見咲影弥

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 信号機の色は真っ赤だった。それは暗闇を少しだけ暴き、かつての世界が顔を覗かせていた。私は交差点の前で立ち尽くす。光は足元まで及ばない。もう、白か黒かも見えなかった。

 ミッドナイト。私だけがここにいる。

 赤が警告を意味するのだとは薄々気づいていた。点滅するサインに合わせて、世界は姿を変える。次に総てが露わになったとき、もう私の知る世界はない。

 私だけがここにいる。
 ここに取り残されている。
 
 いつまでも点滅を続ける赤信号。進んでもいいのだ。分かっている。分かってはいるけれど。

 交差点を行き交う車の音は聞こえど、肝心の車は見えない。

 あぁ、いつから私はこうなってしまったのか。どうして、私だけがここに取り残されてしまったのか。
 
 暗闇の交差点。歪な世界の欠片。

 私は真夜中に独り、ずっと、取り残されている。

1/27/2024, 7:38:49 AM