『カーテン』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
薄いレースカーテン越しに見える君の横顔。
天使が眠っているんじゃないか、
ってくらい美しくて透明感がある。
瞼を閉ざしている君を見て思う。
この人は、数日前に亡くなってしまったんだよな、
なんて。
静かに涙を零して、ひっそりと呟いた。
「愛してる」
〜カーテン〜
心電図がフラットになり響くそれはカーテンコール ずっと止まない
#tanka
親友の家はいつも窓が空いている。
「おーい。大丈夫?」
『大丈夫!もう出れるよ!』
その窓から見える親友の顔と靡くカーテンが非常に美しかった。
「また寝坊したの?笑」
『最近寝れてなくってさ〜』
「寝ぼけながら歩かないようにね笑」
「長袖長ズボンで暑くないの?」
『暑くないよ、最近寒くない?』
「そうかな。今日なんか24℃もあるよ?」
本当に寒いの?
夏でも長袖長ズボンでいたのに?
『寒がりなのかも笑』
「あるかもね。笑」
そんな他愛ない会話を交わしていた。
『…話したいことがあるんだよね。』
「どうしたの?言ってごらんよ」
『最近、亡くなった従兄弟が見えるんだよね。』
「え?」
『それも必死そうに何かを止めようとしてくるの笑』
『多分幻覚なんだろうけどね。』
「しっかり眠れてないからだよ…。」
「今日はいーっぱい遊んで、よく寝て、明日も迎えに行くよ!」
『……うん、ありがとう笑』
何かがおかしかったんだよね。
この時に気づいていればよかった。
「じゃあ、また明日ね!」
……
「おーい?笑」
『あぁ、ごめん、疲れてて笑』
「じゃあ今日はぐっすりだね笑」
『…うん、本当に、ね。笑』
従兄弟さんはきっとしっかり見えてたはずだよ。
「…おはよー?」
「今日は沢山寝てるのかな?笑」
ふわり
…今風なんか吹いてたかな。
いや、全く吹いていなかった。
なのになんでカーテンが……?
まあいい。
「お邪魔しまーす」
カーテンが靡いてたのは貴方の仕業だったのね。
「…え?」
「きゅ、救急車、」
「ねえ、、どうしたの?」
「寝すぎだよ起きてよ。」
なんでこの日にしたの?
なんで教えてくれなかったの?
どうして相談してくれなかったの?
そんなに頼りなかったかな。
どうしてそこまで追い込んだの?
いままでの日常ガ突然壊れルことはいつかぜったィある
だから今ヲ楽しんデね。
───カーテン───
今日は機嫌がいいな。窓際で揺れるカーテンを見てそう思った。
眠気のピークを迎える午後一発目の授業は、寝落ち防止にカーテンを眺めるようにしている。はじめはただの暇つぶしだったが、風の纏い方や日差しの好き通り方が日々違うことに気付いてからは眺める行為そのものが楽しくなってきたのだ。例えるなら猫の尻尾、電話口の母の声、近所の定食屋の味噌汁の具のような気まぐれっぷりを含んだ表現がそこにある。
首の後ろを容赦なく焼き付けていた苛烈さがなりをひそめた秋口の陽光を、柔らかくその身に纏ったカーテンは今週のベストオブカーテンかもしれない。
3月午後15時
私は今日もスビテンを飲んでいる
ラジオからは軽快な音楽
レースの奥の遠い空は夕陽のように赤い
陽光に反射する金色の髪をかきあげ
何もできない愚かな私を沈めるかのように
私は今日もスビテンを飲み干した
外も人も凍てついた、この囚われた街で
#カーテン
あーすっっごい暇。たぶん今人生で一番暇。
何もすることない。
いや、せな行かれへんことはあるけど。
あれ、木曜日ってこんなはよ来るっけ。怖。
昨日も明日も何曜日なのかわからん。
曜日感覚どころか1ヶ月すらはよ来る。
そらそうやろ。だって毎日同じ1日。
たぶん昨日をループしてても気づかへんのちゃう?
ゴミ箱掃除したはずやのにすぐ溜まって。
一瞬に思ぉたんにもしかして掃除してから結構経ってたりする?袋変えたのすごい最近に思えるのにホラーなんやけど。
作詞作曲と動画編集して寝る。ご飯食べる。
楽しいことしかへん。はず。
そやけどもうええ。もう飽きたそんなん。
家のなかって圧倒的に飽きる。
だって変われへんねんもん。
みんな頑張っててダルいから世界中俺にしようとか言うてそれじゃあ世界が回らなくなるって言われたけど
あれ合ぉとるなあ。
この家のことが世界に起こるんやろ。やばいやん。
お風呂とか外出るとかやったらやったでええ感じに気持ちよくなれるしそれだけでやる価値はめっちゃあると思ぉてんやけど最初の一歩が踏み出されへん。
だってめんどくさいやん。スウェットに帽子とマスク被って韓国アイドル風に歩き回ればええんかな。
部屋の荒れ具合もおかしいって。
3日かけてちまちまなおしたはずやのに
この前冬服引っ張り出したら五分で前より酷くなった。おかしい。見合ぉてないもん。
ご飯、シーツ替え、洗濯、風呂、
全部やっててこうやって箇条書きにしたら仕事してるなー感あるけど実際はくそ暇やわ。
家ってこんなやること無かった?
もうドラマリアルに5周くらいしててセリフ覚え始めてもてんやけど。さすがに怖いからやめて欲しい。
ドラマの世界=俺の世界とそろそろ勘違いするようになってまうから。
しょーみアマプラとネトフリとYouTube以外やることないからなあ。こんなつまんなかったっけ。
家バカ静かやし、寂しいし。
あー美女に会いたい。
美女に会ぉて、ほんでイケメンとかカッコイイとか言われたい。その為なら頑張れる。うん。
あー、髪だるいなあ。
髪もうプリンになってて染め直し勧められてんやけど
さすがにニート明けの美容院はハードル高いねんで。
まずコンビニ、次に服屋、それに慣れてきて1週間くらいしたら美容院やねん。
結構大変やな。
まあこの髪で出かけるよりはマシ。
ってことは韓国アイドル系ななかなかええで。
もう採用ですらええ。うん
とりあえず復帰のためにコンビニ、関係ない外出、美容院、予備校や。 スウェットとマフラー欲しいなあ。
今年こそはイケメンになる。
カーテンは真っ白がいい
いつか僕が考えることにつかれたとき、
死にたくなったとき、
心も心臓も爆発しそうなとき、
とりあえず窓を開けて
真っ白なカーテンが風になびくのを
静かに見つめていたい
叫ぶのと同じくらい気持ちがいいし、
僕はそれらに命を繋いでもらって
今、ここにいる。
カーテン
中と外の境。
なら、その中と外って?
自分の中にも存在すると思う。
ならそれを開けるのは果たして…
今日もソレはカーテンの影からじーっと此方を伺っている。
僕がソレに「おはよう。スキマの子。」と挨拶する。
相変わらず返事はないが雰囲気がホワっとする。
だけれどもソレの正体を探ろうとはしてはいけない。
中を見た友達は向こう側に引き釣りこまれてしまったから。
カーテン
カーテン、よくある普通の言葉ですが、私にとっては別な意味もあります。
あのミステリの女王、アガサ・クリスティが生み出した名探偵エルキュール・ポアロの最後の事件のタイトルになっているからです。
探偵らしくない彼の物語はどれも面白く、特に有名なのは『オリエント急行の殺人』になるでしょうか。タイトルを聞いたことがある方はたくさんいると思います。
『カーテン』は彼の最後の事件というだけに、ファンには胸に迫るものがあり、内容も深く厳しいところもあって、私には忘れられない小説です。
1943年にクリスティが死後発表する予定で書き、1975年クリスティの死の前年に発表されました。
クリスティの作品全般に言えることですが、彼の物語も古きイギリスの風俗が生き生きと描かれており、当時を楽しく想像させてくれますし、人生への冷徹な視線と、それでいて温かさも感じる内容は、今の時代に読んでも古びているとは思いません。
TVドラマシリーズではデビッド・スーシェが演じていましたが、もうこれが本当に彼としか思えないくらい素晴らしいものなんですよ。
本もドラマも本当に素敵なシリーズなので、まだの方はぜひ一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。秋の夜長にはぴったりの作品だと思います。
#54
「かーてん……?」
アレか、語源のラテン語、「覆う」だの「器」だの、「人の和」だのの意味があるらしい「Cortina」のハナシでもすりゃ良いのか。
某所在住物書きは部屋のカーテンをパタパタ。揺らしながら葛藤して苦悩した。
「それとも、なんだ、『皆さんカーテンって、どれくらいの頻度で洗ってますか』とか……?」
不得意なエモネタでこそない今回。とはいえ、窓覆うこの布について何を書けるものか。
ひとまず物書きはネットの海に、カーテンの語源と種類と値段の幅を問うて、物語を組もうと画策する。
――――――
最近最近の都内某所、某稲荷神社に住む子狐は、不思議なお餅を売り歩く不思議な不思議な子狐。たまに「誰か」の夢を見ます。
それは神社にお参りに来た誰かの過去と悔恨。お賽銭を入れた誰かの現在と祈り。お餅を買った誰かの未来と予知。
楽しそうな子供時代の夢もあれば、美味しそうな旅行中の夢、寂しそうな仕事中の夢もあります。
今夜の夢は、「誰か」というより、「どこか」の夢の様子。コンコン、ちょっと覗いてみましょう。
『とうとう、私の田舎にも、「再生可能エネルギー」の波が来たらしい』
最初の夢は、ごく最近の都内某アパート。お餅を売る子狐の、唯一のお得意様のお部屋です。
お得意様、ふわふわ湯気たつ緑茶を片手に、夜の窓の外を見ております。
『あのミズアオイの花咲く田んぼが、メガソーラーにでもなったか』
お得意様に尋ねるのは、お得意様の親友さん。
どうやらシェアディナーの最中の様子。鶏肉がぼっち用鍋の中で、コトコト。美味しそうです。
『風力だ。山の上に、デカい風車だとさ』
寂しげに、でも希望をもって、お得意様が答えます。
『需要、経済、放置山林の活用。仕方ないことだ。分かっている。……それに、時代がどれだけ「田舎」を壊そうと、きっと、残る「何か」は、在ると思うよ』
ぱたり、ぱたり。
はためく窓のカーテンが、次の夢を連れてきます。
『今日の例のお客様、パないよ……』
次の夢は、同じ部屋の、違う時期。お得意様の後輩が、ゆっくり畏敬の念を含んで首を振ります。
前の夢でぼっち鍋のあった場所に、今回は低糖質のキューブケーキが複数個。
小ちゃくて、カラフルで、これまた美味しそうです。
『知らない言語でまくし立てて、クレーマーさん撃退しちゃったもん。きっと良識ある外人さんだよ……』
『あの客の話の前半、通訳してやろうか』
対する部屋の主、コンコン子狐のお得意様は相変わらず。平坦な声して冷たい緑茶をひとくち。
どうやら、暑い夏の頃のようです。
『「お前、いい歳して、こんな朝から、ぎゃーぎゃーわめくものじゃない。他の客の子供がお前を見て、怖がっているのが分からないのか」だ』
『なんでわかるの』
『私の故郷の方言だ』
『ふぁ……?』
ぱたり、ぱたり。
はためく窓のカーテンが、次の夢を連れてきます。
『買い過ぎた……』
最後の夢は、更に過去に飛んだ同じ場所。同じ部屋。
『それにしても、なんだったんだ、あの子狐。そもそも子狐……?』
ぼっち鍋やキューブケーキがあった場所には、握りこぶし1個くらいの大きさのお餅が合計10個。
どうやら、子狐とお得意様が初めて出会って、初めてお餅を買ってもらった、3月3日のその後の様子。
途方に暮れて、おでこを片手で押さえるお得意様。
でももう片方でお餅を1個、つまんで噛んで、ちょっと幸せそう。いや、泣いてそう……?
『懐かしい、味がする』
またひと噛み。お得意様が言いました。
『あの味だ。「田舎」の味だ。時代に壊されて、もう無くなったと思っていたのに』
壊されても、崩されても、残るものは在るのかもしれない。お得意様はまたひとくち、お餅を齧りました。
ぱたり、ぱたり。そろそろ頃合い。
窓のカーテンがはためいて、今日の夢は、おしまい、おしまい。
引っ越して自分の部屋ができたので、ベッド横の出窓のカーテンを手作りしてみた。
手作りといっても、白い麻と白いガーゼを縫い合わせてクリップで挟んだだけの簡単なもの。
毎朝これに触れて部屋に光を入れる時、とっても幸せな気分になる。
麻のサリサリした感触が好きすぎて、気がつくとシーツもカバーも家で着る服もみんな麻になってしまった。
せめて自分の部屋だけは、どこを見てもお気に入りのものばかりになると嬉しいので、少しずつやってます。
注意⚠️
ノット小説
イエス台本
作者は深夜テンションです。
ーーーーーー
場 パーティホール
主演 誰か
キャスト 誰か
題名 『夜になって』
"
「おやすみ」
狭いアパートの中、カーテンを引く。カーテンが引かれるだけで、同居人と自分との間に空間が出来たような気持ちになるのだから、布一枚でも仕切りは大事だ。
とはいえ、布一枚なのは確かだから、相手の歯ぎしりの音やら寝言やらが聞こえてくる。時に寝返りで領地侵略されることもある。
「ギャラが上がった!」
「おしゃー!」
さえない芸人をやってるコンビだけど、どうにかこうにか名前が売れて、手取りが上がって、二部屋あるアパートに引っ越そうと言うことになった。
取り外された仕切りのカーテンを見る。カーテンとは名ばかりのただの布だ。汚れていて、所々ほつれている。
いつかはラジオなんかで、「ギャラも低くってね、家賃節約で相方と一部屋のアパートに住んでたんですよ」なんて言える日が来るんだろうか。
僕は、カーテンを1年ぶりに開けた。
外の眩い日差しが
僕と僕の部屋に煌々と降り注ぐ。
「ねえ、大丈夫?」
クラスメイトの椅子を拝借して、机に突っ伏している幼馴染みのつむじを見下ろす。移動教室から戻ってきてからというもの、彼女はずっとこの調子で凹んでいる。
理由はひとつ。先輩が彼女と思しき女子生徒とキスをする瞬間を目撃してしまったから。まるでドラマみたいなワンシーンを、こんな身近で目の当たりにするとは思わなかった。
正直、彼女が先輩を好きな理由が分からない。確かに綺麗な顔だと思うし、ひときわ目立つ雰囲気もある。けど、恋人は取っ替え引っ替えだと聞くし、良い噂なんて聞いたこともない。
それでも彼女はショックだったらしい。この世の終わりみたいな顔で、魂の抜け落ちた屍と化している。事情を知らない友達も声をかけてくれたけど、当の本人は答える気力すらないようで、代わりに私が「大丈夫」と答えておいた。
「全然大丈夫じゃないのに……」
「じゃあ、言ってもよかったの?」
「よくなーい!」
両手を高く突き上げて絶叫しながら勢いよく起きる。そのせいで教室にいたクラスメイトが肩を跳ね上げたし、開いてるドアから様子を窺う生徒と目が合ってしまった。
人の色恋沙汰に首を突っ込むほど野暮じゃないし、冗談のつもりだったんだけど、どうやら怒らせてしまったらしい。彼女は頬杖をついて唇を尖らせている。
「ていうか、なんであんたは平然としてるわけ?」
「なんでって……私は別に、あの人に興味ないし」
「まずそこから信じらんない。たとえ好みじゃなくてもさ、あんなシーン見せつけられたら、ぎゃあってなるじゃん!?」
「へえ」
賛同を得られなかった彼女は、再び顔を伏せてもごもご言い出した。そんなに落ち込むことなのかねぇと半ば呆れて、なんとはなしに視線を廊下に投げる。
そこに、涼やかな顔で通り過ぎる先輩の姿があって目を開く。視線に気づいた彼の黒目がするりと滑り、しっかりと私を捉えて微笑んだ。
「……ちょっと、聞いてる?」
「え! あ、うん!」
「いや挙動不審か。なに、誰かいたの?」
ふてくされたような顔をしたまま彼女が廊下を見る。すでに先輩は通り過ぎていて、何事もなかったかのように賑やかなざわめきがあるだけだ。
訝しげに眉をひそめて顔を戻した彼女が、今度はびっくりした顔で身を乗り出してくる。
「え、なんか顔赤くない?」
「なんでもない」
「なになになに。ついに先輩の魅力に気づいちゃった感じ!?」
「そんなんじゃない!」
「照れんなって〜。先輩は来る者拒まずって話だし、チャンスあるかもよ〜? お互いがんばろーね~」
「断じて違う!」
からかい混じりの言葉を強く否定する。もうすぐ授業が始まるからと立ち上がり、振り払うように自分の席に戻る。
開いた窓から吹き込む風がカーテンを大きくはためかせた。
あのとき見たワンシーンの後には続きがある。
照れたようにカーテンから出ていく彼女を愛おしげに見送った先輩は、不意にこちらに目を向けた。なんだか悪いことをしたような気がして心臓がはねた。
視線を遮るようにカーテンを広げるその一瞬──長い指を唇に押し当てて、こちらに目配せをしたあの人は、いたずらっ子のような顔で笑っていた。
あんなに幸せそうに微笑む人が、他の誰かに現を抜かすとは思えない。失恋が確定しているのに、絶対好きになんてならないし、チャンスなんてあってたまるもんか。
バタバタとうるさい白いカーテンを、八つ当たりのようにタッセルで固定してやった。
カーテンの間から音もたてずに顔を出す君に笑ってしまった。
「カーテンのお化けみたいだ。今年のハロウィンの衣装かな?」
「違うって分かってるでしょ」
「あはは、ごめんよ。で、どうだった?」
試着室から顔を出す君は恥ずかしそうに視線を逸らす。
「私にはまだというか、なんかちょっと…」
俺のわがままを聞いてくれるというから君を着せかえ人形にデートの約束をしてその最中。着てもらい彼女の反応が上々ならば買い上げて足元には複数のショッパーが置いてある。
あまり欲しがらない君だから試着することも少なくてたくさんの服に袖を通してもらった。表情ひとつ見逃さず試着の感想を尋ねる事も、試着した君を褒めることも忘れない。
最後に着て欲しいと渡した服は俺が一番見たかった服。メインイベントと言ってもいい。試着への抵抗を極力なくし多少の露出も気にしなくなった君はそんなことは知りもしないだろう。大切に抱えて「待っててね」とカーテンを閉めたのだ。
ショッピングの合間にカフェでひと休みをして一時的に疲れはとったつもりでも体力的な違いと着替えの連続で君の疲れは拭えなかったのかもしれない。
試着室の君の感触が掴めない。
「好みに合わなかった?」
「ううん、すごくデザインもシルエットも好き。でもね店員さん呼んで欲しくて」
君の助けになればと店員に付き添ってもらった。俺は試着室の前で待ち、店員へ耳打ちする君は相変わらず顔だけを覗かせる。こそこそと俺には聞き取れない。頷いた店員は小走りにストールを手に試着室の君に手渡した。
「ね、どうかな?」
「すごく可愛い。見かけた時ずっと君に似合うと思ってたんだ」
肌寒かったのか肩にストールを羽織ってくるりと回る。飴細工のように繊細なレースがヒレのように揺れ動いた。
ストールとワンピースをそのまま買い取って着飾った君の隣を歩く。
「布地薄かった?」
「えっとね、胸元がちょっときつくて…目立っちゃうから」
言われてしまえば視線が下がってしまうもので。
「…見ないで」
ストールを寄せて防がれてしまった。最近服がきついと呟いていた理由って、そっか、胸…。
「このまま下着も買いにいこうか?」
「もうっ!」
君からの体当たりなんて可愛いもので簡単に受け止められる。
「でも、」
「?」
「今日は好きな服着せて良いよって許可しちゃったから。好きなのあったら…」
胸に頭を押し付けながらごにょごにょと言う君が
「期待してしまうよ」
「期待していいよ…?」
愛おしくてしばらく抱きしめて精一杯の君の頑張りを噛み締めていた。
目が覚める。
自室のカーテンから差し込む陽光が眩しい。
囀る鳥の声と、朝に登校する子供達の笑い声が聞こえる。
今日も一日、がんばろう。
#カーテン
舞台が始まる
私は誰かになる時、感情を発散できる
普段泣くこともなくても、誰かになりきる時だけ思いっきり泣けた
思いっきり笑い、怒る
嘘でもでも構わない
今の私に皆が共感し感情を共有している
カーテンコール拍手に包まれる
嘘は私を本当の私に変えてくれる。
おかしいな、と仕方なく目を覚ます。どうにも部屋が明るくて、せっかくの日曜日だというのに二度寝ができないのだ。
電気はもちろん完全に消している。だが、目を瞑ってもなんだか眩しくて、かといって窓の方へ目をやってもカーテンはしっかりと閉められていた。以前はもっと寝心地が良かったのに。
よっこらせと重たい体を動かし、洗面台へと向かう。未だに処分していない彼女用の歯ブラシが自分の歯ブラシと隣同士で立っていた。歯ブラシの処分方法なんて知らないし、そもそもまだ使えるし。そんな言い訳を並べながら、目を覚まそうと冷水を顔面にぶっかける。
「……アイ」
もうここを出ていった彼女の名を口にする。まだ目は覚めていないようだ。
部屋に戻り、キッチンとリビングが一緒になったワンルームを眺める。あのフライパンは料理好きな彼女が選んだもので、多機能な冷蔵庫もそうだ。やたら色違いが多いお皿やコップも、お揃いがいいねと一緒に買ったもの。
……ああ、そうだ。あの薄いカーテンも、彼女が選んだんだ。彼女が隣にいるだけでぐっすり眠れていたあの頃を思い出す。
今ではもう、隣で一緒に寝転んでくれる彼女がいない。僕はただ、薄いカーテンごと目を突き刺してくる鋭い光に指を刺されるしかなかった。