『ところにより雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
天気は天気予報では晴れでも一部分の地域では
雨が降っていることはあるように
人も完全に晴れはないし心の中は曇っている
それだけ表の顔と裏の顔には
少々違いがある
そこがいいとこであったり悪いとこだったりする
貴方の心は、晴れだろう
だが、
私の心は、"ところにより雨"
#ところにより雨
【ところにより雨】
私は主の足元で、溜息を吐いた。
主は大変成績の悪い悪魔で、座学は良い点が取れるものの、奪魂学という実技の授業は最低どころか判定不可の烙印を押されてしまった。悪魔というのは、この世で罪を犯した魂を奪い、それをエネルギーにして生きるものだ。その魂を、期間中に一つも手に入れられなかった。
「うーん、ダメだ……」
シュルシュルと音がする。レコードと呼ばれる魂の記録は一本の帯状になっており、悪魔はその善行や悪行をピックアップして見つける能力があった。
「悪行の前に悲劇がある、この強盗犯は両親からの虐待があった……学校に行けていない。それに、助けを求めた先でも、正しく伝えられなかったばかりに追い返されている。……うう、なんて、酷い……」
独り言を言いながら、ぐしゅ、と鼻をすする音がする。パタパタと頭に落ちてくるものがあって、また溜息。
「本当の悪人なんてそういないよ、可哀想に、どうして天使達は彼がまだ救えるうちに手を差し伸べなかったんだろう」
袖で涙を拭いながら、レコードから手を離す。しゅるるる、と音を立てて、目の前に昏倒している強盗犯の中にレコードが戻った。とあるアパートメントの一室、殴られて気を失った住人と、悪魔に意識を麻痺させられた男。確かに強盗犯は人を殺めたり金を盗むところをやる前に止まったが、それをやったのは他でもない主だ。まだ行くなと止めたのに、住人を助ける形になってしまった。
「はぁ……警察に連絡して、次に行こう……」
また、ポタポタ頭に雫が落ちてくる。
「今日の天気予報は、曇だったんだが」
自慢の三角の耳も、鈎尻尾もへにゃへにゃとしてしまう。悪魔の涙は感情を伝染させる。困ったものだ。
「ところにより雨、だな」
その悲しみに、自分が昇級できないことへの不安もあるのに。彼は自分のために人間の魂を奪うことができないでいるのだ。
通常運行
私は極めて冷静だった。
体調は整っていたし、腹は減っていなかった。
しっかり眠れたし、これといって問題は全くない。
ただ、目の前に広がる光景だけは受け入れ難い。
赤。
部屋一面真っ赤の。
それは本当に美しく、残酷な通常運行。
【ところにより雨】
ある日のワタシの
心の天気予報
ところにより雨
失恋の予感
失恋と言えるほど
恋していた訳ではないし
最初から諦めていた微かな憧れ
祝福するその時には
快晴の天気と
心からの笑顔を送れますように。
わたしの心は雨
ざあざあ びちゃびちゃ
あなたの心は晴れ
さんさん ぽかぽか
ずうんと重いこの雲は 一人で持ち上げられない
あなたにもずうんと雲がかかれば 同じだね
あなたとわたしで
ざあざあ びちゃびちゃ
重たい雲が弾けたら
『ところにより雨』
私の友人には雪女がいる。
彼女はとっても綺麗だが表情が氷のように無表情だ。
おまけに纏う雰囲気も凍て付いて、周りを寄せ付けない。
近づけばマイナス100℃の空気によって手も脚も微動だにすることはできないのだ。
そんな彼女の前に今、実に疎ましい男がいる。
彼女にとって唯一の友人である私とともに都会に来た際、声をかけた茶髪ピアス。チャラチャラした見た目の彼はこちらには振り向くこともせず隣の雪女に声をかけた。
無論、雪女は気にすることもなく恐ろしいほどの無表情で相手を見据えていた。それでもなお挫けずアタックする茶髪ピアス。彼女は限界を迎えていた。
いい加減退いてください、そう自分が言いかけた瞬間、彼女の身体から鋭い冷気が噴する。それをまともに食らった彼は一瞬理解の及ばないことに瞳をぱちくりと瞬いた後、急ににかっと笑い出す。
「俺ちょうど暑いと思ってたんでありがたいっす!」
冷房の故障なんじゃなんだと宣う彼。
そしてその彼を無表情に、否若干頬を染め相手を見る雪女。
それに気づいた私…。
つい先程までの吹雪く雪が一変、雨漏りする。
凍てつく彼女の心をふにゃりと溶かした彼を素直に賛辞を胸の内で唱える。感動的な場面だ、そうなるはずだ。
ただしかし、これだけは言わせてほしい。
雪女、ちょっとちょろすぎやしないかな。
とけたこころはあまい雨となって二人に降り注いだ。
今日は私の出番あるかなぁ。
きっとお天道様次第なんだろうけれど。
でもお天道様が出ているときに降る雨もあるよなぁ。
題『ところにより雨』
#ところにより雨
私は一昨日卒業式だった。
入学式も卒業式も雨だった。
不運じゃなくて雨が降るといい事が起こる、と
考えることにしよう。
『今日は、関東地方はところにより雨でしょう』
テレビでお天気お姉さんが言っていた。最悪。今日バイトなのに。バイト先までは徒歩10分。そこまで傘を差して歩かなければならない。雨は寒いし濡れるし大嫌い。でも雨だからって理由じゃあバイトは休めない。それに親が送ってくれる訳でもないし。親からの私への当たりは他の姉妹にするより強く、「お姉ちゃんはこうじゃなかった」、「あんたお姉ちゃんでしょ」ずっとこんな事ばかり言われてストレスが溜まっている。バイト先まで送って欲しい。これを言うだけで文句が来る。
そんなことを思いながら家を出た。空を見ると暗く分厚い雲があって、今の自分みたいだと思った。そんなら雨は私のくらい気持ちを流してくれるシャワーかもしれない。傘をくらい気持ちに見立てると、だんだん気分が晴れていく。
今日は雨だ。雨は嫌いだった。でも気分の晴れるこんな雨は嫌いじゃない。むしろ好きかもしれない。
#ところにより雨
『…――次に××です。曇のち晴れ、ですが、
マークには無いんですけど、正午過ぎから夕方にかけて、ところにより雨となる時間帯がありそうです。折りたたみ傘をカバンに……』
その日の都内某区周辺は、上空の寒気の具合と、意地の悪い低気圧が結託して、
昨日に比べて気温はやや下がり、朝の天気もぐずついていて、聞こえる挨拶には「寒いね」がチラホラ混じっていた。
予報によれば、どこか特定の場所でひと雨、という。
どうせ私の/アタイの/俺の/ぼくの地域ではない。
思いたがるのは正常性バイアスの仕業と言えそうで、
しかし、小説や漫画にドラマ等々、物語の世界では得てして、「そこ」に降るのがお約束である。
見よ。この短文世界でも、お約束に降られた元物書き乙女がひとり。
「わぁ。来た……」
かつての薔薇物語作家にして、現在概念アクセサリー職人の彼女は、雨降らぬ間に買い出しをと、外に出て近所の店を転々と渡り、食料と日用品といくばくかの嗜好品――すなわち菓子と菓子と炭酸飲料と菓子でエコバッグをいっぱいにして、
さて帰宅、最後の某安値スーパーから出た矢先、
待ってましたと言わんばかりの「ところにより雨」に強く降られた。
雨雲レーダーの動向を見るに、当分この雨は居座るらしく、おまけにわずかに風もあって、元薔薇物語作家は、服の汚れとエコバッグの濡れを覚悟した。
これは濡れる。確実に濡れる。仕方がない。
激戦の中獲得した激安卵と、本日賞味期限半額肉を、このまま気温2桁の外気にさらし続けてなるものか。
仕方が、ない。この状況を見越しての、汚れてもへっちゃらコーデである。
「お肉のため、卵のため、ケーキのため……!」
服は汚れれば洗濯をすれば良いが、生鮮食品が温度や雑菌等で汚れてはどうにもならぬ。
乙女は覚悟を決め、卵のパックの位置を入念に直し、それが割れぬ程度の懸命さで、傘を広げ水たまりを踏み散らし、降雨の帰路を走った。
ぽつりぽつりと所々から雨が降っている。傘を忘れた俺は駄菓子屋で雨宿りをしている。
ふと駄菓子屋内部に目がいく、幼い頃に買っていた沢山の懐かしいお菓子がぎゅうぎゅうに並んでいる。
盗まれたドーナツの穴の様な失望感
ここだけ塗りつぶされたコンクリートを見るなんて
今日はなんてついてないの?!
天気を伝える画面に恨みを言ってやらないと
なんてやってられない日
でもね。彼女は言った
「貴方と1日ずっといられるなんて、ラッキーね。」
水に濡れた炎のように怒りなんてシュン
あ、雨に濡れた街を背景に君は美しい
#ところにより雨
ところにより雨
世界は
雨が降っているところと
雨が降っていないところがある
世界もしくは日本
もし全部が
同じ天気だったら
なんか嫌な気分
だから
世界もしくは日本が
同じ天気じゃなくて
よかった
ところにより雨
いつからだろう。
限りなく広がる曇り空も、靴を汚すだけだった水溜りも。なんとなく、好きになったのは。
空が陰る度に、君はいつも言っていた。
「わたし、雨女だから。」
君の顔が曇る度に、僕はいつも言っていた。
「そうかなぁ、お天気なんて操れないから。」
「君のせいじゃないよ。」
空がご機嫌になって、虹が出る頃に君はこう言う。
「うわぁ、眩しいなぁ。」
君の顔が晴れて、僕はいつもこう言う。
「ほら、虹が出てるよ。見てみて!」
「晴れて良かったね。」
朧げに見える二重の虹と、君の眩しがる後ろ姿を僕はカメラで切り撮っておく。
何枚も、何枚も。
君が雨女なんかじゃない、っていう証。
ねぇ、知ってる?
僕と君が一緒に居ると、空はいつもご機嫌になるんだ。
どんな雨だって、僕が曇りくらいにしてあげる。
だからさ。
僕の隣にずっと居てくれないかな?
そんな言葉を水溜りの空に浮かべていた。
君が長靴で飛び込んで、跳ねた雨粒と一緒に、僕の言葉が小さな虹を作った。
なんだ、君も雨が好きだったんだね。
ところにより雨。
そんな日は、君と一緒に居られる。特別な日。
ところより雨。心を連想させるような言葉だなあと思う。
町のはずれ 丘の上に建つ
君のぽつんと一軒家
空にはそこだけ雨雲が浮かび
屋根の上で猫がくつろぐように
黒くとぐろを巻いている
白い格子が絶え間なく
天から地をうがち
わたしはやかましいそれを傘で避けながら
坂道をのぼった
10分ほどかけて玄関ポーチに辿りつき
息を整えながら傘をたたんで
扉を強く叩く
備え付けのインターホンは壊れていて
その横に新たにつとりけられたものも
今はただの飾りと化している
しずかに扉が開かれ
家主がひょこりと顔をだす
電池買って来たよ と
片手にたずさえた袋をかかげれば
彼女は猫のように目を細めた
いつからか この雨屋敷の家主たる彼女の頭上には
雨雲がとりつくようになって
追いやられるようにここへ移り住んでからは
外にもあまり出ていないようだ
訪れる人も今はわたしくらいのもので
彼女の生活に必要なものを買い足しては
月に何度か届けていた
先週買って来たコーヒーを彼女がいれてくれる間に
インターホンの電池や
廊下の電球をとりかえる
今どき珍しい白熱電球
LEDの冷めた色の光が
彼女はどうにもお気に召さないらしかった
用事が全て済んで
話すこともつきてしまっても
帰るとも 帰れとも言わず
コーヒーの香りの漂う部屋で
ふたりでほうけるように 雨音を聞いた
もり塩のように 部屋の四隅に置かれた除湿剤
降りやまない雨は誰の意図だろう
また来るよ と 手をふって
開いた傘の向こうで 彼女も手をふる
丘から見下ろした町は
優しいやまぶき色に照らされている
やがてわたしもその色へ染まるのを
彼女は見ているだろうか
次は花をおみやげにしよう
日だまりの色を束にして
『ところにより雨』
4月1日
雨が降っている
卒業して退屈になってから
中学生だった頃の楽しい思い出を思い出す
今は中学生なのか高校生なのか分からないが
本当にこれで終わりなのかと焦る
入学式もあるしとにかく焦る
嘘だったらいいのに
「本日は......ところにより雨でしょう。」
テレビをつけるとニュースで天気予報がやっていた。
今日は雨が降るかもしれないんだ。
少し残念かもなんて思っちゃう
「あっ!」
彼に傘届けよ
彼は朝傘を持って行かなかったから
少し残念な気持ちも晴れたかも
君に会いに行けるなら雨でもなんだか嬉しいな
─────『ところにより雨』
誰もいない家で熱を出した
起き上がっているのも苦しくて
ずっと寝続けることもできなくて
ただ布団で横になるしかできない
目を閉じると雨のポツポツした音が聞こえる
目を開けても雨のポツポツした音は変わらない
そこだけ世界が切り取られたような薄暗く閉鎖的な空間
こんなに私は辛いのに
みんなは変わらない日常を過ごしていると思うと
外から聞こえるはずの雨は、この空間だけなのではないか
ほんとうはみんなが過ごしてる外は晴れてるのではないか
淋しさが一層増すので早く晴れた青空を感じたい
あの暖かさが恋しい
...ところにより雨