『ミッドナイト』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
甘く鮮やかなオレンジ色
明るく華やかな黄金色
柔くも強い乳白色
「何で『真夜中』なのにこんな色が多いの?」
「次のは黒っぽいのだから……。んー、でもなんでだろうね。バーの光の下で綺麗だから、とか?」
「あれ、てっきり『女の子を酔わせて持ち帰るため』って言うのかと思った」
「そっ……そういう悪い文化があるのは否定しないけど……」
<ミッドナイト>
腹を撫でる。
軽い衝撃は君の足が蹴ったから。
きっとあの花が咲く頃に、
この世界に産声を上げる君が、
今から愛おしくてたまらない。
君が無事に生まれ、育ち、
やがて大人になるのが
今から楽しみで仕方ない。
だからこそ。
窓の外、青空の下、
この世界が君にとって
永遠に平和であることを
どうしても、願ってやまない。
<安心と不安>
フラ、フラ、フラ。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり。
時にはぶつかった電柱に謝ってみたり。
時には先輩と肩を組んで歌ってみたり。
最後は後輩にタクシーに押し込まれて帰宅する。
そう、これが私の、
#ミッドナイト
明けない夜を連れてくるよ。祈りに似たもっと無様な何かで瞼を覆って、痛々しさを噛み殺した。萎れない花があるだろうか。砕けない星があるだろうか。
その向こうで無邪気に笑っていた誰かは、そのままここで、死ぬのだろうか。軽やかなステップ。重ねた手の平の温かさ。恥ずかしそうな笑顔のピントがずれてしまわないように。美しいまま終わればいいのに。
灰色がかったフィルムと、もう照準の合わせ方を忘れ去られたカメラで世界のどこまでが写し取れるだろうか。運命が自らを嘲るように笑った気がした。放してしまえば崩れ落ちる思い出を、眠りにつく一瞬前のゆらめきを。もう一度。もう一度。
震え声の旋律。涙のダンスホール。風に靡く髪と広がるスカート。事切れてはじまる回顧録。さあ、私に身を委ねておくれ。
ミッドナイト
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2024.1.27 藍
草木も眠る丑三つ時。
それは人ならざる存在が活動する時間。
昔は人間が出歩かないのをいい事に、妖怪や魑魅魍魎が悪事を働くと信じられていました。
なぜ人間が出歩かないと言えば、当時は外出用の灯りは日常的に使われていなかったからです。
昔の灯りと言えば、提灯を思い浮かべると思います。
ですが当時ろうそくは高級品で、一本4000円したとか。
だからと言って使わないで外に出れば、何も見えないので非常に危険なことは明白です。
なので庶民で使う人は少なく、夜になればすぐ寝ていたと言われています。
しかしそんな真夜中にとある街道を歩く男がおりました。
彼は提灯も持たず、月の光だけを頼りに道を歩いております。
この男、名を甚平と言う。
なぜ甚平がこんなところを歩いているのか。
それは、近頃このあたりに妖怪が出るという噂を聞いたからです。
なんでも真夜中に歩いていると、『みっともないど』と言って馬鹿にしてくるというのです。
そして何度も何度も『みっともないど』と言い、どんなに身なりに自信がある伊達男でもがっくりと肩を落として帰って来るのです。
ですがこの甚平、ご近所から天邪鬼として有名でした。
そんなに自信を奪うのが好きなら、逆にこちらが妖怪の自信を奪ってやろうと思い立ちます。
そこで自分が立派な服を着ていれば、『みっともないど』なんて言えず自信を無くしてしまうだろうと考えました。
そこで甚平は借金をこさえ、良い服を買い付けました。
何も知らない人が見ればどこぞの若旦那に見えるほどです。
なるほど、これなら誰にも『みっともない』なんて言われることは無いでしょう。
ただ服を買うことばかりに意識が行ってしまい、提灯を買い忘れていたのはご愛敬。
しかたがないのでそのまま出かけることにしました。
そうして甚平は噂の街道に差し掛かりますと、やはり声が聞こえてきました。
「みっともないど、みっともないど」
なんと妖怪は甚平の姿を見ても『みっともない』というのです。
さすがに甚平も怒りました。
怒った甚平は、声の正体を確かめ、妖怪を成敗しようと考えます。
そして耳を澄ませ、声がどこから聞こえてくるのか探ります。
その間にも『みっともないど』の声は絶えることがありません。
「そこだ!」
甚平は声のする方に向かって走り出し、声の主の元に駆け寄ります。
そこには突然入って来た甚平にびっくりし、立っていたのは年端も行かぬ子供でした。
「貴様、この格好を見て『みっともないど』とは何事だ」
「ええっ。なんのことです?」
「とぼけるな。貴様が毎晩『みっともないど』と言っているのは知っているんだぞ」
と言って甚平は刀を抜くようなそぶりを見せます。
もちろん甚平は侍ではなく刀も持っていないので、抜くフリだけです。
ですが子供には効果がありました。
なにせ暗くて刀を持っていないことが分からず、良い服を着ていたので、てっきり侍だと勘違いしたのです。
「いえ、お侍様。私ここで何もやましい事をしておりません」
「嘘をつけ。ではここで何をしているのだ」
「何と言われても……
ここで外国語の練習をしていたのです」
「練習?」
「はい。寺小屋で外国語を習っているのですが、苦手な単語がありましたので……」
子供の答えに甚平は一瞬ぽかんとします。
「一応聞くが、どのような単語か?」
「はい、midnightです」
「は?」
甚平が聞いたことが無い言葉でした。
「どのような意味なのだ?」
「真夜中と言う意味です。たまにうまく発音できないので練習していました」
「その、なんだ、毎晩貴様は『みっどないと』と言っているのか?」
はい、と子供は頷く。
「嘘をつくでない、貴様『みっともないど』と言って――
待てよ、みっどないと、みっどおないと、みっともないと、『みっともないど』。
嘘だろ」
甚平は呆れてしまいました。
「お侍様、どうかお許しを。お侍様を馬鹿にするつもりは無かったのです」
「安心しろ、処罰はせん。
俺は侍ではないからな」
「ですが、いい着物を着ています。どこかの偉い人ではないのですか?」
子供の質問に、甚平は少し考えます。
「訳を話すと長いのだが、買ったのだ」
「お金持ちですか」
「いや、お金は借りた。
まあ俺に返せるあてはないから、家族の誰かが返すだろうよ」
それを聞いた子供は呆れてしまいました。
「それ、いくらなんでも、みっともないど」
日付が丁度変わり、深夜0時。
残暑の残る9月半ばでも、この時間になれば幾分和らぐ。海風がひんやりと崩したスーツをはためかせる。
「ここが海神様が出る海ですか…。」
水死体が引き揚げられている場所と近いといえば近いが、少しだけ入り込んだ場所にある。
「引き揚げ場所と離れてるのは、潮の流れのせいだろうな。」
スーツを肩に引っかけた鳶田が防波堤の上を歩きながら一人言のように呟く。
工業地帯と山の隙間。工業排水のある場所のせいか、人通りは昼でも少ない。
秋口とはいえ、暑さの残る季節。それでも鑑識官の守山は鳥肌が立っているのを感じていた。
テトラポッドの隙間から飛沫をあげる波が、蠢く人の手のように見えるのも、時間帯のせいだけではないだろう。
「幽霊の出るお約束は丑三つ時。海神様が出るのは黄昏時。この時間は不気味なだけで何もないさ。」
両腕を摩る守山に気づいてか、目黒が肩を軽く竦める。先ほどのような、からかいの素振りはない。
「丑の刻参りって知ってる?」
「藁人形を打ち付けて呪うやつですよね。」
「そう。かなり有名だよね。それの正しい呪い方って知ってる?」
「え、いや…藁人形を打ち付けるだけじゃダメなんですか?」
「そんな簡単に呪えたら世の中不審死だらけだよ。呪いってのはそれなりの覚悟が必要だからね。」
エンジンを切らずに停めている車のラジオから、ミッドナイト通信の間抜けな時報が響いた。
「恐らく、海神様への呪いも、願いを書いて流すだけじゃない。」
漆黒の中でも、興奮した目黒の目がギラギラと輝いているのは分かった。
ミッドナイト
真夜中に覚醒すると、
何か、今日と明日の間のような
感覚におちいる。
また、眠りに入るまでのふとした不安。
大丈夫。
朝は、明日は、くるからな。
グッバイミッドナイト。
我が愛猫は、何事もなかったように、
目をチラリと一瞬開けて再び眠りについた。
にゃんざぶろう。
【ミッドナイト・ゼリー】
形にならずに散らばった言葉を型に入れ、ゼリー液を流して冷蔵庫へ。
夜がいっそう深くなったころ、再び冷蔵庫のドアを開けると、眩く白い光を浴びせられてしまった。
これで今夜も私に「夜」は来ないだろうと確信しながら冷蔵庫から出した型から慎重に中身を外し、皿の上に無事に着地させると、ぷるんっ♪と波打つ深夜のゼリー。
この間、月面に着陸した探査機にもこんな緊張があったのだろうと的外れな思考を流しながら、
うやうやしく皿を持ち上げゼリー越しの夜を愛たら、私は皿の上のこの美しい世界を崩す神になった。
お題「ミッドナイト」
手塚治虫さんの晩年の漫画に「ミッドナイト」という作品がある。主人公は深夜タクシーのドライバー。
1話完結でなかなか面白かったけど…どういうわけかブラックジャックが準レギュラーになる。(もともと「ブラックジャック」が好きで、その延長でこの作品も読んでいた)
ただ最終回が「えー!?」って感じの終わり方をする。ちなみにこの最終回は秋田文庫版しか掲載されてない。ネットで知ったけど単行本化の際に「結末があまりにも意外だったため」という理由で単行本では最終回だけ掲載を見送られていたからだったとか。
うん。確かにそんな感じもする。最終回を読むまでは(ブラックジャックを出さなくても)実写化もできそうなくらい話は面白かったし、ブラックジャックを出すのならアニメ化もありだなと思わせる感じだったんだけど…あれだとちょっと地上波とかBSじゃ無理かもなぁ…とも思える。Netflixだったらいけそうな気するけど。
そんな本作品、昨年「ミッドナイト ロストエピソード」という単行本未収録11話分などを含めた作品集が発売された。
読んでみたい気持ちもあるけど…4950円するので未だに迷って買ってない。
テーマ:ミッドナイト
まだまだ
夜は長い。
朝が早い
仕事をしていると
いつも
夜は
寝てしまう。
でも
明日は
休みだから。
眠い目を
こすって
朝まで
カラオケ
ダラダラ
おしゃべり。
実家暮らしで
出来なかったことを
わたしは
今
やり直してる。
#ミッドナイト
月と星が見下ろす街は
いつもの姿を消し去り
音を無くした世界で
日が落ちた時間を楽しむ私に
背徳感と特別感を与える。
また日が昇ることを
恨み、楽しみにしながら
忙しなさを与える太陽が
嫌らしく起こす事に
目を逸らしながら。
–ミッドナイト–
小学生の頃、世界は朝の7時から夜の9時までだった。
中学生の頃、世界は朝の6時から夜の10時までだった。
高校生の頃、世界は朝の5時から夜の11時までだった。
以降の世界は、0時から0時までになった。
なにを手に入れてなにを手放したのか。
今夜もいつのまにか、0時を過ぎている。
♯ミッドナイト
宵も更けた頃、うっすらと見える雲の下で疲れた街にネオンライトが光る。北風と月明かりのコントラストに恍惚とする暇もなく、蛍の腹の中のような通りを終電を逃すまいと忙しく歩く。だが視界の端に子連れの新妻を認めると、矢庭に我が家庭の混乱の記憶が舞い戻ってきて、駅に向かう足先を留めた。そして階段の下の方の手摺に寄っかかって缶ビールを呷る。幸せな妄想に意識を沈潜させた後は、黒革のバッグを枕にしてようよう寝る。
ミッドナイトに居候する侍の一幕である。
ミッドナイトのドライブ、久しぶりに楽しい。
深夜の首都高は、スピードが出せて気持ちいい。
会社にいた時に蓄積された、鬱屈した気持ちを解き放つ。
側面にビルの光が並走する。
窓を全開にして風になるような感覚に浸る。
まるで自分一人だけがすきにできる世界に来たみたいだ。
明日の朝は寝不足で会社に向かうことは分かりきっている。
だからこそ逃避する。
全てのことを忘れるように。
深夜の空気は東京と言えど澄んでいて、気持ちがいい。
「おいしい...。」
風をひと通り浴びて、もう充分と感じたら、治安の悪い音楽をかける。
普段の自分からなるべくかけ離れている、腹の底から重低音が響くような、ガラの悪い曲だ。
ラップが聞こえてくる。
何を言っているのかは分からないし知ろうともしない。カッコ良ければそれでいい。
首都高をぐるっと1周したら、それでタイムオーバーだ。
それで満足したら万々歳。
物足りない感じがしたらなるべく人がいない、人工物の少ない、遠くへ、遠くへ、行くのだ。八王子や千葉方面など、とにかく自然の多いゆとりのある場所へ逃げる。
そこで癒されるまで走る。空気を感じたり、重低音ラップをきいたり、時には海に行く。
それが自分の機嫌の取り方。
なるべく長く自分と付き合えるように、好きなことをさせてあげる。
やるせない気分は逃避してやり過ごす。
そんな日々はどこまで続くだろうか―――と思いを馳せるが、そんなものは分からないし考えなくてもいい。
どうせ答えは出てこない。
今日も、明日のエネルギーを充電するため、ギアをあげる。
ミッドナイト
真夜中って子供の頃
寝なさいと言われて起きてなかったけど
大人になって夜ふかしして
出かけたり楽しい
たまに眠れない時は
大人になっても少しこわい
ミッドナイトブルーが
あたりを包みこみ
明日を紡ぐ眠りにつく。
題「ミッドナイト」
récit œuvre originale
ミッドナイト=真夜中の12時。
こんな時間までには寝れる体質が良かった。
でも小さい頃はこんな時間には寝てたな〜。
#『ミッドナイト』
No.28
『ミッドナイト』
これは私の通り名。
私は夜の遅い時間帯にだけ現れるスーパーヒーロー。
みんなを助けてる。
私はみんなにエンターテインメントを与える。
少女が警察を翻弄して最後は勝つ。
それがいつものシナリオ。
私はどこかの警察署に忍び込んで個人情報のデータを盗み出して夜の中を警察と追いかけっこする。
なんで情報を抜いてるのかって言うと、情報屋としても活動してるから。
住居侵入罪で追われてるけど、捕まったら個人情報漏洩も加わって罪が重くなるかな笑
ある日、いつものように忍び込んで情報を取ったあと電気をつけて警察に私が来たことを教えて逃げたら、いつもはパルクールなんだけど、今日は違った。
どんどん警察の人数が増える。
中心と思われるところにはいつも指揮してる人じゃない人がいて、すごくニコニコしてた。
まるで私をいつでも捕まえられるとでも言いたいかのようで詰まんなかった。
私の活動を支援してくれる人達が沢山いる。
政府は個人情報漏洩が何度も怒ったため信頼がガタ落ちしてたから私のことにも対処出来ない。
私が逃げ切ることは国民のみんなの娯楽になってる。
私が逃げ切れるかどうかを賭けて遊んでる人達だっているぐらい人気なの。
だから私は今日も逃げ切ってみせる。
相手が誰であろうとね。
信号機の色は真っ赤だった。それは暗闇を少しだけ暴き、かつての世界が顔を覗かせていた。私は交差点の前で立ち尽くす。光は足元まで及ばない。もう、白か黒かも見えなかった。
ミッドナイト。私だけがここにいる。
赤が警告を意味するのだとは薄々気づいていた。点滅するサインに合わせて、世界は姿を変える。次に総てが露わになったとき、もう私の知る世界はない。
私だけがここにいる。
ここに取り残されている。
いつまでも点滅を続ける赤信号。進んでもいいのだ。分かっている。分かってはいるけれど。
交差点を行き交う車の音は聞こえど、肝心の車は見えない。
あぁ、いつから私はこうなってしまったのか。どうして、私だけがここに取り残されてしまったのか。
暗闇の交差点。歪な世界の欠片。
私は真夜中に独り、ずっと、取り残されている。
『ミッドナイト』
ガソリンは満タン
準備はOK
車に乗り込み
エンジン音を響かせる
車はゆっくり走り出し
どこまでも走っていく
高速道路の橋を駆け抜けて
スピードは緩めるない
行き先のない日は
夜が明けるまで走り続ける
END-名も無き小説家-