『ずっと隣で』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#ずっと隣で
あなたとずっといられれば
それでよかったの
それいがいなにもいらないの
あうたび あうたび
いなくなってしまいそうでこわくなる
ならもういっそ
みんないなくなって
それかわたしをころして
わたしはただいっしょにいたいだけなんだ
もうどれくらい経ったのかわからないくらい永い時間、ずっとあなたの隣にいる。
あなたの隣は私だけのものだって思っている。きっとあなたも私のことを特別に想ってくれているはず。
あなたに何があっても、私は表の顔だけ見せて、優しくあなたを照らすわ。たとえ姿を見せられない日があったとしても、見せられないだけで、ずっと傍にいるのよ。
だからこれからもずっと隣にいてね。私もずっとあなたの隣にいるわ。
ほら、顔を上げて。今日もここにいるから。ずっと隣で見守っている。
『ずっと隣で』
ずっと隣で…
憂いなくずっと隣で舞い踊る
ミニーマウスの命ください
「ずっと隣で」
あなたの一番近くにいるのは私だと思っていたのに。実際にそうであったはずなのに、今は違う。どうしてだろうと、なぜだろうと、私なりに考えて、考えて、考えて……。
きっとはじめから私たちは背中合わせだったのだと気がつきました。側にはいるけれど、そのまままっすぐ進んだら離れていってしまう。だからこれは、しかたのないことだったのだと。そう、気がつきました。
でも、もしもう一度やり直せるならその時は、——。
****
あいつの隣が欲しかった
でもこの気持ちに気づいた時にはもう…遅かった。
高校に入って知り合った寝癖の酷いあいつとは
仲良くなるのにそう時間は掛からなかった。
いつも一緒だった。あいつのことはよく知っていた。
出身中学、誕生日、好きなこと、苦手なこと、そして…
"好きな人"
あいつは私と同じクラスのあの子の隣を狙ってて
あいつはずっと「可愛いな、もっと話したいな」って
あいつは気づいてなかったんだろうな〜、
お前からされる恋愛相談がどれだけ辛かったか、
少なくともあの子より断然一緒にいる時間は長かった。
部活の時も一緒に居たしバイトの時も一緒だった
寝落ち通話もしたし、あいつの家にも行ったこともある、
狭いベッドで2人、寝た事だってあった、
休みの日に2人で遊びに行ったし
膝枕だって、ハグだって私としたのに…
告白して振られちゃえばいいのにとか、あの子に彼氏が
出来ちゃえばいいって、そんな事しか考えて無かった笑
高校生初めての文化祭。最後の軽音部の発表が終わって
花火が始まった。『何処にいる?』ってLINEをしたけれど
既読は付かなかった。…何してるんだろう。
花火が終わってしまう。一緒に見たかったのに…
「終わっちゃったなぁ…花火」
花火が終わって皆が帰り出した。
人混みの奥に、今まで姿が見えてなかった、
大好きな人が見えた。
嬉しくなって駆け寄って、
「花火凄かったね」って、「綺麗だったね」って、
それでも返事をしないあいつはずっと俯いたままで、
心配になって「転んだの?大丈夫?」って、
そしたら急に抱きつかれた。心臓が高鳴った。
何があったのかは知らないが思いを寄せてる人に
急に抱きつかれて驚かない訳が無い。
パニック状態で「何!?どうしたの!?」って聞いたら
急に泣き出すの、びっくりして何事か聞いたら
「"あの子に振られた"」って。
正直嬉しかった。本当に嬉しかった。
遂に"オトモダチ"から解放されるって
好きな人が居なくなれば、1番近いのは私だ。勝ち確だ。
「大丈夫だよ」って、「またいい人見つかるよ」って、
いっぱいいっぱい慰めて、いい女演じて、
あいつに寄り添って、悪いとは分かってても内心喜んでて、
ずっと側にいて、慰めて、落ち着かせて、話聞いて…
なのにね?あいつなんて言ったと思う?
「これからもっと仲良くなって絶対振り向かせる」だって
…なんで?
前は1回振られたら諦めてたじゃん、
なんで諦めないの?そんなにいい子じゃないじゃん
あんなに悪口しか言ってない女がそんなにいいの?
顔だけ良くて、どうせこの後告られたって言いふらすような女がまだ好きなの、?本気でその女のことが憎くなった、
殺したいぐらいに。
羨ましかった
あいつにそんな愛されてて
本当に羨ましかった。
私はあの子程愛されない
ただの"オトモダチ"でしかない
私を見てよ。愛してくれないあの子より、
私の方がいいでしょ?私ならいっぱい愛すよ、?
あいつに勇気を振り絞って聞いてみた。
「私の事どう思ってんの?」って
そしたらね、「お前は1番の"友達"だな!」って
凄く綺麗な、眩しい笑顔で。
あいつのことをどれだけ見ていても、想っていても、
どれだけ理解している気になっても私はあの子に敵わない。
あいつがここまでしぶといと思わなかったなぁ…
あいつからしたら私は
そこら辺の子より仲のいい"オトモダチ"ってだけなのか、
友達以上恋人未満ってやつ?笑
ずっとあいつの隣にいたかった、諦めると思ったから
あの時は、本当に、本っ当に、人生で、
1番心躍る一瞬だった。
あれから8ヶ月、まだあいつは諦めてないよ。
もう2年生になっちゃうよ。もうそろそろ諦めてよ。
早く私に気づいて?
きっと私は明日もあいつの1番の"オトモダチ"
いっその事、殺して閉じ込めてしまおうか。
****
ずっと隣で
朝の散歩。冬が終わって再開。でもまだ空気がひんやり冷たい。目が覚める。
コースは決まっていない。朝日に向かったり背を向けたり。決まっているのは時間だけ。
公民館前に田んぼで挟まれた広い道路がある。交通量の少ないこの時間は、人気の散歩コースだ。僕も3日に1回はここを歩いていた。
そこを歩くといつも、ある老夫婦とすれ違う。おはようございます、と必ずふたりで声をかけてくる。僕も返す。ただそれだけ。
ある朝、またその老夫婦を見つけた。が、いつもと様子が違う。いつもはふたり並んで歩いていたのに、その日は旦那さんのほうが前を歩き、奥さんは距離を取って後を歩いていた。
喧嘩かな。だとしたらすれ違うのちょっと気まずいな。などと考えながら歩いた。
おはようございます、旦那さんが言った。いつもより小さな声だった。僕のおはようございます、も、つられて小声になった。
続いて奥さんとすれ違った。
ちょっと喧嘩中なの。奥さんは苦笑いで言った。
なんと言っていいかわからず、僕も苦笑いを返しただけだった。
わざわざ説明しなくてもいいのに。親近感を持っててくれたのかな。
それから冬が到来して僕は散歩をサボっていたが、あのふたりは続けていたのだろうか。次に見かけたときは、また並んで歩いているといいな。
お前と正面から
向かい合うのは
怖ろしいから
ずっと隣で
おれのことは見ないでくれ
ずっと隣で
穏やかにそれが実現するような
ふわふわした世界がいい
もっと知りたい
私が人間になれる方法を
私が定型になれる方法を
まともな受け答えができる方法を
たくさん本を買って読みふける
まだ人間にはなれないけど、いつか人間に
ずっと隣で
ずっと隣にいられたらゆっくりできない
少し離れた、見えないところで
ゆっくりしたい
隣には誰も必要としていない
一人で、切実に一人でいたい
ずっと隣で
いつも前を向いていたい
変わり行く世の中に
流されることもあるけれど
自分の道を見つけて進めるように
複雑すぎる世の中に
迷ってしまうこともあるけれど
諦めずに進めるように
ずつと隣で見守っていてほしい
振り向かなくても
そこにあなたがいると わかるから
悪魔と魂について(テーマ ずっと隣で)
※まとまりが今ひとつの中途半端なファンタジー小説です。
1
僕が中学生の時に亡くなった祖父には、若くてきれいな介護士がついていた。
名を佐久間さんといい、長い黒髪、スラリとして背が高く、女性らしいメリハリのある体。顔は優しそうでお淑やかそうな風貌。
昔の僕が彼女に密かに憧れていたことも無理からぬことだと、今も思う。
しかし彼女は、風貌に反してキビキビ働いた。
黒髪は根本で縛り、地味なエプロン姿が多かった。
佐久間さんは、祖父につきっきりで食事の世話はもちろん、掃除も服の洗濯などもして、もうスーパー家政婦といった塩梅だった。
それは甲斐甲斐しく祖父の世話を焼いていた。
両親は「募集してみるものだ。いい人が来てくれた。」と喜んでいた。
佐久間さんが来るまで、うちはどうしたらいいか、難しい状態になりつつあったのだ。
両親は共働きで、祖母はすでに他界。
昼間の家は、認知の入った祖父しかいなかった。
祖父は杖をつけばかろうじて外を散歩することができるくらいの状態だったので、徘徊して行方不明になることもあり、その時は消防や警察が出て捜索された。
両親は家を施錠してから会社に行くようになった。
僕は鍵っ子で、家に帰ると鍵を開け、祖父にお昼は食べたか聞いたり、夕飯の用意をしたりしていた。
祖父は家に閉じ込められることで鬱々としていた時期もあった。
佐久間さんが来てからは、家の鍵は開いていたので、僕も鍵っ子から卒業した。
そして、僕が祖父の世話をする必要はなくなり、祖父の散歩も佐久間さんが付き添うようになった。
それどころか、僕ら家族全員の洗濯・食事の面倒まで見てくれた。
両親が二人とも帰ってきたら、佐久間さんは両親に今日の報告をして帰宅する。
そして、翌日、朝にまた来る。
決して出しゃばらず、気配りを欠かさず、掃除洗濯、料理もやってくれる。
土日は休みだが、両親がどうしても外せない仕事があるときなどは休み返上で来てくれたりもした。
一体彼女のプライベートはどうなっているのか。
あまりの仕事ぶり、熱心さに親父など『もしかして昔、親父の愛人とか、隠し子だったのでは』とか冗談半分に言い出す始末だった。
当時は『変なことを言い出す親だ』と思っていたこのセリフは、真実の一欠片を持っていたと、後で気がついた。
2
佐久間さんが来て半年ほど。
僕も家族もすっかり佐久間さんに馴染んでいたが、祖父の認知は徐々に進んでいた。
食事したことを忘れる。
ひどい時は両親の顔すら忘れる。
不思議なことに、僕の顔はだいたいいつも覚えていたが、佐久間さんにも「あんたは誰だ」と何度も言っていた。
そして、自分の思ったように話が進まないと怒鳴るようになった。
2日に1回は怒鳴り声が上がるようになり、僕は佐久間さんが嫌になって辞めてしまうと思っていたが、佐久間さんは辞めなかった。
怒鳴る祖父にも柔らかな態度を崩さず、愛想よく対応していた。
この頃の両親はひたすら佐久間さんには恐縮していた。
しかし、祖父が元気なのもこのあたりまでであった。
祖父は転倒して骨折し、寝たきりになってしまったのだ。佐久間さんが食事を準備するために離れていた時の出来事だった。
まともに歩けず、ベッドと車椅子の日々。
佐久間さんは文字通り、祖父の身の回りの世話をすべてするようになった。
今考えていたことを忘れたり、立ち上がることも相当難しくなっているのに、気に入らないとすぐ怒鳴る。そんな祖父にどう接していいかわからず、僕はこの頃から、祖父の部屋を避けるようになった。
しかし、今はもう少し祖父の話を聞けばよかったと後悔することも多い。
僕は、祖父のことをあまりにも知らなかった。
そして、避けることができたのも、佐久間さんが祖父の面倒を見てくれたからにほかならない。
3
ある時、佐久間さんが僕のところに来た。
「ハルさんが君を呼んでいる。悪いけど、ちょっと来てくれないか?」
ハルさんとは、祖父のことだ。祖父は貞治(サダハル)と言う名前で、佐久間さんはしばしばハルさんと呼んでいた。
そして、佐久間さんは両親に話す時は女性らしい大人の話し方をするのに、僕に対してはなんだか男の人のような話し方をする人だった。
ただ、僕はそういう佐久間さんの態度は嫌いではなかった。
久しぶりに祖父の部屋に入ると、寝たきりの人特有の、食事も排泄もこの部屋でしていることによる、色々と混在した匂いがした。
とはいえ、佐久間さんが空気の入れ替え等を適宜しているので、そこまで気になるほどでもない。
「護(まもる)か。」
祖父は、今日は調子が良さそうだった。
護とは僕のことだ。
「うん。じいちゃん。今日は元気そうだね。」
祖父はこちらを見た。目に力がある。
「まあ、な。いつもこうならいいんだが。」
「頭がはっきりしているうちにな、伝えておきたいことがあってな。色々言わなければならないことがあった気もするが、ほとんど忘れてしまった。」
途中で咳をしながら、祖父は続けた。あまり長く話をすることに体が、喉が慣れていないのだと思った。
「だから、浮かんできたことだけ話す。」
佐久間さんが黙ってお茶を入れた。
祖父はそれを飲みつつ続ける。
「あー、そうだ。……素直でいることだ。何かを偽ると一段落ちる。これは元々は婆さんから教えてもらった言葉だがな。誰にでも素直でいろとまではいわない。大事な人達と、自分自身には素直でいろ。ワシなりの解釈だが、偽ることも、見栄を張ることもエネルギーがいる。そして、それを読み取ることにもエネルギーがいる。回りの人間にも自分にもエネルギーの消費を強いることは、結果的に、できることを狭めてしまう。」
「・・・うん。」
祖父の言っていることは、僕にとってわかるような、わからないようなことだった。理解したような気になるが、誤解しているかもしれないとも思う。
ただ、これだけはわかった。いつもの認知が進んできた祖父とは全く違う。
「昔、調子がいい時は、こういうことばかり話していたんだがな。」
祖父はまたお茶に口をつける。喉を湿らせているのだろう。
「あとは、そうだな。護はワシの血を引いていて、頭が切れそうだ。しかし、まだ若い。納得できないと動きたくない、正しいことしかしたくない、ということもあるだろう。そういうときに、少しだけ我慢して体験してみることだ。体験は言葉では表現できない経験を得られる。相手のつたない言葉で納得できなくても、手を動かすことでわかるようになることも多い。若い時は特に経験を積むことを厭うな。・・・いかんな、これでは説教だ。」
祖父は窓の外を見た。
「親は大事にしろ。特に、お前の親はお前を愛してくれている。この世に二人しかいない親だ。」
最後にまた、僕の方を見た。
「そして、心の底からやりたいと思ったことは、やれ。心の底からやりたいことを我慢してやらなかったら、年を取ってからその「我慢」に逆襲される。なぜあのときやらなかったのか、とな。」
祖父は、その後はだんだん調子が悪くなってきたのか、とりとめもないことを話し始めた。
そして、癇癪を起こし始め、佐久間さんになだめられていた。
その日の話は終わりだった。
4
祖父との話は終わったが、その後、佐久間さんは、おかしな話をした。
祖父が眠った後、居間で佐久間さんが紅茶を入れてくれたのだ。
「なんだか、今日のじいちゃんは、様子が違う感じがしたんだけど。」
「ハルさんは昔、知恵者でね。今日の様子はその時期の感じだったね。」
佐久間さんはたまに、僕とは率直な話をしてくれるときがあった。
「知恵者?」
「まあ、頭のいい人。知識がたくさんあり、物事を解決する手段を示す人、とかかな?」
この際、聞きたかったことを聞いてみる。
「・・・。佐久間さんは、昔、じいちゃんと知り合いだったんですか。」
「昔ね。」
ポットを眺めながら佐久間さんが言った。
「昔って、こどもの頃とか?」
さらに突っ込んで聞こうとした僕だったが、佐久間さんの空気と声色が変った気がした。
紅茶を優雅に飲みながら、カップから一滴わざと紅茶をテーブルに溢し(その行為に意味はわからない)、こちらに流し目をした。
「私はね。実は人間じゃなくてね。悪魔なんだ。」
なんともいえない空気が流れた。
「そういう冗談はいいので。」
「まあ聞いてくれ。ハルさんはね。悪魔の私と知恵比べをしたのさ。昔話でよくあるだろ?妖怪や悪魔との取引・騙し合い。アレみたいなものだ。物語になっている分は、人間が書いた物語だ。当然人間が勝つが、実際は何百倍も悪魔が勝っている。希少な勝ちだから、物語になっているわけだ。」
話半分(いや、半分でも信じ過ぎだと思うが)で聞きながら、紅茶を飲む。
佐久間話しながらおかわりを注いでくれた。
水仕事もずさんはっとしているはずなのに、手もキレイだ。
「様々なやり取りをしたよ。ハルさんは賢く、私はほとんど勝てなかった。そこでね。知恵ではなく絆を試すことにした。トメさんが死ぬときにね、トメさんと賭けをしたんだ。あんたの夫の心を奪えるかどうか。奪えれば、魂をもらうと。」
トメさんとは、祖母の名だ。
祖母は僕が小学生低学年の時に亡くなった。
祖父が田舎から出てきて僕らと同居する前のことで、その頃は田舎に祖母と二人で住み、僕は両親に連れられて盆正月に田舎に行っていた時に会うだけだった。
死に目にも会っていない。
悪魔かどうかはさておき、その頃に、佐久間さんは祖父・祖母の両方と面識が会ったということだ。
「それで、ボケてきた今を狙って、ハルさんの心を私のものにしようとしているわけだ。いつも隣にいることでね。」
「いや、じいちゃん、ボケてますよ。それでいいんですか。」
「悪魔の価値観は、人間とは違う。悪魔にとって、人間は死んで終わりでもないしね。」
話は、それで終わりだった。
祖父の話は難しく、佐久間さんの話はトンデモで、からかわれたとしか思えなかった。
5
祖父は、それから半年ほどで亡くなった。
あれから祖父とまともに話をする機会はなく、そもそも祖父はまともに話をすることもできなくなった。
祖父は意思を示すことが稀になり、僕たちも祖父の意思を汲み取ることができなくなった。
佐久間さんだけが、ずっと隣で、相変わらず祖父の側で世話を続けていた。
しかし、それが祖父の容態を良くすることはなかった。
祖父はある朝、冷たくなっていた。
父も母も、通夜、葬式を通して、静かに祖父と別れをしていた。
佐久間さんも、両親からの願いもあり、家族として葬儀から火葬まで付き添った。
佐久間さんは、言葉少なく、悲しそうだった。
通夜・葬儀というのは中々の重労働だ。
特に参列者が多い葬儀の場合は香典や挨拶もある。
ただ悲しみに暮れるよりも、やることがある方がいいということなのだろう、とは、歳を取ってから思うようになったことだ。
そうして、火葬後、一週間ほど祖父の部屋の遺品整理などに一区切り着いた段階で、墓地に骨壺を納め、それで終わりだった。
佐久間さんも契約が終わり、何度もお礼を言う両親に対しても「お世話になりました」と頭を下げて去っていった。
(どう考えても、お世話になったのはこっち・・・。)
佐久間さんの悪魔がどうとかいう与太話は、すっかり頭から抜け落ちていた。
6
小さな子どもをからかっただけか、本当に悪魔だったのか、今となってはわからない。
あれから5年が経ち、僕は大学生になっていた。
学生生活は楽しい。レポートは多いし、我慢することも、不安も多いけど、何をしてもいい時間も多いからだ。
しかし、あの時祖父に言われた言葉は、僕の側にずっといた。
我慢した分だけ何かが溜まっていった気がした。
見えを張って偽った分だけ、上っ面の付き合いの知り合いは増えたが、僕という人間を理解してくれる深い友達は減った気がした。
判断をするとき、迷う時、祖父の言葉は一緒にいた。
そして、その言葉の意味も身にしみた。ただし、多くの場合は、やらかしたあとで、後悔とともに思い出した。
(まるで呪いだ。)
ある日、サークルの飲み会。二十歳になった僕は、飲み会に参加して、悪酔いした。
その飲み会の帰り道、酔っ払った僕は、佐久間さんに再開したのだ。
7
サークルの皆と別れ、ビルの間の道を千鳥足で歩いていると、懐かしい佐久間さんがいたのだ。
5年ぶりに見る彼女は、全く変わらないように見えた。
僕はあれから背が伸びたので、視点は逆転している。
「久しぶりだね。私のことを覚えている?」
その声を聞いて、それだけで酔いが覚めた気がした。
「佐久間さんだよね。お久しぶりです。」
「すっかり大人になったね。背が伸びた。」
いや、やはり酔いは回ったままだ。いつもより余計な口が回る。
「そりゃ、あれから5年も経ったので。佐久間さんは変わりないようで。さすがは悪魔、でしたっけ。」
「良く覚えているね。忘れているかと思った。」
「少し気になることもあったので。」
「気になること?」
「じいちゃんの魂は、結局佐久間さんが持ってっちゃったのか、どうか。」
佐久間さんは、少しふくれっ面をした。
「ハルさんは死ぬまでトメさん一筋で、トメさんもあいつをずっと思っていたよ。」
(そうか。じいちゃんは、魂を取られなかったか。)
満足そうな笑みを浮かべた僕を、佐久間さんは舌打ちした。
「まあいいよ。ハルさんと、もう一つ賭けをしていたのを思い出して、きみに会いに来たんだ。」
「?」
「孫の心を奪えるかどうか。」
「・・・?それは、どういうこと?」
「ハルさんは死ぬまで一途だったが、きみはどうかな?」
「・・・いやいや。前提が違いますよ。僕、彼女いないですし。」
僕は、自分で言うのも何だが、独り身だった。
(奪うって言っても、だれから?)
「賭けは成り立たないでしょ。僕と佐久間さんがくっついたら、誰が負けるんです?」
「いや、成り立つ。きみの心を奪えたら、きみが死んだ時、私はきみの魂をもらう。」
「なんだか分かるような、分からないような。そもそも、魂って、なんですか。」
「それをわかっていないから、賭けが成り立つところがある。その商品が100円か10000円か分かっていれば、1000円で買うかどうか、迷う人はいないでしょ。」
(そもそもなぜ、じいちゃんは僕を賭けの俎上に載せたのか。)
「まあ、まずは寂しそうなきみの身の回りの世話をするくらいだ。」
佐久間さんは、こうして僕の側にいることになった。
この展開が祖父の深慮遠謀によるものかどうかは、良くわからない。
なお、佐久間さんが部屋に入り浸るようになってから大学の寮からは早々に出ていくことになり、バイトしながらワンルームを借り、様々な騒動にも首をつっこむことになるが、それは別の話だ。
「ずっと隣で」
昨日の夜から夜中の3時まで
まさに好きな人の隣に居たい気持ちと
好きな人の闇に触れて闇が深くてフラれて
隣にいる事を迷った
そんな事があった後の「ずっと隣で」はとても深く私に刺さる
努力しました、なんて言えない努力で
フラれた現実が辛くて逃げ出したくなった。
好きな人と付き合ってずっと一緒に居たいって思ってたはずなのに
一瞬の悲しみに私は支配され全て手放したくなった。
「ずっと隣で」
それは、きっとこんな悲しみも苦しみも乗り越えて得られる場所
今、私は好きな人の隣へ立ててはないけど
「ずっと隣で」笑ってたいよ
貴方の傷に手を当てて…手当てさせてね
(タイムリーな気分で書きました。ココロの傷を見せて泣きながらごめんねって言われて、逃げ出したくなりました。
感情は今起きた事に強烈に反応しますね。
時間が経って気付きました、見せてもらった傷の手当てすらせず、努力を終えようとした事に…好きって幸せだけじゃないですね、幸せになるって辛い時もありますね)
ずっと隣で見ていた
教室で
午後の光が君の横顔にあたり
産毛が黄金に光っていた
柔らかい白い頬の上で
すごく繊細なのに
はっきりと見えたんだよ
ずっと隣で
そんなホワホワした人生じゃなかった
むしろ逆
毒親に育てられ 大人になればそうなるさ
人を信用できなかったし
人を思いやる事も不器用だった
独りがラク
二人は仲のいい姉妹だった。
いつも寄り添って、一緒に遊んで、時にふざけ合う。そんな関係だった。
ずっと隣を歩くのだろう。昔はそんな風に思っていた気がする。
だけどいつからだろう。
妹は姉との付き合いに違和感を感じるようになって、少しずつ二人には距離が生まれ始めた。
妹は現実で自分の道を歩み始め、姉もまた幻想に浸りながらも現実を生き始めた。
気が付けば、二人とも大人になった。
いつの間にか二人は付かず離れずで、それなりの関係になっていた。
姉は今でも私のことを大切にしているけれど、妹の方はどう思っているだろう。
今となっては遠い昔、私と共にいたことを恥じているだろうか。
空想の中から生まれ、姉妹で紡いでいた物語の主人公だった私のことを。
お題「ずっと隣で」
ずっと隣で
ずっと隣で寄り添っていたい。
隣で一緒に笑い合い、時には泣いて、
色んな日々を、一緒に乗り越えていきたい。
何があっても傍にいる。
そんな事を言ってくれる人に出会えたらいいな。
ずっと隣で
似た者同士
いつも一緒
手を繋ぎ
ほつれまでそっくり
お風呂上がりの洗濯バサミ
隣で揺れる
でも
少しずつ露わになる違い
僕は足裏
君はつま先
気付かないうちに
二足の歩みは微妙にズレて
今日も並んで洗濯バサミ
ずっと隣で揺れた僕には
直視できないほど懐かしい
あの頃の君によく似た君がいる
高校生までは相手の最初が欲しくてたまらなかった
なんでもかんでも初めてが欲しくて
これは元カノとやった?って毎回聞いてた
今ではその価値観が少し変わって
最初を要らないとは言えないけど
その時の特別で、1番が私であれば
それ以上は求めないようになった
大好きな人とずっと一緒にいれればそれが幸せ
その時付き合ってる人が1番なのに変わりはない
ずっと隣でいられたらもうそれで充分
比べてしまうことは多々あるし
自分が1番!!なんて自信が常にある訳でもない
結局はずっと隣にいたいって思える人と付き合いたい
ずっと隣で笑っていたかったけど、叶いそうにない。
私はわたしの道を生き、あなたはあなたの道を生きればいい。
隣に私がいなくなっても。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もう一緒にいるの疲れた。
言葉がでてこない。
今、わたしの本当の気持ちをぶつけたら、
彼は「わかった」と言うのだろうか。
このまま、ずっと隣にいるよりも、
彼より少し先を歩くほうがよっぽどいいのではないかと思えてくる。
勇気がほしい、力がほしい、
私がわたしでいられる様に、
彼がいなくても、大丈夫な私を手に入れたい。
君だけは幸せになってほしかった。それはこちらの台詞だと言い返す機会はついぞ訪れず、わたしの伸ばした手を握ることも、背中に刺し続けた視線に触れることもなくあなたはなにもかもが届かないところへ消えていった。わたしの幸福を望むくせにわたしの話をひとつも聞かないのはどういうつもりだ。終わりの時まであなたがそばにいてくれたのなら、どんなによかったことか。
// ずっと隣で