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雪がちらついていた。今年もそんな季節かと、朝の用事を終えた私は押し入れをこじ開けた。お目当てはこの石油ストーブ。何年もそのままにしていたが、ぬくもりが恋しくて引っ張り出してみた。
「ふう、重いわね」
ほこりを軽く払って、壊れていないか点検する。改めて見ても、立派なストーブだと思う。祖母が譲ってくれた少々時代遅れなストーブは、私たち一家を温めるのには十分すぎた。
「灯油タンクはどこにしまったんだっけ」
あの赤い容器を思い浮かべながら再び押し入れに頭を突っ込んだ。
そしてしばらく探してから私はふと一昨年の冬のことを考えた。
「……。」

結局灯油タンクはホームセンターで買わねばならなかった。
役目を果たした扇風機を押し入れに片付けるとき、うっかり穴を開けてしまった話は内緒にしておく。

10/30/2024, 12:26:11 AM