お痒

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青と白。

彼が好きだと言っていた色だ。

私は今、その花を小脇に抱えて、彼が眠る墓の前に立っている。

じめりとした草木の匂いが鼻を突く開けた墓地の片端にある墓は、彼の優しい心を体現したかのように美しい花や植物が生い茂り、朝露が滴り落ちている。

私は俯いた。

もう彼が亡くなってから、両手両足を使って数えても足りない程の年月が経っている。それでもなお、私は生き永らえている。なのに、あのころの姿のまま私は変わらない。身も心も何もかも、あの時頬を伝った雨粒に置き去りにされ、忘れられている。

抱えた花を置いた。

苔まみれの墓石はふわふわとした感触になっていて、暖かみが増したように思う。

なんだか彼らしいかな、
と軽く微笑んでみた。

もう笑い返してくれる存在など居ないが、目の前に彼がいるような気がして、なんだか心が安らいだ。

…頬に何かが触れた?

暖かい。知っている感覚。この手は……

「なによ、顔を出してくれれば良いのに。」

私はもう一度笑った。
…あのころと同じように、頬に雨粒が滴り落ちた。

<ところにより雨>

3/24/2024, 12:15:30 PM