『ところにより雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
青と白。
彼が好きだと言っていた色だ。
私は今、その花を小脇に抱えて、彼が眠る墓の前に立っている。
じめりとした草木の匂いが鼻を突く開けた墓地の片端にある墓は、彼の優しい心を体現したかのように美しい花や植物が生い茂り、朝露が滴り落ちている。
私は俯いた。
もう彼が亡くなってから、両手両足を使って数えても足りない程の年月が経っている。それでもなお、私は生き永らえている。なのに、あのころの姿のまま私は変わらない。身も心も何もかも、あの時頬を伝った雨粒に置き去りにされ、忘れられている。
抱えた花を置いた。
苔まみれの墓石はふわふわとした感触になっていて、暖かみが増したように思う。
なんだか彼らしいかな、
と軽く微笑んでみた。
もう笑い返してくれる存在など居ないが、目の前に彼がいるような気がして、なんだか心が安らいだ。
…頬に何かが触れた?
暖かい。知っている感覚。この手は……
「なによ、顔を出してくれれば良いのに。」
私はもう一度笑った。
…あのころと同じように、頬に雨粒が滴り落ちた。
<ところにより雨>
ところにより雨
最悪だ……
と思わず呟きそうになった。
今日の目標はネガティブな言葉を口にしないだった。
喉元から出た言葉を、ゴクリと呑み込む。
なるべく平静を装うようにしてるけれど、内心は気が気じゃない。
別に恋人同士ではない、ただの幼馴染みだと言っていた。
雨なんか降るから、オレが補修を受けていたから、一緒の傘にいる2人を見てしまうはめになるんだ。
今朝のニュースを思い出す。
『…ところにより雨でしょう』
その『ところにより』に当てはまってしまったわけで。
自分の傘すら忘れて無いのだから、本当にもう
「最悪だ」
明日友人を見送る
短い付き合いだったが、とても有意義な日々だった
新天地へ向かう友へ
どうか体に気を付けて欲しい
たまにはこちらで過ごした日々を思い出して欲しい
明日は笑顔で餞の言葉を
寂しさや涙はその後だ
ところにより雨
ところにより雨
私の範囲だけ雨ザーザー
雨は悪くないのに
気持ちが暗く…
今日の天気予報は晴ところにより雨、降水確率は10%だった。
「んあ?」
学校からの帰り道、晴れた空からぽつり、ぽつりと雨粒が頬に落ちてくる。ああ、天気予報当たったんだね。と言うか。
「傘持ってきてないんだけど……」
しかも、近くに雨宿り出来るような場所もないし。とりあえず、走ればいいのかな。
「せーのっ……っと?」
走り出す一瞬前。後ろからとん、と肩を叩かれる。
「……走るの?」
「うん、このまま濡れて帰ったら洗濯とか大変だし、玄関から私の部屋までのルートが傷んじゃうし、まああとはどうでもいいけど風邪ひくかも知れないし」
「風邪はどうでもいいんだ……」
真顔でそう言う私に、引きつったような笑顔を浮かべる彼女。
「ここ、入っていいよ」
彼女はさしている傘を指してそう言う。
「いいの?」
「ええ、このまま放って帰って風邪ひいたら大変でしょ?」
「それは別にそこまででも」
「いいから入りなさい」
あ、キレた。
「……ありがとね」
「構わないわよ、先生?」
彼女は、笑いながらそう言う。
「ほんと、ありがと」
誰にも聞こえない声で、私は呟く。
世界でたった一人の、愛しい妹へ。
ところにより雨
朝、その言葉を聞いた私は傘を持っていった。
「あれ?降ってない?」
空は、青かった。
晴れているのに傘をもっている私。
絶対変だと思いつつ歩く。
ポツン、
「あ。」
慌てて傘をさす。
空は、やはり青かった。
普通に降ってたので道行く人々も傘をさしていた。
青空の下皆傘をさしてる。
そのことが面白くて思わず笑顔がこぼれた。
その日もいいことと悪いことどちらもたくさんあった。
降ってやんでを繰り返す雨。
上がって下がってを繰り返す気分。
天気はところにより雨。
私もところにより雨。
300字小説
昇龍
民俗学の研究取材に龍を祀るという村を訪れる。今年は千年に一度、龍の子が巣立つという年で、村では盛大な祭が行われていた。
「子龍まんじゅうに子龍せんべい……」
子龍にあやかった土産物に振る舞い酒。村の人々が空を仰いでは
「めでたい」
と酒を酌み交わす。
ラジオから今日の午後の、この地方の天気予報が流れ出す。
『……今日の天気は晴れのち曇り、ところにより雨か雪……』
「なんなの、この予報……」
「子龍様が旅立つときは、いつもそうらしいですよ」
晴れていた空がにわかに曇り、パラパラと通り雨が降ったかと思うと風に風花が舞う。
『まだ天気を操るのは半人前ゆえ、すまぬのう』
空から声が聞こえた後、雲の間を細い龍が昇っていった。
お題「ところにより雨」
私の心の中
ところにより雨
晴れたり曇ったり雨降ったり
たまに暴風警報発令したり
感情がひしめきあってる
「ところにより雨」
「今日は雨か...」
今日は私の親友が亡くなった日だ。
いつもこの日になると墓参りに行っている。
雨の日はなんとなく嫌いだ。
気分が憂鬱になるから。
でも何年も続けているので墓参りには行く
傘を差して、ゆっくり歩いて。
上の方は向けず、下を向いて。
親友の墓の前に立ち、手を合わせて。
その時上を向くと....空は晴れていた。
本当に不思議な話だが、
親友の墓周りだけ青空が広がっていたのだ。
「天国で幸せになってるかな」
この空はまるで、私の心を表しているようだった。
題 ところにより雨
「あ、ゆうちゃん、今日傘持っていきなよ」
お母さんがそう言う。
「あ、うん・・・」
私は空を見上げた。
快晴だ。雲一つない。
でも、お母さんの言う事は聞いておくに越したことはない。
お気に入りのクローバーの柄の傘を持って、「行ってきま〜す!」と学校へ向かう。
「優美、今日晴れだよ?」
と途中何人かの友達に指摘されたり、不思議そうな顔をされる。
「いーの、お母さんが持っていけって言ったんだから」
私はそう言われる度にそう言い返す。
そうすると、呆れたような顔をされたり、言う事聞くことないじゃん!と言われるけど・・・。
放課後
天気予報では、晴れ、降水確率10%だったにも関わらず、土砂降りになった。
みんな傘を持ってきていないものだから、呆然として空を見上げている。
置き傘をしていた少数の人と共に、私は優雅にお気に入りの傘を広げて帰宅する。
お母さんは、いつも雨になる日を分かってる。
なんでなの?って聞くけど、自分でもなんで分かるかわからないんだって。
でも、100%の的中率で、お母さんが雨になるって言った日は雨になる。
多分降水確率が0%だとしても、お母さんが傘持っていったら?という日は雨になるんじゃないかな?
だから、私にとっては、お母さんの雨予報が絶対で、お母さんが言った場所は雨って決まってるんだ。
それ以外に何か不思議な力があるわけじゃないけど、お母さんのその力、私はちょっと誇らしいんだ。
私はクローバーの傘をクルクル回しながら、弾む足取りで家の方角へと帰っていった。
「私、浩介と付き合うことになった」
いつもの快活な笑顔で、美雪は私にそう言った。
「そうなんだ!おめでとう」
痛む胸を抑えて、心から祝福しているように見せる。
「ありがとう!親友の秋菜には一番に言おうと思ってたんだ」
私を親友と言ってくれる美雪。
その瞳には一切の曇りはなく、張りのある声と笑顔はまるで青空のよう。
美雪はいつも明るくて、さっぱりしていて、漢気があって、かっこいいという言葉が似合う女性だ。
どこかふにゃふにゃしていて、芯のない弱い私とは大違い。
私達の幼馴染である浩介が好きになるのも当然だろう。
そこからずっと、美雪と浩介の話をした。
美雪は惚気るようなことはしなかったけど、言葉の端々に幸せと浩介への愛情が滲んでいて、話せば話すほど私は苦しくなっていった。
「ごめん、明日仕事早くて。そろそろお開きにしてもいいかな」
たまらずそう言うと、
「あ、ごめんね。秋菜と話すのは楽しいから、本当にあっという間に時間が過ぎちゃうね」
少し残念そうに美雪が呟く。
「そうだね。次会う時もまた女子会しようね!」
「当然!浩介には内緒ね!」
悪戯っ子のように笑う美雪は、まるで幼い少女のようだった。
その後店を出て、別れを告げる時、美雪に手を握られた。
ビクッとした私に気づかなかったのか、今日はありがとう!またね!と言って手を離し、私と反対方向へ歩いていった美雪。
少しだけ美雪を見送って、帰り道を歩き始めた私。
なんで、なんで、私じゃないの。
握られた手の温もりが、今は寂しくて哀しい。
美雪のお礼の一つ一つが、褒め言葉が、笑顔が、私の心を締め付ける。
あんなに愛情を注いだのに、全然気づいてもらえないまま、浩介が、美雪を選んでしまった。
なぜ、なぜ、なぜ。
連れて行かないでほしかった。
「大好きなのに…美雪…」
浩介を恨みたくても、あんなに幸せそうな美雪を見たら恨むことすらできない。
今までで一番の、快晴の空のような笑顔を見せる美雪。
話を聞きながら、心が土砂降りの雨に降られたようにずぶ濡れになり、震える私。
もう、今日みたいな思いはこりごりだ。
それでも、私はまた美雪に会うだろう。
美雪の笑顔を忘れられないから。
もしかしたら美雪が私に振り向いてくれたりしないかな、そんな微かな期待で自分を慰めつつ、私は家路を急いだ。
テーマ『ところにより雨』
目覚まし時計の音が部屋に鳴り響いて
ねぼけたまま目覚まし時計を急いでとめて
寝癖のついた髪のままテレビをつけた
「ところにより雨が見られます」
テレビから聞こえたアナウンサーの声
カーテンを開けてみると、朝日が昇っているのに
私の部屋に光が差し込まない
それどころか、部屋に小雨が降り出した
「ところにより雨」
そうか、そういうことか
また一日がはじまる
ところにより雨
父と喧嘩した
私は父が嫌いな訳では無いのに
いつの間にか父を傷つけてしまっていた
言葉を上手く使えず、傷つけていた
こちらからしたら暴言を吐いていないつもりだったかもしれない
曇っていた気持ちが晴れスッキリした青空が広がる
しかし言われた側はどうだろうか
晴れだった気分は曇りに変わり雨が降る
溜まった雨は限界を突破し涙に変わる
受ける側のことをよく考えて発言しなさいとはこういうことだろうか
言葉とは他人の人生を簡単に左右することができる
上手く使えば相手を幸せにすることだってできるだろう
しかし1歩間違えれば相手を死に追いやる
ところどころ雨が降ってしまうだろう
言葉はナイフでありプレゼントでもある
貴方は他人にナイフとプレゼントどちらを選びますか?
地域によって気象関係は様々だ。
日本という北に南にとほそ長い国は、まぁまぁあるもんじゃない。
最近は温暖化の影響?冬と夏の2極化が進んでいる気がする。
俺の地元の沖縄も、何か熱帯みたいになってきた。天気の良い日でも、雲がまばらに上空に存在し、突然のスコールなんて日常茶飯事。
でも、昨年〜今年、台風が少なかったのと降雨量の減少で、ダムの貯水率が低下、県が節水を促している。
2〜3月と言えば沖縄は割と雨が多いのだが、確かに今年はかなり少ない。
しかも、明日は最高気温27℃ということだ。夏だよ・・・
でも、油断してスコールが降るのはたまらない。
ところにって・・・どこ?
−ところにより雨−
眠れないときは動画サイトから雨音のBGMをひっぱりだす
雨音を聴きながら眠りにつく
雲一つない夜空、ところにより雨
【ところにより雨】
最近雨がよく降る気がする。
私が休みの日に出掛けようとすると雨雲が真上にあり、ポツンポツンと雨が降る。それでカッパを来たり装備を整えると、雨が止んで晴れ間がのぞく。
私が雨天に好かれやすい質なのか、偶然雨に重なってしまうのだろうか…?
天気予報で言っていたところにより雨の降る地域が私のいる場所に重なっているだけだろうな。
雨は嫌いではないが、それでも雨が降ると気分はブルーになっていく…
予報士の「ところにより」で傘を持つ君とは悪さを共有できない
題-ところにより雨
ところにより雨、これが今日の大きな天気予報です。今日の天気の詳細です。私の体には現在、雨と晴れと虹と雷が咲いています。
両足に雨が咲いていてびしゃびしゃの靴下を履くことになるでしょう。
両腕に晴れが咲いていて雨の時よりもお勉強がスピードアップできるでしょう。
目に虹が咲いていてキラキラとひかってお昼寝もできないかもしれません。
お腹の中に雷が咲いていてぎゅーーって鳴ったりごろごろごろって鳴ったりするはずです。
明日は、きっと雲が咲くはずです、この頃来ていなかったので。
あなたの中には、何が咲いていますか?
明日は、何が咲くと思いますか?
天気予報を見てみましょう!
お題「ところにより雨」
ところにより雨
とこにより晴れ
ところにより曇り
それが人生だろ
人生って、
なんだかんだ
天気みたいに
見えなさすぎるんだなぁ
でも、予想はできるし
それが当たるんだよな
そのための方法もあるし
なんか、面倒だよなぁ
でも大切なんだよなぁ
ところにより雨
はれ、一時ところにより…
ところってどこだよ
天気予報を眺めて
そんなことを思ったことがある
みんなの表情は晴れ晴れしてて
楽しそうで、幸せそうで
そんな中、私の心だけが
土砂降りの雨模様だった
晴れところにより雨
目立つのかなって思ったら
周りの晴れにかき消されて
誰にも気づかれることなく
確かに私だけ雨だった