『イルミネーション』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「寒っ…」
外に出ると、途端に風が強く吹いてきて凍えそうになる。真っ暗な冬の夜空の下で吐く息は、余計に白く目立つ。もうこんな季節かと一人呟き、歩き出す。周りの家々は不思議なほど静まりかえっていて、私の靴音だけがやけに響く。
そのまま住宅街を歩いていると、一軒の家が目に入った。ベランダや庭の木からイルミネーションライトがぶら下げられていて、暖かなオレンジに光っている。とても幻想的だ。しばらく立ち止まって眺めてみる。光はぽわぽわと点滅し、時折速くなったりゆっくりになったりを繰り返していた。ずっと立ち止まっているのは悪いと、また歩み出す。再び暗い住宅街が広がり、淋しい景色に戻る。もうちょっと見たかったな。名残り惜しくて後ろを振り返る。光は変わらず灯っていた。さすがにそろそろ行こうともう一度前を見る。途端、当たり一面がたくさんの光で溢れ出し始めた。赤や白、緑に青。星の形やツリーの形。まるで魔法がかかったみたいにそれぞれが光輝く。暗い空に存在を主張するかのように。ひんやりとした風が吹き、光に照らされた木々や私の頬を撫でていく。今度はそれすらも気持ち良かった。たまには夜の散歩もいいかもしれない。また、ここへ来よう。いつの間にかすっかりと温まっていた心がそう言った。
【イルミネーション】
それは手が届く星の海
偽物の星が妙にギラついて
ブルーライトの電子を泳ぐ
私たちみたいね
ほんものになんてなれやしない
光るならどっちだっていいよ
イルミネーションとイミテーション
ほらあまり違いなんてないでしょ
雪と一緒に星が落ちてくるのよ
偽物か本物かなんてどっちでも良いと思う。ブランド品によく似た商品も似てるだけなら別に構わないし、本物が食べられなくても似てるものを食べられたら満足だし、結局、本物というのは拘りの強い人間が扱うものです。本当の作家になれなくても言葉を綴れるだけで楽しいし、本物の星は手に入らなくていいから、たくさんの星が手の届くところで光っているだけでなんだか嬉しいんです。嘘を楽しみたい。
イルミネーション
愛を注いで イルミネーション
押し込めて
潤したら
煌めきは
自分次第
暗がりを
照らして華やかに
信じるに変えれば
特別な夜を演出するに相応しくあれ。
今日も御客様へ至上の出逢いと喜びを。
白と金と赤と緑、それから青の眩い光が人々に笑顔を齎している。彩り豊かな電飾を纏う街路樹の周りは北風が吹いても暖かく見えた。少し頬が緩んで、それから小さな対抗心を燃やす。特別を提供するならこちらも十八番だ。
職場に着いてすぐ糊の利いた白いシャツに腕を通し、黒のベストとスラックスを身に付け鏡の前で髪型を整える。全身チェックを済ませたら準備完了。粗相の無いように、でも固くなり過ぎないように。──ここはカクテルバー。誰もが素敵な出会いに期待し心躍る場所。出会いとは人に限らず、時に酒や話題そのものだったりもする。
バーテンダーの自分にとってもこの場所での出会いは特別だ。何故なら誰かの特別に携われるから。御客様ひとりひとりが大事な人になるのだ。そんな大事な方々にカクテルを作ることで、自分は確たるものになれる。
「いらっしゃいませ」
落ち着いたジャズが流れる店内に、また一人、特別な夜を求める女性がベルを鳴らした。こういう場は慣れていないのか恐る恐るカウンター席に座る彼女。少し話して警戒が解かれるとあまり酒に強くないと言う。そんなあなたには、グレナデンシロップ、ピーチネクター、それからスパークリングワインで満たした愛を贈ろう。ネープルスイエローに染まるグラスは近づく聖夜に導かれて輝きを増す。もみの木の上で瞬くベツレヘムの星のように。
#愛を注いで #イルミネーション
イルミネーション 作︰虹藍
吐息が白い
あなたと見たイルミネーション
かじかんだ手を
繋ぎ合わせて
また来年も
同じ景色を見ていたいと
願いながら
眩い光を見つめる
キラキラと輝く景色の中に
2人の想い出を閉じ込めて
いつまでも幸せで
ありますようにと
私は何をやっているんだ
私の全身にはLEDが付けられ、チカチカしながら輝いている
友人にツリー役として、ただ立っていてくれと頼まれた
けっこういい金額が貰えるというので受けたのだが、なんというか、なんとも言えない
公衆の面前でイルミネーションを光らせながら装飾されたもみの木のコスプレはなかなか精神に来るものがある
だいたい木の役って、学芸会じゃないんだから
いや、今日び学芸会だって出番の差はあれど、ちゃんとした役を当てられ、木の役なんて存在しないだろうに
近くでは友人たちがサンタとトナカイをやっている
その横でやはり私は何もしなくていいらしい
もうこんなことするならツリー用意しろよ
しかし友人によると、明らかに人がやってるもみの木が、終始何もせずに突っ立ってるだけというのが、最高に面白いのだそうだ
理解不能
そんな中、なんと私のイルミネーションをきれいだという親子が現れた
私は自分の姿は見られないのできれいかどうかわからないが、どうやら私のイルミネーションに子供が魅入っているらしい
なんか、悪い気はしないよね
友人たちの思考は全く意味不明だけど、こうして喜んでくれる子供がいてくれるなら、やったかいがある
おまけにけっこういい金額貰えるし
私の姿を見て楽しい気分になる人がいるのなら、私は進んでイルミネーション輝くもみの木のコスプレイヤーになろう
どんなに輝く光でも
あなたには到底、叶わなくて
私の光を、奪って。
私は心を、奪われてしまいました。
イルミネーションは街が光で包まれる夜
寒ささえ忘れるほどのきらめき。
あなたと手をつなぐ瞬間
心まで明るく照らされる。
「寒くない?」
優しい声が心を溶かしていく。
イルミネーションの下で見つめる横顔
どんな宝石よりも輝いている。
「この瞬間がずっと続けばいいのに」
言えない言葉が胸の奥で弾ける。
光に包まれた二人の影が
ゆっくりと近づいていく。
それは、きっと一生忘れない冬の魔法_
無粋ではあるが綺麗と思ったことは無かった。
夏の冷房を節電の名目で我慢させるなら、
イルミネーションこそ無用の長物ではないかと思ってた
だが我が子はそんな親に似ずイルミネーションを喜んで
見ながら走り回る
我が子に限らず誰かのハッピーが生まれるなら、
それも悪くないと思う今日此の頃
イルミネーション
-2℃の空気の中スクールバッグを肩にかけ
貴方と歩く駅前
ゆびさきの感覚も肩の重たさも周りの煌めきも
忘れてしまうほど貴方に恋してる
その眼鏡に、ひかりがきらきらと反射するのが見えた。横から見る顔は、口をぽっかりと開けてずいぶんと間抜け面だ。
「感動してんだ」
呼びかけてみる。振り向いた顔は変わらず間抜け面で、感動の為か、それとも寒さのせいか、その頬は上気していた。
「してるよ!綺麗だもん!」
「さいですか」
「……感動しないの?」
続けて、「ロボットなの?」と付け足してくる。 誰がロボットやねん。どこからどう見ても立派な人間やろが。
というか、感動。感動、ね。
「……してるて」
感動してるよ。ここに君を連れてきた自分に。
そんな間抜け面で、でも、ばかみたいにかわいい君が見れたのだから。
してるんじゃん、と満足気な君がまた上を見る。夢中になって我を忘れ、風邪でも引くんじゃなかろうか。ため息をついてから、自身のマフラーをゆるめた。
/イルミネーション
イルミネーション
綺麗。
電気がチカチカピカピカ。
クリスマスな感じが好き。
イルミネーション
君と見に行きたい
だから、一緒に見に行こうと誘う
『イルミネーション』
ただ一人 周りは二人 輝く日
羨ましいわけではないが
一人で歩いていると
自分が悪い気がしてくる
ただ気まずいだけの
輝きに溢れた道
聖夜に一人はいけないことですか?
こちらが悪いの?
寂しいと思ってるわけじゃないのに
憐れんだ目を向けるのはなんでですか?
受験生には関係ないよな?
ただの平日なんだから
恋愛に現抜かしてないで
勉強しようぜ
「ねっ、イルミネーション行こうよ」
「……は?」
行きたくない、という感情が全面に出した彼女、澄香に苦笑する。
こいつまたなんか言い出した、と言わんばかりの呆れが
まじった表情である。
「そんな顔せずにさー、たまにはいいじゃん。ね、ね、行こ?」
「...なんでこのくそ寒いときに外に出てまでイルミネーション見に行かなきゃいけないんだよ。却下」
「ええー」
まあこうなることは半分分かってたけど...。
私は澄香に不安を垂れながら、こたつの上にのっていたみかんに手を伸ばす。
ちなみに彼女は一緒にこたつで暖まりながら、来週提出だというレポートを進めている。
不貞腐れて、みかんをひとつ口に放り込むと彼女がパソコンから目を離してちらりと一瞥してきた。
「...つかなんでみかん置いてあんの」
「え?こたつといったらみかんじゃん。こたつ入荷したんだからせっかくならって」
「...せっかくってなんだ」
そう言いながらも澄香の視線は私の手元、みかんにそそがれている。
こういうところかわいいなーとか思ったり。
「澄香も食べる?」
小さく笑いながら新しいみかんに手を伸ばす。澄香は素直じゃないからきっといらないって言ってくるけど、皮をむいて目の前に置けば食べてくれるだろう。それでも素直にならないんだったら、あーんしてみよう。
...などと考えていた矢先。
「じゃあもらおうかな」
ふっと澄香が妖艶に微笑んだ。
へ...、今日は素直デーですかな...?
なんて計算が狂ったことであほなことを考え始めた私の脳。
そして、そんな脳は澄香の次の行動で完全にバグを起こし始めた。
「...ん、おいしい」
澄香は私がむこうとしていたみかんではなく、私が食べようとして片手に持っていたみかんを引き寄せてそのまま口に入れたのだった。
「...へえ...っ!?す、すす澄香さん...っ!?」
焦りすぎるとさん付けになる私のことなんかお見通しなようで、澄香は心底面白そうにふっと笑った。
「イルミネーション行くのと、私とこの暖かい場所でいっしょにいるのどっちがいい?」
「~っ、ずるい...!」
そんなの澄香ともっと多くいれるならどこでもいいって知ってるくせに。
─イルミネーション─ #140
クリスマスに近づくと町中がイルミネーションできらきらする。外は寒いがカイロがあれば暖かい。
けれど昔は、冬といえば寒くて暗かった。そしてそのぶん星がよく見えた。人の温もりが身に沁みた。今は夜空を見上げても真っ暗だ。みんな俯いて画面の夜空を見ている。見えないだけで星はいつもそこにあるのに。
地元には大規模なイルミネーションはない
こぢんまりとしたものが街にいくつかあるくらいだ
それでも雪に閉ざされる季節に彩りを与えてくれる
もう少しで今年も終わる
慌ただしい毎日の中で
小さいイルミネーションのアーチの中で
ホットミルクを飲みながらほっと一息
「キラキラしてる…。」
この季節になるといつもゆううつになりかける。
恋人がたくさん周りにいるから?
…ちがう。
鼻が詰まってずるずるだから?
…これもちがう。
……わかってる。
こんな気持ちになるのは、
本当は…きっと。
幼い頃のあの事を思い出してしまうからだ。
空を光が駆け上り
見る間に絵を描いていく
どこの家も街路樹も
華やかに彩られ輝いている
そう楽しそうに指をさす
その視界を覆うゴーグルは
全て善いモノへ変える色眼鏡
知られぬまま葬られる惨状を
どうか最期まで知らぬままで
‹イルミネーション›
冬の街を彩る、色鮮やかに美しい電灯を、ご伴侶と見に行くのが、貴女はお好きでしたね。
まだご伴侶との関係が終わったわけではないですが、敢えて過去の表現をしました。なぜなら、貴女には嘘を吐いてほしくないからです。
かつて好きだったということは、嘘偽りのない本当のことです。
今そうであるかについては、貴女は確信を持って心を語ることが出来ない状態です。
俺たちは、貴女がご自分の心を表現する時に、そこに偽りがある状態であってほしくないのです。
こんな小さなことでも、大切なのです。
どうか、嘘を重ねないように、心の声をかき消さないように。
貴女の人生の羅針盤を、鈍らせないでください。