わをん

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『もしもタイムマシンがあったなら』

歴史上に実在した人物をキャラクターに起用したゲームにハマり、それまで読み流し、聞き流していた歴史の教科書や授業に俄然熱が入るようになった一学期。
夏休み初日に電車やバスを乗り継いで向かった先はかつて大きな合戦のあった古戦場跡。観光案内所でもらった名だたる武将の陣地跡が記載されたパンフレットを片手に山登りにも似た行程を経て目的の場所にようやくたどり着いた。
「何にもないなぁ……」
古戦場跡が見渡せるような小高い山には簡単な説明の書かれた看板と豊かな自然が残るのみ。けれど想像力を掻き立てればあの人もこの人も表情をキリリと引き締めて戦に向けての会合を開いていたように思えてきた。私が今まさに立っているこの場所で。
「タイムマシンはよ!」
ひとりの歴女の心からの叫びは誰の耳に届くでもなく豊かな自然に吸い込まれていき元の静けさに戻っていった。

7/23/2024, 3:31:53 AM