2日分いっぺんに失礼致します。「あたしの魔法少女のコスチュームって水色だけどさ、やっぱいろんな色の人がいたの?」
敵を倒して変身を解く時にふと疑問に思ったことをマスコットに尋ねると、相手は大きく頷いた。
『いたよ、もちろん。テレビなんかに出てくる魔法少女も沢山のカラーリングがあるだろう?』
「ん〜、あんま見ないけど……でもそっか、戦隊ヒーローとかと同じ感じなら色とりどりなはずだよね」
『そうだね。そして、キミたちの色は変身するまで分からない。だからキミが水色の理由を答えることはできないよ』
あたしが聞こうとしていた質問を先回りされてしまった。なんだか凄く不服な気持ちだ。……まぁ、いいけど。
「……でも、あたしもし決められたらピンク色が良かったな」
『…………それはないんじゃないかな』
「……ないって何」
あたしが口を尖らせながら聞けば、マスコットは平然として顔で答える。
『ピンクは主人公の色だから』
わけが分からなかった。何を言っているのかも、言葉の意味も。『主人公の色』だからあたしがピンクになれないってことはあたしが主人公じゃないってことだ、今この瞬間に。
「……いないんじゃないの、魔法少女」
『いないよ。今この世界にキミ一人しか魔法少女はいない』
「じゃあなんでそんな言葉が出てくるの」
『一人しかいなかったらその人が魔法少女、なんてのは過ぎたる幻想だと思うよ。主人公は主人公になり得る人がなるものだ、埋め合わせで生まれるわけじゃない』
それじゃあまるで、あたしは主人公にもなれないのに魔法少女として戦っているみたいじゃない。酷い言葉だと思った。
『傷つかないでくれよ、カオル。君自身もそうは思っているはずだ。だからピンクじゃないんだから』
心中を察せないような様子でそう言う姿はやっぱり人外のようだった。
第八話 色とりどり
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空を見上げれば三日月が輝いている。もし本当にあの形だったらきっとあそこに座れたんだろうな、なんて空想が頭の中に浮かんだ。
時刻は二十一時。まだ今日の敵が見当たらなくて街を徘徊……パトロールしてるところだった。
『……いないね』
マスコットもさすがに困ったような顔でそう呟いた。
「出てこない、なんてことあるの?」
『さすがにない。そして興味ギリギリに敵がくるなんてこともないはずだ』
「そっか、ギリギリだったら次の日の敵に影響があるかもしれないしね」
『そういうことだよ』
マスコットは不安そうな顔だった。初めて見たかもしれない、そんな顔。
人外じみてて基本的に静観してて、あたしが例えピンチになってもきっと顔色ひとつ変えそうもないマスコットが困惑したような顔で辺りを見回している。そんなに敵が出ないっていう事が大変ならしかった。
『…………カオル、何か今失礼なこと考えなかったかい?』
「あたしは今、認識を改めたところだったけど、あんたにとっては失礼だったんだ」
嫌味たっぷりにそう言えばマスコットは少しキョトンとしたあと、眉を下げるような行動を示した。
『…………失礼ではあるよ。キミがピンチになっても困らないだろうと、そう思われているんだろう?』
「それはそうでしょ。困ったとしても助けに入ることはできないんだよね、くらいは言いそうじゃん」
『……事実ではあるけども』
マスコットはそう言った。でも、とすぐに言葉を続ける。
『……それでも、キミのことを大事に思ってはいるんだよ。顔色ひとつ変えないことはない。それに』
言葉の先は聞こえなかった。上から大きくなにかが振ってきてそれを瞬時に避けた瞬間にはもう紫色のもやがかかった結界内にあたしはいて、ワンテンポ遅れて地面が大きく割れたから。
『敵だよ、カオル』
「分かってる」
あたしはそう言ってリングに口付けを落とす。光に身体か包まれて魔法少女のコスチュームに変わる。
「……マスコットも心配してくれるみたいだし、今日は気合い入れて頑張っちゃおうかな!」
そんなふうにあたしはカッコつけて行ってみたけど、マスコットは酷く冷静に言った。
『どんな時だって気合い入れて戦ってくれると嬉しいな』
第九話 三日月
1/10/2026, 9:06:45 AM