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「寒っ…」
外に出ると、途端に風が強く吹いてきて凍えそうになる。真っ暗な冬の夜空の下で吐く息は、余計に白く目立つ。もうこんな季節かと一人呟き、歩き出す。周りの家々は不思議なほど静まりかえっていて、私の靴音だけがやけに響く。
そのまま住宅街を歩いていると、一軒の家が目に入った。ベランダや庭の木からイルミネーションライトがぶら下げられていて、暖かなオレンジに光っている。とても幻想的だ。しばらく立ち止まって眺めてみる。光はぽわぽわと点滅し、時折速くなったりゆっくりになったりを繰り返していた。ずっと立ち止まっているのは悪いと、また歩み出す。再び暗い住宅街が広がり、淋しい景色に戻る。もうちょっと見たかったな。名残り惜しくて後ろを振り返る。光は変わらず灯っていた。さすがにそろそろ行こうともう一度前を見る。途端、当たり一面がたくさんの光で溢れ出し始めた。赤や白、緑に青。星の形やツリーの形。まるで魔法がかかったみたいにそれぞれが光輝く。暗い空に存在を主張するかのように。ひんやりとした風が吹き、光に照らされた木々や私の頬を撫でていく。今度はそれすらも気持ち良かった。たまには夜の散歩もいいかもしれない。また、ここへ来よう。いつの間にかすっかりと温まっていた心がそう言った。


【イルミネーション】

12/14/2024, 1:57:44 PM