お題 エイプリルフール
「うっそだよー!」
「ちっくしょぉぉぉぉ!」
頭を抱えて蹲る少年に、私は優しく声をかける。
「いい加減諦めたら?私に勝つって言ってもう何年目よ?」
「まだ6年しか経ってない!」
「6年も経ってるでしょ。」
やれやれ、どうしてこうも強情なのか。
「大体あんた、なんでそんなあたしに勝ちたいのよ?」
うぐっ、と声を詰まらせ固まる。こころなしか顔が火照っているように見えるのは気のせいか。
「う、うっせー!俺は絶対お前が騙されるような嘘をついて、お前に勝つって決めてるんだ!だから、その日まで逃げんじゃねーぞ!!」
じゃーな!!あっという間に去っていく夕陽に照らされたランドセルを見つめ、微笑む。
「あの子も、そろそろ気づくかな。」
『もうすぐこの街から出ていくんだ。』
エイプリルフールは、午前までだって。
4/1/2023, 3:01:44 PM