「ねっ、イルミネーション行こうよ」
「……は?」
行きたくない、という感情が全面に出した彼女、澄香に苦笑する。
こいつまたなんか言い出した、と言わんばかりの呆れが
まじった表情である。
「そんな顔せずにさー、たまにはいいじゃん。ね、ね、行こ?」
「...なんでこのくそ寒いときに外に出てまでイルミネーション見に行かなきゃいけないんだよ。却下」
「ええー」
まあこうなることは半分分かってたけど...。
私は澄香に不安を垂れながら、こたつの上にのっていたみかんに手を伸ばす。
ちなみに彼女は一緒にこたつで暖まりながら、来週提出だというレポートを進めている。
不貞腐れて、みかんをひとつ口に放り込むと彼女がパソコンから目を離してちらりと一瞥してきた。
「...つかなんでみかん置いてあんの」
「え?こたつといったらみかんじゃん。こたつ入荷したんだからせっかくならって」
「...せっかくってなんだ」
そう言いながらも澄香の視線は私の手元、みかんにそそがれている。
こういうところかわいいなーとか思ったり。
「澄香も食べる?」
小さく笑いながら新しいみかんに手を伸ばす。澄香は素直じゃないからきっといらないって言ってくるけど、皮をむいて目の前に置けば食べてくれるだろう。それでも素直にならないんだったら、あーんしてみよう。
...などと考えていた矢先。
「じゃあもらおうかな」
ふっと澄香が妖艶に微笑んだ。
へ...、今日は素直デーですかな...?
なんて計算が狂ったことであほなことを考え始めた私の脳。
そして、そんな脳は澄香の次の行動で完全にバグを起こし始めた。
「...ん、おいしい」
澄香は私がむこうとしていたみかんではなく、私が食べようとして片手に持っていたみかんを引き寄せてそのまま口に入れたのだった。
「...へえ...っ!?す、すす澄香さん...っ!?」
焦りすぎるとさん付けになる私のことなんかお見通しなようで、澄香は心底面白そうにふっと笑った。
「イルミネーション行くのと、私とこの暖かい場所でいっしょにいるのどっちがいい?」
「~っ、ずるい...!」
そんなの澄香ともっと多くいれるならどこでもいいって知ってるくせに。
─イルミネーション─ #140
12/14/2024, 1:35:06 PM