『ハッピーエンド』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
横を通り過ぎる香り
「えっ?」
思わず声が出た。知らない人だ。
けど何故か追いかけてみる。
真っ直ぐ歩いて右、左、右。止まった。声をかけてみたい。けど…よし
「あのっ」
「はい?」
「あの、えっとその……」
言葉が続かない
「?」
「えっと、あなたに一目惚れしました!」
あれ?こんなこと言うつもりじゃなかったのに!
「ありがとうございます?」
困らせてしまった。
「違うんです!いや、違くもないけど……その、あなたから目を離せなかったというかなんというか」
何変なこと言ってるんだ自分!
「ふふっ」
笑ってくれた!嬉しい!
「あっあの、連絡先交換…してくれませんか?」
「いいですよ。」
「あの、夜、連絡してもいいですか?」
「ええ」
「えっと、ありがとうございます。」
「いいえ。待ってますね。」
「はっはい!ではっ!」
「はい。」笑顔で言われる。
心が跳ねる。数時間後が楽しみだ。
題 ハッピーエンド
ヤ、先生、こんにちは。オヤ、ガラクタが片付いている⋯⋯ アァ─奥さんですか、新婚生活が羨ましいですな、ハハハハ⋯⋯ 、 一度、お会いしてみたい⋯⋯。
進捗の方はどうですか⋯⋯ 。 ホオォ─────探偵小説(ミステリ)ですか、いや、意外です。
⋯⋯ ア、そうですか、恋物語はお辞めになる⋯⋯。 いやね、私(ワタクシ)も民草と同じ、あなたの夢世界に魅了された一人ですからネ。先生の物語は、みんなを幸せにできる⋯⋯。 これからも探偵小説を続けるおつもりですか⋯⋯ 少しザンネン。
⋯⋯ イヤァ、ハハハ、ヤハリ、あなたは私が担当した中で、1、2を争う小説家だ。⋯⋯ エ、アァ─、もう一人の天才は、もう書くのを辞めたんです。⋯⋯ 気になりますか⋯⋯ そうですか。
あの有名なQ先生ですよ。⋯⋯ そうです、あの“恋の神様”です。ヘェ──あなたもQ先生のフアンなのですか。どおりで、作風が似ていらっしゃる⋯⋯ ア、エラくスイマセン、失礼ですね⋯⋯。
世に知られるとおり、彼女の書く世界は清廉潔白、極楽浄土、フル・オブ・ラブを体現したものでした⋯⋯。 しかし、しかしネ⋯⋯ ご本人の恋はあまり良いものではなくてね、好い人には話しかけることもできない臆病者だったのですよ⋯⋯。
ある時、物書きの集まりで飲んだことがありましてね、Q先生はそこの若いバーテンダーに惚れ込みまして⋯⋯。 バーテンダーもQ先生に気があるようでして、仕事外でも連絡を取るようになったようです。
私(ワタクシ)、嬉しくってたまりませんでした。だって、アノQ先生が理想(ロマン)を現実にせんとしているのですから⋯⋯。
ほどなくして、お二人は結ばれました。⋯⋯ ズイブン、楽しそうでしたよ。だって、夢の現実世界ですからネ⋯⋯。 私は、お二人が指輪を交わす日を待ち望んでいました⋯⋯。
⋯⋯ しかしネ、そんな日は来ませんでした。バーテンダーは他に女を作っていたようです。Q先生との理想世界を、別の女とも作っていたようです⋯⋯。 彼奴は最期に、Q先生に酷いことを言って、どこかへ消えてしまったようです。
ソウ、“恋の神様”の夢世界は、盗賊の土足に踏み荒らされてしまったのです⋯⋯。 彼女は次第に憔悴していきました。ずぅっと涙を流して、長い髪を毟って、骨が透けるほどに痩せていきました⋯⋯。
私、悲しくてたまりませんでした。もう二度と、彼女の夢世界を見ることは叶わないのですから⋯⋯。 アァ、今思い出してもウラメシイ⋯⋯。 でもネ、もう過ぎ去ったことなのですよ。私は彼奴の行く末をよくよく存じておりますから⋯⋯。
⋯⋯ ある時期から、彼女はもう一度、夢の現実世界を目指し始めました。髪を梳かし、荒れた部屋を片付け、3食栄養のある食事をとるようになりました。元来、彼女は綺麗好きでしたからネ⋯⋯。
私が、
「どういう心境の変化だい。」
と聞けば、彼女は1冊の小説を見せながら、
「やっぱり、こうでなくちゃね。」
と言って、また髪を梳かしました。
その小説も、素晴らしい恋物語でした。まるで、Q先生がもうひとり現れたかのような錯覚を起こしました。ペンネームは忘れてしまいましたが、駆け出しの新人作家だったように思います⋯⋯。
それから暫くして、Q先生はどこかへ越して行きました。今はどこで何をしているのか分かりませんが⋯⋯。
⋯⋯ エ、何をしているのですか。アァ、探偵小説(ミステリ)が跡形もない⋯⋯。 ⋯⋯ エ、〆切ですか、三日後ですが。⋯⋯ 書き直すって⋯⋯ ハハ、承知しました、編集長に掛け合ってみましょう。ハハハ、新作が楽しみですなァ⋯⋯ ハッハッハハハハハハハ⋯⋯。
ハッピーエンドというと大抵の作品はそうなるな。バッドエンドで終わる作品もままあるけど。
ああ、ゲームだとハッピーエンドとバッドエンドがある作品も多いか。
昔はバッドエンドを普通に見れたしなんだったら笑えたくらいだけど年取ったらだめだね。バッドエンドどころか途中できつい展開があるだけでも見るのが辛くなった。
これは年を取っていろいろ経験したから共感性が高まったとかそういうのなのかな。感受性といったほうがいいのかな。
でも面白い作品はそういうの気にならないで読み進めるパワーがあるな。鬼滅とか終盤に味方が死にまくったけど気にならなかった。
まぁハッピーエンドであれバッドエンドであれ面白ければそれでよしってことだな。最近時間ないからこれくらいで。
はじまればおわるものだと誰がいう
おわりなき夢ぼくはさがそう
#ハッピーエンド
ワン・モア
部屋の窓辺から光が差す。
色とりどりの光。
カラフル。
窓を開ける。
人々の喧騒、そして輝く摩天楼。
瞬間。
荒波が部屋の家具を流してしまう。
私はボートに乗る。
窓から外へ出ると果てしない海原。
珊瑚の大陸。
摩天楼は巨大な珊瑚と石灰岩だった。
真っ赤な夕日が世界を染める。
西の空には私が出てきた窓。
カーテンが揺れ、お気に入りの観葉植物が見える。
その窓から見下ろす目。
私だ。
世界を覗いているのは私。
じゃあボートの上にいるのは誰だ?
水位が上昇する。
手が窓に届きそうなほど近くに。
目は私を見続けている。
そうだ、世界を砂時計みたいに逆さまにすれば。
もう一度。
【ハッピーエンド】
むかしむかしのお話。
近未来的なお話。
海辺のお話。
家出してきた人のお話。
その人を拾ってきた人のお話。
ある国の平民のお話。
「このお話は…わたしには難しいなぁ。」
ゲームの悪役のお話。
モブ役のお話。
1人の少女は1冊づつ大切に掃除をして、綺麗にして、本棚にしまいました。
「まあ、こんな感じだね!」
物語がたくさんある、広くて少し寂しい部屋に1人の少女がいました。
少女は産まれた時からこの場所にいました。
最初は、たくさんの人がいました。
けれど、この場所にはたくさんの本しかないことに嫌気がさしてしまったのか…人々は、少しづつ少しづつ部屋から出ていきました。
少女に声をかけてくれる人もいました。
けれど、もう、なんて言ってくれたのか、覚えてません。
少女も、出ていこうかなと考えたこともありました。
けれども、少女が出ていくとこの本たちはどうなるのか。いつかボロボロになってしまって、読めなくなるのではないのか。読めなくなった本は、捨てられてしまうのではないか。
そう思った少女は、出ていくことをやめました。
「……ひとりでも、寂しくないもん。」
誰もいない寂しい部屋にひとりぼっちの声。
少女は、気分転換させようと1冊の本を取り出して声を出しながら読むことにしました。
こうすれば、寂しくない。
そう思いながら。
……何冊か読み終わって、少しだけ休憩することにしました。
この部屋は、何故かお腹を空かせることも喉が渇くこともなかったので、物語に出てくる〝食べ物〟に少しだけ興味がありました。
ひとりぼっちなので、〝誰かを想うこと〟や〝誰かとケンカ〟や〝誰かに恋をする〟なんて知りませんでした。
少女は、〝カラッポ〟でした。
いつの間にか少女は寝ていたみたいで、ゆっくりと起きていつものように辺りを見回すと、1人の少年がいました。
…少年というか、なんというか、大人??
それでも、少女は嬉しかったのです。
この部屋に誰かが居るなんて何年ぶりだろう!
そう思って、少年?に声をかけました。
「ねえ!どうしてここにいるの?ここは本の部屋だよ!本好きなの?おすすめの本があるの!あっそうだ物語に出てくる人はおもてなし?をするって言ってた!何しよ」
『……うるさい。』
…少年に怒られました。少女は、少ししょんぼりしてしまいました。
それを見た少年は、ため息をついて
『…なんでここにいるんだよ。リア。』
「え…えっと、わたし名前なんてないよ。その人、だぁれ?物語に、そんな人いたっけ?」
『物語じゃなくて、お前の名前。…遅かったのか?いや、でも……』
そう言って少年は黙ってしまいました。
り、あ
どこで聞いたんだろう。聞いたことあるような?たくさん誰かが呼んでくれたような。
『とりあえず帰るぞ。ここは夢の中なんだよ。アイツが言うにはその扉から出れば、まだ間に合うから。このままだとお前、本当に、消えて……』
そう言って少年は泣いてしまいました。
わたしが消えるってなんだろう。
そういえば、元々ここにいた人達はみんな〝帰らなきゃ〟〝家族に会いたい〟〝キミもはやく帰らないと〟って言ってたのを少女は思い出しました。
「ねえ、お兄さん。わたし、ここを離れたら本たちが可哀想だよ。誰も掃除してくれない。綺麗にしてくれないの。可哀想。」
『……お前は、いつもそうだったな。人にも物にも優しくて、物を落としたら泣きそうな顔して謝っててさ。でも、もう、だめなんだよ。はやく帰らないと。リア、頼むから俺を置いて行かないでくれよ。』
お兄さんの言ってることが、何故かわかる。少女は、わたしは、思ったの。
「…本たち、わたしが掃除しなくても大丈夫なの?」
『あぁ。』
「絶対?」
『絶対に、大丈夫だ。』
わたしは、初めて会ったはずのお兄さんの言うことが信用出来た。なんでだろう。
『じゃあ…帰るぞ。』
そう言って手を出す。
わたしは……
・手を握ってお兄さんと扉の向こうへ行く
・やっぱり、ここにいる。
リア。
『リア!』
…誰かの声。
ピッ……ピッ……っていう音が聞こえる。
目を開けるのが、大変。
ゆっくりとゆっくりと目を開けると、真っ白な部屋に、涙でぐちゃぐちゃな私の兄さんの顔。
たった1人の家族の顔。
『良かった……どこか痛いところあるか?』
私の声は出なかったから、首をゆっくり振る。
どこも痛くないよって安心させるために、何度も何度もゆっくりと振る。
大きな事故が、あったみたい。
そこに私は巻き込まれて、ほかの患者さんたちは目が覚めるのに…私だけ、ずっとずっと起きなかったみたい。
大怪我をしたけど、奇跡的に、みんな無事。
そんなニュースが流れてるのを、兄さんと一緒に病院の病室で、みていた。
私が知っている
“理想的な結末"は
誰かの物語
歩きやすい道と
私が進みたい道が
異なるとしても
私は私に誇れる選択を重ねながら
新たな門をくぐって
螺旋のように続く道を
一歩、一歩、進んでいく
私が望むフィナーレを胸に抱きながら
『ハッピーエンド』
愛する者と結ばれる。
なんてハッピーエンド、ステキね。
わたしもいつか、そんな夢みたいな出来事が起きないかしら
なんて燻る紫煙の合間から覗く月明かりに溜息をこぼした。
ぼやけた視界の中であなた達の顔が浮かぶ
掌を包む温もりを感じながら、愛しいあなた達と共にいられた事を幸せに思う
私の人生はありきたりなものだったかもしれないけれど
ありきたりな幸せは充分私を幸せにしてくれた
私の人生はここで終わり
私の幸せは一旦ここで終わり
あなた達のエンディングがハッピーエンドと言えるものでありますように
どうでもいい。
私の中には、いつもそんな言葉が馬鹿みたいに張りついていた。それこそ習い事だったら、塾に行ったりピアノを習ったり。テコンドー?みたいなものもやった気がする。
でも、どれだけ有意義なことをしようと私はなんの結果も残せなかった。そりゃそうだ。どれも私にとっては、「どうでもいい」のだから。虐められようとけなされようと、私は“アタシ”に迷惑がかからなければいい。
…うーん。やはり私は使えないな。いかにも初心者という文しか書けていない。ま、どうでもいいのだが。私のしてきた事の一から十は全部“アタシ”の命令なのだし。これもその一つとして記そうじゃないか。
私は“アタシ”に助けられた。これまでもこれからも、その事実だけがどうでもいい私の中で生き続ける。
“アタシ”…『蒼葉優佳里』の一人格として。
#66 短歌
ささやかな
幸せを積む
人生の
最期はきっと
ハッピーエンド
お題「ハッピーエンド」
「叶ったね、夢。こんな幸せなことないよ。」
「綺麗だね。あの星なんて言うんだっけ」
「あはは、ごめんね。私だけの幸せなのかな」
「まま元気かな。ねぇ、」
「...。ねえ、君は幸せ?」
「一緒だといいな、気持ち」
「ごめんなさい、少しこの空気が愛おしくて」
「君と手繋いでるのが幸せで」
「もう少しこのままでいたいな」
「君もそうでしょ?」
「だって、君、手離してくれないじゃん(笑)」
「あー、離せないのか」
「私も離したくないよ、だって君こんなに手繋いでるのに冷たくなってっちゃうんだもん」
「好きだよ」
--《ハッピーエンド》
ハッピーエンド。
それは人によって違うと私は思う。
人によって嬉しいことは違うし
悲しいことだって違う。
それを勝手に決めるのは嫌だけど
そういう分け方しかできない。
でも分けるのはどうなんだろう。
分けないで
その人が、本当にいいと思ったものでいいのではないのだろうか。
他人がその人に
自分の価値観を押し付けるのは嫌だろうし
私は嫌だった。
他人に価値観を押し付けられるのが。
「この物語、
ハッピーエンドだよね~
この人がこうなって…」
(は?黙っとけよ?
手前が思ったことなんか自分は興味ないんだよ。)
そう思っていたけど。
人に価値観を押し付けないと
押し付けられて押し付けられて押し付けられて…
どんどん向かってくるそれに耐えきれずに
他人の価値観という重圧に押しつぶされてしまうんだ。
それでも、
そうとわかっていても、
私は他の人に押し付けてしまう。
共感を得たいと思ってしまう。
共感を得ようとしてしまう。
そうすることで誰かが傷つくとわかっているのに。
自分を癒やすために。
自分のために。
押し付けてしまうんだ。
あぁこれじゃあ何も変わらないじゃないか。
私に価値観を押し付けていた人と。
「この物語、
ハッピーエンドだよね〜
この人がこうなって…」
本当に何の意味もない。
他人に嫌われるだけなのに。
繰り返してしまう
何回も何回も
何回も。
どの物語にもハッピーエンドはある
僕はその物語にずっと憧れている、そのハッピーエンドとやらに
お姫様を助け出したり
お姫様と結婚したり
お姫様とお茶会をしたり
僕は大きな罪だ
学校という塀の中に
学校という部屋の中の先生という監修が
でも
今日僕は
お姫様に出会ったんだ
この薄暗い牢獄から
綺麗という風ワードが出るほど可愛いお姫様だ
でも、会うと会うたび
王子様のことを口に出す君は
汚いなぁ
僕はこのことばかりを考えて
王子様は今日、僕の手により死刑判決を下された
そして僕はこの日のために計画を立てた
王子様を死刑判決にし
僕はお姫様と結婚し、ハッピーエンド
彼女にしてはバッドエンドだ
僕にはハッピーエンド
「ハッピーエンド」
僕がそう言うと
彼女は
「ハッピーエンドじゃない、バッドエンドの間違いよ」
なんて悲しいことを言う
第3者の目線
この学校には
美人の夜桜風さん
という可愛い女の子がいます
見た目は
物語に続きそうな
真っ白い髪
片目は
青色
もう片方は
緑色
そんな可愛いらしい女の子
彼女は
この学校でも
一番
美男子な
黒影蓮君と付き合っています
でも
3日前に殺されました
彼女は新しく
新しい彼氏ができました
めでたしめでたし
ベッドの中で蘇る記憶を
窓から漏れる暖かい日差しが照らす
母の温もり 父の言葉 愛犬の別れ
友の瞳やパートナーの香り
溢れ出る涙とともに
私が生きた証が刻まれていく
消えゆく意識の中で
真っ当に生きたことを私は誇らしく思う
あなたは言った。
人のおろかさを。
あなたは聞いた。
世界の残酷さを。
あなたは見たの。
人のおろかさや世界の残酷さを。
それでもいい、こんな地球にあなたと生きたい。それだけでいい。
辛いのなら、そばに居るし、話しも聞く。
この地球には、小さな綻びでしかない。
ハッピーエンドじゃ
なくてもいい
でも
ほんとうに
出会えて よかった と
思って もらえるのなら
槍のような
雨に打たれても
平気
【ハッピーエンド】
エンドというのは、物語の終わりのことなのだろう。
ならば、私の人生の終わり、「エンド」は何だろうか。
やはり死を迎えて、葬儀の時に魂だけになって、今までの人生を振り返りながら成仏することが、人生のエンドであると考えられるかもしれない。
では、死を迎えて成仏した後は、何もないのだろうか。
死後は天国や地獄に行くと、何の根拠もない有名な噂が飛び交っているが、もしもそれが本当だとしたら……?
私の人生は死んだ後も続くことになるかもしれない。
だとしたら、明確な終わりとは何なのだろうか。
どこを自身のエンドとして区切り、捉えるのだろうか。
きっと、それは人それぞれだろう。
まだ私には答えが出せていないけれど、もしもエンドを迎える時期を決められるのならば……
きっと私は自分が最高の幸せを感じている時にする。
それなら、後先で不幸になっても、私の人生はハッピーエンドで終わったんですよ、と自慢できるから。
#ハッピーエンド
母の葬儀はとど懲りなく済んだ
母との思い出は子供の頃に本を音読してもらったことだ
母はハッピーエンドが大好きで、読み聞かせしてもらうけど、少しでも悪い終わり方はみんな勝手にハッピーエンドに変えてしまうのだ
ごんぎつねは男と仲良くなり、人魚姫は王子様と結ばれ、メロとパトラッシュは教会で助けられる。
母は癌の闘病の末、苦しそうに亡くなった、
母の最後は子供の頃話してくれたような幸せな最後ではなかった
「ねぇおばあちゃんどうしたの?」
「え?」
帰りの車の中で4歳の娘はなんのきなしに私に聞いた
「おばあちゃん病気が治って飛んでちゃったんだお星さまに乗って」
「そうなんだすごい」
「さすがおばあちゃんだね」
ごんぎつねが撃たれても、人魚姫が泡になっても、メロとパトラッシュが天国に行っても
母が聞かせてくれた話しが私の中では全て本当のことなんだ
それでいいと思ってる
昔読み聞かせしてもらったように娘に本を読み聞かせした、結末は決まってハッピーエンド。
ハッピーエンド
あごに髭を生やした男は問う。
「なあ、役聞いたか?」
それに、白髪混じりの髪の、小太りの男は頷いた。
「おう。なんでも、俺らは盗賊役して、王子様に成敗されなけりゃならないらしいな」
「ったくよぅ。いっつも俺らみたいな中年は、なんでこうも悪役やらにゃあいけねえんだよ」
二人とも、大きなため息をしながら、ガクッと肩を落とした。
「まあ、次はもっといい役だといいな」
かたや、別のところでは。
「あ、ここ。盗賊から逃げるのに、走るシーンがあるわ」
きらびやかやドレスを纏った姫役の少女と、お付きの侍女役の少女。
「よく見て。ここ、演出で転ばないといけないって書かれてるわ」
「いいわよねえ王子は。成敗するだけで」
その会話に、不服げな王子役の青年が割り込む。
「むしろ、僕はそこしかやる事ないっていうのは、つまらないんだけど」
「え、姫とのロマンスは?」
「僕は、せっかくなら剣と魔法を扱いたいよ。こう、ババーンと! 今は恋愛の気分じゃないのになあ」
「自分勝手! ……って言いたいけど、分かるかも」
「ドレスにヒールで走るなんて、絶対靴擦れしそうよね」
「まあ、それがみんなの好きな、紆余曲折ありの、ハッピーエンドなんだよね」
ハッピーエンドも、楽じゃない。