『もう一つの物語』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
もう一つの物語
海の魔女を倒して、王子様と結ばれた人魚姫。
とても幸せな日々を過ごしている。
そんな人魚姫を海から見つめる海の魔女の弟子。
お使いを頼まれて、他の海へ行って帰ってきた時には自分を可愛がって育ててくれた師の姿はなかった。
探しに探して、聞こえてきた話。「海の魔女が倒された」と。
初めは信じられなかった。だが、幾度待っても帰ってこない師。
そう、もういないのだと悟った。哀しみと同時に怒りが満ちる。
誰が自分の師を屠ったのだと。情報を頼りに辿り着いたのは、人魚姫。
ギリっと親指の爪を噛み、憎悪を人魚姫へと向ける。
「いつまでも幸せな日々が続くと思うなよ、小娘」
これは、もう一つの物語。果たして、弟子は人魚姫を奈落の底へと堕とすことができるのだろうか――
もう一つの物語
僕は、何も知らない。
だから、僕は何も語らない。
【お題:もう一つの物語】
学生の頃、
ザ・昭和の遺産
といった風情の
学生寮に入っていた
とにかく古くて
設備も旧式で
あるときには
浴槽タイルの剥がれが
ひどくて
とうとう工事が入る程だった
それでも
なんとか その寮で
学生生活を送れたのは
寮生たちが
とにかく面白くて、
どうしようもないほど
お互いにバカで
気が合ったからだった
私も含めて
そこは 第一志望の
学校ではなかった、
という人が多かったのだが
来てしまったからには
楽しまなきゃ損だと思って
皆 腹のそこから
学校生活、寮生活を
楽しんだ
門限がある寮だったが
真夜中に非常階段を
お笑いコントのように
数珠つなぎに降りて
ラーメンを食べに出掛けたり
タバコの吸いかたを
ベランダで
教えてもらったりしたのも
その学生寮だ
また 今のように
ネットで本や漫画や
音楽を楽しめる時代
ではなかったので
回し読みをして
天人唐草で山岸凉子を知り
トーマの心臓で萩尾望都
を知った
トラウマやイド、エス
といった
私が全く知らなかった言葉も
真夜中、
その昭和遺産の部屋で
オレンジ色の
古びたライトの下で
教えてもらった
行く予定を
していなかった学校、
想像もしていなかった生活
受験勉強を
していた時に
夢見て 思い描いていた生活が
当時の私にとって
一つの物語とするなら
実際に体験し
過ごした生活は
もう一つの物語
といえるかもしれない
例年、事情を抱えて
入学してくる生徒が
少なくないことを
知っていた恩師が
私が卒業をするときにも
声をかけてくださった
ここで過ごした生活は
誰にも奪うことのできない
あなただけのものだよ
そのときは
くすぐったい気持ちで
少し感傷的な言葉のように
聞いていたが
いまになると
本当にそのとおりだと思う
ある講義で 先生は
人は二回死ぬ
肉体の死
そして
その人を知る人が
この世に 誰も
いなくなるときだ
と話された
その先生も鬼籍に入られ
寮で一緒に過ごし
共に先生に
かわいがっていただいた
友人の一人も
早くにいってしまった
けれども
先生も友人も
この世に
自分の本を残しているので
誰かに 彼らの本が
読まれることで
二人の言葉は
読者の心に彩りを添え
読者の物語は
また一枚、一枚と
編まれているのではないか
と想像している
もうひとつの物語があったら
もうひとつの世界があったら
世界線はぐっちゃぐちゃだ....
2人が出会って恋に落ちる
そして1度は夢見たプリンセスの物語はこの言葉で締めくくられる
「こうして2人は幸せに過ごしましたとさ」
でも現実はこんな上手くはいかない
そんなこと分かってる
プリンセスの物語は本の中の世界であり現実じゃない
それなのに
どうしてもそんな結末であってほしいと願ってしまう
"信じ続ければ願いは叶う"なんて言葉を信じて
叶わないと分かっていても信じ続けてしまう
-もう一つの物語-
もう一つの物語
めでたしめでたしに続く物語
それはいいことも、悪いことも
自分の行動次第
全てのものは簡単なものではないけれど、
掴み取ったものにこそ価値は存在するのではないのか?
今ある幸せもまた、過去に多くのものが
掴み取った幸せ絵の果てなのではないのだろうか?
それとも妥協や挫折、諦めと
繋がった縁なのでは?
毎日の小さな決断
する・しない 右・左
大きな決断
歯を食いしばり 涙をのみ 思い切って
その一つ一つの先に
際限なく枝分かれしていったはずの未来
いったいどれだけの物語を わたしは
めまいする思いを振り払い
すべての可能性
色とりどりの未来のなかから
今日もひとつだけを選んで
「もう一つの物語」
#233
もうーつの物語
好きな人に告白した
付き合うことになった。
私は嬉しくて
友達に言った
でも…
私は気づけなかった
友達の優しさに
勇者は魔王を退治し、世界に再び平和が訪れたのでした。
めでたしめでたし。
しかし、本当は魔王は勇者を愛していたのです。
女戦士として、何度も自分の命を取りに向かってくる彼女の相手をしているうちに、いつの間にか恋い焦がれていたのでした。
何度も自分と彼女の地位身分を恨みました。自分が“魔王”でなかったら。彼女が“勇者”でなかったら。きっと違う未来が待っていたであろうに。お互いに敵対する関係に生まれてなければきっと、自分は彼女とひとつになれたかもしれないのに。
でもそんな思いは最後まで彼女に届くことはありませんでした。実際に愛していた気持ちを伝えることさえ阻まれたからです。彼女は魔王である自分を倒すことで、国王の第一子息と婚約することが約束されていました。それは彼女自身も望んでいたことでした。最初から自分のつけ入る隙なんか無かった。そのことを思い知った魔王は素直に彼女にトドメを刺されることを選びました。最期の一撃を喰らう直前、懐に入り込んできた彼女の頬に少しだけ触れました。数多の戦を経験しているとは思えないほど滑らかな白い肌でした。本当は、この身体を自分のものにしたかった。決して叶うことのない願いを抱えながら魔王は彼女の手によって滅ぼされたのでした。彼女が幸せになれるのなら自分が消えることを選ぼう。本当は心の優しい魔王でした。でも誰もそんなことを知る人はいませんでした。魔王は最期まで誰にも思われることなく、ひとり寂しく死んだのでした。
もう一つの物語はない。
私の今いるこの世が、紛れもない現実なのだから。
「はあー、私…なんか一人でから回ってるっていうか、モヤモヤしてる……」
私がこんなになっている理由は、彼にある。
彼と言っても私と彼はなんの関係にもない。
どこにでも居る、上司と部下だ。
ただ、その上司の彼は、仕事ぶりは大胆なくせに、私には一切、手を出してこない。
そのくせ、私にはビシビシ好きだという気持ちが伝わってくる。
おかしい、言葉も触れ合いもまったくしてこないのに、気持ちばっかり無言で伝えてくるなんて狡い。
私だって、貴方が好きなのに……。
好きにさせられたのに……。
ばか野郎………。
「林。いつまで残ってるんだ?」
私に声をかけてきたのは、彼。
中原 雄誠(なかはら ゆうせい)
私より10歳上の上司だ。
「……申し訳ありません。すぐに帰ります」
私はカバンに持って帰る物を入れ、席を立つ。
「お疲れ様」
「お疲れ様でした。」
私が残っていたのは、仕事なんかじゃない。
貴方のことを考えていたから。
貴方が、私を惑わすから。
「中原さん………」
「うん。どうした……」
「中原さんが言わないから、もう私から言います。勝ち負けじゃないけど、私の負けです」
「………えっ?」
そういうと、私は彼に近づき、ハイヒールで何とか届く彼の顔に近づき、キスをした。
そのキスに「好きです」という気持ちを乗せたのが届いたかどうか分からないが、彼からもキスのお返しがあり、暫くの間お互いの唇はくっついたまま、何度も何度もキスを繰り返していた。
「……なっ、かはらさ………っ!」
唇が離れたかと思ったら彼は私を抱き寄せ、言った。
「ごめん。君から言わせてしまって……
俺も、君以上に君の事が好きで、愛している。臆病で、すまない……。」
彼からずっと聞きたかった言葉。
けれど思った以上に破壊力の凄かった彼の愛の告白に、わたしの腰が腰砕けになったことは、言うまでもない。
【もう一つの物語】
忘れたくても忘れられない。
〝なんでこんなことするの!?〟
〝るなちゃん狂ってるよ!〟
〝るなちゃんと関わったら動物さんたちみんなが……〟
わたしが小学校低学年の話。
わたしは、クラスのみんながなりたがっていた飼育係にどうしてもなりたくて、普段手をあげないけど…頑張ってあげて、くじ引きをして、飼育係になった。
うさぎとかモルモットとか色々いた。
可愛かった。
愛した。
でも……
「どうして、みんな元気ないの…?」
わたしは、いじめられてたみたい。
わたしが、うさぎたちに、あげたご飯の中にダメなものを入れて、わたしがしたって先生に言ってた。
掃除も綺麗にしたのに、ちゃんとごみ捨てをしたのに、全部散らかってた。
わたしは、毎日毎日、泣きながら帰ってた。
その度に、お姉ちゃんは優しく抱きしめてくれて、助けてくれた。
……先生に、お金を渡して。
元気がない動物たちは、有名な動物病院の先生に来てもらって、ちゃんとみんな元気になった。
わたしが通る道全てに防犯カメラ設置して、監視してた。
いじめっ子たちは、それぞれ別々の場所に飛ばしたってお父さんから聞いた。
わたしの周りには、その日から、人が来なくなった。
〝るなちゃんと関わると飛ばされる。〟
〝先生に何を言っても、全部るなちゃんの味方をするから言っても意味無い。〟
〝るなちゃんの家族は怖い人が出入りしてるみたい。〟
たくさん、言われた。
そして、言った人は、消えた。
12歳になった頃には、誰もわたしのことに触れなかった。
教室で、孤独になった。寂しかった。辛かった。
わたしは、お姉ちゃんに「友だちがほしい」って言った。
お姉ちゃんは、いつもの優しい笑顔で『わかったよ。』って言った。
次の週、学校サボって連れてこられたのは、図書館。
『ねえ、あの子はどうかな?毎日毎日図書館で本読んでるの。それに可愛いでしょ?』
わたしは、こっそりと物陰からお姉ちゃんが言う〝あの子〟を見てみた。
可愛かった。
日焼け止めしっかりしてるから、肌が白くて、服も靴も可愛い。
読んでる本も絵本?みたい。
『今度、声かけてみよう。お姉ちゃんがサポートしてあげる。』
そう言って、次の日、あの子が座ってた席に座って、適当に選んだ本を読みながら待ってた。
その次の日も次の日も……
そしてやっと会えた。
赤茶色っぽい髪の毛がふわっと舞って、初めてあの子と目が合って、ドキドキした…
もしかして、好きになっちゃった…??
好きが分からないけど…ドキドキすることが、好きっていう意味なんだよね?
そういえば、この前読んだ本に、同性婚もできるところがあるって書いてたから、そこに行ったら結婚出来るよね。
ね、一緒に行こうね?
そうだった、名前聞かないと。
紙に書くのに必要だもんね。
そのあとの事は本当にキラキラした思い出だったの。
声かけた時も、一緒に遊んでる時も、
公園の水飲んでる姿見たときも
……ずっとドキドキしてた。
だから、離れたくない。離したくない。
誰かのものになって欲しくない。
わたしだけ…るなの事だけ見てて?
邪魔する人は、バイバイ出来るよ?
安心してね?
るなのくるみちゃん。
『るなとくるみちゃんは、ずっとずっと一生一緒だよ。』
もし
あの時
こうだったら
そうしていれば
わたしは
今頃
どんな人生を
送っていたのかな。
違う仕事をしてた?
違う人と結婚してた?
子供が出来てた?
いや
今
生きてない
かもしれない。
違う人生なんて
いくらでもある。
それでも
こうして
生きてるから
きっと
この人生で
💮なんだ。
#もう一つの物語
もう一つの物語
昔、高校の先生が、私はあの飛行機に乗るはずだったんだよ、と言った。先生の穏やかな口調に対して一瞬息を止めてしまった事を、私はよく覚えている。
あの高校に合格しなかったら、あの会社に入らなかったら、あの人に出会えなかったら。
いくつかの大きなif。そして日々の小さなifでは、あの電車に乗らなかったら、等々。
そこには必ずもう一つの可能性があって、その一つの選択で人生が変わっていたかもしれない。普段は意識しないその紙一重の重み、生きている幸運を、痛ましい事故のニュースなど聞くと先生の言葉を思い出し考えさせられる。
あの日、あの場所に私がいたら、もしくはいなかったら?
今ごろどんな物語が始まっていたのだろう。
#72
【もう一つの物語】
世界を恐怖で蹂躙した悪の魔王は、心優しく勇敢な勇者たちに倒されて、人間たちは魔王に支配され使役され続けてきた哀れな魔族たちと手を取り合い、世界には平和が訪れました。めでたし、めでたし。
子供たちの寝物語として世に広がった、この国の歴史を描いた物語。勧善懲悪な英雄譚。デフォルメされた可愛らしいイラストの表紙を指でなぞって、小さく息を吐き出した。
魔族が迫害されることなく生きられる未来のために、悪に徹した王。種族間の争いは絶対悪を処断しなければ永遠に終わらないと判断し、自らを犠牲とすることを選んだ愚かな王様。
(僕の敬愛する王は、今でもあなた一人だけだ)
夜空にリュートを爪弾き、歌を奏でる。世界中を旅しながら、僕は吟遊詩人として彼の物語を紡ぎ続けるのだ。たとえ世界に普及した魔王の物語は変わることはないとしても。人々の中で彼は悪でしかないとしても。そうでなかったということを、せめてもの抵抗に僕だけは語り続けたいから。
魔王の側近として生きた僕だけが知る、もう一つの物語。たった一人の僕の王様への哀悼を込めて、僕は声を張り上げた。
いつもつまらない一日、つまらない日常、つまらない職場、つまらない家…
そんな私にも新しい心の拠り所が出来た。もう一つのあたしの世界。もう一つの物語が今始まる。
勇者は魔王を討伐し、世界に平和が訪れた。
しかしその一方で、虐げられていた魔族はさらに窮屈を強いられる羽目になる。
それが語られないこの世界のもう一つの物語。
討伐するだけでは、解決には導けないのだ。
「もう一つの物語」
プルルル…プルルル…
鳴り止まない着信音
日々の生活に疲れた私は会社とは反対の電車に乗り海に来ていた
昨夜、天候が荒れたせいだろう、浜辺には色んな物が流れ着いていた
カギ爪、ドクロの旗、イカダセット
生まれ変われってことか…?
私は大海原に漕ぎ出した
本日は快晴なり
………
財布から別れた妻の写真を取り出す
未練がましい奴め…生まれ変わるんだろう?しっかりしろ
私の上空を旋回していたオウムが肩に止まった
「船長!船長!奥さんデスか?奥さんデスか?」
「船長?ああ…そうだよ、綺麗だろう?」
「………」
「綺麗だろう?」
「や、やさしそう、やさしそう!」
「………」
「船長!ソマリアはあっち!ソマリアはあっち!」
「海賊王か…悪くない。行くか、ヨーソロー!」
「ヨーソロー!ヨーソロー!」
これは後に「海賊にやられた男」と呼ばれる負け犬の物語である
今日は右に、明日は左に
曲がった先に何があるかは知らない
わかる術もないから、示すことができない
それが勿体ないような気がして
想像してみるしかなくて
と、書いている私
読んでいるあなた様
もう一つの物語
魔王が殺されたのならば。
それ以上に恐ろしい生き物がいるということ。
擁護する国、保護を保証する国、何かあったときの責任を問う国。
(何かあったときって…一体なんだよ、オレ達は珍獣扱いかよ…!!)
各国が、魔王を倒した英雄達の奪い合いと安全性の保証を求め始めた。
確固たる後ろ楯を持つ者は良かった。
だがいつまでも保護しきれることもなくて、かつての仲間達は散り散りになっていった。
占い師の少女は、街の細い路地にまで追い詰められてしまった。先読みの術で自分の運命を読むことは禁じられている。それが今の状況を作っているのに、人間どもはそんな事も分からないのか…。
「私は恥ずべきことは何もしていません」
娘は、逃げることは自分の非を認めることだと言い張るのだ。
追尾型の魔法の網が飛んでくる。
「きゃ!」
身を固くする娘を、オレは固い金属の身体でかばった。ばちっ!と魔力が飛び散る。
「もうこの国を出よう」
「私は! 悪いことはなにもしていません!」
「お前さんの言い分は分かるよ…でもな。 一般の人間にとっちゃ、オレと同じくお前さんは得体の知れない生物でしかないんだ」
オレの発言に少女の顔が蒼白になっていく。ここまでろくに休憩も取って来なかったんだろうな。
「小言は後で聞く」
「小言って……きゃ」
片腕で少女を抱き寄せると、魔物じみた…と揶揄られる跳躍力で路地裏のガラクタを駆け上り、屋根伝いに走り出す。
「待…っ」
「口閉じてしがみついときな! 舌かむぜ!」
娘の身体は、走るにはなんの障害にもならないほど軽い。
こんなひ弱な少女に大の男どもは何を怯えているのかね。
「オレに浚われちゃくれねぇか。なぁ」
人間にやるには惜し過ぎる。
娘からの返事はないー。
揺れる肩口にしがみつきながら、少女は泣いているようだった。
(光に進まなかった方のお話)
国を出て1週間。
そろそろ雨風をしのげる屋根のあるところで休みたい。欲を言えば柔らかなベッドとお風呂と食事にも。
私たちは人の目を避けるように街道を避けて旅を続けていた。
軽い山道で、そろそろ正午を過ぎた頃。
汗をかいた額に山の風は心地良い。少ししたらぐっと気温が下がるのだろう。
「大丈夫か」
どうして今気遣われたのか分からない。
「大丈夫ですよ」
「言い方を変えよう。お前さんは弱音を吐かないもんな」
困ってしまって黙っていると、彼は腕に掴まるように指示してきた。
「寄りかかれ。こんなところで倒れられたら厄介だ」
わざときつい言い方をされた。だめね。気遣われてばかりで情けなくなる。
「私たち……」
「ん?」
一度でも優しくされたら、栓の無いことをこぼしてしまいそうで怯えていたのに。お前さん一人ぐらい守ってやるよと、余裕のある笑顔をしてくれる。それが辛い。
「私たち、どこへいけばいいんでしょう」
「分からんが…どこかにあるはずだ。誰もオレたちを知らない集落がな」
「私たちの関係は、どうしますか」
「お姫様と従者…とか」
「無理がありますよ」
ふふ、と笑ってしまう。彼の優しさが染みる。
「じゃぁ…夫婦…とか。どうだ」
山からきた風が吹く。
ふくらはぎの疲れもやわらいで山道が少しだけ楽になる。
「夫婦…」
「よろしく奥さん」
少し前にいく彼が、いつの間にか外れていた腕を差し出して待っていてくれる。
私は…甘えてもいいのだろうか。思いが溢れそうになりながら必死に付いていった。
韓国ドラマにはまっています。
おすすめの中のひとつ『私たちのブルース』。
オムニバス形式のドラマです。
そこに住む人々それぞれの”もう一つの物語”。
素敵なヒューマンドラマでした!