『これからも、ずっと』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ずっと。
この先も。
何年後の先も。
いつまでも、ずっとずっと…
これからもずうっと続くと、そう思っていた。
麗かな春の風
生暖かい彼女の手
カーテンが柔らかく日差しを遮り、
おいでおいでと誘うように揺れている
こんな事になるはずじゃなかった
もう春が過ぎ去ってしまう。
そう、そうだ…こうなるべきではなかったのだ
「Second end : これからもずっと。」
胸糞悪いお下品系↓
手首に付いた枷がじゃらりと鳴る。
華奢なチェーンだが、余計な力を込めると電流が流れる仕組みだ。
高級ホテルの一室に閉じ込められて一ヶ月が経った。
たまに来る世話係は、知性は感じられるがまるで言葉が通じない。助けを乞うような目線を送っても、その青年給仕はドリンクボトルと果実を届けただけで、礼をして去っていった。
「これ、外して」
少女は怯えを噛み殺して、せめてと両手の自由を願った。
だが少女を閉じ込めた男は、入れ墨のある頬をピクリとさせるだけ。
「口の利き方がなってない。外して下さい、だ」
「は、外して…下さい」
その途端、男があはははは!!と突然豪快に笑うから、少女は驚いて体に力が入ってしまった。軽い電流が走る。
「だぁーーーめ」
耳元に大きな手が沈み込む。にやりと笑って、あろうことがもう片方の手の平は、少女の腹を撫で始める。薄い服しか許されていない。直接感じる手の平は熱い。
「わかってないな。お前はずっとここで僕と暮らすんだよ」
「暮らすって言わないでしょこれ…ひっ」
悲鳴を堪えきれなかった。
布を掻い潜って男の手が下着に触れる。柔らかい身体の部分をそっと撫でた。
いい表情だ。と男がまた笑う。
頬を撫で、顎を通り過ぎ、そして首筋をそっと掴む。今すぐにでも絞め殺せるとでも言うように。
下の方の指が、両膝を硬く閉じても有無を言わさず進入してくる。
「や、だ…」
「僕の子を産んでくれよ。君に似た小さくて元気な子がいいな」
恐怖で奥歯が鳴る。これは現実なんだ。
洗いたてのリネンの奥で、蠢く男の欲は何を言っても通じない。酷く無力感に襲われた時、両膝が力任せに破られた。
男の重みでベッドが軋む。忙しく素肌を撫で回して、熱い獣のような吐息を聞いた。ゴツゴツとした指で布はまた破かれて、奥へ奥へと追い詰めてくる。
「調べた所、生娘じゃぁないようだね。なら楽だ。ね。欲しいよね」
さぁ言いなと、首筋の動脈に当てた指に力が籠もったような気がした。
「これからもずっと」
後日。燈里《あかり》は冬玄《かずとら》と東と共に、繩手《なわて》の家へと向かっていた。
「あの人間、許せないわ。あんな卑怯な手で燈里を無理矢理巻き込んだのですもの!」
「煩い。少しは静かにしろ」
燈里の腕に抱き着き怒りを露にする東を、冬玄は一瞥し窘める。しかしその目は鋭く凍てついて、纏う空気すら張りつめていた。
「どうしてそんなに落ち着いていられるのかしら!北は燈里のことが心配ではないの?」
「だからといって、燈里にしがみついて耳元で喚くな。燈里の迷惑だろうが」
「私は、別に迷惑だなんて思ってないから……でも、できればもっと穏便に……」
腕に抱き着く東に大丈夫だと微笑みかけてはいるものの、燈里の表情はどこか固い。それはこれから繩手に会いに行くことも原因の一つではあるが、どちらかと言えば、冬玄と東の会話の内容に対しての方が大きいからだった。
「それよりも分かっているだろうな」
「もちろんよ!あの人間がまた混じって燈里に危害を加える時には、人間ごと封じればいいのでしょう?ちゃんと南に札は貰っているわ」
「ちゃんとすぐに取り出せるようにしておけ。時間との勝負だ。相手が燈里に干渉する前に終わらせるぞ」
真剣な二人に、燈里は何度目かの溜息を吐いた。できるだけ繩手に危害を加えたくはない燈里ではあるが、どちらも聞き入れる様子はない。
人と妖の感覚の違いなのだろうか。救いたい燈里と違い、二人は自己責任として切り捨てることを厭わない。
「燈里。そんなに不安がらなくても、失敗なんてしないわ。速さには自信があるもの」
「いえ、そういうことではなくてですね……」
「燈里」
できることならば封じないでほしい。そう言いかけた燈里を、冬玄の静かな声が止める。
窘めるような響きに眉を寄せ、燈里は視線だけを冬玄に向けた。
「そもそもあの人間が祀り方を誤ったから、憑き物が暴れているんだ。それに巻き込まれただけの俺たちが、心を砕く必要はない」
「そうよ!富を得ようと迎え入れたのに、正しく祀らなかったのだから自業自得だわ。無理矢理封じたせいで混じってしまった後始末をしてあげるのを感謝してほしいくらいよ」
怒りが収まらない二人からそっと視線を逸らし、肩を落とす。
憑き物筋がどういうものか。その末路を燈里も知らないわけではない。しかし繩手の場合は、自ら望んで受け入れたようには思えなかった。
「会って早々、手荒な真似はしないって約束してね」
これまた何度目かになる忠告を二人にしながら、教えられた繩手の家へと足を速めた。
「いらっしゃい。まさか本当に来てくれるとは思わなかった」
出迎えた繩手は変わらず青白い顔をしながらも、その表情はどこか安堵が滲んでいる。
「あんたが無理矢理約束をしたんだろうが」
「あ……そう、だね……俺が……」
不機嫌な冬玄の言葉に、繩手の表情は途端に暗くなる。
無理もない。繩手は燈里に巻き込まれてほしいと言ったことを覚えてはいなかったからだ。
助けを得られるのはありがたい。だがその理由が自身の脅すような言動にあること、そしてそれが両腕の痣の原因であろう憑き物の仕業であることは、繩手にとって恐怖でしかなかった。
「こっち。両親の部屋はそのままにしてあるんだ」
繩手の案内で部屋の奥へと向かいながら、燈里は冬玄と東の様子を伺う。纏う空気は鋭いものの、問答無用で手を出す気配がないらしい。そのことに少しだけ安堵して、燈里は繩手に話しかけた。
「あれから、何か思い出せたことはある?」
「いや、なにも……」
答える声は沈んでいる。
「麗《うらら》って名前にも、やっぱり心当たりはないよ」
それは応接室での話し合いの際、繩手が口にした名だった。
あの時、繩手は燈里と麗の目が合ったと言っていた。ならば、それは繩手の中にいる憑き物の名である可能性が高かった。
「ごめん。巻き込んで」
「気にしないで。とにかく今は手がかりを見つけないと」
大丈夫だという燈里の微笑みに、繩手もほんの少し表情を緩めた。
そして、ある部屋の前で立ち止まり、ゆっくりと扉を開ける。
「ここが両親の部屋。何か見つかればいいんだけれど」
「見つかればじゃなくて、見つけないといけない……それじゃ、手分けして探そうか」
その部屋はカーテンを閉め切っているせいか、暗く湿った匂いがした。
カーテンを開け日差しを取り入れてもなお暗さが残っているようで、振り切るように燈里は頭を振り部屋の中から手がかりになりそうなものを探し始めた。
「宮代《みやしろ》さん。これ……」
暫くして繩手が燈里に見せたのは、何冊もの分厚い日記帳だった。
日記の一つを手に取りぱらぱらと捲る。どうやら繩手の成長記録のようで、彼の幼い頃の様子が事細かく書かれていた。
思わず笑みを浮かべながら燈里は文字を追うが、ある日付に書かれていた内容にその表情は一気に険しさを増す。それに気づいた冬玄が日記を覗き込み、同じように眉を顰めた。
「宮代さん?」
「北?何か見つけたのかしら?」
近づく東と繩手に、冬玄は無言で日記のページを見せた。その内容に表情を険しくする東とは対照的に、繩手はただ困惑する。
――やっぱり父の家に行くべきではなかった。式貴《しき》にもしものことがあったら、私は絶対に父を許さない。どんな手を使ったとしても必ず、報いてやる。
憎しみに近い、怒りを綴った言葉。日付を見ると、どうやら繩手の六歳の頃の出来事のようだ。
その日にはそれ以上のことは書かれてはいない。しかし後の日記には、しばらく高熱が続いている様子が書かれている。
「そんなことがあったんだ……ごめん、記憶にない」
申し訳なさげに首を振る繩手を、冬玄は鼻で笑う。それを燈里が窘めようとするのを手で制し背に庇いながら、冬玄は繩手の眼を見据え告げた。
「黄昏時だ。巻き込んだのだから、ある程度の情報を寄越せ」
「冬玄?何言って……」
言いかけて、ふと差し込む光に朱が混じり始めていることに気づき、燈里は口を噤んだ。
黄昏時。逢魔が時とも呼ばれる夕暮れは、人と魔が混じり合う時間帯だとされている。
繩手は答えない。応接室で見たような歪な笑みを浮かべ、冬玄の目を見返している。
沈黙。息苦しさすら感じる重く張りつめた空気から逃げ出すように、燈里はそっと窓の外に視線を向けた。
朱に染まる空。沈んでいく、燃えるような夕日はまるで目のようだ。
「燈里、駄目よ」
瞬きも忘れるほど魅入っていれば、不意に視線を覆われた。
「心を傾けてはいけないわ。惹かれてしまわないように、今は北のことだけ見ていなさい」
静かだが、有無を言わせぬほどの強さを湛えた言葉。小さく肩を揺らし、少しして燈里は深く息を吐き出し脱力する。
凭れかかる燈里の体を抱き留め、東は視界を覆う手を外しながら顔を顰めて動きのない冬玄の背を見つめた。
「北」
「そうだな。これ以上無駄に時間をかけるつもりもない。だんまりを続けるならば、こちらも少しばかり手荒にいかせてもらうぞ」
険を帯びた低い声に、繩手の笑みが深まった。
静かに腕が持ち上がる。冬玄の手にしている日記を指さし、掠れた声が答えた。
「その日記に書かれていることが、あなたたちの知りたい情報の全てだ。持ち帰ってくれて構わない」
それ以上は何も語らず、冬玄は小さく舌打ちをして日記帳を纏めて持ち、立ち上がる。
帰れと言外に告げられたのは、夜が来るからなのだろう。意図を汲んで東も立ち上がり、燈里を伴い部屋を出る。冬玄もそれに続くが部屋を出る寸前繩手を振り返り、無感情に問いかけた。
「あんたは何だ?燈里に何をさせようとしている?」
色を暗くする朱に染められた部屋に落とされた影が揺れ動く。
繩手は動いてはいない。表情の読めない繩手とは違い、影は冬玄の問いに小さく首を傾げたように見えた。
「繩手式貴。ただ違うのは、昼間固く閉じている記憶の蓋がほんの僅かに開いていること……宮代さんには、これ以上蓋を開かせない方法を一緒に探してほしい」
「――俺は、嘘は嫌いだ」
その言葉に、繩手は小さく笑った。
貼り付けたものではない、困ったような笑みだった。
「本当でもないけど、嘘でもない。昼間の何も知らない俺は、思い出すことを恐れている。箱に閉じてくれた両親の献身を、意味のないものにはしたくないから……けれど今の俺は、開いた隙間から出ていってしまった麗の一部を取り戻したいと思っている」
冬玄の表情が歪む。
警戒ではなく、心底面倒だと言わんばかりの顔をして、何も言わず部屋を出て行った。
「ごめんなさい。あなたまで巻き込んでしまう」
泣きながら謝罪を繰り返す女の背を、夫らしき男が撫でている。
「式貴《しき》を守るためだ。むしろこの子のために役に立てるのなら、これほど嬉しいことはないよ」
二人の前には、昏々と眠り続ける青年の姿。
まだ十代半ばくらいの、まだ大人の庇護を必要とする青年は、二人の献身を知らない。目覚めた後の悲しみと苦難はどれほどのものだろうか。
「もう泣かないでくれ。形は違うがこれからも、ずっと一緒にいられるのだから不安はない……それが、たとえ時間稼ぎでしかないとしても」
「っ……ありがとう、あなた」
微笑み合う二人は、果たしてどこまでを正しく理解しているのだろうか。
青年が眠り続けている原因であるモノ。封じ込めるための対価と期間のつり合いが取れていると、本当に思っているのだろうか。
誤った手順で迎え入れてはいるが、だとしても憑き物として迎え入れたことには変わりがない。不完全な憑き物を封じ込めるなど誤った方法を取ることの危険性を、どう思っているのか。
「――そろそろ、始めようか」
「えぇ、そうね……式貴。愛しているわ。あの時は守ってあげられなかったけれど、今度こそ守るから」
青年の頭を、二人は優しく撫でる。
二人に気づかれぬように、密かに息を吐いた。
あれこれ考えた所で二人の考えが変わるわけでもなく、その結果も何一つ変わらない。
どんなに手を尽くそうと、猶予が伸びるだけで結末は一緒なのだ。
二人の手が、青年の腕にそれぞれ添えられる。この状況で似つかわしくない穏やかな微笑みを浮かべ、目を閉じた。
――人とは、どうしてこんなにも面倒な生き物なのだろうか。
そんな戯れ事を考えながら、同じように青年へと手を伸ばした。
次の朝。
抱き着く誰かの腕を感じて、燈里《あかり》は目を覚ました。
東だろうか。幼いようでいて、しっかりと道理をわきまえている彼女にしては珍しいこともあるものだと、未だ微睡む意識で考えながら布団を捲る。
「睦月《むつき》……?」
予想外のことに、燈里は目を丸くする。いつもはどこか遠慮しがちで素直に甘えることの少ない睦月が、こうして布団の中に潜りこんでいる。何か良くない夢でも見たのだろうかという心配と、拠り所にしてくれているという愛しさに、燈里は嬉しくなった。
「ん……燈里ねぇ?」
名を呼んでしまったことか、それともしばらく見ていたからか、睦月の瞼が震えゆっくりと目を覚ました。
焦点を合わせるように何度か目を瞬き燈里の姿を認めると、ぼんやりとしていた表情がふにゃりと笑顔に変わる。
「おはよう、燈里ねぇ」
「おはよう。どうしたの?嫌な夢でも見た?」
不安そうな燈里に、睦月は首を振った。
腕を伸ばし、燈里の頭を撫でる。突然の行動に戸惑う燈里に、睦月は懐かしむように目を細めて呟いた。
「夢を見た時、燈里ねぇがこうして頭を撫でて一緒にいてくれたから」
してもらって嬉しかったことを、同じように燈里にしているのだと睦月は言う。一度強く抱き着いてから離れると、するりとベッドを抜け出した。
「燈里ねぇは、やらなきゃいけないことがあるんでしょ?お家のことはわたしと楓《かえで》ねぇに任せて、頑張ってね」
「睦月……ありがとう」
睦月の優しさに、燈里はふわりと微笑んだ。
部屋を出て行った彼女に続いてベッドから抜け出し、身支度を整えていく。
「そうだね、頑張らないと……これからも、ずっと皆と一緒にいるためにも」
呟いて、一つ深呼吸をする。
決意を新たに、部屋を出た。
ぱらぱらと日記帳を捲る。
流し読むだけではあるが、それでも熱が下がった後の繩手《なわて》の奇妙な行動が目についた。
――式貴《しき》以外誰もいない部屋で、二人分の話し声が聞こえる。
――夕暮れ時に、ふと影を見たら知らない女の影が見えた。一瞬だけですぐに消えてしまったけれど、見間違いではない。
――式貴の腕の痣が濃くなってきている。女の気配が強くなっている。家が裕福になっても、この子が犠牲になるのなら、そんなものいらない。
繩手に付きまとう女性の影と、物理的に裕福な家庭。
憑き物筋として憑くのは、一般的に狐や蛇などだ。人が憑き従うことはありえない。
女性を慕い、敬っていたという繩手。与えられていた加護。
憑き物筋というよりも、燈里と冬玄《かずとら》の関係に酷似していた。
「冬玄。もしかして、繩手くんは……」
「言いたいことは予想がつくが、この人間の家は憑き物筋だ」
燈里の言葉を遮り、冬玄はそう断言する。顔を上げ、困惑する燈里の目を見つめて問いかける。
「燈里にとって、俺は何だ?」
「え?」
目を瞬き、遅れて何を問われたかを理解したのか、燈里の頬が赤く染まる。
視線を彷徨わせ、俯きながら、消え入りそうなほどか細い声で答えた。
「……私の……た、大切で……大好き、な……人……」
冬玄の動きが止まった。
俯く燈里を凝視したまま、ゆっくりと手を伸ばす。
しかしその手が燈里に触れる寸前冬玄は我に返り、誤魔化すように咳ばらいをしてそっと手を引いた。
「そうなんだが……いや、そうじゃなくてだな。宮代《みやしろ》の……まぁ、俺も宮代になるわけなんだが……あぁ、いや、その……」
ここに楓《かえで》がいればまず間違いなく呆れ、冬玄を蹴ってでも話を進めただろう。
しかし幸か不幸か、楓は睦月と共に買い物に出てしまっている。そのため、甘酸っぱい空気の漂う部屋で、二人はしばらく赤面しながら無言のまま固まることとなってしまった。
「燈里!」
そんな気まずい沈黙を吹き流すかのように、一陣の風と共に東が部屋に飛び込んでくる。
慌てる二人を気にすることなく、東はどこか誇らしげに胸に抱いたファイルを掲げてみせた。
「南が調べたものを持ってきたわ!そちらの進捗はどうかしら?」
慌てている二人に、東は不思議そうに首を傾げる。掲げた資料と机の上の日記帳を交互に見て、あぁ、と得心がいったように頷いた。
どうやら慌てている理由を、まだ十分に日記を読み進めていないからだと思ったようだ。
「心配しなくても大丈夫よ。わたしも手伝うわ」
「問題ない。だいたいの理由は把握している」
東の持つファイルを受け取りながら、冬玄は不愛想に答えた。だがファイルの表紙に手をかけた時、ふと思いついて東に視線を向ける。
「あの人間の家に憑いていたモノは女だったらしいが、俺たちと同じだと思うか?」
「違うわ。あれは憑き物よ」
冬玄の問いに、東は迷わず断言する。
「何故そう思う?」
「だって憑き物だもの。憑いているモノが何であれ、人間がそれを憑き物だと認識しているのだから憑き物にしかならないわ」
何故、そんな当然のことを聞くのか。真意を測りかねて、東の眉が寄る。だが燈里の困惑した表情に大方の事情を察し、柔らかく微笑んだ。
「燈里。わたしたちはね、望みを映す鏡みたいなものよ。燈里が望んでくれたから、わたしは今までも、そしてこれからもずっとわたしでいられるの」
「そういうことだ。だから、というわけでもないが、色々と突拍子なことをしているようだな。詳細は分からないが全ての始まりとなった家でまた何かがあり、憑き物が変質して封じるに至ったようだ」
そう言って、冬玄は先程までの甘い気配などなかったかのように、眉を顰め手にしたファイルを開いた。
これからもずっと変わらぬご愛顧をどうぞよろしくお願いします
#これからも、ずっと
「うわぁ、今回もたっくさんだ」
魔法カメラの中身を整理しようとアルバムを開くとそこには相変わらずどっさりと思い出が溢れていた。
ホグズミードの外、舞踏会、ホグワーツの外での写真もある。
何枚も厳選して残していると言うのに、厳選が意味ないくらいの思い出たちが視界に広がる。
「今年はラーレもテムズも一緒に花火を見に行ったんだっけね」
肩に乗り一緒に思い出を振り返るラーレが高い声で返事をした。
「ね、今年のも綺麗だったよね。」
毎年派手に打ち上がる花火は何回見ても圧巻の一言。花火の音も外の寒さも、ありとあらゆるものが写真からどんどん五感へ浮かび上がる。
(この時期、私元気なかったっけな。)
花火の音、外の寒さ、空に広がる光とともに浮かび上がるその時期の自分。
もちろん楽しい瞬間も多かった。それでもふとしたときに広がる胸の中の黒い雫は一滴で靄のように広がり、私を覆い尽くしていた。
苦しさも悲しさも、焦燥も疲労も昨日のように思い出す。
だけど、同時に。
隣にはいつも、幼馴染の姿があった。
そのときは自分のことで精一杯だったけれど思い返せばいつも独りではなかったように思う。
少し疲れたような顔をした自分の隣で穏やかに笑う幼馴染。
「大丈夫だよ、」と何回も伝えてくれた言葉がずっといまも響いている。
苦しさと同時にあたたかくて柔らかくて静かな優しさがあの時期を思い出す度に一緒に浮かび、彼がそばにいた意味が痛いくらいに泣きそうなくらいにじんわりと心に広がる
悲しいとき苦しいときも。
思い出すときさえ独りになんてさせない。
そんな強い想いを今更受け取ったような気がする。
「ピィ!」
「あ、そうだね、思い出に浸るんじゃなくて写真を選ぶんだよね!そうだった!」
特別な一枚を選ぶんでしょ?とラーレがくちばしで私の頬をつつく。
じわ、と滲んでいた視界を軽く拭いもう一度気を引き締める。
「さ、とっておきの一枚を選ぶよラーレ!」
「ピ!」
《これからも、ずっと》
親友の証100日記念 HPMA side.T
これからも、ずっと……
"The snake that cannot shed its skin must die"
ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェの言葉
直訳すると 脱皮できない蛇は死ぬ
常に変わらないと滅びてしまう
というような意味だという。
そうだろうか?
うーん、そういう場合もある。
むしろ、そういう場合は多いかもしれない。
だけど
例えば…紙漉きの職人さん。
現代の材料を使えば簡単に作れるけれど
千年後も残る仕事をしたいなら
鎌倉時代と同じ方法でやるしかないという。
変えない っていう覚悟はかっこいいと私は思う。
"これからも、ずっと"
好物のオムライスへのケチャップは
下手なままでいて自信ありげに
"沈む夕日"
スキップの間に借りる橙は川面の肥やし競う水切り
『これからも、ずっと』
これからも、ずっと側に居られるだなんて。
……どうして、そんなことを考えていられたのだろうか。
今日、僕の愛しい最愛の人は、土に眠った。
○○○
きっかけは些細な口喧嘩だった。
料理の塩加減が薄いとか薄くないとか、そんなこと。
いつもなら帰って妻の手料理を口にするが、なんとなく喧嘩して気まずいから、友人の誘いに乗って飲みに出た。
……帰ったら妻が倒れていて——死んでいた。
心臓発作だった。
もし、僕が飲みになんて行かず、すぐに帰っていれば妻は助かったかもしれない。
○○○
どうして、
…………どうして。
どうして、明日謝ればいい……なんて思えたのだろう。
どうして、明日が当たり前に来ると考えていたのだろう。
どうして、どうして、どうして、どうして。
これからも、ずっと側に居られるだなんて。
……どうして、そんなことを考えていられたのだろうか。
おわり
かなしみのみずうみ。うれしび、なぐさみ、あふれるいずみ。の、ちかくの塔に、ひとりのこがすんでいました。宵のおとずれには常ひごろ、つきに、ねがいました。せめてものよいことがもたらされんことをといのり、あめしずくにうたれながら、やわらかな木立ちにひそめながら、こえに応えてゆきました。いつくしみを忘れまいと、きしむ骨のいたみにたえて、はるめく陽気にみあうすがたをよそおい、むねはひえびえとしてゆきました。がんばれば、むくわれる、こらえたら、きっと。───そうこう経つうちに、みなはあわれみのまなざしを向けてくるようになり、居どころはとうに、さらわれていたのです。「おとうさん、おにいちゃん、かなめ、かなめ、ぇ。」かなめは、ひとりのこのまちびとで、そとにでられない塔のこのために、木の実やはなの蜜をとどけにきては、どれほどせかいがうつくしいのかを、めをかがやかせて語ってくれていました。あるひを境に、こなくなったかれのことばだけが、ただひとつの生きてゆくかて、でした。なみだはほとほとと、しだいにかわいては、滲んで。さいごの、かなめの声はひどく澄んでいて、おれずに、すすんで。との、ちいさくかぼそい音で、はつねのように、すっとみみへ入ってゆきました。いつまでたえしのんでゆけば、よいのだろう。さくらふぶきと、はなびらに、さらわれてしまいたい。だれか、つれさってほしい。かなわない願いをきゅっと、むすんで、塔の小窓から、こは唄う。『ゆかりある、いとしきあらしよしずまりたまへ。あらみたまのかえるは冥のその、ゆめにてみなみなを癒したもう。あかくれないに散るごとく、生くもはかなきうたかたの、ひかりのどけき向かい火を、われらのもとにおとずれますれば、かならずともしびに報いましょう。』かぜが、ふわりと舞った。くずれおちた膝もとに、ことりがとまって、鳴いてくれた。ぬくもりをひしと、だきしめて、こは未だ、うたう。かなめのような、かなめでない、かれでない、あらたな待ちびとを、ずっと。しらんでゆくひかりに淡く、なっても。どうか、しんじてすすむから、みつけて。そう、ややいびつに、ほほえんで。さきわいひとしく、訪れんことを、と。
永遠を信じないおれに永遠をくれた君。
今日も元気にしてるかい?
おれも元気だよ。
仕事でちょっと離れてるだけだけどもう寂しいよ。
本当はずっと一緒に居たいんだ。
でも仕事しないと生きていけないもんね。
こんな事言うと君はきっと「仕事辞めて俺の側に居ろ」とか平気で言っちゃいそうだから口が裂けても言わないけど。
仕事が終わったら会いに行くからね。
大人しく待っててね。
帰ったらまたたくさん語ろう。
そしてたくさん愛してね。
(これからも、ずっと)
ガタガタと揺すられる窓の向こうに沈む夕日を見ていた。右肩がだんだんと重くなっていく。
「すみません。ネギが落ちてました」
小学校二、三年生くらいの男の子が料金箱の前に立ち、奥に手を突き出している。信号待ちだろうか。停留所ではない場所でバスは停車していた。
運転手と会話を交わした少年が、斜め前の席に戻ってくる。「運転手さん、なんだって?」と尋ねる同年代の子どもの声がする。
周りの大人たちが聞き耳を立てているのが判った。こういうときの、なんというか空気がほわんとなる感じが苦手だ。
「捨てときますねって」
特に残念がるでもなく、少年たちはゲームの話題に戻っていった。
ネギの落とし主は帰宅後そのことに気づいただろうか。切れ端程度だったなら、彼か彼女だかの人生になんの影響も及ぼさなかったかもしれない。たぶんそんなことのほうが、多いだろう。これからも、ずっと。
悲しいのかホッとしたのか自分でもよく分からないでいると、隣から声がする。
「どしたの?」
ぼんやりした目であなたが訊いた。
「着いた?」
いつの間にか深い藍青に染まった世界で、あなたの瞳にネオンサインの緑が煌めく。青臭いネギの香りがした。
『君の目を見つめると』『沈む夕日』『これからも、ずっと』
これからも、ずっと
この生活が続くとは
全然思ってないけど、
今はまだ想像できない。
その時がくるまで
不安でいっぱい。
こんな夢を見た。目を覚ますと、真っ白な天井が見える。多分、病院だろう。事故か病気にでもなったのか。私の体はベッドに寝かせられていて、管がたくさん刺さっている。体は重くて、自分の体じゃないみたいだ。声を出そうとするが、声が出ない。ただ空気が漏れる音だけが聞こえる。私はかなり重傷のようだ。部屋の外から、スリッパを履いた足音が近づいてきた。その瞬間、本能的な恐怖を感じた。私が起きていることを気づかれてはいけない、そう直感して目を閉じた。
「おはよう、今日も来たよ」
ドアの開く音がして柔らかな男性の声が聞こえてきた。足音がベッドの横で止まる。
「相変わらず、可愛い寝顔だね」
頬に、むにゅりと柔らかいものが当てられた。正体は分からないが、何故か鳥肌が立つ。足音が遠ざかると窓が開けられたのか、風が吹いてきた。
「たまには換気しなきゃ。あ、花瓶の水取り替えてくるね」
足音が遠ざかり部屋の外へ出ていったのを聞き、うっすら目を開ける。誰もいない、と息をつく。窓の方を見れば、やはり開けられている。それにしても、あの男性は何者なんだろう。家族にあんな人はいないし、ただの知人への見舞いにしては随分…。パタパタとスリッパの足音が近づいてきた。もう戻ってきたらしい。慌てて、私は目を閉じた。
「花瓶の花もう枯れかけてるから、明日新しいの買ってくるね」
花瓶を置く音がして、ベッド横のイスに彼が腰掛けた気配がした。彼はしばらく自分の近況を話していたが、急に黙り込んだ。どうしたんだろう、話すことがないなら帰ってほしいのだけど。
「…なかなか、起きないね。あの時は、本当に驚いたんだよ。僕の目の前で、自分の首を掻っ切るなんて」
私は自殺未遂を起こしたようだ。私にそんな願望はない、何かしらトラブルでもあったのか。
「死んじゃったらどうしようって…ずっと心配してたんだ。でも、やっと意識が戻ったって聞いて僕、嬉しくて…」
かなり親しい関係らしいが、体と心は無意識に拒否反応を示している。一体これは…。
「意識戻ったのに、起きないのは僕が許せないから?ね、起きてよ。君の気持ちを知りたいな」
するりと彼の手が布団の中に入り、私の手を握った。やめて、と言いたかったが声は出ない。
「君の手は暖かくて、すごく安心するね。いつまでも握っていたいくらい」
一層強く握られると、頭に記憶の断片が入り込んできた。ツギハギの情報をつなぎ合わせると、私が彼を拒否する理由が分かった。彼は同じアパートに住む隣人であり、私のストーカーらしい。最初は世間話をするぐらいの仲だった。しかし友人に嫉妬したり、私の人間関係に口を出すようになった。そしてある日、包丁を持った彼が部屋に上がり込んで心中しようと迫ってきたのだ。抵抗している内に、私は首を包丁で掻っ切ってしまったらしい。
「…んー。唇にキスでもすれば、起きてくれるかな」
ギィ、とベッドに体重がかかり、顔に生温かい息がかかる。やめてくれ!と心の中で叫ぶ。
「…ふふ。まだ、お預けにしようか。焦らなくても、僕たちもう夫婦だもんね。君が眠っている間に外堀を埋めて、婚姻届も出しちゃったから」
これからも、ずっと末永くよろしくね。死刑宣告に近い言葉を吐きながら、彼は私の顔に唇を落とした。
これからも、ずっと4/9
今日から始まった新学期。
「クラスが分かれても、ズッ友だよ!!」
と言い、指切りを交わしたまではいいが、私調べだと、クラス替えで、友情は、いとも簡単に崩れる。
私の運では、3クラスの中で、たった1人の友達と、一緒になるのは至難の業だ。
私は、「ずっと」という言葉が嫌いだ。
なぜなら、何にでも、終わりはあるからだ。永遠に思えても、100年後には、少なくとも友達ではないだろう。
これは、人間に寿命がある限り、覆せないものだろう。
「ずっと」を私は信じない。
だが、長続きさせることぐらい、出来るかもしれない。
せめて、楽しもう。
「ずっと」が終わる日まで。
『これからも、ずっと』
一緒にいたい。
一緒にいられたら。
あぁ、つまらない。
僕の頭蓋骨に収納されている、この知的機関は、なんとつまらない言葉を垂れ流す欠陥品なのだろう
誰にでも書ける言葉だ。
ならば僕が書く必要などありはしないじゃないか。
一緒
そうだ、一緒という言葉が、そもそもとしてくだらないのだ。
くだらない
くだらない
あぁ、くだらない。
独りぼっちが寂しい訳じゃない。
孤独が辛くて叫んでいるのではない。
誰かと一緒という感覚に安堵や喜びを感じる回路が、まるで存在していないのだ。
だから、苦悩が加速する。
僕にとっては、誰かと過ごすことは、常に防衛体制に入る苦痛の時間でしかなく、誰かとずっと一緒にいたいなど、微塵も思ったことが無い。
だが、どうやら、世間はそれを基準にして動いているらしい。
だけど同時に、不思議に思うこともある。
『これからも、ずっと』
この言葉が目に入った瞬間に、轍の無い孤独の遠路を歩いてきた僕ですら
一緒にいたい
というニュアンスの言葉が、反射のように顔を出す。
例えばそれは、僕の中に欲求として眠っているからこその、表出なのか。
あるいは、人生で蓄積された常識ルールブックを脳で開き、無意識が基本解を弾き出した結果なのか
いずれにせよ。
どうやら僕は、なぜかは分からないが
『これからも、ずっと』
という言葉に対しては、反射的に『一緒』という言葉を書き記してしまうらしい。
生きているうちに、これからもずっと続くのだろうと思っていたのは、幻想なんだと気づいてくる。色々と変わってきた。ああ、この状態がずっと続いたらいいのにと思っても。
友達だって、好きな人だって。世の中も。ずっと同じなんてことはなかった。何かと変わっていく。その変化に、一生懸命、意識していなくてもしがみついていく。時には、何だか疲れると思うこともある。
でも、変わり続けるから良い事もあるのかもしれない。よくない状態だって、変わるかもしれないのだから。変わるからこそ面白いのだなと思えたりすると、ちよっと大人になった気がする。
「これからも、ずっと」
結婚なんてしなくて良くない?って斜に構えてた私に
「ううん、しようね。」って言い続けてくれてありがとうね。
素直じゃないところは治すから、これからもずっときみがそばに居てくれますように。
『これからも、ずっと』
桜が散るたびに、あなたのことを思う。
別に特別な理由があるわけじゃない。ただ、あの春にふたりで歩いた道が、毎年この季節になると足の裏から蘇ってくる。アスファルトの感触、風の温度、あなたが笑うときに少し目を細める癖。覚えていようとしたわけでもないのに、体がぜんぶ覚えていた。
人は変わる。景色も、関係も、自分自身でさえ。それは悲しいことじゃなくて、ただ、そういうものだと今はわかる。変わったからといって、かつてそこにあったものが嘘になるわけじゃない。
これからも、きっと桜は散る。私はまた、あの道のことを思う。そしてそのたびに、あの頃が確かに本物だったと、静かに確かめるだろう。
消えないものがある。形を変えて、名前も失って、それでも消えないものが。
それをずっと、と呼ぶのだと思っている。
エルフは、長い永い時間を生きる。
エルフ同士の絆ならば、その身で生きる長い時間の中、切れることなくずっと続いている。
だが、異種族間となるとそうはいかない。
最近交流が増えてきた人間なんか、特に酷い。
どれだけ寿命を引き伸ばしたってたったの120年ぽっちだ。エルフの寿命の十分の一程度にしか満たない。
どれだけ想いあったって、どれだけ強く結ばれたって、エルフはその生の残りをずっと寂しく生きていかなければならない。
人間とエルフが交流するようになってから、エルフの自殺率は格段に跳ね上がった。
これまでは穏やかに、長い時を静観しながら静かに暮らしていた種族が、人間達の喧しくも賑やかで活気のある生活に触れ、彼らの時間の中では極短い期間でそれを喪う。
後を追うエルフが、後を絶たなくなった。
それを問題視したエルフ達は、新しく画期的な機械を作った。
人間の記憶を脳から取り出し、元の姿に極限まで寄せた人工義体に移す、いわばアンドロイド。
機械の体を手に入れた想い人達が、末永く一緒にいられるようになった。
エルフの寿命が尽きると、義体の手入れをする者もいなくなり、やがては人間の意識も永遠にスリープモードに入る。
誰かが取り残されることも、無くなった。
それから人間とエルフの交流はますます勢いを増し、今では人間とエルフのハーフらしい子どもたちだって珍しくなくなった。
純粋な人間、純粋なエルフ、アンドロイドに、ハーフエルフ。
実に多様で、愛の結晶たる街は、今日もエルフの静かさを湛えつつ人間らしいどよめきを含んでいる。
長命故にその数は少ないエルフは、人間達と交わっても暴発的に数が増えることは無かった。
ハーフエルフの純粋は、人間とエルフの丁度真ん中の辺り。
人間にしては長すぎる、エルフにしては短すぎる寿命。
どこかおかしくて、けれど愛おしい、彼らの営みは、小さな島の中で今日もひっそり広がっている。
明日も、明後日も、百年後も、千年後も。
例えこの星が滅んだって、ずっとずっと、彼らは寄り添い続けるだろう。
テーマ:これからも、ずっと
「これからも、ずっと」
これからも、ずっと、隣にいて欲しい
それだけで、救われる、幸せ
明日生きる理由を見失って、
人生に迷った日があったら、
恩返しに、君を助けるから、
ずっと、隣にいて欲しい