失敗だらけだ。みっともない。
的から外れたボールの後が壁を汚している。コンクリートに落ちた汗の染みが夥しい。照りつける太陽が、体から水分を搾り取っていく。
ふらふらと日陰に置いた飲み物に寄っていって、拾い上げようとしたところでペットボトルを蹴って倒してしまった。緩くなっていた蓋が外れて、中身が地面に溢れ広がった。
「ああ〜……」
声だけ出ても体は動かず。追いかける気力がない。
まぬけな声をあげながらダークグレーの水たまりを眺めていると、背後から声がかかった。
「大丈夫か」
振り返れば彼がいる。逆光になって顔は見えなかったが優しい口元をしていた。手には私が投げたボールを拾い集めたカゴが握られていた。
彼がそうして集めたということは、まだ今日の練習は終わらないのだろう。
眩しい太陽から目を背ける。
もうやめよう。向いてない。ふらふらだし。
そう言いたくても、彼が脇に挟んだボトルを差し出して、「もう一セット頑張ろう」と言えば私は受け取ってしまう。言われた通りもう一セット頑張ってしまう。
バカみたいだと思う。
でも、こんなにふらふらでも、的に当たらなくても、それでも私はやれると彼は笑顔で言いきってくれた。
そうやってバカみたいに信じきってくれるから、私もバカみたいな努力をし続けていた。
3/22/2023, 3:32:38 PM