『バレンタイン』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『バレンタイン』
「本命」でもなく、「義理」でもないのに渡せないプレゼント。道理に反する恋にだってマナーがあると知りつつも、用意していた箱の包装紙を破りながら涙したFebruary 14。
きみがいつになく、デパートに行きたいって言うから手袋は忘れずに着けてきた。エスカレーターで何度も建物の中心を回りながら少しだけ見えるそのフロアの雰囲気を、サブスクみたいに味わう。
手袋を買ってくれた階でドキッとしたけれど、予習していた気分になっただけだった。
上階に行くエスカレーターが途切れた最上階。催事場の看板があるそこ。
「あっ、バレンタイン…」
「この時期はきれいでおいしいものが集まりますから、わくわくしますね」
「そうだね」
ちょっと甘ったるいチョコレートの香りが広がるフロアに、様々な店舗の自信作がひしめき合う場所。バレンタインフェアと銘打たれたショーケースに宝石みたいに並ぶ商品たち。
特別感が刺激されるデコレートはどれも個性があってきれいなのに、どうしてかチープに見えていた。
照明とか空気感とか、特別感っていう感じじゃなくて異世界みたい。何だか、今日のぼくのバレンタインの気分と、この場のバレンタインの空気感がちぐはぐしているみたいで少しだけ、いやだなって。
だけれどきみは楽しそうにショーケースを覗きながら、たまに販売員さんの話を聞いて。
ぼくは母鳥の後ろを追いかける卵みたい。
「あれ」
ふと気づいたら、きみが紅茶のブースで販売員さんに捕まってた。すっごく茶葉に誇りを持っていそうなひと。きみがひとつ質問すれば十になって返ってくる。
ふんふん、と頷いていたきみは、けれど何も買わずに結局催事場を出てしまった。
「デパ地下に行きましょう」
「うん」
何か買わなくてよかったの、って声が喉で引っかかる。ぼくは出せずじまいの一言に口の中が少し苦くなって、胃もたれっぽくなっちゃう。
デパ地下は相変わらずのきらびやかさだけれど、日曜じゃないからさほど――――思ったよりひとは少なかった。有名店の店舗できみがずっと気になっていたらしいダックワーズをいくつか手に取る。
「サクラのダックワーズ?」
「えぇ。ちょっと前に動画で見て気になっていたんです。すぐに売り切れてしまうみたいで、買えてよかった」
「ふぅン」
お店で配っていた試飲コーヒーは季節感のある、チョコレートを溶かしたもの。あたたかくて、ちょっと苦味のある甘さ。
「どうでした、コーヒー」
「ん、おうちでも同じようなのつくれそう。チョコの種類で味も変わると思うから」
「ふふ、ついてますよ、ここ」
「え゛ッ」
飲み終わった紙コップをくしゃっと握り潰しながら、口の端をハンカチで拭う。……確かに、ちょっとついてた。
恥ずかしい。
「買いたいものは買えましたし、道が混む前にそろそろ帰りましょうか」
「うん」
いつの間にか持っていた買い物かごをレジに置くきみは、すっごく楽しそうな横顔をしている。
「きれいな包装もしてもらえて、テンションが上がりますね」
「そうだね」
****
「ということで、バレンタインのプレゼントです」
「え」
おうちに戻ってきて、試飲したコーヒーを思い出しながら家にあるもので再現できたときだった。一番手前にあったカップにできたコーヒーを淹れて、ソファに向かう途中、きみがそう言って渡してきたの。
高見えする紙袋に、さっき買っていたダックワーズ。それからスーパーで売っているちょっとお高めの、板チョコじゃないチョコレート。
いつもだったら気になるけれど手には取らない品々。それがなんだか、ホッとするくらいうれしい。
ふわふわしていた居心地が、すっかりきみのとなりに収まった気がしたの。
「たまにはこういう詰め合わせのバレンタインもいいかと思いまして。あ、ひとつだけ、お高いチョコレートを入れておきましたから、味の感想、楽しみにしてますね」
「……んふ、だいじにたべるね」
「えぇ」
#バレンタイン
料理の苦手な君が唯一キッチンに立つ日。
毎年君の作る少し不格好で
甘さが控えめなスイーツが私は楽しみなのだ。
私が食べる横で不安そうな顔で見つめる君が。
"美味しいよ"と言うと安心したように頬を緩める君が。
私は愛おしくて仕方がない。
年に一度だけ君の料理が食べられる
この日が私は特別幸せに感じるのだ。
来年も君のスイーツがまた食べたい。
ーバレンタインー
バレンタイン
若い頃、職場の女性でチョコ渡してたなぁ。
今は、友チョコか自分へのご褒美で買う人増えてるよね。
個人的には、今のが良いと思う。
自分の若い頃もそうであれば良かったのにな。
…と、考えながら、
娘に貰ったチョコレートを食べている。
これはこれで、良きだな。
バレンタイン
毒を入れた容器に毒を入れたチョコを入れたよ
甘い甘い毒なの
食べないの?
使い慣れてない台所で使い慣れてない包丁を使って
頑張ったんだよ?
食べないの?
こんなにも好きでいてこんなにも愛しているんだよ
甘い甘い愛なの
受け取らないの?
マシュマロ?クッキー?キャンディ?チョコ?
全部全部嫌いなの
二度と贈り物なんかしないで
好きでいさせ続けないで
バレンタイン
今日は、一年に一度のチョコの日。
セイントバレンティヌスに乾杯。
甘いバレンタインのチョコに私の気持ちと共に渡す。
若き日の私は、好きなひとに渡せなかったな。
家の前まで行って、渡せず、泣いて帰ってきた、
あの日。
それが、今は、渡せる。
なぜか?
当時から好きな人が、今の旦那様。
もっと、早く渡してくれよ。
そうすれば、早くに気持ちがわかったのに。
とのことでした。
今年も手作りです。
いつもありがとう。
我が愛猫は、僕にもご褒美は?
と、にゃーんと鳴いた。
にゃんざぶろう
チョコとかしただけなのに、
白い塊の凶器が誕生した
【バレンタイン】
「バレンタイン」
はいども=ボクです♪
今回はイコール↑にしてみました!
ただそれだけのことです(笑)
バレンタインと言えばチョコ、チョコと言えばバレンタインですね♪
男性の皆さんはチョコ貰えましたか?
そして女性の皆さんは誰かにチョコあげましたか?
最近では女性が女性にあげる友チョコとかも流行ってるみたいですし
大体の女性はあげてたりしてるのかな♪
でもそれだったら男性が男性にってのもありだったりする気がしますよね(笑)
学生のころはクラスの男友達がバレンタインの日になると
ソワソワしてたりしてたなぁって思い出しました(笑)
何しろ本命チョコじゃなくても女子から何かを貰うって
男からしたら嬉しいものですからね♪
たとえそれがチロルチョコのような小さなものでも
なぜか特別な感じがして、その日はもう1日中
テンションルンルンハッピーな気持ちでいっぱいですよ(笑)
そりゃもう男は単純ですからね
そんなことで世界の誰よりも幸せな気分になれるんですよ♪
あ、これ大袈裟に言ってるわけじゃなくてマジなことなんで(笑)
たぶん男性陣なら分かるはず♪
と、いいつつボクはあまり意識してこなかった人間です(笑)
今年のバレンタインも会社の女性陣からチョコを貰って(←もちギリチョコ)
あっ!そっかもうバレンタインかって思い出したくらいです♪
でもやっぱり貰えると嬉しいものですね♪
甘いの大好きだし(←ただの甘党)笑
あ~…お返し考えないとなぁ…
てことで今回はこんな感じで、=ボクでした♪
またねン(^^)ノシ
甘いものが苦手なあなた
食べれない強いウイスキーボンボンを自分に買った。
キスの口実に一緒にチョコを食べることにするの。
『バレンタイン』
バレンタインデーの前日から気合いを入れて手の込んだケーキを作り、色味を抑えたかわいいラッピングに手紙を添えて憧れの先輩に手渡ししに行ったけれど、受け取ってすらもらえなかった。
「付き合ってる人いるから、ごめんね」
付き合っている人がいることを知らなかったのでショックは一層大きい。学校からどうやって家まで帰り着いたのだったか。気がつくとダイニングの椅子にぼんやり座っていて母のただいま、という声で我に返った。
「……おかえり」
「バレンタインおつかれさま」
ぽんと肩を叩いた母は仕事着から部屋着に着替え、お湯を沸かしてコーヒーを入れ、これ貰うねと宣言した。
「……ダメ」
「えー、残念」
「私も、食べるし」
色味を抑えたかわいいラッピングは母の手によって開封され、チョココーティングされた小さめのケーキは一刀両断されて二切れに分けられた。手紙はそそくさと回収した。
「うん、おいしい!」
「うん、我ながらおいしい」
コーヒーとケーキをしばらく無言で交互に口に入れて食べ尽くしてしまうと気持ちが少し落ち着いた。
「ケーキ屋さん並みの出来でお母さんびっくりしちゃった」
いつの間にやらいろいろと作れるようになってたのねなどと言いながら母はフォークやケーキ皿を洗う。
「ねえ、いっそパティシエ目指したらいいんじゃない?」
そんな簡単にはなれないよ、とかなんとか言いつつも、その日褒められた記憶とパティシエを目指したら、という何気ない一言は胸に深く残り続けた。
いつからか
バレンタインは
手作りと
吾も嬉しむ
ほんのつまみ食い
弱者に牙を剥くところとかさ、人を下に見てるところとかさ、私はすごい親父に似てると思うんだよ
抗ってはいるんだけどさ、無意識って非常に恐ろしくてさ、咄嗟に出てきた言葉に聞き覚えがあると思ったら、全部親父が私に言ったことなんだよ
親父が言ったことにすら聞き覚えがあるように感じてさ、それは婆ちゃんがよく言うことだって気づいたときさ、本当に私自身が汚染されてるように感じたんだよ
あの豚みてえな汚ぇ臭え面垂れ下げて恥ずかしげもなく生き続けてるゴミに私すら似てきてるんだよ
客観的に内面のシルエットだけでみた私はもうあいつらと見分けがつかないんだよ
今日こそあいつらを焼いてあたしもしななきゃいけないと思って毎日生きてるんだよ
親父に似てて嫌いってガキの頃母親に突き放されたこの体をひとりで抱き締めてごめんなさいごめんなさいって眠ろうとするとさ、視界の隅で白とか黒とかいろんな顔が弾けるんだよ
恐らく女なんだけどさ、見覚えがなくてさ、こうしてる間もあたしは刻一刻とあいつらの体液に犯され続けてるんだよ
思いバレバレバレンタイン
苦く甘い思い出
全部思いをばら撒いて
バックに入れた板チョコは家に帰ると砕けてた、どうせ後から砕くから。
砕いて溶かして形にして。気づけば全部友達か。
あまりをもらう、合コンの数合わせ。楽しくもないのに、少しの期待膨らます。ほろ酔いの帰り道、コンビニで買った割引のケーキ。
【バレンタイン】
今年もチョコは6人分。
ガトーショコラにブラウニー
プリンに生チョコに
オレンジ生ショコラケーキにチョコクランチ。
それぞれ想いを込めて推したちに作ったチョコ。
イメージを形にしたチョコ。
来年はどんなの作りうかな〜♡💭と
悩む時間すらも愛おしい。
バレンタイン/待ってて
「放課後待っててくれる?」
なんて言われたら、期待しちゃうんだけど!
当たり前でしょ?
今日バレンタインなんだよ。
授業なんかうわの空だよ。
#172
バレンタインにチョコレートをあげたいが、彼はチョコレートアレルギーである。
だからバレンタインでは毎年、カレールーを送ってカレーを作ることにしていた。
だが、今年はいつもと違い、隠し味を入れることにする。
いつものように食べる彼に私は笑いかける。
浮気した、あなたが悪いんだからね。
最近のバレンタインは、恋人に渡すためじゃなく、自分に買うためのものになっているらしい。
義理面倒だし男の子は甘いもの苦手な人も多いからその流れはとても大歓迎だが、世間の認識はそんな簡単に変わるものなのか、とも思う。
これもまた、インターネットの代物なんだろうな。
と、デパートに並ぶ美味しそうなチョコレートを眺めて一人思う。
「バレンタイン」
あの日、受け取ってもらえなかったチョコ。
受け取ってくれなかったと当時は悲しかった。
でも、それは彼の優しさだと今は思う。
早めに気持ちに踏ん切りをつけられたのは、
チョコを受け取ってもらえなかったから。
今でも彼を好きになったことは、素敵な思い出。
どこかの誰かから貰ってきた
可愛らしいラッピング。
丸っこい文字。
「女の味」がする
チョコクッキー。
「貰ってきたから食べる?」と
貴方がシラっと私に言うから
私が食べたけど?
どこかの誰かの気持ちを
美味しく頂いた日。
私だけの特権。
私が勝つんです。
絶対に。
「ごめんね!笑」
題 バレンタイン
著 塵芥 詩歌
「カズキくん、これ受け取ってくれる?」
そう言って袋に入った小さなカップケーキを差し出したのは、いつもクラスメイトに囲まれている人気者、梨花だった。
「みんなには内緒だよ。先生に没収されちゃうから。」
口元に人差し指を当てて、梨花はまつ毛の長い目をぱちぱちさせる。カズキは信じられない気持ちながら、たどたどしくお礼を言って受け取った。
もちろん、義理チョコ以上の意味はないと分かっている。それでも、自分とは無縁の可愛い女の子だと思っていた彼女が、わざわざ用意してくれたというだけで感に堪えなかった。
バレンタインの翌日、梨花は救急車で病院に搬送された。なんと彼女の水筒に、虫よけ剤が混入していたというのだ。
突然のことに教師やクラスメイトたちが混乱する中、カズキだけは驚かなかった。
カズキは知ってしまったのだ。クラスの女子たちは、大人しくて抵抗もできないような男子に、バレンタインを利用したとあるイタズラを仕掛けたのだと。女子たちのリーダー格である梨花は、陰で心底可笑しそうにこう言っていた。
「ねえねえ、あのキモい奴にさ、塩がめちゃくちゃ入ったチョコあげたらどうなると思う? あはは!」