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『バカみたい』

 積み上げられた荷物の影に身をひそめ、小さく息をつく。
 そうして彼は、ようやく見つけた風雨をしのげる宿を失ったことを確信した。
 囲まれている。数は四人、いや五人だろうか。
 手元にある武器は、弾が五発入ったリボルバーに、鈍く光るナイフが一本。
 味方なんているはずもない。
 さぁどうする?
 背筋を這い上がる悪寒、命を賭することを強制される緊張感、そして、高揚。
 命を晒す瞬間の鮮烈な快感を思い出し、彼は身体を小さく震わせる。
「バカみたいだ」
 自嘲の笑みと共に、長い呼吸をひとつ。高揚感を飼い慣らし、彼は戦場へと躍り出た。

3/22/2023, 2:55:47 PM