そうなんだねと相槌を打っておいた。

1/9/2023, 10:20:13 PM

僕は狼男や蝙蝠、吸血鬼を連想してしまう。
昔の洋画はこういった類いの作品がかなり多い。
昔の映画は今のようなCGはないがその分、人形や血糊など創意工夫に富んでいる為、現代よりも些かリアルに感じてしまう。
私には日本人としてのDNAからか満月が好きだが三日月も大好きだ。
それは欠けている事に対してスリルや芸術的な美を感じるからだ。
恐らくこれは僕個人としての感性によるもの。
私はどうも、大衆が美しいとするものよりも、その散り際や最後を美しいと感じてしまう。
歴史的偉人の最後や花の散り際、歴史ある古き物が現実世界から消え去り記憶の中でしか存在しなくなる等、私はそういった“最後”を重視してしまう。
まぁ、脱線はこれくらいにしておいて…
結局何が言いたいかと言われれば私は満月と三日月か好き。
以上だ。

1/9/2023, 9:50:25 PM

三日月は欠けている。

当たり前のことだけど、私はそれを美しいと思った。

普通はなにかが欠けていたらダメになるのに、三日月はそれを逆手にとって、さらに美しく輝いている。

私も三日月のように、何かがダメでも周りから綺麗だと言われたい。

私も三日月のように、何かがダメでもそれでいいと言ってもらいたい。

そう思ってしまうのは…ワガママなのかな?

1/9/2023, 9:44:59 PM

可愛い君のことを想って
寝てました
ぬくもりのない布団の中で
君さえいれば
これほどのない暖かさでした

ぬくもりのない布団の中で
汚れていようとも
ずっときれいでステキなことだと
思いました

雲一つない空気の澄んだ
三日月の晩のことでした

1/9/2023, 8:57:39 PM

太陽は偉大
星も綺麗
満月も素敵
だけど
三日月が好き

お題
三日月

1/9/2023, 8:54:52 PM

『帰り道』

2人で歩く帰り道
ビルの隙間に小さな三日月
「月が綺麗ですね」と彼が笑う

#三日月

1/9/2023, 8:37:23 PM

三日月

草木の息遣いすら聞こえる夜の静寂

幽かな月明かりに戯れる陰陽魚

つり上がった口角

下がった目尻

切った爪



眉間の皺

シーツの皺

額の汗は弧を描く

閉じたクレセント錠

窓の外に遠く冴ゆる三日月

2023/01/10

1/9/2023, 7:46:57 PM

窓の外には猫の爪のような細い月。

「あした、月が消える時にわたしも死ぬの」

彼女は病室のベッドの上で、そう言った。
オー・ヘンリーの『最後のひと葉』でもあるまいし、とぼくは小さく笑う。
昨日が朔の月だったから、いま空にあるのは繊月だ。
これから太っていく月。どんどん満ちていく月なのに。
大手術から目を覚ましたばかりだからか、手術前の一時の意識の混濁と麻酔のせいか、彼女は時間感覚が少し狂っているようだ。

「手術は成功したんだよ」
ぼくは彼女の柔らかな髪をそっと撫でる。「もう心配ないんだ」

明日、また一緒に月を見よう。言葉で言うよりもわかるだろう。
もしも雲が出て月が見えなければ、あの老人よろしくぼくが月を描いてみせてもいい。
病室を出てスマホで確認すると明日の降水確率は0%だった。


翌日。

月は出なかった。
雲に隠れたわけではない。
あの衛星は、何の前触れもなく、火球となって地球に体当たりしてきたのだ。
きたのかもしれない。
恐ろしいほどの大きさで迫ってきたあの火の玉は、本当に月だったのだろうか。
突然に全てが終わってしまって、どうなったのか本当のところはわからないのだった。
ぼくにも、誰にも。

――もしかしたら、彼女にだけはわかっていたのかもしれない。

「ね、言ったとおりでしょう?」
上も下もない暗闇の中、そんな声が聞こえた気がした。

1/9/2023, 7:45:48 PM

三日月

希望
期待


三日月に
寂しさは
似合わない



            #三日月 (1)

1/9/2023, 7:09:51 PM

玄関に足を踏み入れた。
食欲を掻き立てられる香ばしい匂いが、辺りに充満し始める。
茶色の紙袋を抱えドアノブに手をかけようとすると、扉はひとりでに開いた。

「おかえり、おじちゃん」

出迎えてくれたのは、妻でも子供でもなく、一人の少年だった。
子犬のように愛らしい瞳をくしゃっと細めて、眩しく笑っていた。
思わず彼の頭に手が伸びる。

「ただいま。口煩く言うが、"お兄さん"、な」
「はーい、お兄さん!」

このやりとりは何度目だろうか。
少年のはずむような返事に、俺は苦笑いをした。

「じゃあお兄さん、今日の晩御飯は?」

いかにも子供らしい問いかけに、「これだよ」と抱えていた紙袋を机に置く。
少年はまるで宝箱を発見した海賊のごとく中を覗き込むと、ぱっと顔を輝かせた。

「パンだ!買ってきてくれたの?」
「ああ。前に食べたいと言っていただろう」
「覚えててくれたんだ……へへ、嬉しいなぁ」

愛おしげに袋の中をみつめる姿は、なんとも健気だった。
そんな彼をみつめる自分もまた、健気なのだと知った。
すっかりご機嫌な少年を横目にキッチンへと向かい、昨晩こさえた薩摩芋と林檎のポタージュをあたためて食卓に出す。
本日の主役を紙袋からバスケットに移し変え、椅子に身を沈めれば、二人だけの晩餐のはじまりだ。

「美味いか?」
「すっごくおいしいよ、これ!」
「はは、そりゃよかった」
「なんていう名前のパンなの?」
「クロワッサンだが……」

食べたことないのか?
そんな言葉は、直ぐにすり潰して嚥下した。
問うべきではない、と強く思った。
彼の哀しい笑顔は、二度とみたくなかった。

「へー、くろわっさん」

少年はひとくち、またひとくち、と丁寧に齧り付いていく。
その表情は住処を見つけた小動物のように穏やかで、少しばかり安堵する。
ふと窓の向こうに目をやると、爪の切れ端のような形の何かがぽっかりと浮かんでいた。

「少年、見ろ。月が綺麗だぞ」
「ほんとだ!」

少年は閃いた表情を一瞬見せたのち、

1/9/2023, 5:44:31 PM

結露越しの窓をなぞって覗いた、陽の昇らぬ朝にしなやかな雪が降り注いだ
ゆうべ、粉砂糖が降り積もった、ガトーショコラを頬張ったばかりだったからか
天使が羽を落としたあとみたいな、細やかな街の白がやけにかわいらしく映った

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