『カーテン』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
子どもの頃から境界が怖かった。
当時は田舎の木造家屋に暮らしていたため、夏は窓や家中のドアを開放して扇風機だけで涼をとっていた。
夕食の時間にもなると常に電気がついているのはリビングくらいなもので、続く廊下や座敷には暗闇が広がっていた。
開けたドアの位置には暖簾を取り付け目隠しをしていたがそれがかえって内側と外側を意識させ、見えない向こう側に何かを感じていた。
他にも座敷のすりガラスの向こうに見える影、少しだけ開いた押入れの戸や隙間風に揺れるドア。
認識できそうでできない、そんなありふれた境界に想像力を掻き立てては恐怖した。
仕事を終えワンルーマンションに帰宅する。
一人暮らしだから迎えてくれる人などいるはずもなく、電気をつけながらリビングに入る。
正面に見える掃き出し窓には朝と変わらずレース生地だけが掛かっていた。
外からまる見えじゃないか。そう思い、荷物を置いてカーテンを閉めた。
境界の外側に何かがいる気がする。それが怖いのだ。
『カーテン』
カーテンを開けることもないまま1日が終わる。
俺たち家族はあの日から全てが変わったんだ。
「犯罪者の息子!」
「あいつと一緒にいるとやばいぞ!俺らも嫌われる笑」
「近づくなよ気持ち悪い。」
なにが分かるんだ。お前らなんかに。なにも知らないくせに。父さんがどんな理由であいつに手を出したかも分かってないくせになにが言えるんだ。もっと頭使って考えろよ。どんな背景があるのか。表しか見てないからすぐ裏切ったりするんだ。ニュースで報道されていることだけが全てじゃない。もっと自分の頭を使ってよく考えるんだよ。考えて、表だけで判断せずどんな背景があるのか。どんな理由があったのか。そこすらも分かっていないのに、無差別に人を殴った最低のやつだと決めつけて。自分が見たことが、聞いたことだけが世界の全てだと思ってるの?そんなのおかしい。
父さんが悪く言われるのは確かにしょうがないとは思う。でも、それでも俺たち家族を守るために父さんは手を出したんだ。その理由を知ってから父さんを叩けよ。
「冬弥。俺が戻ってくるまで、駿と母さんをよろしくな。絶対戻るから。」
そう言ってくれた父さんの言葉だけは信じたい。
俺たち家族は、命を狙われていたんだ。
「次なにか目立った行動をしたらお前ら家族全員殺してやるよ。」
怖かった。死にたかった。俺たち家族は震えながら長い夜をいくつも過ごした。毎晩毎晩かかってくる電話。出ても意味がない。暴言を吐かれるだけだ。
「死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。」
初めて電話に出たとき、ずっと耳元で死ねと言われ続けた。
頭がおかしくなりそうだった。狂いそうだった。叫んでしまいたい。逃げてしまいたい。死んでしまいたい。滅多に怒ったり怖がったりしてるのを見たことがなかった父さんですら怒っていた。
「誰のいたずらなんだ!毎晩毎晩電話をかけてきやがって!迷惑だ。」
俺と俺の弟駿は直接そいつに話しかけられたこともあった。薬物を勧められた。
「これを飲むとすごく気分が良くなるんだよ。」
駿はあの時まだ小学生だった。乗り気になってしまいそうな駿を必死で止めた。
「もらっちゃ駄目だ駿!兄ちゃんがもっと美味しいお菓子買ってやるから我慢するんだ!」
「分かったよ兄ちゃん。」
「チッ、、、、お前余計なことしやがって。お前らの人生ぶっ壊してやるよ。」
我慢できなかった。頭に血がのぼった。少しでも気を抜けば、殴ってしまいそうなほどに腹が立った。
だけど我慢して、
「なんのためにこんなことすんだよ!意味分かんねえよ!俺たちがなにをしたんだよ!なんの恨みがあるんだよ!こんなことしておいて、ただじゃ済まねえぞ!」
「兄ちゃん!いいよ。関わらなければいい。」
「駿!お前は何もわかってない!今俺たちがどんな状況にいるか分かってんのか?!なあ!このままだと俺たち家族全員ほんとに殺されるぞ!関わらなければいいじゃない!俺たちが身を引いてもこいつはずっとついてくる!今までもそうだったろ?!俺たちが一歩でも外に出ればいつも後ろからずっと見られてた!こいつは意地でも関わってくる!今すぐにでも刑務所に放り込まないと駄目だ!じゃなきゃこいつからは逃げられない!もうすでに俺らは追い詰められてるんだ!もうこれ以上俺らに関わらないでもらっていいすか。」
駿の少しびっくりしたような泣きそうな顔が見えた。
「ごめんな駿。でも、しょうがないんだ。」
「兄ちゃんわかってるよ。落ち着いて。そうです。もう僕たちに関わらないでください。」
「おい。次また大きい声とか目立った行動をしたら殺すぞ。」
反射的に駿を、後ろに隠した。
「無理です。もう俺たちに付き纏わないでください。もう勘弁してもらっていいですか。」
「土下座しろよw」
言われた通りに土下座する。
「兄ちゃん!こんなやつ土下座なんてする必要ない!」
「こうするしかねえだろ!俺たちの命がかかってるんだよ!」
「まじでしたのかよwまあそんなんで辞めるわけがねえんだよなwちょっと考えればわかるだろ?w」
「ふざけんな!お前なんか!お前みたいな犯罪者は一生刑務所にいろよ、、、!」
「ははっあっはは!随分舐めた口を利くガキだな!まあ今日はこんくらいで勘弁してやるよ。」
このように付き纏われた。それに耐えきれなくなった父さんはそいつを殴った。全治1か月かかる怪我を負わせた。
それからというもの俺たちはまた毎日怯えながら過ごしてた。でも、最悪の事態が起こる。
プルルルル。プルルルル。
「はい。〜〜〜〜。え?駿が?はい。はい。っ!今すぐ行きます!」
「母さん起きて!」
「、、、、殺される、、、、殺される、、、、殺される」
「クソッ!」
ダッシュで家を飛び出した。駿が学校の教室から飛び降りて自殺しようとしているらしい。
なにやってんだよ駿!
「駿!」
飛び降りようとしている駿が見えた。それから風でカーテンが揺れ、駿にちょうど重なり、カーテンが元の位置に戻ると駿が消えていた。全てがスローモーションに見えた。急いで走る。
「っっっっ!駿!」
ギリギリのところで手を掴めた。
「駿っっ!上がれっっ!早く!」
「兄っ、、、、ちゃん?」
「いいから早く!」
力いっぱい引き上げると、軽い駿はすぐ引き上がった。
「兄ちゃん、、、ごめんっ。」
「バカ!お前が死んでどうする!」
「耐えられなかったんだ。このクラスの雰囲気も、俺に対する視線も、この世界の残酷さ。全て耐えられなかった。犯罪者の息子だと冷たい目を向ける人、父親が犯罪者だと大変だねとでも言うかのように同情の目を向ける人。おはようも返してくれない。辛い。苦しい。逃げたい。死にたい。」
「そうだよな。兄ちゃんと一緒に死のうか。死にたいよな。苦しいよな。でもな、暗い夜だっていつかは明けるんだ。世間が俺らにどんな目を向けようと関係ない。いつかこの暗い夜も明ける。」
「待てないよ、、、(泣)暗い夜が耐えられないんだ。寒い。この世界は冷たい。驚くほどに。」
「あぁ、また俺は守れないのかなぁ(泣)大切な人ですら助けられないのかなぁ(泣)俺の力だけじゃなにも変わらねえのかなぁ(泣)死にたいなんて言うなよ、父さんの気持ちを無駄にしたくねぇよ(泣)自分の人生を振るってもいいから父さんは俺たち家族を守ることを選んだ。そのことは忘れないでくれよ(泣)」
「兄ちゃんやっと泣いたね(泣)父さんが捕まってから兄ちゃん、泣いてるとこも笑ってるとこも楽しそうなとこも見たことなかった。目に光がなくて。俺より先に兄ちゃんは、、、壊れてたんだ。感情を感じられない。父さんが捕まる前は怒ったりしてた。でも、父さんが捕まってから怒りも呆れも楽しさも悲しさも幸せも、なにも感じられなかった。この世界に絶望してる瞬間はまだ良い方なんだ。俺みたいにね。でも、本当に壊れてしまった人はなにも感じない。兄ちゃんはなにも感じないから、これが当たり前だと思ってしまっているから、感情がないんだ。」
「そうかもしれないな。大人はなにかあったら大人を頼りなさいと言うけれど、実際には何もしてくれない。俺、実は一回みんなが寝ている時に外に出て助けを求めたんだ。助けてくださいって。でも大人は俺を一瞬みるだけ。声すらかけてくれない。そんな大人に、世界に呆れどころか、もはやなにも感じなかった。それから俺はなににも期待することはなくなった。所詮こんなもんって。そう思うことでなんとか、自殺をすることをやめていられたんだ。期待するから、裏切られた時に、期待した分だけ返ってこなかった時に、絶望するんだ。それで辛くなる。だったら最初から期待しない。その方が楽だ。」
「でも、それで兄ちゃんは幸せになれる?俺たち家族を守ることに必死で自分の心を、制御してること、気づかない?本当に期待してなかったら、なににも期待してなかったら、今こうやって俺を止めてくれる兄ちゃんはいないよ?俺が生きていることに期待してたんだよ兄ちゃんは。兄ちゃんは俺たち家族を守ることに必死すぎだよ。」
「俺が、、、、俺が家族を守らなかったら誰が守る?父さんはいない。男で、今いる中で年が一番上なのは俺だ。だから家族を守らなきゃいけないんだ。」
「兄ちゃんって家族のことを考えているようで考えてないよ。だって本当に家族のことを考えているのなら、守らなきゃいけないじゃなくて、守りたいって思うはずだよ。まもらなきゃって思うから辛いんだよ。」
「俺は、守りたいとも思ってるよ。父さんに、任されたっていうのも少しはあるかもしれない。でも、父さんのように、命をかけてでも家族を守りたいって思ってる。辛いって感じてるのは責任感のせいじゃない。駿や、母さんが死ぬかもしれないっていう恐怖があることが辛いんだ。大切な人が死ぬかもしれないって思ったら辛いだろ?そういうことなんだよ。」
「駿?大丈夫?」
「うん。まさくんありがと。」
「俺、ずっーとおかしいと思ってたんだよ笑そーいうことね笑」
「に、兄ちゃん?」
「ガキの考えてることなんて全部わかってんだよ笑」
ずっーと不思議に思っていた。母さんがずっと殺されるって言ってることをあいつが知ってるわけがないんだよなあ。だって、俺は友達やクラスメイトに母さんがあんな状態のことは話していない。つまり、駿が誰かに相談してたってことだ。そういえばあんなこと言ってたんだ駿。
「今日まさくんに、まあ、本名は正広なんだけど〜母さんが大変なんだよねって話をしたんだ。そしたらまさくん、そっか。なにか俺にできることがあったら何でも言ってねって言ってくれたんだ〜ほんとにまさくんいい子なんだよね。」
それで、あいつが知ってるってことは、まさくんだかなんだか知らねえがそいつがあいつに言ったんだ。つまり、あいつとまさくんとかいうやつには何らかの接点があるということ。だから、あいつに家も、帰路も知られていたんだ。
「君がまさくんとかいうクズ野郎?笑さすがガキだわ笑全部分かっちゃった〜笑」
正広を壁に叩きつける。
「いった、、、、なにするんですか。」
一回切ります!また後で書くので気になったら見てみてくださいね!!
私のアカウントでは、主に短編小説を書いています!でも最近はお題が難しくてあまりかけていないんですけど、最初の方を見てくれればたぶんいいお話が見れるかもしれません。
あなたの心に残るような、言葉、小説を残したい。あなたの人生を変えるきっかけになりたい。
本気でそう思っています。ぜひ小説読んでみてね!ここまで見てくれてありがとう。
ここまで読んでくれたあなたの毎日がとても素敵なものになることを願っています。
カーテン
色とりどりのカーテン
そのカーテンを開けた先に見えるのは
どんな景色?
温かい朝日
寂しげな夕日
優しい月明かり
きらめく星空
涙を流す空
俯く曇り空
冷たいのに優しい雪景色
赤黄色に色付いた紅葉
綿菓子のような夏の入道雲
可憐な桜
さあ、カーテンをあけて
あなたの感じる、
あなたの目に映る
あなただけの景色を
見てみない?
55日目 #カーテンコール
ぼやける視界の中ふと周囲が明るくなる
......終わったはずではなかったか?
どこからともなく歓声が聞こえた
「意識が戻りました!」「よかった!」
歓声が次第に形を伴って耳に届く
嗚呼、そうか僕は失敗したのか
こうしてまた幕が上がった
【カーテン】
窓際に座って優美に紅茶を飲む彼女。艶やかな唇。ティーカップが嫉妬しそうな陶磁器の様に白くて繊細な指。逆光で仕草も姿も何もかもが神々しく見える。
「そんなに見ないでよ。貴方ったらいつもそうね。仕草一つ一つを観察するのの何が楽しいのかしら」
好きだから。愛しているから。
「ふふっ、愛妻家ね。世界一幸せな女の称号頂いちゃうわよ」
風が吹く。羽衣の様に彼女を包む純白のカーテンが彼女をこの世のものじゃない存在に昇華させる。美しい。こんなに美しい存在が実体として存在しているのが夢の様だ。
「筆が進んでるわね。その絵が完成するの楽しみだわ。無理せず描いてちょうだいね。あ、風が強かったら閉めるからね」
あぁ、君の美しさをこのキャンバスに留めておこう。それが矮小なる僕に出来る唯一の事だからね。ほぼ、白のキャンバスに淡い線を引いていく。白に溶け入る君。それがこの絵のタイトルだ。だが、これだけは強い色彩で彩ろう。瞳を真っ赤に塗り潰す。アルビノの君。性格と同じく鮮烈な赤。これがないと君とはいえないからね。キャンバス上の君さえも愛すよ。愛しの君。
カーテン
吸血鬼である私の部屋のカーテンは、完璧オーダーメイドである。レース調でありながら、太陽光を一筋たりとも通さない100%の遮光性。しかし、夜には月の光をたっぷりと部屋に注いでくれる優れもの。さらには防音性も兼ね備えており、日曜午後の教会のミサからも完全に守られている。これで私に仇なす者たちは排除され、部屋という私の世界は深い深い海の底のようになる。
そう、真っ暗な静寂が私の太陽。こんな布一枚だけを隔て、世界は私に気づかない。世界は私たちに気付かない。
あのカーテンのかかった部屋、私かもしれません。
私の部屋には、ピンクの花柄の可愛らしいカーテンがある
今日みたいな晴天で少し風が吹いている日に窓を開け
たら、ヒラヒラとカーテンが風に靡いた瞬間 私の
心は静かになる。
どうしてその瞬間が好きなの? と 誰かに問われたら
明確な答えを言える自信は無いが、誰にも邪魔されない
1人の静かな時間が好き と 今の私ならそう答えるだろう
窓のカーテンは簡単に開くが
心のカーテンは慎重にね。
間違えたら一生開かないから。
〜カーテン〜
揺れ動くカーテン
ふわっと空を見せ
光が現れた
暗い雰囲気がただよう部屋に
希望の光が差し込んだ
ずっと閉じ込められた心がぱっと開いたのだ
私は泣いた
たくさん泣いた
ただ違うのが嬉し泣きというところだ
痛んで痛んで
耐えられなくて泣いていた時とは違う
笑顔がそこにはあった
だから大丈夫
きっと光は私たちを見捨ててはいない
信じよ
自分を信じてみよう
さぁカーテンを開けて
新たな世界へ
「カーテン」
朝、顔に光がさした。
カーテンの隙間から光が...
毎日、太陽の光をあびて、一日が始まる。
私の日課だ。
カーテン
花柄のカーテンが欲しかった。
あたたかくて、淡い色で、天国を感じさせるようなお日様の香りのカーテンに包まれて、幸せな夢を見たかった。
ようやくやってきた秋風が
カーテンを僅かばかりに揺らしていく
ねぇ
金木犀は咲いたかい?
箒星はもう見えそうかい?
あの人は元気にしてるかな
お題:カーテン
中二病。
それは誰しも一度はなる思春期特有の背伸びしたがる精神性を揶揄する俗称。
最近の子供は中二病が早まって小学生ぐらいに目覚めるとか、なんなら中二病の時期自体無くなってるとかって話を聞きました。同じ轍踏めよおい、一緒に地獄に落ちるんだおい。
当然自分も星の数ほどいる中二病罹患者の内の一人。
中でもかなりファンタジー路線の方に行ったタイプの恥ずいやつ。
流石に漆黒のダークシャドウドラゴンだとか忌々しき終焉の邪神ソードとかってやるようなレベルじゃあないっすけど、まあまあ酷い。
悪魔とか、特に吸血鬼とかを好き好んでて、できることならなれたらなあと妄想している時期まであった。重症だ。
でー、自分ってやつは今も昔も感情が顔とか声とか動きとかによく表れるんすよ。
だからもし吸血鬼になったとしたら、きっとはしゃぎまくって家中をバタバタと馬の如く駆け回り、布団の上でバネを気にせず飛び跳ね続け、鏡という鏡を全部ハンガーで叩き割って、勢いそのままにカーテンをぐわっと両手で広げて窓に体当たり、そのままベランダへとフライハーイ。
グワあああああああああバカなあああああああこの我がああああああああ!
うっかりベランダに出てそのまま焼け死ぬ元人間割と結構いそうだなこれ。
亜麻色の髪が靡く
ぼくたちは煙草みたいな関係ね
って呟く君が白い足を覗かせながら笑う
わたしは一人 たちこもる限り
辛いとか苦しいとかぜんぶ消え去れと言った
辛かったんだ
苦しかったんだ
痛かったんだ
感情が消えない前に
じゃあまたねと優しく笑う
あの部屋で過ごした日々も
あの空間のお気に入りも
なくなっちゃったね
なくなってしまった
子供の頃
よくカーテンでお化けごっこして遊んでいた。
カーテンを強く引っ張りすぎて、亡き祖母に叱られたことを思い出す。これもまた、良き思い出。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、
私には眩しすぎて。
目が眩んでしまう。
クラスで見た君の笑顔が、
私には眩しすぎて。
私は卑屈になってしまう。
世界が、
私にとって光が多すぎて、
もう消えてしまいそうだ。
影は私以外にいないのに。
もうちょっと暗かったら。
私もこんな熱くならずにすんだのかな。
君たちの見せる光のせいで、
妙に昂ってしょうがなくて、
あぁ、もう。
私にもなんて、憧れちゃうよ。
そんな事、結果なんて分かりきってるはずなのに。
人生の流れによって
カーテンの色味は変化する
両親に守られ、暖かい部屋を
与えられていた時は
女の子らしいピンク色…
社会人になって、一人暮らしを
始めれば、女の一人暮らしだと
バレぬように、わざと青やグレーの
地味な味気ない男性色のカーテン
家庭を持ち、子供が生まれれば
なるべく外からプライベートが
わからぬよう、また強い陽射しから
我が子を守る為に、値が張っても
しっかりした遮光カーテン
長い時間を経て最近のカーテンは
ほどほどの厚さと遮光、値段もほどほど
しかし、長年の劣化で最初セットだった
レースのカーテンも時間差で傷み
部屋部屋でチグハグだったりするが
やっと涼しくなり、良い風でカーテンが
揺れるだけで、「まあ、いいか」と
随分とおおらかになった自分に気が
ついたりする。
「カーテン」
私の部屋のカーテンは光漏れしやすい薄さ?色?だ。だから夏になると網戸に光を求めて蚊が大量に張り付いてくる。どのくらいかと言われたら片面網戸の70%ほどだ。特に今年は対策をたくさんしたが意味がないほどカーテンの光漏れがすごかった。防虫スプレーを網戸と室内にかけ、網戸に防虫用のものを貼り付け、蚊取り線香の現代版(消臭剤みたいな無臭なもの。伝われ)を用意したにもかかわらず、イライラするほど来た。
カーテンを変えるとこういう対策もしなくて済むのは分かってはいるが、お金やカーテンが夏以外には無害なことを考えると買い換えるのも面倒だ。はあ、どうすればいいものやら。
ある遠い夏の日。
窓を開けると、カーテンが風を受けて
帆船の帆のように丸みを帯びてふわりと膨らむ。
その空間に入るのが大好きだった。
幼かった私の、十数秒間だけの秘密基地。
なかなか当たらなかった窓際の席についにこれた。
日差しも落ち着いてきたこの頃、窓際の席を堪能するには良いタイミングなんじゃないかとワクワクしていた時期もあったな、と思い出す。
寒い。
日差しも無いし、窓を開けても暑さが落ち着き虫が入ってこないのはいいものの、入ってくる風が思いの外寒い。こんなでもあついあついと、代謝が良いやつもいるし、風があるのにエアコンつけるのもちょっと、ということで、自分の一存で閉める訳にはいかないのだ。集団行動、民主主義の闇だなんて、辛くても合わせなければならなくなったこのポジションになった途端に思う。
強風では無いし、もう風のことはいい。
このカーテンだ。こいつが風で広がり、片手でやんわりと払うだけじゃ、はらえない。生き物のように顔面を撫でつけて視界を邪魔してくる。ここが家なら思い切りぶっ叩いて、縛り上げていた。
別にここでも、さっと結んじゃえばいいじゃん、という話だが、タイミングが掴めない。窓際の席に関しては初心者マークの生徒なので。他の生徒なら、さっと立って授業中でも先生も気にせず、結ぶし、周りの席も何も言わないけど、あ、やってくれた、と一瞬だけ思いおわる。
でもいざ自分がそれをやるとなると、いまいち踏み出せない。このカーテンの暴れよう、被害があるのは自分だけだが、周りも風の具合によってはいつ自分まで巻き込まれるのかと、ちょっと気になっているのはちりちり感じている。いつやんのかな、気になんないの、はやくやってくんないかな、と思われてるかもしれない。
でもこの暴れカーテンをすぐに押さえきれずに、奮闘する無様を、無視されているようで見られていることになったら、とか考えては、もうはやく休み時間こい、それか風なくなれ、とひたすら念じていた。
【カーテン】