百加

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もう一つの物語


昔、高校の先生が、私はあの飛行機に乗るはずだったんだよ、と言った。先生の穏やかな口調に対して一瞬息を止めてしまった事を、私はよく覚えている。
あの高校に合格しなかったら、あの会社に入らなかったら、あの人に出会えなかったら。
いくつかの大きなif。そして日々の小さなifでは、あの電車に乗らなかったら、等々。
そこには必ずもう一つの可能性があって、その一つの選択で人生が変わっていたかもしれない。普段は意識しないその紙一重の重み、生きている幸運を、痛ましい事故のニュースなど聞くと先生の言葉を思い出し考えさせられる。

あの日、あの場所に私がいたら、もしくはいなかったら?
今ごろどんな物語が始まっていたのだろう。



#72

10/30/2023, 4:11:58 AM