Naru

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カーテンを開けることもないまま1日が終わる。
俺たち家族はあの日から全てが変わったんだ。
「犯罪者の息子!」
「あいつと一緒にいるとやばいぞ!俺らも嫌われる笑」
「近づくなよ気持ち悪い。」
なにが分かるんだ。お前らなんかに。なにも知らないくせに。父さんがどんな理由であいつに手を出したかも分かってないくせになにが言えるんだ。もっと頭使って考えろよ。どんな背景があるのか。表しか見てないからすぐ裏切ったりするんだ。ニュースで報道されていることだけが全てじゃない。もっと自分の頭を使ってよく考えるんだよ。考えて、表だけで判断せずどんな背景があるのか。どんな理由があったのか。そこすらも分かっていないのに、無差別に人を殴った最低のやつだと決めつけて。自分が見たことが、聞いたことだけが世界の全てだと思ってるの?そんなのおかしい。
父さんが悪く言われるのは確かにしょうがないとは思う。でも、それでも俺たち家族を守るために父さんは手を出したんだ。その理由を知ってから父さんを叩けよ。
「冬弥。俺が戻ってくるまで、駿と母さんをよろしくな。絶対戻るから。」
そう言ってくれた父さんの言葉だけは信じたい。
俺たち家族は、命を狙われていたんだ。
「次なにか目立った行動をしたらお前ら家族全員殺してやるよ。」
怖かった。死にたかった。俺たち家族は震えながら長い夜をいくつも過ごした。毎晩毎晩かかってくる電話。出ても意味がない。暴言を吐かれるだけだ。
「死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。」 
初めて電話に出たとき、ずっと耳元で死ねと言われ続けた。
頭がおかしくなりそうだった。狂いそうだった。叫んでしまいたい。逃げてしまいたい。死んでしまいたい。滅多に怒ったり怖がったりしてるのを見たことがなかった父さんですら怒っていた。
「誰のいたずらなんだ!毎晩毎晩電話をかけてきやがって!迷惑だ。」 
俺と俺の弟駿は直接そいつに話しかけられたこともあった。薬物を勧められた。
「これを飲むとすごく気分が良くなるんだよ。」 
駿はあの時まだ小学生だった。乗り気になってしまいそうな駿を必死で止めた。
「もらっちゃ駄目だ駿!兄ちゃんがもっと美味しいお菓子買ってやるから我慢するんだ!」
「分かったよ兄ちゃん。」
「チッ、、、、お前余計なことしやがって。お前らの人生ぶっ壊してやるよ。」
我慢できなかった。頭に血がのぼった。少しでも気を抜けば、殴ってしまいそうなほどに腹が立った。
だけど我慢して、
「なんのためにこんなことすんだよ!意味分かんねえよ!俺たちがなにをしたんだよ!なんの恨みがあるんだよ!こんなことしておいて、ただじゃ済まねえぞ!」
「兄ちゃん!いいよ。関わらなければいい。」
「駿!お前は何もわかってない!今俺たちがどんな状況にいるか分かってんのか?!なあ!このままだと俺たち家族全員ほんとに殺されるぞ!関わらなければいいじゃない!俺たちが身を引いてもこいつはずっとついてくる!今までもそうだったろ?!俺たちが一歩でも外に出ればいつも後ろからずっと見られてた!こいつは意地でも関わってくる!今すぐにでも刑務所に放り込まないと駄目だ!じゃなきゃこいつからは逃げられない!もうすでに俺らは追い詰められてるんだ!もうこれ以上俺らに関わらないでもらっていいすか。」
駿の少しびっくりしたような泣きそうな顔が見えた。
「ごめんな駿。でも、しょうがないんだ。」
「兄ちゃんわかってるよ。落ち着いて。そうです。もう僕たちに関わらないでください。」
「おい。次また大きい声とか目立った行動をしたら殺すぞ。」
反射的に駿を、後ろに隠した。
「無理です。もう俺たちに付き纏わないでください。もう勘弁してもらっていいですか。」
「土下座しろよw」
言われた通りに土下座する。
「兄ちゃん!こんなやつ土下座なんてする必要ない!」
「こうするしかねえだろ!俺たちの命がかかってるんだよ!」
「まじでしたのかよwまあそんなんで辞めるわけがねえんだよなwちょっと考えればわかるだろ?w」
「ふざけんな!お前なんか!お前みたいな犯罪者は一生刑務所にいろよ、、、!」
「ははっあっはは!随分舐めた口を利くガキだな!まあ今日はこんくらいで勘弁してやるよ。」
このように付き纏われた。それに耐えきれなくなった父さんはそいつを殴った。全治1か月かかる怪我を負わせた。
それからというもの俺たちはまた毎日怯えながら過ごしてた。でも、最悪の事態が起こる。
プルルルル。プルルルル。
「はい。〜〜〜〜。え?駿が?はい。はい。っ!今すぐ行きます!」
「母さん起きて!」
「、、、、殺される、、、、殺される、、、、殺される」
「クソッ!」
ダッシュで家を飛び出した。駿が学校の教室から飛び降りて自殺しようとしているらしい。
なにやってんだよ駿!
「駿!」
飛び降りようとしている駿が見えた。それから風でカーテンが揺れ、駿にちょうど重なり、カーテンが元の位置に戻ると駿が消えていた。全てがスローモーションに見えた。急いで走る。
「っっっっ!駿!」
ギリギリのところで手を掴めた。
「駿っっ!上がれっっ!早く!」
「兄っ、、、、ちゃん?」
「いいから早く!」
力いっぱい引き上げると、軽い駿はすぐ引き上がった。
「兄ちゃん、、、ごめんっ。」
「バカ!お前が死んでどうする!」
「耐えられなかったんだ。このクラスの雰囲気も、俺に対する視線も、この世界の残酷さ。全て耐えられなかった。犯罪者の息子だと冷たい目を向ける人、父親が犯罪者だと大変だねとでも言うかのように同情の目を向ける人。おはようも返してくれない。辛い。苦しい。逃げたい。死にたい。」
「そうだよな。兄ちゃんと一緒に死のうか。死にたいよな。苦しいよな。でもな、暗い夜だっていつかは明けるんだ。世間が俺らにどんな目を向けようと関係ない。いつかこの暗い夜も明ける。」
「待てないよ、、、(泣)暗い夜が耐えられないんだ。寒い。この世界は冷たい。驚くほどに。」
「あぁ、また俺は守れないのかなぁ(泣)大切な人ですら助けられないのかなぁ(泣)俺の力だけじゃなにも変わらねえのかなぁ(泣)死にたいなんて言うなよ、父さんの気持ちを無駄にしたくねぇよ(泣)自分の人生を振るってもいいから父さんは俺たち家族を守ることを選んだ。そのことは忘れないでくれよ(泣)」
「兄ちゃんやっと泣いたね(泣)父さんが捕まってから兄ちゃん、泣いてるとこも笑ってるとこも楽しそうなとこも見たことなかった。目に光がなくて。俺より先に兄ちゃんは、、、壊れてたんだ。感情を感じられない。父さんが捕まる前は怒ったりしてた。でも、父さんが捕まってから怒りも呆れも楽しさも悲しさも幸せも、なにも感じられなかった。この世界に絶望してる瞬間はまだ良い方なんだ。俺みたいにね。でも、本当に壊れてしまった人はなにも感じない。兄ちゃんはなにも感じないから、これが当たり前だと思ってしまっているから、感情がないんだ。」
「そうかもしれないな。大人はなにかあったら大人を頼りなさいと言うけれど、実際には何もしてくれない。俺、実は一回みんなが寝ている時に外に出て助けを求めたんだ。助けてくださいって。でも大人は俺を一瞬みるだけ。声すらかけてくれない。そんな大人に、世界に呆れどころか、もはやなにも感じなかった。それから俺はなににも期待することはなくなった。所詮こんなもんって。そう思うことでなんとか、自殺をすることをやめていられたんだ。期待するから、裏切られた時に、期待した分だけ返ってこなかった時に、絶望するんだ。それで辛くなる。だったら最初から期待しない。その方が楽だ。」
「でも、それで兄ちゃんは幸せになれる?俺たち家族を守ることに必死で自分の心を、制御してること、気づかない?本当に期待してなかったら、なににも期待してなかったら、今こうやって俺を止めてくれる兄ちゃんはいないよ?俺が生きていることに期待してたんだよ兄ちゃんは。兄ちゃんは俺たち家族を守ることに必死すぎだよ。」
「俺が、、、、俺が家族を守らなかったら誰が守る?父さんはいない。男で、今いる中で年が一番上なのは俺だ。だから家族を守らなきゃいけないんだ。」
「兄ちゃんって家族のことを考えているようで考えてないよ。だって本当に家族のことを考えているのなら、守らなきゃいけないじゃなくて、守りたいって思うはずだよ。まもらなきゃって思うから辛いんだよ。」
「俺は、守りたいとも思ってるよ。父さんに、任されたっていうのも少しはあるかもしれない。でも、父さんのように、命をかけてでも家族を守りたいって思ってる。辛いって感じてるのは責任感のせいじゃない。駿や、母さんが死ぬかもしれないっていう恐怖があることが辛いんだ。大切な人が死ぬかもしれないって思ったら辛いだろ?そういうことなんだよ。」
「駿?大丈夫?」
「うん。まさくんありがと。」
「俺、ずっーとおかしいと思ってたんだよ笑そーいうことね笑」
「に、兄ちゃん?」
「ガキの考えてることなんて全部わかってんだよ笑」
ずっーと不思議に思っていた。母さんがずっと殺されるって言ってることをあいつが知ってるわけがないんだよなあ。だって、俺は友達やクラスメイトに母さんがあんな状態のことは話していない。つまり、駿が誰かに相談してたってことだ。そういえばあんなこと言ってたんだ駿。
「今日まさくんに、まあ、本名は正広なんだけど〜母さんが大変なんだよねって話をしたんだ。そしたらまさくん、そっか。なにか俺にできることがあったら何でも言ってねって言ってくれたんだ〜ほんとにまさくんいい子なんだよね。」
それで、あいつが知ってるってことは、まさくんだかなんだか知らねえがそいつがあいつに言ったんだ。つまり、あいつとまさくんとかいうやつには何らかの接点があるということ。だから、あいつに家も、帰路も知られていたんだ。
「君がまさくんとかいうクズ野郎?笑さすがガキだわ笑全部分かっちゃった〜笑」
正広を壁に叩きつける。
「いった、、、、なにするんですか。」

一回切ります!また後で書くので気になったら見てみてくださいね!!
私のアカウントでは、主に短編小説を書いています!でも最近はお題が難しくてあまりかけていないんですけど、最初の方を見てくれればたぶんいいお話が見れるかもしれません。
あなたの心に残るような、言葉、小説を残したい。あなたの人生を変えるきっかけになりたい。
本気でそう思っています。ぜひ小説読んでみてね!ここまで見てくれてありがとう。
ここまで読んでくれたあなたの毎日がとても素敵なものになることを願っています。

10/11/2024, 12:28:00 PM