『モンシロチョウ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
[モンシロチョウ]
どうやら昨日、学年のマドンナが死んだらしい。
朝のホームルーム、先生の口から突然飛び出したその言葉を理解するには、多少の時間がかかった。
彼女の死は、わからないことが多いようだ。
先生から死んだ以上の説明は無く、次に言ったのはこれからやる行事の埋め合わせをどうするか。
まだ彼女が死んだという現実を受け入れられていない人もいるのに、随分酷な先生だ。
まあ、でも、多分、彼女は望んで死んだ。
隣の机に置かれた白い花瓶を見ていると、この前のことがハッキリと思い起こせる。
『モンシロチョウってね、成虫だと一週間くらいしか生きられないの』
いつも通りの鈴の様な声で、彼女は言っていた。
『蛹になって、体をどろどろに溶かして、苦労してやっと可愛い姿になったのに、たったの一週間』
外を見つめる整ったその瞳が、やけに憂いを帯びていたのを覚えている。
『だからあの可愛らしさを永遠にするには、標本にするしかないの』
悲しそうな、嬉しそうな、この世全ての感情をぐちゃ混ぜにしたような声色だった。
彼女の願いは、望みは、叶ったのだろうか。
【モンシロチョウ】
私はどこにでもいる不特定多数のうちの1人
周りより劣っているわけでも
秀ているわけでもない
なんの特徴もない
ただ白くて小さい
そこらじゅうで見かけることができる
他の人たちとほとんど同じ柄で
大勢の中にいたら私のことなんて気づけないでしょ?
アゲハチョウとかモルフォチョウだったら
気づいてもらえたのかもしれないのに
何度も考えたけど
私はモンシロチョウであって
他のものにはなれない
でも人間に1番身近な存在は私だよね
珍しくはないけれど1番馴染みがあるし有名
そう考えたら自分がモンシロチョウであることも
そう悪くはないかなぁとか思っちゃったりして
作品No.40【2024/05/10 テーマ:モンシロチョウ】
昨日まで
薄緑の蛹だったモノが
少し目を離したときには
白い蝶へと姿を変えていた
学校から持ち帰ってきた
ひとつの蛹
虫なんて
苦手だし 興味もなかったけれど
外の世界へ放したとき
私の周りを一周して
飛び去っていったような
そんな気がして
気のせい かもしれない
そんなモンシロチョウの思い出
モンシロチョウが庭先を飛ぶ。古ぼけた木板の縁側でじっとそれを見る。障子越しに背中に飛んでくる争いの声から耳を背けるようにそれを気にもせず飛ぶ白い羽ばたきを目で追う。残された思い出を忘れたかのようにあるだろうと信じていた遺産がないことを受け入れられない者たちが怒りと戸惑いと落胆の囀りを上げている騒がしい室内から逃れるように縁側に逃げ込んだ。そんな自分を迎えるかのようにひらひらと白が飛ぶ。どうせ持っていけないのだからと身軽になっていきたいもんだと笑っていたあの人は思い通りにしたらしい。ろくに見舞いにすら来なかったのだどこに残されたものが譲られ処分されたのかなど知る由もない。モンシロチョウの向こうに呆れたように笑うあの人を見た気がする。
モンシロチョウ
アゲハ蝶のように派手ではないけど、
可愛らしい白色の綺麗な蝶
蝶の中では目立たない方かもしれないけど、
それも1つの個性だと思う
人間も人それぞれ個性がある
自分らしく生きれたらそれでいい
【モンシロチョウ】
私のいる場所は今日も雪
花も咲いていない
まだまだ冬の国
あー早く
春を運んで来てくれないかな…
1人になんて決められないさ、
この世は魅力的な人たちで溢れている。
一瞬でもいいから私も選ばれたかった。
/「モンシロチョウ」
【25日目】モンシロチョウ
完全オフの日
喧騒を離れて実家に帰った
今日はポカポカ陽気だし
オヤジと一緒に畑に行く
あの時
友達に付き添わなかったら
俺にとって畑は日常になっていた
運命の不思議さに思いを馳せていると
ひらひらと目の前に現れた
ずっと飛びながらくっついてくる
もしかしたらこの子は
「そうじゃないほうの俺」の
嫁さんだったかもしれない
俺と巡り合わなかったことで
この子は人間になれなかったんじゃないか
俺はこの子にそっと手を差し伸べた
そして腕にとまったこの子にキスをした
#元ヤンカフェ店員と元ギャル男モデル (BL)
Side:Mikoto Ohtaki
9年前の春。当時23歳だった俺は、今までつるんできたパリピ仲間とは全く違うタイプの興味深い少年に出会った。
子どもたちが無邪気にはしゃぎ回っている中、彼1人だけが妙に浮いていたのを今でもよく覚えている。
…というよりかは、異様な存在感のある彼に誰も近づきたがらなかった。と言ったほうが正しいかもしれない。
『…何あの子、超クールじゃん…!』
初めて彼の姿を見かけた時の俺の感想がこれだった。
何故ならヴァイオリンが弾けるヤンキー中学生なんて、初めて出会ったから。
明らかにヤンキーだと分かる着崩した学ラン姿で淡々とヴァイオリンを奏でる彼と、彼の周りをひらひらと舞うモンシロチョウとモンキチョウの対比が、俺の目には美しく映った。
『Bravo~!すごいねぇキミ、ヴァイオリン弾けるの?』
『…ぁあ゙?テメェも俺のこと冷やかしに来たのか』
あの頃の彼が俺の褒め言葉を素直に受け取らなかった理由を知ったのは、確か彼がたった1人でヤンキー集団を制圧したのを目撃した時だった。
彼が言うには、最初は純粋にヴァイオリンが大好きだったけど、それを「ヲタク」だとバカにしてきたヤンキー集団を蹴散らしていたらいつの間にかヤンキーたちから恐れられる存在になっていたのだという。
そんな彼の名前は、樋上勇河。
『キミはすごいよ、勇河クン!だからヴァイオリンを好きだって気持ち、絶対なくしちゃダメだよ?はい、お兄さんと約束しよ〜う!』
『はぁ?お兄さんって…どう見てもオッサンの間違いだろ』
『も〜、またそうやって照れ隠しする!俺さんこれでもモデルだし!大瀧実琴って知らない??』
『あ?…あ〜、誰だっけか』
『うわ、ひっど〜ぉっ!!』
それから俺はモデルの仕事の合間を縫っては、勇河の演奏を聴きに公園を訪れるようになった。
バリバリのヤンキーだった中学生の頃は俺に聴かれるのをウザがっていたのに高校生になってからは俺を追い返さなくなって、そのうえ俺のことを「実琴サン」と呼んでくれるようになって…。
そして9年経った現在の彼はというと、まだヤンキー時代の口の悪さが抜けてなくてほんのりトガッてはいる…けど、音楽カフェで働きつつ大好きなヴァイオリンを続けている。
「ゆ、う、が、く〜ん♪ 来ちゃった♪」
「…はい、今日は何しに来たんすか実琴サン」
「ヴァイオリン聴かせて!」
「声がでけぇ!…てか変装しろよアンタ目立つんだから」
「え、俺さんがファンにお忍びがバレた時のこと心配してくれてるの…??え、優しいね…?」
「あ゙???んなわけあるか、とっとと注文決めやが…じゃなくて、注文決めてください」
このツンツン具合と完全には脱ヤンできてないところが可愛すぎ~~!!!!
他のお客さんと話している時は割とちゃんとした敬語で話しているのに、俺がカフェにお忍びで来るとあの頃から変わらないこのつれない態度が復活するもんだから俺の頬は緩みまくってしまう。
「何笑ってんすか」
「ん〜?別にぃ~??あ、いつもので!」
注文したアイスコーヒーを待っている間にカフェの外に目をやると、ずらりと並んだ花壇にモンシロチョウが遊びに来ていた。
モンシロチョウを見ていると、当時13歳の勇河少年のあの姿を思い出す。
あの日からずっと彼がヴァイオリンを好きなままでいてくれたんだなと思うと、何か心に込み上げてくるものがある。
「…ハイ、お待たせしました」
「おっ!ありがとうございま〜す!じゃ、後でぜっったいヴァイオリンの演奏聴かせてね?」
「気ぃ向いたらな」
…な〜んて言いつつ、いつも弾いてくれるくせに。
俺は勇河の反応にクスクス笑いながら、彼の淹れてくれたアイスコーヒーをお供にまったりのんびりと休日を楽しんだ。
【お題:モンシロチョウ】
◾︎今回のおはなしに出てきた人◾︎
・大瀧 実琴 (おおたき みこと) 攻め 32歳 人気モデル(元ギャル男)
・樋上 勇河 (ひかみ ゆうが) 受け 22歳 カフェ店員(元ヤン)
「モンシロチョウ」
偏見だけれど、モンシロチョウってキャベツの周りを飛んでるイメージがある
私だけだろうか
ふわふわと飛んで
どこへ行く
ひらひらと飛んで
探してる
モンシロチョウは
わたしかな
ゆくあてのない
旅に出る
モンシロチョウ。
それは白くて、綺麗な蝶だ。
モンシロチョウを見ると子供の頃を思い出す。
モンシロチョウ
Cafe Zeffiroの店先には、ちょっとした花壇がある。定番のマリーゴールドから、ボリュームのあるユーフォルビア、朝顔のような花をつけるペチュニア、ちいさな薔薇のようなカリブラコア、料理に使えるローズマリー、バジル、ラベンダー。
春先から初秋まで、色とりどりの花々が、Cafeで安らかなひとときを求める人々の目を楽しませている。
「奏斗〜、土どこしまったん?」
「セラフが知ってる〜」
「後ろだな、持ってくるか」
カフェがお休みの、とある昼下がり。目に新しいエプロンをつけて、軍手をして、小さなスコップを握って。セラフと雲雀のふたりは、せっせと庭いじりをしていた。
やはりこれだけの量だ。流石に全くお手入れをしない、というわけにもいかず、とは言え雲雀ひとりで作業するには余りにも膨大だ、ということで、セラフに協力を仰いだ次第である。
四季凪と風楽はそれを傍目に見ながら、テラス席で書類仕事に追われている。
「あ、モンシロチョウ。」
暖かな陽気、それを囲む親しい友人。
まるで平和の象徴と言わんばかりに、真っ白なモンシロチョウが空を駆けていった。
今日の夕食はみんなでイタリアンパーティ。でっかいビザでも食べよう。そう思いながら、セラフは手を動かしていた。
モンシロチョウ
白い蝶々
子供の頃は青虫
大人になってキレイになり
フワフワ飛んでたら…
怖い蜘蛛に捕まったり
人を癒したり
人の一生も少し長いけど
同じようなもんだな…
【モンシロチョウ】
子どもの頃、春になるとモンシロチョウが飛び交う当たり前の風景の中にいた。あの頃、モンシロチョウはどこからきてどんな風に成長してチョウになるのかなんて考えたこともなかった。そのくらい当たり前の風景だった。
そもそも春に卵を産むモンシロチョウはどこからくるの?
キャベツしか食べないの?
昔から存在するならキャベツが出てくる前は何を食べていたの?
中年になった今、まるで子どものような疑問が浮かんでは消える。きっと今ならネットで調べればすぐ分かることかもしれない。でも、調べないでおこう。不思議だな、と思う気持ちが対象物に対して畏敬の念を抱くなら。モンシロチョウ、摩訶不思議なり。
flamme jumelle
モンシロチョウ
春麗らかな日々を送ると見かけるのは虫の仲間たち
私は特に虫は嫌いでもなく特別に好きでもないのだけど
花を見ると虫を見る その虫を鳥が食す
その鳥は狐や狸に狩られる
という自然と営み、生存競争も同時に見る
でも本当に不思議な世界 いつもある世界なのに
視線を変えるだけで何かが変わる
前世はモンシロチョウと言われても
それならば青虫の時代があって
そこから蛹になり
モンシロチョウとして羽化した
最後に番に会えたのかわからないけれど
それはきっと【他の生き物の役に立てることができた】
のだと、自分は誉をもらったと思える
それはだれも信じなくてもよい
【大歓声】
モンシロチョウ
お話の中の虫はともかく現実は苦手だ
だから、モンシロチョウもあまり好きではない
―けれど、蝶のふわりとした飛び方は嫌いではない
白いレースが舞うように飛ぶ蝶は綺麗だ
私もいつかそんな風に空を飛びたい
行き着く処が何処なのか?
まだ『知らない…』
口に放り込んだ
チョコがおへその奥で
柔く甘く作用する
白地にそばかすの私は
モンシロチョウ
何処に向かうか分からないけど
蜜をすう
明日に向かって
❈ モンシロチョウ
「蝶のように舞う、あいつ」
ひらひら。ふわふわ。へらへら。
あっちへ行ったり、こっちへ来たり。
捕まえようとしても、ひらり。
確信を突こうとしても、ひらり。
花畑を舞うような、あいつ。
ひらひら。ふわふわ。へらへら。
あいつは誰にも本気にならないの。
誰もあいつの口説き文句を本気にしてない。
ただ、あたしだけが、あいつに手を伸ばしてる。
────モンシロチョウ
モンシロチョウ。それを聞くと、小さい頃はゲームでよく手捕まえてお金稼ぎをしたことを思い出す。
今にして思えば、もっと効率的なお金稼ぎを考えてすれば良かったのに、当時は無駄なことをしていた。
けれど、そのぐらい昔の頃の私の方が今よりもずっと純粋にゲームという物をプレイしていたのだから成長に悲しさを覚える。
下心と欲に忠実になってゲームをするのも楽しいが、昔の頃のように純粋な気持ちでゲームをしたい。
もう、あの頃には戻れないことを知ってしまった初夏の夜の話。