『やわらかな光』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
母が優しく抱きしめてくれているような温かな15時の光が大好きだった。姉が保育園から帰ってくるのを待つ15時。私は毎日母と光に抱きしめられてお昼寝をした。
三限が終わりミスドを買って家に帰った。抱きしめられてお昼寝していた15時に、今、母とコーヒータイムを楽しんでいる。やわらかな光を浴びながら、ふとあの時の記憶を抱きしめ返した。
やわらかな光
炎というものは不思議と見ていて飽きない。暖炉の中でパチパチと音を立てて薪を食べていく炎は、美しい未知の生物のようでもある。水族館の水槽を鑑賞しているような気分とも言えるが、その色は実に対照的で、柔らかい。
炎が小さくなると、手が自然に動く。薪を掴み、ぽいっと投げ入れる。そうしなければならないわけでも、そうしたいわけでもないのに、勝手に手が動くのだ。面白いほど、この行為がやめられない。
たぶん、本能なのだ。人間の遺伝子に刻まれた本能が、私に薪をくべさせる。それは火を繋ぐ行為であり、何かが終わることを厭う行為でもある。
思えば、私たちは何かが終わること、途切れることが苦手だ。習慣が途切れたり、番組が打ち切られたりするといたたまれなくなる。それは長いものに限らず、小説や漫画の終わり、ユーチューブの動画の終わりもそう。終わるのがイヤで、つい次を探してしまう。もしかすると、それは本能的な行為なのかもしれない。私の手が自然と薪をくべてしまうように、何かが終わることを嫌がる性質が、私たちの中にはあるかもしれない。
やわらかな光を見ながら、私はそんなことを考えた。
歩きながら寝てしまいそうな程あたたかい午後に、猫が死んでいる。それを見て、眠いなと思う。いつか私も同じように死ぬ。世界はそれを見て、眠いなと思う。今日も地球は惰性で回っている。あまりの退屈さに、ベンチでとろとろと眠りに落ちる。革命が起きて、戦争が起きて、人類が滅亡して、世界が終わって、再構築されて、十分経ったから、起きる。このまま帰るのも惜しいような気がして、その足で、コンビニの新商品を買った。
窓際に置いたベッドは、星をよく捉える。
だが、朝が不得意な私には少々不適だった。
瞼越しでも刺さるような朝日が、スッと遮られる。
あー、有難い。
こもったエンジン音のようなそれは、喉元から出ているようで。
モフッ、ゴツッと頬へあたる。
家を出るまでのわずかな時間を彼は、私へと使う。
彼のご飯係は私なわけで当然ではあるのだが。
原動力は私に今日をもたらす。
やわらかな光
生まれてからずっと、
俺は不幸だった。
このまま、闇の中に沈んで、
消えていくのだと思った。
人の悪意に飲み込まれ、
藻搔く事さえ、無意味だと、
全てを諦めかけた、その時。
俺は、優しく微笑む、
サンセットオレンジの瞳に、
出逢ったんだ。
少し控えめに、
俺に向けられたお前の瞳は、
とても温かくて。
全てを包み込んでくれる。
そんな気がして。
その瞳の色は、まるで、
1日の終わりを告げる、
夕焼けの様に、
温かくて、切なくて。
そして、柔らかな光。
お前が俺に与えてくれる、
その、柔らかな光は、
俺を闇から救い上げてくれた、
…大切な道標。
遠くから見るから綺麗なのかな。
それなのに私は近づいて、そして後悔するのかな。
馬鹿だな。
馬鹿なのに近づくことをとめられないのね。
遠くだから照らしてくれていたのに。
近づいた私を照らす人は誰もいないのに。
やわらかな光
16日19時40分に親が息を引き取った。
病院から連絡が来て駆けつけて到着してから3時間後。
自分はずっと親の死に目には会えないんじゃないかと思ってたので、死亡確認にも立ち合えて本当によかった。
やわらかな光がお迎えにきた。お母さん、よくがんばったよ!まだ数時間前のことで気持ちの整理ができない。
ありがとう、お母さん!あなたの娘に生まれて本当によかった!
目眩がする
脳に直に響く
心地よい気持ち悪さ
やわらかい光にあてられて
もう抜け出せないだろう
子供の頃、家族で住んでいた小さな借家。
窓を開けるといつも暖かく優しく柔らかな光が差し込んでいました。子供ながらにも、幸せだなぁと一人窓際で感じてました。あれから数十年目先の幸せばかりに心を奪われながらも子育ても終え、50歳を過ぎた今、本当の幸せとはあの時に感じた気持ちなのだとつくづく思います。
水族館の中はいつも暗くて、涼しくて、少し海水のしょっぱい磯の香りが匂って、沢山のお客さんの喧騒もあって子供の頃はあまり好きではなかった。
背も低いから、水槽の一番前に行かないと人だかりで何も見えなくて、大人しく順番を待っている間に飽きてしまうことも多かった。
親はそんな私を見て、「水族館つまらない?」と聞いてきたが、照明のせいで顔がよく見えなかった。
だからか、親がそばにいるにもかかわらず、なんだか自分が夢の中へ迷子になってしまったような心地になっていた。
見上げると、ただただ自分がちっぽけに思えた。そんな中で、水槽のゆらめきは一等美しく見えた。人工照明だろうけど、ゆらゆらと水面の動きが光に当てられてゆっくりと移ろっていく様を見るのが、とても好きだった。時に魚や川藻の動きに合わせて、柔らかく表情を変えるその光が、私の幼少の頃に思い出される水族館の思い出だ。
水族館の世界は、私の寂しがりの心を知っているかのようだった。
お題/やわらかな光
やわらかな 光のような 親の愛
包まれていたと 知る出郷
題 やわらかな光
ふんわりと舞い降りてくる光
ふと視線を上げた私は空を見て、柔らかい日差しがまるで光のカーテンのようだと感じる。
じりじりと暑い日差しでもなく、ちょうど良い気温にほわほわと降り注いでくる光に、少しまどろみそうになる。
ベンチに座って図書館の前で彼氏を待っていた私は、再び眠りに引き込まれそうになって、まぶたを軽くこすった。
それでもこんこんと光は降り積もっていく。
光は粒子だけど下に積もったりしないのかな。
ふとそんな事が頭をよぎる。
そうしたら、地面にどんどん光の粒子が積もって、いつの間にか辺りは真っ暗になって、私は光の粒だらけの空間に取り残されて、ベンチに座っていた。
立ち上がれない
どうしよう
焦燥感に焦っていると、誰かが私を呼んだ。
「翔子!」
「はっ!」
気づくと、私はベンチで寝ていたみたいだ。
目の前には心配そうな彼氏の顔。
「大丈夫か?うなされてたみたいたけど」
「う、うん・・・」
そういいながら辺りを見回す。まだ明るい。
時計を見るとあれから10分も経っていなかった。
夢だったみたいだ。
「今日の光が柔らかくて、眠くて、あっという間に眠りの世界に引き込まれちゃった」
「そっか」
彼氏は顔を上げて空を見上げた。
「確かに気持ちいい風に天気だからな。待たせてごめんな。カフェに行って眠気でも覚まそうか?」
「うん、そうしよう、私爽やかな飲み物が飲みたいな」
私は荷物を持ってその場を立ち上がろうとする。
一瞬、夢と同じで動けないかもと思ったけど、軽々と立ち上がれた。
光の粒は物理的に積もったりしないよね、あの場面からきっと夢だったんだな。
そう自分で納得する。
それから、ふと、もう一度空を見る。
やっぱり今日の光はとても優しい。
思わず目を閉じかけて、私は首を降ると、ピシャ、と軽く頬を叩いて目を覚ました。
そして、彼氏とお気に入りのカフェに仲良く向かったのだった。
粉雪が舞う
夕暮れに
雲が切れて
やわらかな光が
犬が空を見上げて
目を細めている
僕はそれを見ながら
目を細めた
繰り返す日々に
代わり映えはないけれど
昔よりは少しだけ
楽に生きているから
だから今はそれでいい
それだけでいいと思うよ
私を包み込む
優しい光
愛おしそうに私を見つめる
あなたの瞳はとてもやわらかい
_やわらかな光
月の光に似たその優しい光を宿す目に見つめられた時に、私はあなたのそばを片時も離れようと思わなかっただけです。
やわらかな光
やわらかいは
かたいの反意語でなく
決して、
かたいの反意語でなく
ローキーでなく
印象でなく
たんなる印象でなく
たんなるオーバーでなく
たんなるハイキーでなく
写実でなく
決して、
写実でなく
たぶん、
それは君にとっての適正露出とは
癒えないものに違いない
あなたの眼差しから降り注いでいるものだけがわたしにとっての光だった
『やわらかな光』
王国は度重なる天災に見舞われ
恐怖と焦燥に駆られた国民は
森の民が神の怒りを呼んでいるのだと怒り狂った
暴動が起こるのも時間の問題だったのだ
私は一人の騎士を呼び出し命令を下した
異端の民を根絶やしにせよ、と
優秀な騎士であり古くからの友人である彼は
私の意図をすぐに理解したようだった
長きに渡る親交の末の裏切り
彼らには生涯恨まれるだろうがそれでいい
私はただこの罪と無念を吐き出すように
やわらかな光が照らす肖像に祈った
愛しき妻よ、許してくれ
貴女の家族を裏切り、森の最奥へ追いやることを
無二の友よ、許してくれ
憎まれ役、愛する者との別れを強いることを
そして神よ、お許しください
民の恐れも晴らせぬ、安寧も守れぬ
この弱き王の無力を、独白を
疑う事を覚えない掌に、
譲られた夢が根を張る。
それは、夜明け前に飛び立つ、
銀色を連れる鳥のよう。
やわらかな夕方の光に包まれながら目を開ける。誰の声もない、波の音だけが繰り返される砂浜。繋いだ手から、隣の君が小さく震えているのが分かる。
ごめんね。最後に君と同じ気持ちでいられなくて。でも、君を愛してる。
何も後悔はない。むしろ晴れやかな気分だ。求めるものは、ただ自由だけ。
ありがとう。最後まで愛してくれて。でも、ここでもうお別れ。
強く手を握り、そして離す。
引きつった呼吸音を背に、ただ前へと歩いた。
祝福のような光の中、私は自由になった。