『バカみたい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私が片想いしてた時は辛かったな。
相手の言動の一挙一動に期待したり落ち込んだり。
今思い返してもバカみたいだった。
相手にコントロールされているみたいでそれも気に入らなくて恨み節も混ざっちゃったりして。
でも、ひょんなことから彼との仲が縮まって、私の想いがバカみたいじゃなくなったのは、例えられないぐらい嬉しかった。
今でも、嬉しいのよ?
星と植物を愛してる、誰よりも大好きな貴方へ。
物語の中の物語を読んで、
「私にはこんなことないんだろうなぁ」
って嘆くけど
結局のところ
イケメンや美女と恋をすることになる主人公がいる。
その主人公たちの話を読んで
「そんな気配ないけど、もしかしたら私も_ 」
…なんて、淡い期待をする私。
いつまでそんな夢見てるつもり?
ほんと、バカみたい。
【バカみたい】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/22 PM 0:10
「そういえば、野球の試合を見てると、
時々指をキツネの形にしてることが
あるけど、あれってなんのサインなの?」
「……2アウトってことじゃないかな」
「――なるほど! 謎が解決したよ!
ありがとう、真夜(よる)くん」
「WBCの優勝が決まって、日本中が
沸いてるっていうのに、何を今更
バカみたいなこと聞いてるのよ……」
「大丈夫だよ~、宵ちゃん!
ペッパーミルパフォーマンスは
今回ちゃんと覚えたから!」
=====================
創作なのに、ちょいちょい現実と
リンクしがち。
WBC優勝おめでとうございます。
仕事で決勝戦は見られなかったけど!
次の休みの日にのんびり見ようと
思います。結果が分かってるって安心。
何日も寝れない日が続いた。
寝なければと目を瞑ると、彼が瞼の裏に浮かんでくる。怒りの様な喜びの様な、色んな感情に振り回されて、歪んでいるような。
それが最後に見た彼の表情だった。
それからどうなったか、記憶の無いまま「居なくなった」と彼の事をよく知る人から伝えられて、寂しくて悲しい、なんて良く分からず、ただ静かに状況を飲み込む。
最後に会う数週間前、彼から別れ話を切り出されて、戸惑ったが一瞬で「そうですか」と、ただその言葉を受け入れた。
特に何も言わず、表情一つ変えなかった彼が、私を殺す時にだけ複雑に歪んだのが心残りで苦しくなる。
浸かっていた顔を水から出す。
温水のプールなのに、体中を包む水は冷たく感じる。ただそれもどうでも良くなってきて、水底に自分をまた沈めた。
重力に逆らって空を見ているよりも、水の中でただ光の揺らめきを見ている方が楽しい。
寂しくて悲しい事も、その感情すら忘れられるような気がして、水の泡が光に吸い込まれるのを見つめる。
手を伸ばしてそれを掴もうとしたが、すり抜けて消えてしまい、何も残らなかった。
結局愛しているかどうか分からずに、関係は終わってしまって、私の愛も嘘だらけだったんだなと嫌になる。
彼に対して何を思っているのか分からなくて、好きでもないのに「愛している」と言われて、愛なら分かると手を取ったのに、最後には一人で何もせず沈んでいる。
残ったのは何色にも光ることの出来ない、透明な自分だけで、彼の最後の表情の意味すら感じ取る事が出来なかった。
息が続かなくなってきたけれど、このまま沈んでいけたら苦しさも忘れるだろうか。既に私は死んでいるのかもしれないと思うと、もうどうでも良かった。
彼を愛していると、私みたいなやつでも、
誰かを愛せると勘違いをして、
自分だけ浮かれて、本当に、
バカみたいじゃないか
あんなにも共にやってきたのに
いきなり居なくなるなんて
同じ道を進んできたのに
この先も共に進んでいくものだと思っていた
共に作り上げていき
楽しい時も苦しい時も乗り越えて
ここまで来たのに
いきなり別々の道を歩むなんて
本当は分かっていた
いつか別れが来ることを
君はどんどん進み続ける人だから
先に行ってしまうんだね
でも君は先で待ってるんだろう
だから必ず追いついて
また共に歩んで行こう
待っていろよ友よ
いつかバカみたいって笑い合おう
バカみたい
バカみたいって
誰に言われたっていいの
私の気持ちは私のものだ
失敗だらけだ。みっともない。
的から外れたボールの後が壁を汚している。コンクリートに落ちた汗の染みが夥しい。照りつける太陽が、体から水分を搾り取っていく。
ふらふらと日陰に置いた飲み物に寄っていって、拾い上げようとしたところでペットボトルを蹴って倒してしまった。緩くなっていた蓋が外れて、中身が地面に溢れ広がった。
「ああ〜……」
声だけ出ても体は動かず。追いかける気力がない。
まぬけな声をあげながらダークグレーの水たまりを眺めていると、背後から声がかかった。
「大丈夫か」
振り返れば彼がいる。逆光になって顔は見えなかったが優しい口元をしていた。手には私が投げたボールを拾い集めたカゴが握られていた。
彼がそうして集めたということは、まだ今日の練習は終わらないのだろう。
眩しい太陽から目を背ける。
もうやめよう。向いてない。ふらふらだし。
そう言いたくても、彼が脇に挟んだボトルを差し出して、「もう一セット頑張ろう」と言えば私は受け取ってしまう。言われた通りもう一セット頑張ってしまう。
バカみたいだと思う。
でも、こんなにふらふらでも、的に当たらなくても、それでも私はやれると彼は笑顔で言いきってくれた。
そうやってバカみたいに信じきってくれるから、私もバカみたいな努力をし続けていた。
バカみたい
ほんとに、本当にバカみたい。なんであんたが死ぬの? どうして?
どうして私を助けたの? あんなに冷たくしていたのに。あんなに突き放したのに。
…私はあなたのことが嫌いだったはずなのに。あなたに対してこんなに気持ちがほだされるなんて、バカみたい。
こんな気持を私の中にとどめておくなんて無理よ。
私はゴメンなのよ。
だから、今から相当馬鹿なことをするわ。
「スゥ…」
バカみたい。本当に、バカみたい。私、本当にここから飛び降りるのよね?
ここは高層ビルの屋上だ。私はあいつが死んでしばらく経った後、ある噂を耳にした。
『あそこにある、ここらへんで一番大きなビルには時を戻せる神様が小さな神社に祀られている。そこで屋上から飛び降りれば、時を戻してくれる』
という噂だった。
もちろん最初は疑った。だってあそこに神社なんてものはなかったはずなんだから。でも、少しだけ気になって見に行った。
そしたら、本当にあったんだ。神社が、そこにあるはずのない神社が。
そこで完全な疑いから、半信半疑までランクが上がった。
でも、もう我慢が出来なかった。あいつが勝手にかばったくせして、私にとんでもない置き土産を遺していったんだ。あいつは本当にバカだ。
だから、もう楽になりたかったんだ。でも、私は死ぬ気なんてひとつもない。だから、ここから飛ぶのも死ぬためなんかじゃない。
覚悟を、決めるんだ。
…行ける、行くんだ。
頼んだよ、神様。
トンッ
私はふわりと飛ぶように、ビルから飛び降りた。
私は目が覚めるとあいつの横にいた。
日の位置や周りの様子を見るに、今は下校中のようだ。
ここなら、まだあの時までは時間があるな…。あれが起きた原因は私が横断歩道でカバンから小物を落としてしまったのが原因だった。
あの時はたまたまカバンを開けっぱなしにしてしまっていた。今回はきちんと閉めなければ。大丈夫だ、何も問題はない。あの横断歩道を渡りきればもう問題はないはずだから。
「…大丈夫? ぼーっとしているみたいだけど…。調子悪い?」
「ッ…。別に、なにもない」
「そう? ならいいけど」
どうやらかなりの時間考え込んでいたらしく、あいつから心配の声がかかった。
「そうだ、次に渡る交差点のことだが…。お前はなにがあっても気にせずに渡れ。いいな」
まあ、こんなことを言ってもあいつが言うとおりに動いてくれるとはあまり思わないが、一応言っておく。
「え? うん。でもなんで?」
「なんでもない。別に普通に渡ればいいだけのことだ」
「そ、そっか。わかったよ」
そこからしばらく沈黙が続いている。
ドッドッドッ
私は柄にもなく緊張していた。それはそうだろう。一人の命が私の手にかかっているのだから。
正直バカみたいだ。あいつを助けようとしていることも、あいつを助けようとしてあのビルから飛び降りたことも、実際に過去に戻っていることも。
でも、もうそんなことを考えていてもしょうがない。
…もう大通りに出てしまった。もう、横断歩道はすぐそこだった。
横断歩道までたどり着いた。今は赤信号だ。この信号が赤に変われば…。
ピッポ ピピポ ピッポ ピピポ
信号が青に変わった。二人で歩き出す。
大丈夫だ、もう半分は渡り終わった。あと、あと少しだ。よし、もうこのまま行けば無事に着ける…。
どてっ
後ろで誰かが転んでいる音が聞こえた。
思わず後ろを振り向く。そこには横断歩道でコケてしまい泣きじゃくっている子供。
そして横目に見えるのは、猛スピードで子供に向かってきているトラック。
「おい、お前は…」
私があいつを止める前にあいつは子供へと向かっていた。
あいつは子供の元へと向かい、そのまま私たちが先程までいた方に戻ろうとしている…が、トラックはもうすぐそこまで来ていた。
あいつのみだったら、きっと助かる。でも、子供を抱えながらは無理だ。
私は、気がついたら走り出していた。
ドゴッ! …ドサッ
二つの衝撃音があたりに響いた。
ああ、私は死ぬ気なんてものはなかったのに。
気がついたら、私は走り出していた。あいつの背中を突き放していた。気がついたら…、私はトラックに跳ねられていた。
あいつがこちらへ走って来ているのがわかる。大粒の涙をボロボロと流しながら。野次馬の一人が電話しているのが見えた。おそらく救急車を呼んでいるのだろう。
私は思っていたより冷静だった。
「…ほん、とう、に、バカ、み、たい」
「ねえ、なんで? なんで君が轢かれているの? ねえ、どうして? …死なないでよ」
あいつは轢かれて醜い様になっているだろう私を見つめてそういう。
弱々しく震えていた。
「お願いだ、から、お前、は、私み、たい、に、は、なる、なよ。い、き、てく、れ」
「ねえ、最期みたいなこと言うのやめてよ! 死なないでしょ? ねぇ、死なないでしょ?」
こんなことをいうのはバカバカしいとは思っていた。でも、言わずにはいられなかった。私が気づくよりももっと前から
「わた、しは、あん、た、が、すき、だった…み、たい、だ」
「…え?」
ああ、本当に柄じゃない。私がこんなことをするなんて。私が他人にこんな感情を抱くなんて。私が他人のためにこんなことをするなんて。
本当に、ほんっとうに…
バカみたいだ。
ほんとうに、君はお馬鹿な人だよ。…大丈夫、君は僕が助けるから。
片思いだった人を追いかけて
届かないから背伸びをして
本当の自分を隠して
接してた
嫌われたくなかったから
後からわかった
自分がその人に執着してたこと
バカみたいだと笑ってくれよ
背伸びまでして追いかけて
大好きだった人を失ってしまった私を
執着だって本当は気づいてたのに
気付かないふりして必死でしがみついてた私を
だいたい自分で自分のことを
『バカみたい』
って思ってることが多いかな。
それだけ浅はかな行動を
衝動的にとっている
ってことなんだろうけれども
その度に反省しつつも
一向に良くなる気配なし。
周りがいいひと過ぎて
支えてくれているから
私は私でも成り立っている。
なんて幸せ者のバカなんだ!
ある男子が、自分のことを度々見てるような気がして
それで少し気になってきて、
結果的に好きになってしまったことがある
実際には見てたわけじゃなかったのに
なんて自意識過剰なんだろう
バカみたいー!
でも誰かを好きになってたあの頃楽しかったな!
バカみたい
「バカみたい、また泣いてる」
彼女が子供の時、一度だけキスをしてあげた男の子がいた。
足が遅くて頭が悪くて貧乏な家の子で、いつもいじめられて泣いていた。ある時いじめられて怪我をしながらうずくまっているその男の子があまりに目に余ったので、彼女は涙で濡れるその頬にそっとキスをした。
驚いて涙が止まった男の子の明るいブラウンの瞳を、彼女は綺麗だと思った。
「ぼ、僕と付き合ってください!」
跪いて小さな花束を震える手で差し出す男の瞳は子供の頃と変わらない明るいブラウンだ。緊張を漂わせるその瞳に見つめられて彼女はため息をついた。
「バカみたい、アンタと付き合うわけないでしょ」
そう言われてがっくりと肩を落とす男に背を向け、彼女は歩き出した。
彼女は駆け出しのモデルであり、街の酒場で美声を披露する歌手であり、その美貌で何人もの男をパトロンに持つ娼婦だった。彼女は金と力のある男にしか振り返らない。それ故に金をかけて自分を磨くことも怠らない。金も力もない平凡な男の相手をしている暇はないのだ。
彼女は満たされていて幸福だった。
若く美しくスタイルも良い。彼女の為に金を出す男はいくらでも居た。特定の相手など必要ない、愛だの恋だのと時間を使うのはバカなことだと思っていた。
戦争が始まるまでは。
モデルの仕事は激減し、歌を披露していた酒場は休業となった。彼女を支援してくれた金のある男たちは国内から逃げていった。
彼女が何年も努力してようやく作り上げた、金に恵まれ人に求められる生活は、たった数ヶ月の間に崩れ去っていた。
彼女は貯金はほとんどしておらず、自らを美しく魅せるために収入の殆どを費やしていた為に国外に逃れる事もできず途方に暮れた。
(バカみたい…私は結局何も持ってなかったんだ)
自暴自棄になりかけていたある日、あの男はまた彼女に声をかけた。
「あの、これが最後かもしれません…どうか受け取って下さい」
手の中には以前よりも小さな花束があった。この混乱の中、よく手に入れたものだと彼女は初めて男に感心した。
「…バカみたい、あなたのお母さんにあげたら?」
小さな町だ。噂もすぐに耳に入る。一人息子であるこの男が出兵することになり悲しみのあまりに寝込んだという話も。
彼女の言葉に小さな花束を持つ男の腕がだらりと落ちる。その哀れな姿に眉を寄せ、ため息をついて彼女は男の頬にキスをした。
「帰ってきたら私の顔が隠れるくらい大きな花束を持ってきて、そしたら受け取ってあげる」
男は耳まで赤くし、明るいブラウンの瞳を輝かせると満面の笑顔で大きく頷いたのだった。
「僕と付き合ってください」
「今さらこんなしわくちゃのおばあちゃんに」
彼女の顔が隠れるほど大きな花束を差し出したのは、穏やかな瞳の老人だった。その瞳の色は子供の頃から変わらない、綺麗な明るいブラウンだ。
老人は杖で体を支えながら、跪いて満面の笑顔を五十年連れ添った妻へ向けた。
「俺たちの結婚記念日だからね」
「…バカみたい」
そう言いながら、彼女は笑顔で彼の頬にキスをした。
バカみたい
とある人物が最後に発した言葉だった。
誰に向けた言葉ではない。
虚空を見つめる眼は、嘆きと絶望で塗りかためられていた。
だから、誰も慰めの言葉をかけることはなく、視線を僅かに下へと向け、その「うらみ」の言霊を背負っていた。
時代に生き、移ろい行く世に信念や尊厳を殺された人物の言葉は、ありきたりながらも重く、残酷なものであった。
バカみたい
バカみたい
本当にバカみたい
『バカみたい』
「別れた方がいいと思う」
薄暗い車の中で言い放たれた刃が、ひどく深く突き刺さったのは覚えてる。
後はただただ子供のように泣きじゃくり、困らせていたことだけ。
仕事が忙しく、ドタキャンや短時間のデート。
自分本意なあなたに愛されているのか不安になるばかりだった。
そして、その不安は見事に当たる。
もう私の所に二度と戻らない想いを知り、
「もう連絡しないし、連絡しないで。」
最後まで仕事を言い訳にするあなたに半ば呆れながら、それでも愛しい想いを残したまま…
私たちは静かにスマホから互いの存在を消した。
それから半年。
街で貴方に会った。
小柄で可愛らしい女性と小さな小さな赤ちゃん。
「いつも主人が……」
女性がそう口にした瞬間、全てを察した。
いや、始めからわかっていた。それでも何処かで信じていた。
始めから、あの人は私に、想いが無かったのだと。
「バカみたい」
中睦まじい家族と離れてから、ポツリと呟く。
バカみたいに恋をしていた。
それが一方通行だったとしても、私はバカみたいにまっすぐにただ1人を想っていたんだ。
そんな自分を誇らしく思いたい。
俺さ、お前のことが初めて好きになった人で良かったって思ってる。
お互い、両思いだって分かった時は、すんごいはしゃいだっけ。
それから色々あって、一緒にバカみたいに笑って、バカみたいに泣いて。
それでも、お前と色んな思い出作れて、サイコーだった。
ありがとう、そして、これからもよろしく。
〜バカみたい〜
『バカみたい』
積み上げられた荷物の影に身をひそめ、小さく息をつく。
そうして彼は、ようやく見つけた風雨をしのげる宿を失ったことを確信した。
囲まれている。数は四人、いや五人だろうか。
手元にある武器は、弾が五発入ったリボルバーに、鈍く光るナイフが一本。
味方なんているはずもない。
さぁどうする?
背筋を這い上がる悪寒、命を賭することを強制される緊張感、そして、高揚。
命を晒す瞬間の鮮烈な快感を思い出し、彼は身体を小さく震わせる。
「バカみたいだ」
自嘲の笑みと共に、長い呼吸をひとつ。高揚感を飼い慣らし、彼は戦場へと躍り出た。
バカみたい
なのはワタシの方だ。
たくさんもらったのに、してくれてたのに
ちゃんとみないと
振り向いてもらえるなんて思ってないのに、
髪の毛サラサラにしようとか、
肌の状態保とうとか良くしようとか。
コンプレックス治そうとしたり、
これしたらかわいいと思ってもらえるかなとか。
結局あとから来る傷を深くしてるだけなのに、
こんなに頑張るなんてバカみたいだよね。
だけどみんなやめられないのが現実。
#バカみたい
バカみたい。
あなたが開けることはない扉が
開くたびに
あなたじゃないかと
振り返る。
あなたのこと
もう好きじゃないはずなのに
メッセージがくるたび
ドキドキしてる。
バカだよね。
あなたのことだけで
頭がいっぱいに
なったり。
あなたに会えるかもと
いつもは通らない道を
遠回りして
帰ったり。
ほんとバカみたい。
他の人のことを好きになっても
私は結局
あなたが
好きなんだ。
どこに行っても
結局
あなたのいる場所へ
戻るんだ。
買っていた鳥が
自分で
大好きな飼い主のもとへ
帰ってくるように。
-バタン。
母さんが怒って家を出ていった。
いつものことだ。姉ちゃんと言い争いになり、賢い姉ちゃんに言いくるめられ、母さんの立場がなくなり、家を出ていく。
出ていくと言っても、朝になったら普通に仕事へ行くし、気が向いたら帰ってくる。
僕は知っている、数年前から父さんが2駅先にアパートを借り、秘密基地を作っていることを。
だから、今日もそこへ行き、父さんと2人で過ごしているのだろう。
夫婦のあり方として素敵だとは思うが、子どもの僕からしたら仲間に入れてくれとも思う。
静かになったリビングへ行くと、ケロッとした姉ちゃんがクッキーを頬張っていた。
「あんたも食べぇ。」
姉ちゃんがクッキーを差し出してくれる。
差し出してくれるどころか、顎に手を添え、咀嚼まで促してくれる。やりすぎではなかろうか。
「もうちょい母さんに優しくしてあげてよ。」
「なんでよぉ、子どもが永遠に子どもで入れる相手は親しかいないのに。」
「姉ちゃん、変わったよ。」
「変わらずにいられるもんですか。」
「そうじゃなくて、幼くなったよ。」
「そりゃあ、進化も退化もできるように備わってるんだろうよ、人間には。」
そういうものなのかと、僕は考えるのをやめた。
姉ちゃんは、すくっと僕の前まで立ち上がり、額を指で押す。
「これでは立ち上がれるまい。」
僕は立とうとするが、その通り、立ち上がることはできない。
姉ちゃんは、僕に抱きつくように座り、背中をさすってきた。
「希望の国のエクソダス、私は憧れるよ。」
そうだね、僕もいつか自分の居場所がほしいもんだ。
何をしても怒られない、自分だけが知っている世界。
いつか姉ちゃんと、子どものように、バカみたい、純粋に生きてみたいとさえ思う。
なにか足りないわけではなく、いつも満足しないということは、これほどまでに辛いことなのかと思い、グッと姉ちゃんを抱きしめてみる。
いつも心が枯渇していると表現できるのは、もう少し後になってからだった。