『ススキ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
秋風が 吹く頃
野山の木々が 彩り初め
赤や黄色 緑と混ざり彩る
草原のなか ススキの群衆が
一層し 秋の深まりを感じさせ
中秋の満月に 団子を供え
ススキを 飾り お月見を
また 今年も あなたと こうして
月見が 出来る幸せを 後 何回
出来るのだろうか
寂しげに 輝く 月の光のした
ススキの穂が 夜風に 揺れ
来年も 再来年も こうして
幸せな時を過ごす 姿を 思い
月見を 楽しむ
ススキ
うさぎ
月
秋
田んぼ
イネ科
雑草
花粉
「なあ、ちゃんと聞こえてた?」
「うん。…うん、そう、だね」
「なんだよその返事。つまりはどーゆーこと?」
「どうもこうも、えっと、そのう…」
「ハッキリしねーな。ダメってこと?保留?それとも、」
「言う!…ちゃんと言うから、ちょっと待って」
「待てない。てゆーか待ちくたびれたから言ったのに。今更?」
「…こちらにも都合というものがありまして」
「知らない。いいかげん諦めろ」
「好きだ。お前も好きだろ?」
「〜〜〜〜〜っ」
「す、す、すすすすす、す、」
「す?」
「…ススキ!」
「…なんでこんなの好きになったんかな」
ススキ
秋と月
水面に満月の空
水面に虚空
空は満ちて
その狭間に立つ
ただどちらともなく眺めて
ここが何処だかを思い出してから
また眺める
どちらでもなくただここを
空も水面にもない
ただの静かな時間を
ススキの花言葉は「活力」「生命力」。
ススキは暑さや寒さにも強く、環境に馴染みやすい植物らしい。
ススキみたいな人っていないと思う。
世界中の人に会ったわけじゃないから分かんないけど、いなくていいと思う。
別に強くなくていいし、どこでも馴染まなきゃいけないわけじゃない。
弱くても支え合えばいいし、馴染めなくても別の居場所がきっとある。
絶対1人になんかならないから。
ちゃんとあなたの名前を呼んでくれる人がいるから。
その人たちのことを忘れて、1人だって悲しむことの方がよっぽど悲しいからね。
「ススキ」
無垢で善意に満ちた老婆のような
クシャクシャな手を持ちながら
秋風に弱々しく手招きしながらも
そなたの葉は
私の腕を優しく撫でるかの如く
悪意などないように
笑顔でそわりと撫でるかの如く
ひとから見えないように、
ヒリヒリといつまでもうずく
たちの悪い薄い傷をつける
まるでこの社会の
蠢く奴らと同じなんだよ。
芒よ。おまえのことだ。
「ススキ」
ススキ
草原に広がるススキが風に揺れる様は、まるで穏やかに波立つ金色の海のようだった。
からりと晴れ、突き抜けるような青い空を飛ぶ鳥が大きく羽を広げて、ゆっくりと旋回する。長閑な秋の風景。
「こんなところで戦闘なんて、無粋とは思わないか」
「逆に秋の出陣らしくて風流なんじゃねぇか?」
「なるほど、そういう見方もある」
頷いて力強く踏み込み、敵を斬り払う。遠征先で起こった予定外の戦闘は、編成されたのが練度の高い二人だったこともあり問題なく終わりを迎えようとしていた。
だからと言って決して油断をしていたわけではないのだが。ふわふわと揺れるススキに紛れて見落としていた敵が、真横から飛び出してきたのを何とか避ける。避けきれたと思ったのだが、胸元を飾っていた牡丹の花は散り落ちてしまった。
「貴様……万死に値するぞ!」
一撃。そして、それが最後の敵だったようだ。
残党がいないか確認してくると、尾花の原に分け入って行く相手の背を見送りながら小さくため息を溢す。
花は帰ってまた飾れば良い。帰るまで胸元が少し寂しいだけのこと。だがそれは、不名誉を飾ったまま帰るようなものだ。風流とは程遠く、何より己が情けなく思えてしまう。
たかが花、されど花。しかし変わりになりそうな花も見つからず、仕方ないと諦めたところで相手が戻って来た。
「残党はいなかったようだね。帰ろうか」
「その前に、ちょっとじっとしてろ」
何だろうか、と言われたとおりじっと立っていると、相手は胸元の花を飾っていた金具に何かを取り付け始めた。
ススキの穂先をくるりとまとめて、器用に葉で結んだもの。ふわりと丸い黄金色のブローチ。
「ないよりはマシだろ」
「君という男は本当に……!」
悲鳴のように声を上げて、思わず両手で顔を覆ってしまう。
「なんで俺に対してだけそうなるんだ」
「普段そういうことをしそうにないから……」
「ギャップってやつ?」
「ううう……」
否定も肯定も言葉にならず、唸ることしかできなかった。
風流とも雅とも遠い目の前の男は、戦さ場でわざわざ花を飾る気持ちなど少しも理解はしていない。けれども付き合いが長いから、戦衣装に花を添える心を、戦いでそれを落としてしまうことの不本意さを知っている。
知っているからこそ、不名誉を飾って帰るよりはマシだろうと秋の一部を切り取って胸元に添えてくれた。
「……ありがとう」
「あんたも素直に礼が言えるようになったんだな」
「ここは君も素直に受け取ったらどうだい」
軽口の叩き合いも、相容れずに反目していた昔に比べれば秋風に揺れるススキのように和やかなものだ。
それからしばらく、文机の小皿の上に飾られていたススキのブローチは、秋の歌をしたためた短冊とともに文箱へと丁寧に収められた。
月見の時、稲に見立ててススキを飾る。ススキは秋の七草に入っているくらいだし、食べられないことはないのだろう。あんなに固いもの、食べたくはないけれど。
#ススキ
#97 ススキ
『幽霊の正体見たり枯れ尾花』
ほらあそこ、白くてヒラヒラ…ぎゃあ幽霊だ!
…って、枯れたススキかよ!
使い方としてはビクビクしてると、何でもないものも怖く感じちゃうよね、と。そんな感じです。
ちなみに尾花とは、昔の人が動物の尻尾に見立てて呼んだススキ(の穂)のこと。幽霊に見えたり尻尾に見えたり、忙しいね。
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「怖いなら一緒に行ってやろうか?」
ニヤニヤと、明らかに揶揄いまじりに言われたら意地を張ってしまうのも仕方ないというもの。
とはいえ。
(なんでお風呂の前にホラー映画なんて見…いやいや考えない思い出さない)
こういうのは勢いが大事と、強めにシャワーの湯を出し髪を洗い始めた。
ささっと終わらせたいところだが、私の長い髪では、そうもいかない。
さっき見た場面を頭から追い出そうと、必死に違うことを思い浮かべていたのに。
勝手知ったる浴室。いつもなら、目をつぶったまま洗い終えるのに。
何故か、ちらっと目を開けてしまった。
開けてしまうと、もう背後が気になって仕方がない。
そろ、と後ろを振り向いた。
いつもと変わらない半透明の扉、の奥。向こう側。
(なんか暗い…そこに誰か立っ…てる訳ないから。
気のせい、気のせいだから)
きちんと洗えたか、なんて判断する余裕はなかった。頭は泡まみれになった。もうそれでいい。
再度背後を確認する勇気もなく、
いつもの倍以上のスピードで手を動かし。
じゃぼんと湯に入った。すぐに膝を抱える。
適温で溜められた湯はあったかい。
だが、手も目も届かない背中が気になる。
見えないのが寒い。
(なんかもう、無理。無理だ)
もはや呪文と化したキノセイも効かず、
若干俯きながら扉を開けた。
ちなみに、浴室扉の奥が暗く感じたのは、
透けて見える脱衣所のドアが焦げ茶色だったから。
誰もいない、
洗剤の位置すら記憶と変わりない脱衣所。
思わずため息が出た。
ほっとなんかしてないやい。
そうしてリビングに戻ると、
「出るの早っ」
ひーひー笑われた。予想はしてた。
ホラー映画を推してきたのからして確信犯なんだ。
腹いせにアイスを買わせよう、そうしよう。
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ウィキに、ススキ草原は草原としては最終段階で、放置すると森になっていく、という記述があって面白かったです。人の手を入れないと保てないってことですね。
ススキ 「活力」 「生命力」「精力」
あの時、ススキのように強く生きたいと
願ったのは、嘘、だったのだろうか
風が涼しくなってきた今、五感を研ぎ澄ます。
ふわふわとゆれるススキ。
ススキがなびく音。
落ち着く穂の匂い。
さらさらした触れ心地。
食べたくなるがやめておこう。
秋の訪れを感じるススキ。
「私が小人になったらススキでベッド作って」
「寝心地良さそうだね」
どうやら小人になっても私といるつもりらしい。
嬉しいやら恥ずかしいやらで適当に返事をしていた。
「あと、春は桜の花びらね。虫は嫌だからよくみてね。スイカの皮でプールも。笹の葉で船も作るから」
ついに季節を一周してしまった。まったくもって想像力豊かで羨ましい。
「近々なるご予定でも」
「ない。でも忙し過ぎて若干イライラしてる」
なるほど。
明日の帰り道に甘いものでも買って帰ろう。どうせならお団子だろうか。ススキの群生から一本拝借しようではないか。
ススキのベッドも魅力的だがお月見も中々に粋ではないか。
ススキ
«ススキ»
辺り一面に咲くススキが、
白く、美しかった。
#9
薄田泣菫(すすきだ・きゅうきん)という明治時代の詩人をご存知ですか。
あまり有名ではありませんが、与謝野鉄幹や北原白秋と同時期の、浪漫主義系の人です。
近代文学史の授業で知って以来、植物のススキから真っ先に連想してしまいます。
たくさん生えてると、その分、増します。
ロマンですからね。
【ススキ】
ススキ…
見ると秋だなぁって。
なんか切ない夕暮れ。
幽霊の正体見たり枯れ尾花。昔から使い古された諺はけれども、逆説的に考えることも出来るのではなかろうか。枯れ尾花にこそ魂が絡まり、幽霊になるのではないかと言う私の仮説に、助手であるカガチ君が賛同をしてくれ、実験をすることとなった。
「カヤ博士、実験とは?」
「私が死んで、その魂がススキに定着するかと言う実験だよ!」
驚いた顔のカガチ君を置き去りのまま、私は実験用の劇薬を呷り地に臥した。ぬるり、自分の体から何かが這い出してきた気がした。私は気味の悪さに顔を挙げると、確かにぬるりと粘性の魂が吐き出されていた。しかし魂はススキに絡む前に固まってしまった。さて、どうしようと考えていると、カガチ君が私を腕に抱いた。
「死者を弔うのが鬼灯の仕事ですから」
枯れ尾花と鬼灯、確かに絶妙な取り合わせだ。カガチ君の腕に揺られながら、私は新たな人生を初めるのだ。
ゆらゆらとつきを見上げてひる、
ああ、この時がけふだけでなく、
けふだけで終わることなく、
続けばよいのだ
さうすれば、わたくしは
もつともつとおまえのそばにゐられる、
あすもあさつても、
月がありますよふにと
ねがふのだ、
少しぐらひはよいだろう?
わたくしとおまえの仲なのだから。
よく考えるとススキって数えられるほどしか見た事ない。
見たとしてもそんなに目を惹かれないけど自分が落ち込んだ時とかススキがたくさんあるとことか行くと癒される気がするな
缶ビールを飲んでたら、身体が熱くなった。
ふと、夜風にあたりたくなって、外へと足を向ける。
道なりにフラリと進んでいると
おぼろに浮かぶ月の下
ススキの葉が揺れている。
外に出ようと思わなきゃ、こんな出会いもないだろう。
そう思い、景色を魚にビールを口に運んだ。
緩く流れる川の縁
剥げた地面を囲む
色を無くした草の群れ
女の子の宝物があった(※)
かつて あった
そんな想像を巡らしながら
視点を薄い曇天に向ける
雲が 速く 流れている
空の
カラの
季節
風に揺れて
一斉に穂を飛ばす
手招きしているようにも見える
無色の
骸骨の 手の 群れ
茫々と
亡々と
(ススキ)
(※)岡崎京子の「リバーズ・エッジ」による。