『エイプリルフール』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私は貴方に嘘をつき続けた。
だから、世界中の人が嘘をつくこの日にだけ、この気持ちが嘘になるように。
「ねぇ、私たち別れよう。」
エイプリルフールって
嘘をつける人がいないと成り立たないよな〜。
今日一日、過ごしたけど
嘘を全くつかれないしつかなかった
嘘ついても楽しく過ごせる友達欲しい
お題 エイプリルフール
「うっそだよー!」
「ちっくしょぉぉぉぉ!」
頭を抱えて蹲る少年に、私は優しく声をかける。
「いい加減諦めたら?私に勝つって言ってもう何年目よ?」
「まだ6年しか経ってない!」
「6年も経ってるでしょ。」
やれやれ、どうしてこうも強情なのか。
「大体あんた、なんでそんなあたしに勝ちたいのよ?」
うぐっ、と声を詰まらせ固まる。こころなしか顔が火照っているように見えるのは気のせいか。
「う、うっせー!俺は絶対お前が騙されるような嘘をついて、お前に勝つって決めてるんだ!だから、その日まで逃げんじゃねーぞ!!」
じゃーな!!あっという間に去っていく夕陽に照らされたランドセルを見つめ、微笑む。
「あの子も、そろそろ気づくかな。」
『もうすぐこの街から出ていくんだ。』
エイプリルフールは、午前までだって。
”嘘を吐くことはいけない”
なんて言われてきたけれど、実際、嘘は誰もが吐いていることだよねぇ?
正しい嘘の使い方、なんて、誰にも解らないけど、少なくとも悪いことだなんて、言いきれないんじゃない?
吐いた嘘から救われたことがあるし、嘘が本当になったことも実際にあるからね。
だから、絵空事を言い続けるのも、嘘の延長で、本当なんだよねぇ。
少なくとも絵空事だとバカにする奴らより、絵空事を実現しようと奮闘する方がどれだけスゴいかなんて、解りきってるし。
……ねぇ。君だったら、どっちを選ぶ?
嘘を吐いて嘲笑うか、嘘を真実に変えて笑うか、なんて、”エイプリルフール”らしくない質問だったね。
エイプリルフール
社内の人間に
大嘘つきが居るんじゃが
あっちでもこっちでも
嘘つきまくり
そのせいで
大事な人材
どんどん消えてしまった
そんな奴は
今日の日に
どんな嘘をつくんだろう
まぁ十中八九
地獄行き
エイプリルフール…それは嘘をついても良い日。
なぜそんなくだらない日が生まれたのかは分からないけど、私はクリスマスなんかよりも今日が好き。
汚い私が唯一許されて輝ける日だから。
嘘をついても良いならさ、誰か言ってよ。
貴方は綺麗だ…って。
嘘ついていいのは午前中なのにお題が出るのは夜という既に計画倒れ感甚だしいやつだな。
サプライズが世の中で一番嫌いだ。ドッキリの番組とか瞬間でテレビのチャンネル回す。する側もされる側も見てる人も幸せになれるならまだいいけど、突然水ぶっかけられたりする海外のやつあるじゃん。あれやられたら吾輩はそこを無差別猟奇殺人の現場にする自信がある。
No.41『嘘か真か』
散文/掌編小説
開口一番、
「わたしは、エイプリルフールに嘘をついたことがないですね」
口をついて出たのはこれだった。
4月1日。日本で唯一、公然と嘘がつけるこの日に、わたしの職場は、ちょっとした上手い嘘をつく大会になって。わたしの番になり、わたしの口から飛び出たこの言葉は、嘘でもなんでもなく本当のことなのだけれど。何故だがとてもウケてしまった。
わたしにとっての嘘は、咄嗟に口をついて出てしまうもので。嘘を考えようとすればするほど、上手い嘘が浮かばないから、エイプリルフールには嘘がつけない。ただそれだけのことなんだけどね。
お題:エイプリルフール
エイプリルフール
4月1日はエイプリルフール。この日は、ウソをついても良いと聞いている。でも中には、きっと“ウソをつくなよ”と怒る人もいると思う。ウソを信じた人はきっと非難されるのであろう。でもこの日は、みんな寛容的になるのであろう。たしか“寛容”は美徳の1つでもある。他人に対して寛容であることは優しさである。優しさの反対は厳しさ。どうも厳しいのは苦手だ。優しくされた方が人は伸びると言う。“寛容のある社会”を望んでいる人は大勢いる。
「嘘」にちなんでアリストテレスの「問答法」について考えた。
アリストテレスの師匠、プラトンは「無知の知」を唱えた。どれだけ賢い、と言われる人であってもこの世の原理原則、仕組みを全て知っているなんて1人たりともいない。プラトンは傍からみれば天才と言われていたがその真実に目を向け真摯に学んだそうだ。
「問答法」はいわゆる知識人にあらゆる物事について質問していくのだ。人はこれが正しい!という各々の価値定規で物事を見ている。だか、本当にそれは絶対なのか、それを尋ねまわったのだ。
その逸話の中で「嘘をつくことは悪か?」という問いを投げる。大抵、悪と答える。そこでアリストテレスは自殺をしたい友人がいて、「ナイフがあれば首を切れるのに・・・君、持ってないかい?」自分はちょうど持っていた。しかし死なれたくないので「持ってない」と答えた。この嘘は悪なのか?と聞く。
このような切り口で知識人たちを詰まらせたことでアリストテレスは投票により処刑されてしまう。理不尽なことだとは思う、しかし、そうなることを予想できなかったのか?とも思う。要するに、何事も捉え方次第なのだ。
絶対、の価値観なんてないのに、多くの人は(受験生の私も含め)そういったものがあるように思ってしまう。
得意げになり、私はテストの場でその虚構さに撃沈したことが何回もある。謙虚さは根底にあるべきだ、と思った日だった。
きょうは、二本立て
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「私ね、実は君のこと嫌いなの」
開口一番、俺は彼女に告げられた。
話があるから会えないか、と彼女から送られてきたメールにはそう書かれていて、いつもとは違う雰囲気のメールに戦々恐々としてこそいたが、まさかの宣言。
つまり、これは…別れ話、なんだろう。
彼女とは半年ほど前に付き合いだして、本当に俺にはもったいない素敵な人だと常日頃思っていてが…。それでも滅茶苦茶ショックだった。
あぁ神様。なんて残酷なんでしょう。
そう俺がガックリと肩を下げていると、彼女が慌てた曜に俺に言ってきた。
「ちょ、ちょっと待って、そんなに落ち込まないで!」
いや落ち込むよ。別れ話だろ?
「ご、ごめんなさい!そ、そんな落ち込むなんて、思わなくて…ほら、今日はエイプリルフールでしょう?」
エイプリルフール…?エイプリルフール…。
…そうだ!今日は4月の1日!エイプリルフールで、つまり…。
「嘘…ってことか!?悪趣味じゃない?!めっちゃ俺…」
「あぁ…本当にごめんなさい!!あのね…」
そう彼女は本当に申し訳なさそうに肩を縮めながら、どうしてあんな嘘をついたのか話しだした。
「あの…エイプリルフールについた嘘は、一年間叶わないって…聞いてね…それで、君に嫌いって言えば、一年間ずーっと好き同士でいられるかな…って…思って…」
「そ、そうだったのか…」
俺は安心したような、肩透かしを食らったような、なんともいえない気持ちになって思わず腰が抜けてしまった。
そんな俺をみて彼女はもう本当に泣きそうな顔で俺を支えながら何度もごめんなさいごめんなさいと繰り返していた。
「いや…俺…別れ話かと…ほんと…」
「本当に、本当にごめんなさい…私…なんて軽い気持ちで…」
「いや…なんか、もういいよ」
段々と俺の中には安堵が溢れてきて、可愛らしい願掛けも愛おしくってきて、もうどうしたらいいか分からなくなってきた。でも、本当に本当に安心したのは事実だ。
その時ふっと思って、彼女のほうを見る。
「あのさ、それ…一年間だけなんだろ?その後は?」
「え、あの…また、言えたら…また一年間って…ずっと…続ければって…ごめんなさい…」
「あ、いやもういいよ!謝んなくて!」
俺はシャンと立って彼女の肩を抱いた。あの言葉が嘘だったなら、これ以上情けない姿は見せられない。
「嘘、だったんだろ?それだけで、もういいや」
「あの…本当?本当にいいの?君のこと、傷つけたのに?」
「だから!もういいって!な!」
ぎゅっと、彼女を抱き締める。彼女もこわごわとしながら、俺を抱き締め返してきた。
「でも、嘘でも嫌いって言われるの、嫌だからさ。もう言わないでくれよ?」
「うん、うん…。ごめんね…」
「謝んないでって」
「ごめんね…大好き…大好きだからね…」
「知ってるよ。…俺も大好きだよ」
しばらく俺たちはそうやって、言い合い続けていた。
――――――――――――――――――――――――――
「実は僕は宇宙人で、今日地球を滅ぼす手筈になっているんだ!」
「あっそ。大変ね」
目の前の幼馴染は驚愕に満ちた顔であたしを見ている。
「いや、マジのところの一大事よ…?」
「へー困ったわね。で、あたしはどうしたらいいわけ?」
「焦れよ!!なんでそんな落ち着いてんのさ?!!」
わたわたと手足をバタつかせながらいかに事が重大かを語ってくる。
「今に空を覆う数の宇宙艇が地球を攻めてくんだそ!?」
「じゃあさ…仮に、仮によ、それが本当だとして、それをあたしに話して何になるわけ?」
あたしがそういうと幼馴染は自信満々に胸を張っていった。
「そりゃあれよ!僕と一緒に来て逃げてもらうのよ!」
「どこによ」
「僕の星しかないだろ?」
はぁ、とあたしはため息をついた。こいつこんなスラスラ口が回るやつだっけ?
「あーもういいから。嘘でしょ?それ」
「なんで!信じてくんないの!」
けたたましく叫ぶ幼馴染に呆れたようにあたしは言う。
「だって今日、エイプリルフールでしょ?嘘つく日」
「…え、あ…そうだった」
幼馴染は突然気が抜けたようにへにゃりとなってしまった。でもどこかを見ながらブツブツと何か呟いている。
「あーいやでも…そっか…嘘にできるのか…気に入ってたしな、ここ」
何いってんだが。あたしは呆れかけた。
あーよかった、と僕は安心していた。僕の幼馴染であるところの女の子がちっとも驚かないもので焦ったけど、どうにかなりそうだ。
僕たちの種族はどうにも誰かのお願いを聞いてしまう。本来の取り決めであるこの星を滅ぼすこと、というものも止めてくれと女の子が言えば、それで止められた。
僕らの種族の、決定的な弱点。それを利用すれば居心地のいいこの地球という星を壊さないで済む。と、考えたのだけど。
この取り決めを、嘘にする。正確に言うなら、嘘にしてくれと願われたことにすればいい。僕は種族の中でも頭が回るのだ。自称だが。
「あのさー」
僕が安心して胸をなでおろしていると、目の前の女の子がなんの気なんてなさそうに聞いてきた。
「あたしに、幼馴染なんていたっけ?」
………。
「…嘘だよ」
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おだい『エイプリルフール』
暖かい風が頬を撫でて、新しい匂いがする季節。
出会いと別れ、物寂しい匂いがする季節。
前を歩く人達が後ろを歩く人達にその場を譲り、頑張れと声を掛けては去っていく。
それが春って季節だと思うんだ。
これは運転も同じだと僕は思った。
前を走る車に追いついて、横を通おって前に出た時の新しい景色。
その車と偶然出会って、長い時間同じ道を走って、変な仲間意識が芽生えてきた途端に速度が合わなくなって、抜いた時の何とも言えない寂しさ。
道路には速い車がいてゆっくり走る車がいて。流れに乗って走るのは運転の当たり前。
でも時々、その自然の流れを邪魔する異物みたいな車が現れる。車は悪くない、悪いのは運転手さん。
前を走る背の高い箱型の車をいつもみたいに僕は抜いたんだ。そしたら直ぐに抜き返されて、急にブレーキを掛けて速度を落としたり、二車線の道をくねくね走ったりして邪魔をしてくる。
勿論僕は無理な追い越しなんてしていないよ?
なのにその車は怒り狂ったように僕に攻撃を繰り返してくる。
僕だってだてに何年もこの仕事をやってない、まだ子供だけど運転にはそれなりに自信があったりする。
ラリーカーを追い抜いたりとかね。
僕は少し仕返しをする事にした。追い抜く為に車線を変えるとその車は一緒に動くから、それを五回くらい素早く繰り返す。
すると、三回目くらいから背の高いその車は動くのが難しくなって来て、五回目には肩輪が浮いていた。
僕はそうやって出来た僅かな時間にその車を抜きさって、二度と追いつけないように速度を上げる。
そう言えば、四月に出てくるあんな人って何て言うんだっけ? ・・・・・・そうだ、
【April Fool】
(四月の愚か者)
エイプリルフール
「嘘つき」
責めるようにそう言えば、あなたは困ったような顔をした。
ずっと私はあなたと付き合っていたと思っていたのに。
好きと言った言葉も愛してるの言葉も、一年に一度今日しか聞けない。そのくせ今年は、別れてくれ、なんて言うんだから。
わかってたよ、君が私のこと本当は嫌いだって言うことも。本当は付き合ってなんかいなかったことも、ずっと私だけ勘違いして踊らされていたんだ。
もっと早くに気づけばよかった。今日がエイプリルフールなんて、少し考えたらわかるのに。
だから、あなたの言葉に素直に頷いた。
「バイバイ」
そう言って別れを告げる。でも、気づいていなかった。それが嘘だってことも。
さあ、諸君
大っぴらに嘘をつこう
大手を振って馬鹿になろう
この日につく嘘が
いっとう楽しいのだ
「ちょっとしたお遊び」の
あからさまな嘘が
朗らかに騙される人々が
なに、こんな日じゃなくても
この世界は嘘に塗れている
気づかないほど乱暴で
暗黙のうちに流される
陰鬱な人間の性
それが社会の形
さあさ、今日ぐらい
たったひとことの
明るい嘘をつこうじゃないか
道化師たちよ
お前たちにも心から笑う権利はあるさ
4月1日は嘘をついても良い日。
嘘をついていいのは午前中までで、午後からはネタバラシタイムだよ。
小さい頃からみんな通った道。テレビとかでもよくこの題材を取り上げている。
でも、本当のことを嘘だと決めつける人もいる。なにもかも、この日だからだ。
「え? ともかちゃん今日誕生日なの?」
「うそ~!? エイプリルフールだから嘘ついてるんでしょ」
毎年、このやりとりをする。
嘘じゃないんだ。本当なのよ。終いには、私も誕生日~、と煽ってくる人さえもいる。
誕生日順に並ぶと、私は一番最後。その年の一番最後は4月1日生まれなのだ。
4月生まれの同学年とまるっと一年違うわけで、小さい時は体型差もすごかったが、
「ガチの誕生日なんだからプレゼントちょうだいよ」
と、態度はすごく大きく育ちました。
嘘をついてもいいのが、4月1日のエイプリルフールだけど、私の誕生日もその日だから、覚えててよね?
【エイプリルフール】
『エイプリルフール』
これは嘘、あれも嘘、これは本当……かもしれない。
春休みの図書館で、私は調べものに没頭している。
「全部嘘に決まってるじゃん」そう言って笑う同級生たちは、あかんべーして追い払った。
探しているのは、未確認生命体の情報だ。見てみたい。一種類くらいは実在してもいいのではないかと私は思う。
ツチノコでもネッシーでも、ケセランなんとかでもいい。宇宙人だったら大当たり。
分厚い郷土史の資料やら縮刷版の新聞から、怪しげなタイトルの怪奇本までを塔のように積み上げて、それらしい記述を一心不乱にメモしていく。
なんでこんなことをしているかって、そりゃあ青春のど真ん中をロマンに捧げたいからだ。埋蔵金探しと迷ったのはナイショである。
「ねぇ、宇宙人探してるの?」
突然上から降ってきた声に、本の塔に囲まれて机に噛り付いていた私はギョッとして顔を上げる。
にこやかな笑みを浮かべた同年代くらいの少年が、私の手元を覗き込んでいた。私はその容姿に意識を奪われ、言葉を詰まらせる。今まで見たどんな人間よりも美しかったのだ。
「僕が宇宙人だよ」
告げられた二言目に私は堪らず「え!」と大きな声を上げた。
当然のように周囲の視線を集めた私は、積み上げられた本の壁の裏に隠れるように身を縮める。
こんなの考えるまでもなく嘘に決まっているのに。輝くように美しい人間を前にして、正常な思考を失っていたようだ。
「ごめん、信じた?嘘だよ。今日ってエイプリルフールなんでしょう?」
ポカンとした私は毒気を抜かれ、笑いながら「知らない人に突然噓八百をぶちまけるのがエイプリルフールだとは思わなかった」と率直に告げた。
すると彼はこの世のものとは思えないほど美しい顔で「それは知らなかったよ」と明らかに落胆する。
その時、宝石のように美しい瞳を、半透明の膜のようなものが一瞬覆ったように見えた。そう、カエルの瞬膜のような。
いや、潤んだ瞳に光が反射しただけだ、気のせいだろう――。そう思ったのだ、その時は。
探し物がもう見つかっている事に私が気が付くまで、あと数ヶ月。
4月1日、エイプリルフール。
これを聞いて大半の人は
嘘をついてもいい日だな、と思うだろう。
もちろん私もそう思っていた。
正確には、2年前までその考えしかなかった、だ。
今はそれに加えてもうひとつ、
4月1日と聞いて思いつくものがある。
そう、教職員の異動が新聞に載る日。
去年よりももっと先生のことが大好きな今年は、
3週間以上まえから
この日が楽しみでもあり、怖くもあった。
早く知って来年からも一緒に入れたらという希望と、
もし先生が異動してしまっていたら
どうしようという不安。
朝目覚ましが鳴る直前に目が覚め、
急いで新聞を確認しにいく。
見間違えたらいけないと3周は目を通した。
何度見てもそこには先生の名前はなかった。
先生は4月からも学校にいるのだ!!!
うれしくてうれしくて、どうしようもなくて。
ただただ、あたたかな気持ちだった。
嘘だと思う?
世の中、
お金を払ってまでも嘘をついて欲しい人って、
割と多くいるものよ。
#4 「エイプリルフール」
季節は春。
暖かく晴れた気持ちのいい日で、窓の外には桜が舞う。
デートとまではいかないけれど、一緒に散歩でもーーなんて。
休日のスタメンであるスウェットを手放して、ふんわりしたワンピースを着てみる。
薄くメイクをしたあと髪を巻こうとして、そこまで気合を入れるのはなんだか恥ずかしくてやめた。
少し浮ついた気持ちでリビングの扉を開ければ、彼はソファでゲームをしていた。
「ねぇ」
「んー?」
「今日、いい天気だね」
「ああ、そうだね。洗濯しないとなぁ」
そうだけど。そうじゃなくて。
話しかけても、一向に画面から目を離さない彼に苛立ってしまう。別に趣味に口を出したくはないけれど。
「……ゲームじゃなくて、私のこと見てよ」
ぽろり、出すつもりのなかった心の内をこぼしてしまった。え、と呆けたような声を出して、ようやく彼がこちらを見る。
恥ずかしい。柄じゃない。こんなバカみたいな我儘を言うなんて。
ポカンと私を見つめる彼にこっち見んなと思っては、さっきと真逆じゃないかと自分にツッコミを入れて、もう何が何だか分からない。
「それってどういう、」
「バカ、エイプリルフールだよ。本気にしちゃった?」
狼狽を悟られないように笑って見せれば「うそぉ……」と、困惑とも落胆ともつかない彼の声。それを振り切るようにして、リビングから逃げ出した。
自室の扉を閉めて寄りかかり、溜息をひとつ。
「……嘘だよ」
ほんとはいつも思ってる。
ゲームばっかりじゃなくて、たまには私のこと見てよって。
愛してる
そう言われた時、僕はきっとどこかで
これが嘘なんだと気づいてた
それでもその言葉は
僕の思考を奪うくらい鮮明で
僕もって答えてしまった
その瞬間バツの悪そうな顔で
ごめんね、エイプリルフールだからって言い淀む君に
僕は僕のも嘘だよと反射的に言う
安心した君の顔を見て、君に一つだけ伝えたかった
今はもう、午前じゃないよ
《エイプリルフール》
#11