『もしもタイムマシンがあったなら』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『もしもタイムマシンがあったなら』
歴史上に実在した人物をキャラクターに起用したゲームにハマり、それまで読み流し、聞き流していた歴史の教科書や授業に俄然熱が入るようになった一学期。
夏休み初日に電車やバスを乗り継いで向かった先はかつて大きな合戦のあった古戦場跡。観光案内所でもらった名だたる武将の陣地跡が記載されたパンフレットを片手に山登りにも似た行程を経て目的の場所にようやくたどり着いた。
「何にもないなぁ……」
古戦場跡が見渡せるような小高い山には簡単な説明の書かれた看板と豊かな自然が残るのみ。けれど想像力を掻き立てればあの人もこの人も表情をキリリと引き締めて戦に向けての会合を開いていたように思えてきた。私が今まさに立っているこの場所で。
「タイムマシンはよ!」
ひとりの歴女の心からの叫びは誰の耳に届くでもなく豊かな自然に吸い込まれていき元の静けさに戻っていった。
もしもタイムマシンがあったなら...
あなたを好きになる前に戻りたい
その時もっと仲良くなって
もっと早くLINE交換して
もっと早く...
そうすれば
あなたが卒業する前に伝えれられたかもしれないのに
もしもタイムマシンがあったなら私はそんなもの捨ててしまう。
なぜならそのようなものがあったら物理法則の矛盾や天変地異が起きてしまうから。私だけが使えるなんて可笑しいし、不平等だ。
それに私は今の生活に満足している。
だから私はタイムマシンを使わない。
んなわけないでしょ!!!!!!
もしタイムマシンがあったら、もしも過去に戻れたのなら、たくさん失敗した全っっ部のことをやり直したいよ!!!言いたいことやりたいこと全っっ部やってやる!!
どんな条件でどんな状況に出来るか知らないけどさぁ!!
僕は、なんで、こんな失敗作に、なってしまったんだろう、
僕は、出来る限り、もっといい人生を、送りたいよぉ!!!
それでさ!未来に行ってさ!どんなダメ人間になったか見届けたいよ!!そしたら出来る限りの努力を、するからさぁ、
頼むよ!!タイムマシンを、僕にくれよ、
#014 もしもタイムマシンがあったなら
あの時こうしていれば、
あの時からやり直せれば、
と思うことは誰にでもあるだろう。
もしもタイムマシンがあったなら、
あなたは「あの時」に戻りますか?
私はきっとやり直さない。戻らない。
やり直せるのなら直したい、
けれど、今より良い未来になるかはわからない。
そんなことを考えてしまう、臆病者だから。
こんな夢を見た。
木目ではない。シミでもない。竿縁天井に張り付いて、薄暗い部屋の黒にぼーっと同化するのは、顔のない女の頭部であった。午睡から寝覚めたまま畳座敷に五体を預けて仰向けに、何か感情を覚えることもなく、蛍一郎はただ女を見ていた。
カレー餅。
とんと思い出せない頃から例によって続いている。お盆になると、岡山の片田舎にある母の郷里へ、定めた訳でもなしに親子三人で帰る。
昼下がりの焦げるような陽光を皮の上に浴びて、みずみずしく発色する夏野菜の緑、ささやかな活気をもって流れる小川と、無味なる風の吹き回る透明さ。そして、古めかしい平屋の玄関戸。蛍一郎はひたすらに、この場所が苦手であった。
カレー餅。
さらに言うなら、本当に苦手なのは夏子お婆ちゃんであった。きわまって精悍として厳たる彼女の蝋人形の如く冷たい無表情で、何か粗相をやらかす度にぴしゃりと叱られるのが怖かった。
カレー餅。
三年ほど顔をださなかったこの家に来たのは、夏子お婆ちゃんが死んだと知らせを受けたからだ。ある白露の夜中のことであった。その年のお盆、顔のない女の夢を見たことをなんともなしに思い出した。
例になく、母と二人で平屋を訪れたのは同じ年の晩秋にもなった。新来者めいて馴染み深い家内をきょろきょろ観察してみると、特に差異はない。いつもの如く厳しい表情をして坐する夏子お婆ちゃんがいないだけだった。
カレー餅。
母を居間に残して、廊下をふらつく。
カレー餅。
ふと盆に見た夢を思い出して、
カレー餅。
ああ、くそ。
忌々しい、カレー餅。来訪すると必ず思い出す。先刻からというもの、たびたび頭を過ぎっていた。苦い思い出の話をする。名付けるならば、カレー餅事件だ。
カレー餅事件とはこうだ。
蛍一郎が小学生の頃の話であった。その年も例によって夏子お婆ちゃんはお餅をつくってくれた。たいてい蛍一郎はそれをぜんざいにして食うのだが、あの日は違っていた。鍋に残っていたカレーをよそって、ひとつだけ餅をいれたのである。カレー餅の誕生であった。
ひとくち頬張る。うまい。うまい。天啓を授かったような気持ちで慌てて十二分にもかみごたえのある餅をひとつ完食してしまうと、物足りない。皿を引っ掴んで、今度は三つ餅をカレーに放り込んだ。食う。食う。餅に噛み付いてはちぎって、ちぎっては咀嚼して、飲み込んでは噛み付いて、なんでもそれを四、五篇繰り返したのを覚えている。箸がとまった。残すところ一個半の餅を前に蛍一郎の胃袋が満たされてしまったのだった。
目の前には夏子お婆ちゃんが、先刻から夢中でカレー餅を頬張る蛍一郎を見ている。お残しはゆるしません。厳しい眼差しは暗にそう告げている。さあ、困った。餅をかじる。餅はへらない。息を吸って、吐いて、わずかに胃が楽になったぞと器を見やると途端に苦しくなる。そうこうしているうちにカレーをすって餅はふえる。
結局夏子お婆ちゃんにぴしゃりと叱られて、あんまりに怖かったものだから、泣きながらカレー餅を食った。
以上が蛍一郎の餅嫌いの始まりであった。
さて、居間を抜けて蛍一郎は夏子お婆ちゃんの部屋に来ていた。盆に見た夢の詳細を覚えているだろうか。夢の部屋は夏子お婆ちゃんの部屋だった。戸棚には小難しそうな小説や、折り紙の本がならび、裁縫箱が机上に鎮座する。壁掛けの写真立てには夏子お婆ちゃんと似たように厳しい表情をする先祖が飾られていて、しかしこの雰囲気は嫌いではなかった。
虫の知らせとも言えようか。
畳の匂いがする。明らかなことではあった。竿縁天井を見上げてみるが、女の顔はそこにいない。
もしもタイムマシンがあったなら
タイムマシンがあったら絶対に助けに行くから
辛い記憶とか嫌なことから全部守るから
絶対抱きしめに行くから
もしもタイムマシーンがあったら、何をしようか、そう思いつつ考えた、
「そうだ」
何をしよう?
そして考えに考えそして、タイムマシーンのことを忘れ何百年後に発見されたるのです。
もしもタイムマシンがあったなら
そうねぇー
あの日のあの時間に戻って
救急車呼ばない方を選択したいな
そしたら今ここにはいないと思うけど
もしもタイムマシンがあったならどうする?って
突然君がいうから、あの時は、君と出会った時って話したけど
今なら2人一緒にいた時って答える気がするの、
でもあなたは二人で幸せになってる未来って言ってたよね
私もそうなると思ってたから辛いな
あなたにはこの未来が見えていたのかな?
タイムマシンなんかに頼らなくても
いい人生にしたいって言ってたけど私もしたかった
あなたの隣ならできたかもしれない、
でも、もし、本当は、
幸せだったのは最初から、私だけなのかもれないね笑
こんなことを思うのは、君が他の人と楽しく歩いてたからなんだね、
あのネックレスまだしてるとか、ぎゃくにうざいよ
まぁ、私だってあなたの好みのままなんだけどね、
もしもタイムマシンがあったなら
自分の選択を変えて人生を変えてみたい
でも、変えたところであまり変わらなさそうなのも感じている
だけども知りたいんだ、自分の選択の結末を
もしもタイムマシンがあったなら
西暦○○××年
タイムマシンが、開発され 現代人が
乗り回すのが当たり前になった時代
そんな時代の世界は、全盛期の見る影も
無く荒廃していた。
未来が知る事が出来る様になった現代人に
向上心は、無くなり
過去をやり直せる様になった現代人は
後悔と罪悪感を無くし見事な無法地帯の
出来上がりだ。
犯罪が横行し 取り締まる警察側も
未来や過去に逃げ込む犯罪者達に命を
握られ死に怯える様になった。
最早、警察と言うより人質に近い
タイムマシンが開発された当初人々は
湧き立ち人類の夢の実現に歓喜したのも
今や昔.....
すっかり堕落し見る影も無い私達人間
未来に絶望し過去に満足し私達は、
疲弊して行く
これじゃあダメだと私達一握りの無駄な
向上心がある人類は、立ち上がった。
最後の足掻きとして、全ての元凶である
タイムマシンに乗りタイムマシン開発を
阻止する事にする。
その結果たとえ自分達が元の時代に帰れなくなったとしても 今の荒廃して行く
世界を野放しにしたら これから産まれて
来る世代の子供達に何も誇れない
それに、過去は、タイムマシンが無ければ
変えられ無いけど....未来は、これからの
私達の行動で変えて行く事が出来る。
こんな堕落した現在に満足していたら
たとえ未来が見れるタイムマシンが
あったってちっとも楽しく無い
過去は、糧にし 未来は、希望に溢れて
いなければいけない でなければ
私達は、生きられない
辛い事 悲しい事 もう二度と味わいたく無い事 全ては、経験だ。
その経験があったからこそ今の自分に
自信が付き大切に出来るんだ
二度と味わいたく無い過去があるから
人は、悲しみを知り痛みを知り人に優しく
出来るんだ。
それを捨てちゃ行けない
失っちゃ行けない
さあ乗り込もう そして取り戻そう
何も知らなかった真っさらな未来
辛酸を舐めた苦い過去
それらをこの手に摑む為私達は、
タイムマシンに乗り込み
タイムマシンを終わらせる旅に出た。
ある日突然、今までの日常からまるでつまみ出されるように、当たり前と思っていた日々が送れなくなったとしたら、あなたならどうするだろうか?
どうにかして今までの日常を取戻すべく躍起になる?
自分の何がいけなかったのか、どこに原因があったのかを懸命に反省しようとする?
やがて、元には戻れないという現実に直面し、これまで日常と思っていたことこそが幻ではなかったのかとさえ思うようになってしまうかも知れない
自分の人生は自分自身でコントロールしていると愚かな錯覚の中で思い上がって生きていると、つい
人の営みは、自分ではどうしようもない運命の流れという大きな激流の中で、その波に器用に流されているだけに過ぎなかったことに改めて気付かされる
それでも尚、
もしタイムマシンがあったなら、そんな事実に直面する前の自分に戻って、もう一度そこからやり直してみたいなどと往生際の悪いことを思ってしまうものだろう
そして、そんな時に一番欲しいものは?と問われたら、「いつもの日常のバックアップ」と答えてしまいそうだ
例えこれまでの日々が幻の如く形を変えてしまったとしても、その中で積み上げた記憶は自分の心の中に確かな記憶として残り続ける
やがて、歳を重ねる中でその記憶が薄れ始めたら、
その時はまたタイムマシンに乗って記憶のバックアップを拾い集めに行こう
『タイムマシンがあったなら』
『一番欲しいもの』
100年後の世界をみてみたい。海外旅行が短時間て行けるようになり、宇宙旅行がだれでもできるようになって、世界がもっとボーダーレスになっているだろう。
言葉を勉強しなくとも、スマホ一つで簡単に意思疎通できるようになり、国というものがなくなってくるだろう。その国々の伝統文化といったものがなくなっていくのを見るのは寂しい。
もしも、タイムマシンが、あったなら⋯⋯?
これはあれか?
過去に戻って青春をやり直したいとか、未来に行って競馬の万馬券を確認して、過去に戻って当たり馬券を買って億万長者になりたいとか、そんな感じの回答を期待されていたりするのかな?
うーん、まぁ、何て言うか、いまいち惹かれないねぇ。
自分の意思で過去や未来に行くよりも、自分の意思と関係なく過去や未来に飛ばされる方が運命感があって良くない?
その他大勢じゃなくて、主人公になれた気がするし。
タイムマシンだとその他大勢のままだし、色んな制約があって結局楽しめないようなイメージがあるしなぁ。
ほら、歴史が変わるようなことはしちゃダメだとか、その時代の自分に会ってはいけないとかさ。
まぁ、タイムスリップしている時点で歴史が変わってる可能性はあるけどな。
あ、いやそれすらも織り込まれた状態で、歴史が紡ぎ出されている可能性もあるのか。
でもなぁ、どうせ時間を移動するなら、なんの縛りもなく自由にその時代を生きて死んでいきたいよなぁ。
なんて画面の向こう側の皆に言ったら、夢がないとか、そういうことじゃないとかコメント入れられた。
皆、厳しいな。
うん?やり直したいこと?
今朝焦がしてしまったトーストを、もう一度焼き直したい、とか言ったらまた色々コメントが入った。
いや、マジ、超人気のパン屋のホテルブレッドなんだけど奇跡的に買えたんだって。
いつも売り切れで全然買えなくて、でも昨日ダメ元で行ったら2枚入の1袋だけ売ってて、即買いしたね。
夜に1切れ食べて、いや、ほんとマジで美味かった。
ふわふわのもちもちで、バターのいい香りがこれでもかってほど部屋中に充満して、朝これ食べたら1日幸せだァとか思って、朝の分に1枚残してさ。
え?何で焦がしたかって?
俺、猫飼ってるんだよね。
あ、うん、マンチカンのメスで梅子さんって言うんだけどさ。
名前が可愛い?ありがとう。
梅子さんはもっと可愛いよ。
今度、配信に出してって?
梅子さんの気が向いたらね。
今?今は、寝てるよー。
あ、そうそう、それでトースト焼いている時に梅子さんがコップ倒しちゃって、牛乳が零れてさ。
丁度パソコン開いてたから、もう大変よ。
パソコンもだけど、梅子さんも牛乳まみれでパニック起こして、そこいらじゅう走り回るしで。
で、気がついたら貴重なホテルブレッドが真っ黒という悲劇⋯。
「ポップアップトースター?」
あー、持ってる。
あの、ガシャンって出てくるやつでしょ?
あれねぇ、ホテルブレッドが厚くて入らなかったんだ。
厚切りのパンって幸せ感じるよね。
でも今朝は運が悪かった。
え?昨日のホテルブレッド買えたので運を使い果たした?
マジか⋯そうなると俺の運勢は⋯。
皆、オラに運を分けてくれw
おぉ、皆、優しい。
ありがとう、本当にありがとう。
うん、やっぱりタイムマシンとかいらないなぁ。
俺は皆とこうやって話せるだけで幸せだし。
タイムマシン使って、今のこの時間が無くなったりしたら嫌だからさ。
それに俺、時間旅行より、世界旅行をしたい派だし。
え?国内旅行派?
国内旅行もいいよなぁ、温泉にゆっくり浸かってのんびり心の洗濯とかなぁ⋯⋯、おっと、意識飛ぶとこだった。
んじゃ、次の質問は〜⋯⋯
━━━━━━━━━
(´-ι_-`) ガーリックフランスが好物です。
ラグジュアリーな雰囲気でお願い
すこしだけシートには拘りたいの
駄目にしないくらいのふかふかで
ちなみに人数に制限はありますか
あの人もこの人も誘ってみたいの
こんな経験はなかなかないでしょ
食事は特にこだわりはないですよ
あるのは牡蠣のアレルギーくらい
メインのお料理はお魚がいいわね
オールインクルーシブだとしたら
一人あたりおいくらになるかしら
『もしもタイムマシンがあったなら』
もしもタイムマシンがあったなら
この手のお題は前にもあったな。競馬で大儲けみたいなことを書いたと思う。
そんなもしもの話なんてしても空しいだけだしタイムマシンに関連した別の話にするか。
もっと昔から努力していればという言葉に対して今が一番若い、だからタイムマシンで過去に戻ってきたと今努力しろ、みたいな言葉はわりと聞く言葉だ。
実際にはタイムマシンなんてないんだからなにをするにしても今が一番速いタイミングなのは間違いない。今努力しなきゃいけない。
それはわかってるんだけどやる気がしないのよね。労働による人間関係は夢へ向かう気力どころか生きる気力すら奪ってしまう。そしてやる気がなくなる。
本当に最近はバイトが辛い。今のところ仕事は楽なんだけど人間関係がうざくてたまらない。なんでバイトでこんな気力を削られなきゃいけないんだ。
バイトを辞めたくてしかたないけど生きるためには働かなきゃいけない。次はもっとひどいかもしれないしそもそも次が見つかるかもわからないから辞められない。
もう生きていくのがめんどうでしかたない。死にたい。でもまだ死にたくないという気持ちのほうが上だからがんばらないとな。
もしもタイムマシーンがあったなら
私はごく普通の専業主婦だ。
急だがにタイムマシーンがあったらと考えている。
なぜか、それは今娘に
「ここの問題教えて」
と言われている。分からない。
娘は高校1年生だ。中学まではしっかり勉強していた私だが、高校でしっかりと勉強していなかったのだ。
だからこそ、今タイムマシーンに乗って高校時代をやり直したい。
もしもタイムマシンがあったら、ジュラ紀にいた恐竜たちを見たい。
現代では考えられないくらい、巨大な生き物が動いていると想像するとゾクゾクする。
有名なティラノサウルスは、全長13メートル体重9トンの巨体を2本足で支えている。
とても興味深い。
ただ一つ問題がある。肉食恐竜の恐怖だ。
タイムスリップして、1日生き残ることは困難だろう。
仮に拳銃を持っていたとしても、どれほど通用するかわからない。
なので、ジュラ紀に行く前に、未来にタイムスリップして、命のストックを持って行こう、、、、
男は顔で笑顔を作りながら、こう言った。
『当選おめでとうございますぅ。厳しい審査を乗り越えたそこのあなた。これから、我が社が開発した《タイムマシーン》によって、過去へ飛んでもらいますぅ。そして、出来るだけ且つ単純に、彼らを、誘えば良いのですぅ。』
たった、それだけなのですよ。
初心者でもできる"簡単なお仕事"ですぅ。
私の前に立ち、「ささっどぞ、此方へ。」と頭を低く腰を曲げる。
(たいむましーん?彼ら?なんだ?それは…)
男の話し方といい、雑な説明といい、頭を低くした時に見てしまった頭の中心部の毛の薄さから、かなりの胡散臭さを感じながらも、私は男の言われるがまま、前に出る。
男は持っていたビジネスバッグを開けると、銀メッキの大きな箱を取り出した。箱の蓋を開けると、更に中から
赤い大きなボタンが埋め込まれた装置が出てきた。
ささ、どーうぞ、こちらへ…。
私は更に胡散臭さを感じながら怪訝な顔を向ける。
男は、何も怪しい者では御座いませんですぅ。という顔をしながら、私を促した。私は迷いながらもまた一歩近づいた。
『はい。いーまから、あーなたは、この我が社、我がー社ーの、《タイムマッシーン》に乗り、過去へと、飛んで頂きますぅ。』
男の説明は、耳障りだった。
なにかのドラマでこのような喋り方をしている俳優を観たことがある気がした。…なんだっけ。思い出せない。
男の説明は続く。
『はい。そーれーでぇ、そこのあなた、あなーたーには、』
…頭が痛くなってきた。
すまないが、もっと手短に話してくれないか?
私は男に言う。
『はい。かしこまりー』
…ぃぃぃ居酒屋か!
私は思わずつっこんでしまった。普段感情が揺さぶられることはない筈なのに。
男は私のツッコミにも無関心な表情で、再び話始める。結局話し方は相変わらずだった。
…なので、男が話した説明を要約する。
ーー男の会社が開発した、タイムマシーンという装置で過去へと飛び、進化していない猿も同然の我ら祖先の元に、彼らが道具を使うよりも前に、この赤いボタンを押す事を促し、いかに恐怖や危険を感じ悟る潜在能力を持たせないようにさせるか。
…と、いう事ですぅ。
男は説明し終わると、私にまた笑顔を作った。
私は怪訝な顔を向ける。
…どうせその笑顔も本心から笑っていないんだろう。
なにせ、こんな重大な任務とやらを、ただの一般人にやらせるような仕事じゃない。
私は眉間に皺を寄せ、深い息を吐いた。
…じゃ、辞めますぅ?
男は、私が酷く困惑している様子から、覗き込むようにして聞いてくる。
こんな重大ともいえる説明をしておきながら、こんな簡単に返事をしていいのか?…と、咄嗟に思いながら、口を噤んだ。
男はそんな私を真似るかのように、
口を噤み、への字に曲げる。次にはアヒルのような口にしたり、口をイーの形にしたり、まるで子供のようだった。
…はぁぁぁ。
私はかなり大きな音で溜息を吐く。
男を見ると、私から視線を外し、口の端を曲げて…如何にもめんどくさそうな顔をしていた。それでも、何秒かに一回は、此方に視線を送ってくるが、私と目が合うと慌てて視線を逸らし、何か独りごちる素ぶりを見せたりもしている。…まったくもって、白々しかった。
(なんなんだ、この人は…。)
全く得体の知れないハゲたオッさんを横に、私は白い目を向けながら、…わかりましたよ、やりますよ。諦めの声をかけた。
もう、やればいいんでしょ。という感じだった。
すると男は、急に空が晴れたような声と表情を露わにしながら、私に「やってくれますぅ?」と、満面の笑みを向けてくる。
(だからお前、そういうとこだぞ……。)
私は心の中で、既に諦めの境地にいた。
所詮、私は金で雇われた身なのだろう。多額の金と引き換えに"当選"という形で、今この男の前に立っているのだ。
その赤いボタンの装置で、何かが、もしかしたら変わるかもしれない。しかし、やっぱり何も変わらないかもしれない。
実際のところ私は自分の事しか考えていなかった。男のいう壮大な計画がもし、うまくいってもいかなくともどうでも良かった。所詮他人の未来なんて私には関係がないのだ。
快く引き受けた私を、男は満面の笑みという名の作った表情で、銀メッキの箱を手渡してくる。
あ…それから。と言いかけて男はビジネスバッグの中から一枚の白い紙を取り出した。
書面に書かれた文字を見て、私が金より欲しかったものだと、瞬時に理解した。この紙一つで私の未来が左右されるといっても過言ではない。
『あなたの未来は、もう我々の手でしか救えないのです。』
男の笑みは、これまでと違う表情していて、
最後の最後に癖のない言葉で、私の背中を押した。
私はずっと私の事しか考えてはこなかった。
もしかしたらもう、帰ってはこれないのかもしれない。
金欲しさで釣られた、過去の自分の過ちがある。
だがあの紙だけで、散々迷惑をかけてきてしまったあいつらの生涯の保証になるのなら。
…せめて最後くらいは自分の言葉で伝えたかったと、
今になってからでは遅いのだ。
お題: もしもタイムマシーンがあったなら
今更、どこかに帰りたいと言う願望も
ないんだけれど…
今だからわかる事も沢山ある
若さは永遠でもないし、体も永遠に
動き続けるはずもない…
幸いに、私はまだ自由に動けるし
行きたい所に行き、時々は友人とランチを
楽しんだりする事が出来るのだが…
これも永遠って訳じゃなし時間に限りは
あるわけだ…
「もしもタイムマシンがあったなら」
迷わず一番若く健康で美しい時間に
行きたいと思う。
一番良い時に帰って楽しみたい訳ではない
人生で絶好調の時は短い…
だから、しっかりと考える事が必要だ
「今、自分は最高に恵まれている!」
そう自覚を持って大切に生きろ…と言いたいのだ…
悲しいかな全てに恵まれている時は
自覚がない…
それが当たり前だからだ…
今だからわかる…今だから伝えたい
限りある恵まれた一瞬を悔いなく大事に
生きるようにと…