『三日月』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
三日月
「月が綺麗ですね」
そう呟き微笑む彼女は
月から舞い降りた女神のように美しかった
「僕もちょうど同じことを考えていました」
ゼロ距離の2人を、三日月と満天の星だけが
見つめていた
まだ明るい夕方に
にっこり笑ってる
チェシャ猫の口みたいな
三日月を見た
母がおやつの時間によく焼いてくれるパンケーキ。まんまるな形をした黄金色のふわふわ生地、光を反射してキラキラと輝くメープルシロップ。
僕の苦手な甘いもの。
疑いようのない幸福を笑みによって周囲に撒き散らしながらパンケーキを頬張る妹と、打って変わって浮かない顔でパンケーキをつつく僕。
気を使って半分にされているパンケーキと、足りない量を補うため添えられた惣菜パンの空袋を見つめる。
頭の片隅で母が「残してもいいよ」と言いながら眉を下げた気がしたから、一口だけ齧った。
パートを終え、帰ってきた我が家のリビング。各々が部屋で好きに過ごしているから電気は消えていて薄暗い空間のテーブル上、ラップをされた平皿の上の三日月。
廊下で煌々と輝く電灯の光を反射したそれに出迎えられる。およそひと月に1回、日常の風景。
『三日月』
三日月
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2024.1.10 藍
三日月と聞いて何を思い浮かべる…かあ。
地球の衛星で、日光に代わって夜の世界を支配する光の光源。
言うまでもなく天体の「月」。
これが多分普通。
でも私的には断トツでクロワッサン。
サクサクの生地にバターの香りに、
適度に弾力のあるもちもち食感。
違う違う、それは今回関係ない。
クロワッサンはフランス語で三日月の意味なんだっけ?あの時の君のドヤ顔すごかった。
そうそうあの形ね。三日月で一番美味しいと思う。
月よりパン。
「三日月」
三日月
月をモチーフにした曲を聴きながら指で月をなぞる
ひとりの帰り道
人類が月に生活圏をつってから、今年でちょうど百年。
もはや月で生まれて、月で死ぬ人も珍しくない。
俺も月で生まれて、月から出たことが無い人間の一人である。
月では基本的に何でもそろうので出る必要が無いのだ。
食う寝るところ、住むところ。
それでもって娯楽もある。
何一つ不足するものなんてない。
だから俺も、月から出ないまま死ぬんだろうなと思っていた。
だが何の因果か、100周年のこの年に、俺は出張で地球に行くことになった。
常々死ぬまで月から出ないと吹聴していただけに、同僚からからかわれた。
それはいい。
自分の行いのツケを払っただけだ。
困ったのは地球のことを知らないこと。
月と同じように過ごせるとは聞いたことがあるが、細かい違いを何も分からない。
そこで、地球に行ったことのある同僚を捕まえて色々聞きだした。
そいつも当然、俺をからかってきたが、知りたいことは教えてくれた。
地球行のシャトルの手続き、お勧めの料理店、重力は覚悟しろ、などなど。
だがその同僚は最後に妙なことを言った。
地球に行くと価値観が変わるぞ、と。
それを聞いて俺は笑ってやった。
そりゃそうだろ、初めて地球に行くんだぞ、と。
そして数日後、俺はシャトルから降りて、地球の大地に立っていた。
たしかに重力はキツイ。
ウンザリするほどキツイ。
だけど価値観が変わるほどじゃない。
あいつも適当なことを言ったな、と思って空を見上げる。
特に理由はない。
自分の生まれた場所を見て、安心したかったのかもしれない。
その時、俺は確かに価値観が変わったことを自覚した。
地球から見た月というのは、写真で見たことがある。
でもここから見る月は全然違った。
地球に来てよかったと、そう思えるほどに……。
たくさんの星に囲まれて黄色く輝く三日月は、写真で見るよりも何倍も幻想的だった。
三日月の言い伝えを調べてみた
[三日月にお祈りをすることで幸運に恵まれる]
昔の僕なら祈って幸せになるなんてと
捻くれたことしか言わなかったろう
人とは思っているより変わるもので
君と貴女の為なら深く祈ることだろう
二人の幸せが僕の幸せで
どんな悲しいことも辛いことも
乗り越えるし我慢も出来るんだ
いつまでもこの幸せが続きますように
三日月に照らされながら祈るのも悪くはない
まさかそんなことを思う日が来るなんて
全く予想だにしなかったよ
澄んだ夜空に浮かぶ
細い細い月
明日は新月
ひとつのサイクルの終わりであり
始まりでもある
気持ちも新たに
一歩ふみだそう
#三日月
#82
「月が綺麗ですね。」
これは、どの意味で言ってるのだろうか。文学的な意味でとらえていいのだろう。でも君ならいい。どっちの意味でも嬉しい。話しかけてくれたから。
「綺麗な三日月。もう死んでもいいや。」
お題「三日月」
三日月
月って、満月の時には
ニュースで話題になったりするけど、
三日月はほぼないよね。
けど、絵文字だったり、
アニメだったりでの月は、
三日月な事が多いよね。
三日月の方が一目で月って分かりやすいからかな。
三日月の時って、
細くてパリって割れそう。
月はいつも変わらないのにね。
paki
改札を出て、いつものようにコンビニに寄り食べたくもないコンビニ弁当とお茶を買う。店から出てはぁ、と息を吐くと白いかげろうが立ちのぼった。寒さのせいで空気がしんとしている。空は塗りつぶされたように黒い。怖いくらいに真っ暗で、見ていると吸い込まれそうな気分にさせられる。
不意に、今日1日の出来事が頭をよぎった。同じチームで仕事をしてる3つ下の後輩がミスをした。物理的には彼の失態だけど、後輩に指示をした私のミスという扱いにもなる。真っ青になった彼の肩を叩きながら上司のもとへ謝りに行った。そこまでは良かった。でもその上司が彼にかけた言葉が許せなかった。
“きみ、向いてないんじゃないの?”
正直、入社して1年も経っていない子に向かってそんなことを吐き捨てるお前のほうがどうかしてると思った。何が人材育成だ。何が風通しの良い職場だ。私が新人だった時の直属の上司は“若いうちにどんどん失敗しておけ”、と笑って言ってくれたのだが、今の上司はそんな気配など毛頭ない。はっきり言って、あの人とはこの先2度と仕事をしたくないぐらい嫌いだ。
だが、ミスはミスだから当たり前だが悪いのはこちらである。後輩の彼に私の配慮が足りなかったのも原因の1つであるだろう。項垂れて退社する彼に私は声をかけた。誰にでもあることだよ。次、巻き返せばいいんだから。いつか笑って話せる日がくるよ。どの言葉も、私が先輩に言われたことのあるものだった。その昔、私も盛大なミスをした。それはもう、顧客を巻き込む一大事に発展するんじゃないかってくらいの規模だった。だからぶっちゃけ、今回の彼のミスは私から大したことないのだけど。真面目な彼は今も引きずっているんだろうな。無口で無表情な彼だけど、きっと自分を責めてるだろう。それを考えると明日どう声をかけていいのか悩ましい。
私は買ったペットボトルのお茶で暖を取りながら、もう片方の手でスマホを操作した。彼のトーク画面を表示する。お人好しなのは先輩譲りだ。自分でもよく自覚している。
“お疲れ様。明日は切り替えて一緒にがんばろう。あんなハゲ親父なんて気にするな٩(๑`^´๑)۶”
あんまりしつこいと嫌がられるから。これくらいにしておこう。無口なあの子は見てくれるかな、と、思っていた矢先に既読表示がついた。
“先輩が俺の先輩で良かったです”
「……かわいいとこあんじゃん」
大して会話もしたがらない少々生意気な彼が、こんな優しいメッセージを返してくれるなんて意外だった。自然と口元が緩んでしまう。きっとこれなら、大丈夫。任せてよね、先輩は明日もしっかりあなたの指導をしますよ。そう思いながら、スマホからもう一度暗い夜空に目を向ける。真っ黒な空の中に白い三日月が浮いているのが見えた。さっきは全然見つけられなかったのに、今はすごく目立って見える。たったそれだけのことなのに、なんだか得をした気分になった。明日も自分らしく、前向きに。ひっそり言い聞かせながら私は帰路を歩いた。
反射鏡。私達を照らす星。
ふと夜空を見ると、それは三日月。
鋭く、ゆりかごのようなその姿。
実現することはできないけど
あのゆりかごの上で眠りたい。
三日月
日が沈み、街は暗い青に染まった。
口数少なく、
隣を歩くあなたを見れば、
西の空に三日月が細く光っている。
弧を描く光が、
まるでナイフのように胸を刺すから、
押し込めていた本音が溢れてしまうよ。
あなたに触れたいと。
#142
お題「三日月」
年末に親友から「今日は満月コールドムーンって言うみたいキレイよ」ってLINEが入ったの
言われた通り、帰り道見上げた空は雲もなく澄んでいて月がキレイに見えました
連絡くれてありがとう
冬の凍てつく寒空が三日月の鋭さを際立たせる
寒いね…
三日月は欠けているのに
綺麗に見える
だから人も欠けているから
綺麗に見えるんだよ
#10 【 三日月 】
実は私、近視で乱視であります。
なので三日月をメガネ無しで眺めると
何本も月があるように見えてしまいます。
まあ、スーパーで売ってる一房3、4本程のバナナを
横倒しに置いた状態がこれに近しい存在でして。
風情とギャグの両方楽しめたりしますな。
三日月さんは。
(三日月)
大口開けて、一口がぶり。
「あ、それ……」
偶然見付けたクッキーにかぶりついた。その絶妙なタイミングで誰かが帰ってくる。
小さな声に振り向くと、居間の入り口で呆然と佇む弟と目が合った。その目は涙目だ。まさか。
「後で食べようって、思って、た、のに」
「ええっマジで! ごめん!」
嫌な予感は的中した。妙な場所にあったのは、弟なりに隠してあったという訳か。
よっぽどショックだったのだろう。
抱えていたサッカーボールは弟の腕をすり抜けて、廊下の向こうへ消えて行った。それにも全く気付かずに、弟は俺の手元を凝視している。
もう少し小さな一口にしておけば良かった。そうすれば半分ことも言えたのに、さっきの一口が悔やまれる。
クッキーはこの一枚で最後なのだ。
「のっ残り、食べる、か?」
申し訳無さと後悔でいっぱいで、三日月型とも呼べないほどに小さくなったクッキーを、苦し紛れに差し出した。
案の定、それは逆効果。
寧ろ止めを刺してしまった。
弟はついに泣き出す。
「兄ちゃんの馬鹿ー!」
「本当にごめん!」
(2024.01.09 title:005 三日月)
夕暮れの西空に、今にも沈みそうな少し恥ずかしそうにしている月。私は皆んなを照らす明るい満月なんかよりも、私にそっと話し掛けてくれそうな三日月が好きです。