モンシロチョウが庭先を飛ぶ。古ぼけた木板の縁側でじっとそれを見る。障子越しに背中に飛んでくる争いの声から耳を背けるようにそれを気にもせず飛ぶ白い羽ばたきを目で追う。残された思い出を忘れたかのようにあるだろうと信じていた遺産がないことを受け入れられない者たちが怒りと戸惑いと落胆の囀りを上げている騒がしい室内から逃れるように縁側に逃げ込んだ。そんな自分を迎えるかのようにひらひらと白が飛ぶ。どうせ持っていけないのだからと身軽になっていきたいもんだと笑っていたあの人は思い通りにしたらしい。ろくに見舞いにすら来なかったのだどこに残されたものが譲られ処分されたのかなど知る由もない。モンシロチョウの向こうに呆れたように笑うあの人を見た気がする。
5/10/2024, 2:24:31 PM