『もう一つの物語』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「もう一つの物語」
私のどこがいけないのよ!
ママの言う通りにしていただけじゃないの!
ママが、私たちは着飾って王子様に見初められれば、それだけでいいのよ、と言うから着飾ってパーティに行ってたし、ママがやらせろって言うから、お掃除も食事の支度も妹にやらせて、ママがぶてと言うからぶって。
見初められるためだったら、靴に入るように私は踵、お姉様はつま先をぶった切ってまで頑張ったのに、痛かったのに、それでも入らずに悲しかったのに、牢屋に入れられてしまった。
ここは寒いし汚いし!きれいな服を着て暖かいお部屋でひらひら歩き回って、美味しいモノを食べていたのに、今の状態ってなに???
まるでこの間までの妹じゃないの。食事も洋服も!
ママが言ったから、あーママが言ったとおりにしたのに。
君にとってのスピンオフ、もう一つの物語だとしても
僕にとってはかけがえのない、たった一つの物語なんだ
だからオマケなんて言わないで
もう一つの世界を、目一杯楽しもう
『アナザーワールド』
もう一つの世界があるなら、僕はどうなっているのだろう
願いを叶えたり、所帯を持っていたりするのだろうか
あっちに行きたいと思うような世界になっているのだろうか
もう一つの世界には行きたいが、3日程度いたら十分だと思っている それぐらいこの世界に馴染んでしまったのだ 希望もなく壁に阻まれてばかりのこの世界に
もし、本当にもう一つの世界があるのだったら、この地球には、どれだけの世界の住人がいるのだろうか
万華鏡のように世界が広がっているのならそれもまた趣きがあるなーと思うようになった或る秋の日のこと
もう一つの物語
もしも 運良く
自分が 病気にかからなかったら
自分は 大学に
行っていただろうか
大好きな子供たちの
先生に なっていただろうか
世の中の人を
助けられていただろうか
今でも 遅くないといい
アラフィフの私
「私たちが選ばなかった道」
数年ぶりに都心のど真ん中へ。
用事を済ませ、都会に出たついでにと、住んでいる地域には出店していないカフェでお茶をし、買い物。
東京駅に着いた時には、帰宅ラッシュ直前。
人混みを掻き分けて新幹線乗り場へと向かう。
「え……」
思わず振り返る。
今すれ違った人、あの後ろ姿、もしかして……
目を凝らしてみるものの、人混みに紛れ見失ってしまった。
改札を抜け、エスカレーターで運ばれながら、あの日のことを思い出す。
ここで最後に会ったことを。
それぞれ別の道へ進むと決めたときのことを。
あの人は、私と一緒にいたいと願った。
だけど、私は自分がやりたいことを選んだ。
あの人にも、周りにも、よく考えろと言われたけど、私は自分の意見を曲げなかった。
結果的に、私はそれでよかったと思っている。
遠距離恋愛中と思しきカップルが抱き合っているのを横目に、ホームに停車している新幹線に乗り込む。
結構混んでいる。
予約した席に着いて窓の外を見ると、ホームのカップルはまだ抱き合っていた。
私たちが選ばなかった道── 遠距離恋愛を選択した彼らが、幸せになることをひっそりと願う。
ゆっくりと走り出した車体のスピードが上がると、まるで日常から切り離されたような気分になる。
窓の外の景色を見ようとしても、見えるのは自分の顔。
あれから、もう十年経つ。
あの時から、連絡を取り合っていないから、今どこで何をしているのかわからない。お互いに。
もしもあの時、私の選択が別のものだったなら。
そう思う時は、たまにある。
だが、後悔はしていない。
たとえ時を巻き戻したとしても、私は同じ選択をするだろう。
これだけは、断言できる。
今の私の幸せは、あの人と別の道を選んだ上に成り立っているのだ。
だから、パラレルワールドなんて、もうひとつの物語なんて、考えられない。
ねぇ、あなたは「俺がお前を幸せにするんだ」なんて言っていたね。
あなたがいなくても、私は今、幸せに暮らしているよ。
どうかあなたも他の誰かと幸せに暮らしていますように。
────もう一つの物語
『もう一つの物語』
私は「もしも◯◯だったら」
という「もしも」がきらいだ
「もしも」
という言葉には希望が隠れているからだろう
過干渉の毒親に育つと
自分の中から希望など見いだせない人間になる
大人でしょう?
もう親は関係ないんだから!
って医師も大抵の大人は言う
けれど…
複雑に絡まった障害を持つ私には
それは容易ではない
『もう一つの物語』が
私のきらいな「もしも」今後、
生まれることがあるとするならば…
希望を持つことが出来るのかもしれない
が…
平均寿命を半分を超えた私
そして
双極性障害の人は平均寿命が7年ほど短いらしい
薬の副作用で合併症で臓器を痛める
そもそも自殺リスクは高いためだ
なら
私はあと30年生きられるかさえ、わからない
この30年で『もう一つの物語』を
本当に作れるだろうか?
孤独には慣れている
だから、孤独死も別にこわくない
先祖のお墓にも入りたくない
死んでまで関わるのはゴメンだ
残りの10年になってもいい
1年でもいい
夫と離婚が成立し
我が子の成長を最後まで見届けたい
親と姉を捨て、身内と縁を切った
今の私の望みは
それだけなのに…
双極性障害の私が自立して生きていける社会は
容易くはない
子ども塾のために借金をし債務整理した私は
生活保護は受けられない
一般就労も難しいと医師に言われている私は…
今後も…
モラハラ夫に耐え、家政婦として生きるのが
精一杯なのかもしれない
毒親ではなく
双極性障害じゃない
そんな私の『もう一つの物語』があるとするのならば
誰か教えて欲しい…
私は
何に希望を見いだし
生きていけばいいのだ?
子育ても終盤だ…
何を…
何をよろこびにすれば良いのだろう?
今日もまたそんなとてつもない「空虚感」に
苛まれて手首に傷を増やす…
だんだん痛みがね
感じなくなるんだ
だから、浅かった傷も深く刻まれる
私の『もう一つの物語』は
いつから始まるのかな?
始まるといいなぁ…
もう一つの物語
時々行くカフェでは
11時までに行くと
ドリンクに無料の
トーストがついてくる
間に合わなかった日は
ドリンクのみの物語
今日は間に合った🤭
トーストを食べた私の物語が
できあがった日
✴️195✴️もう一つの物語
行かないでくれ。そう言った気がする。上手く言えたかも分からない。声が出ていたか、それさえも。
焦燥感に駆られて口から出た言葉は、まるでガキが駄々を捏ねるかのような無意味なものだった。
コイツは俺を置いてどこかへ行く。それだけは分かっている。何処へ行くかは知らない。ただ引き留めなければならないことは分かる。焦っていた。
『そんな顔すんなよ』
困ったように言う声色は、まさに子供に言い聞かせる母親のようでもあった。
ただ。その男の声に俺は聴き覚えが無かった。
いや、俺自身の体にも違和感があった。着た覚えの無い服を着ていた。仰々しく手袋なんざはめて、宛ら映画の軍服のようにも見えた。
(今のは誰だ?)
疑問と共に俯いた顔を上げる。俺はその声の主の面を拝もうと、相手の名を呼んだ。
「ヒロ、朝だぞー起きろー」
スマホからけたたましいアラームが鳴り響いている。それを止めながら、彼女が俺に呼びかけた。
心臓がバクバクと鼓動を掻き鳴らしている。アラームのせいではないそれに、俺は困惑して言いかけた名前を呼んだ。
「……レイ」
「ん?おはよ。ちょっと、忘れてないよね?スーツケース買いに行くよ」
まだ寝転がる俺に怜が覗き込み怪訝そうに問う。
怜が海外派遣のボランティアに行きたいと言ったのはつい昨日の話だ。看護師として、多くの人を助けたいと。短くて半年、長ければ数年帰って来ないらしい。
「ああ…うん」
「ほら、早く起きて。ついでに朝ごはんさ、どっかで食べよ」
カーテンを開けながら怜が俺に微笑む。母親のようなそれに、俺は何故かずきりと胸が痛んだ。
行かないでくれ、とは何故か言えなかった。怜の提案が立派な行いで、誇るべき事だったからだ。
けれど彼女が向かおうとしている土地は、お世辞にも治安が良いとは言えなかった。部外者の俺がついて行ったとて、邪魔になるのは明白だった。
けれど夢の中の俺とリンクして—いや、この場合は夢の中の俺が勝手に口を滑らした、が正しい。
「行くなよ」
不意に口を吐いた言葉が宙に舞う。誰の言葉か分からず、俺は怜と顔を見合わせて驚く。
同時に理解する。俺が言ったのか。理解した瞬間、顔がガッと熱くなる。汗が噴き出る。
怜も同様に驚いたものの、俺が黙るのを見るなり困った顔で笑った。
「そんなこと言わないの」
子供に言い聞かせるように告げられた言葉が、何故か夢とダブって聞こえた。
まだベッドから降りない俺に、怜は「うりゃ!」と茶化して抱き付いた。
「お土産話、いっぱい持って帰るからね」
耳元で優しくそう言う怜を、俺は何も言えず力一杯抱きしめた。
≪もう一つの物語≫
《もうひとつの物語》
「何してんのー?」
「ぅひゃっ!?」
放課後の教室、突然後ろから声をかけられて飛び上がった。
地味で目立たなくてぼっちの僕に話しかけてくる人なんていないからだ。
「少年、もう空が真っ赤だぜー?
帰らなくていいのかい?」
「す、すみません…」
”少年”…いや、クラスメートでしょ…
…という言葉は飲み込み、目の前のマイペースな彼の名前を口に出す。
「金剛…日向、くん…?」
「わし、少年に名前教えたことあったっけ」
「いやあの…日直記録帳に書いてあるので…」
「あれを丸暗記してんの?変わった趣味だね」
そう言いながら目の前の”金剛 日向(こんごう ひなた)”は、校則で禁じられているはずのお菓子の包み紙を目の前で堂々と開けて口に入れる。
僕が風紀委員だったら立場上止めなきゃいけないんだろうけど、生徒指導室常連の彼を僕ごときが止められる気がしない。
それでも日直日誌を読み全クラスメートの名前を丸暗記するのが趣味な変人と思われたくないので弁明する。
「ま、丸暗記はしてませんし、趣味でも無いですよ…」
「もしかしてわしのことが好きとか…!?すまんの少年、わしは故郷に妻がいてな…ほらこの通り指輪も」
「そういうのじゃないです…しかもそれポテコじゃないですか。かなりクラスで目立っているので覚えてるだけですよ。」
「ちぇ、真面目だなぁ」
不服そうな顔をしてさくさくと薬指にはめたポテコを食べる彼。こんな癖の強いキャラが狭い教室にいたら嫌でも名前を覚えるだろう。
でも不思議と嫌じゃない。むしろ友達になりたいような…
「それ、気持ちいいくらい白紙だね」
急に現実に戻される。彼が指でとんとんと白紙の”進路希望調査書”を示す。
「今日までじゃなかったっけ?」
「はい…でも、埋められなかったから明日の朝イチに持ってこいって先生が…」
「なるほどなー。それで少年は居残りしてるわけだ」
「そうですね…」
頭の上で腕を組みながら彼は能天気にグミを食べる。そういえば彼は進路は決まったのだろうか?
「金剛くん…」
「日向でいーよ。タメだし敬語も外してくれよなー」
「…日向は、提出したの?」
彼のお菓子を食べる手が止まった。
「おー、渡されたその日に出したぞー」
「え!?」
「何だよー。そんなびっくりすることある?」
「い、いや…ごめん…
…ち、ちなみになんて書いたの…?」
「医者」
「えぇっ!?」
「声デカー」
予想外すぎる。ギャップとかいうレベルじゃない。
マイペースでやる気がないキャラが戦闘になるとめちゃくちゃ強い…なんていう、まるでゲームのような。
呆然とする僕に今度は彼が問いかける。
「少年は?」
「ぼ、僕は…まだ決められてなくて…」
「ふーん。じゃ、夢は?」
「へ?」
情けない声が出てしまう。
夢?…将来の夢なんて、とっくの昔に諦めたのに…
彼は続ける。
「やりたいこととか、好きなこととかないの?」
「え、っと…それは…」
「それとか、少年が好きなことなんじゃないの?」
僕のスケッチブックを指さす。
「でも…僕には才能がないから…」
下手なイラストを眺める。
稚拙な物語のプロットを眺める。
沈黙を柔らかく切り裂くのはいつだって彼だった。
「少年は自由だねぇ」
「そ、それってどういうこと?」
「そのまんまの意味だよ」
彼の言ってることは相変わらずよくわからない。
理解出来ずにいる僕に顔を近づけて、彼は。
「少年、才能が欲しいか?」
突然、魔王の台詞のような言葉をかけてくる。
「そ、そりゃ欲しいよ。でもそう簡単に…」
「おっけー。わしに任せとけってー」
夕陽に照らされた、彼の黄金のマフラーがふわりと、まるで天使の羽のように広がって。
「ちょ、ちょっと待ってよ。さっきからどういうこと?せめて説明を__」
ただ混乱する僕の前から消えた。
”金剛 日向”という存在が、最初からいなかったように。
いつの間にか開いていた窓から心地よい風が吹いてきて、僕の眠気を誘う。
あれ、僕の名前は…
”彼”の名前は…
”彼の夢”はなんだったっけ?
_ぽかぽかと暖かい西陽が、僕を夢へと連れ出した。
テーマもう一つの物語
君と出会ってもう一つの物語を
始められた事が嬉しかった
喪失感でいっぱいの私
だったけれど君に出会えた
君に翻弄される私を
いつまでも猫パンチしてね
もう一つの物語
表と裏というより単純に別の話、いわゆるスピンオフだな。とあるの科学とかアカギやハンチョウなんかが有名か。
ほかには俺は読んだことないけど槍の勇者のやり直しとか、あとはなんかあったけかな。なんにせよ人気作はそういう主人公以外の人気キャラにスポットを当てた作品が出るな。
しかし昨日はメガネの受け渡し日だったのに雨でいけなかった。いこうと思えばいけたけど雨の日に外出はだるいわ。その日バイトだったってのもあるし。
だけど今日はもう雨がやんだし天気予報でも晴れだから取りにいける。新しいメガネ楽しみだ。
2024/10/26「友達」のお話のもう一つの物語として
だめだ、昨日のことが頭から離れない。
起き抜けのカフェオレを飲みながら、また昨晩のやりとり思い出していた。寝室は別だから寝る時に顔を合わせることはなかったが、向こうが起きて来たらちゃんと話せるか不安だ。
カナデが急にあんなこと言うもんだから。思わず家族だなんて…。いきなり言って引かれてないか心配だったけど、あいつはやたら喜んでくれたな。
「友達だと思ってる?」って、一緒に住んでて今更なにを言ってるんだと思ったけど、カナデは気になってしまったことは聞かずにはいられない性格なんだよな。ちょっと子どもみたいだ。
日曜日だし、しばらく起きてこないだろう。先に朝食を作っておくか。
…あいつ、家事を私に任せすぎてるって自覚あったんだ。ちょっとからかっただけなんだけどな。かわいかったな。自分は家事全般を楽しんでやれるからなんとも思わない。むしろ一人でいるより世話を焼ける相手がいる方が張り切ってやれる。だからカナデが居てくれるだけで生活にハリが出る。
こういうことも言ってあげた方がいいのかな。ちゃんと言い合うのもルームシェアを続けるには必要なことかも。でも口にするのは恥ずかしいし。
両手を顔に当てて伏せる。また恥ずかしさが込み上げてきた。
んんー、にしても家族は言いすぎたかな。向こうが親友って言うから、なんかこう、負けてられないみたいに思っちゃったんだよな。恥ずかしかったな。
「どうしたの?」
え!?びくっとなって顔を上げる。カナデがあくびしながら立っていた。
「起きるの早いな」
「へへ、朝ごはん作ろうと思って」
カナデも昨日のこと気にしてるのかな。いいのに。
「そっか、じゃあお願いしようかな。カナデの料理、楽しみ」
思ってることは言っておかないと。うん。
「やー!朝ごはんでそんな期待しないで!」
なんだかんだ私より凝った料理を出してくるところがズルいんだよな。ちゃんと器用だし、ちゃんと研究するタイプ。
「ねえ、昨日の話、あれ、お互い忘れない?」
ワンナイト後のカップルみたいな言い回しになってしまった。
「え?やだやだ、なんでそんなこと言うの!せっかくファミリーになったのに!」
こいつ“ファミリー”気に入ってるな。
「パートナーもだいぶ恥ずかしいけどな」
「あ、ひどい!いいじゃん、パートナーでファミリーで、無敵のコンビだよ!」
また熱くなってきた。こいつ全然否定しないじゃん。どんどん恥ずかしくなるだけだ。あっ。
「わかったから。玉子焼き焦げるよ」
「あーもう!ナオのせいだからねー!」
出来上がった玉子焼きはちゃんとおいしかった。
#もう一つの物語
ひろと君と僕は、今日学校で習った宇宙のことを話しながら帰った。
太陽系のこと、ビッグバンのこと、宇宙は膨らみ続けていて、星たちがどんどん離れていることなど。
「でもさ…」
ひろと君は空を指差した。
「あれのこととか、ぜんぜん説明してくれなかったよね、先生は」
僕らは夕焼けの空を見上げ、ゆったりと漂う巨大な宇宙クジラを眺める。
「たぶん、大人も知らない別のお話があるんだよ」
と僕は言った。
私は今日 右を選ぶ
赤を選ぶ
まっすぐ進んで
立ち止まる
音が聞こえる
音が聞こえる
選ばなかった道を君が選ぶ
どんな道を行くのだろ
私はそこにいないから
その物語は知らない
《もう一つの物語》
あの日、あの震災がなかったら あの時ブレーキとアクセルを踏み間違えてなかったら 君を行くなと引き止めていたら もしも治療開始の決断を先送りにしていたら あの「聖戦」に日本が勝利してしまっていたら
あたしが憂鬱にしている間に、あの子は青春を楽しんでんだ。あたしがお布団とよろしくしてる間に、あの子はカレシとよろしくしてる。
どこでこうなったの。あたしたち、生まれる時は一緒だったのに。幼稚園だって、男の子がいやで、手繋いで逃げて、一緒にロッカーに隠れたのに。小学校だって、宿題を忘れて見せてもらおうとしたら、ふたりとも忘れてて笑ったのに。中学校でも、帰る時は、一緒だったのに。
あの子が見てる世界はどんなだろ。あたしと同じ顔で、同じ体型で、同じ身長で。目の高さは同じなのに、見てる世界はどんなに違うだろ。
いっぱい考えたら、頭にもやがかかってきた。あの子が帰ってくる前に眠らなきゃ。
カレシのところから帰ってきたあの子は、あたしと違う服着て、違う匂いがして、違う表情して、あたしの知らない、モンスター。
鉢合わせする前に眠らなきゃ。あたしはあたし、これでいい。あの子を見るとぞっとする。あたしもいつかオンナになるって、ぞっとする。そんな世界、いらない。
もう1つの物語
夢を見た
僕が生きている世界と何ら変わらない
でも、そこでは
僕とあいつは恋人同士だった
夢は深層心理がどうたらこうたらと言うけれど
結局のところ僕はあいつが好きみたいだ
だけれど、こちらの世界では僕らはただの親友
夢の自分に少しだけ嫉妬した
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夢を見た
僕が生きている世界と何ら変わらない
でも、そこでは
僕とあいつは親友同士だった
僕は 戻りたいのだろうか
離れる恐怖に怯えながら過ごす日々から
逃れたいのかもしれない
だけれど、もう僕らは離れられない
夢の自分に少しだけ嫉妬した
【もうひとつの物語】
もしあっちを選んでいたら、
もしあっちを選んでしまっていたら、
って思う時に、
むくむくとわきおこるストーリーがあるよね
あの手を離してしまっていたらと想像してゾッとしたり
目を逸らさずにいたら今ごろひょっとしたらと後悔したり
あの電車に間に合ってさえいればと嘆いたり
そうだ、あの時それで気づいたんだ
今日の最善の選択が、明日の自分の道をつくる
明日の自分が、今日の選択を最善にする
もうひとつの世界に、いつもはげまされてるって
フィクションのifストーリーには心躍る。
現実のたらればには辟易する。
他人事の嘘と可能性は娯楽になり得る。
自分にあった可能性と塗り固めた嘘は、苦痛となり心を縛りつける。
嘘は眺めるに限る。
そんなことを嘘つきの自分は思ったりしたのでした。
雪がちらついていた。今年もそんな季節かと、朝の用事を終えた私は押し入れをこじ開けた。お目当てはこの石油ストーブ。何年もそのままにしていたが、ぬくもりが恋しくて引っ張り出してみた。
「ふう、重いわね」
ほこりを軽く払って、壊れていないか点検する。改めて見ても、立派なストーブだと思う。祖母が譲ってくれた少々時代遅れなストーブは、私たち一家を温めるのには十分すぎた。
「灯油タンクはどこにしまったんだっけ」
あの赤い容器を思い浮かべながら再び押し入れに頭を突っ込んだ。
そしてしばらく探してから私はふと一昨年の冬のことを考えた。
「……。」
結局灯油タンクはホームセンターで買わねばならなかった。
役目を果たした扇風機を押し入れに片付けるとき、うっかり穴を開けてしまった話は内緒にしておく。