Frieden

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「これからも、ずっと」

私はとても孤独だった。
私はとても寂しかった。

そんな時、あなたに出会った。
そしてあなたは「また会える日まで待ってて」そう言ったの。
だから私は待っていた。

でもあなたは来なかった。
ずっと待っていたのに、待っていたのに。

だから私は決めたのです。
「あなた」と私が暮らすための、愛と平和で溢れた世界を作ることを。

でも私は「あなた」を置いて世界から逃げてしまった。
「あなた」を危険な目に晒してしまった。

ごめんなさい。

でも、もう大丈夫。
もう「あなた」をひとりにはしない。
これからも、ずっと───

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今日は自称マッドサイエンティストがいつにも増してやかましい。

「おい!!!非常事態だぞ!!!ヤツが例のお人形遊び用の空間に現れた可能性が非常に高い!!!ほら!!!キミも!!!急ごう!!!」

この宇宙を吸収する未知の存在とやらが作ったその空間は、マッドサイエンティストさんによって侵入も認識もできなくされたはずだ。だがどうやってこんなことを……?

そうだ、未知の存在が執着する彼は連れていくのか?

「勿論だとも!!!人手は多ければ多い方がいいからね!!!」

そういう問題なのか……?
とにかく自分たちはその空間へと向かった。

「やあ!!!構造色の髪のキミ!!!聞こえるかい?!!急に悪いね!!!緊急事態だ!!!例の空間に集合するぞ!!!」
そんな大声出したら音割れするだろ……。

いや、突っ込んでいる場合じゃない。
自分も気を引き締めないと。

「何が起こるかわからない!!!だから今回は重装備にするよ!!!」

一度「ほぼ全てのデータを削除済み」の世界に飛び込む。
明るいのか暗いのか、寒いのか暑いのかわからない。
立っているのか、浮かんでいるのか、沈んでいるのか、それすらも。

「とりあえずここをキミたちに適した環境に設定するよ!!!だがヤツがどこに潜んでいるかすぐに分かるとは限らない!!!」

そう言いつつ、この空間そよ風の吹く暖かい草原へと変化させた。さすがマッドサイエンティストなだけある。

「だが朗報だ!!!この空間は想定よりも広くない!!!だから手分けして辺りを探ろう!!!次はヤツの居場所に集合だ!!!」

「あ、そうそう!!!何かあったときに備えて通話は切らないでくれたまえ!!!くれぐれも危険な真似はしないこと!!!いいかい?!!それじゃあ!!!」

「わかった」
了解。

自分たちはこの空間内を探索した。
しかし、辺りには草原が広がっているだけで何もない。

「そっちはどうだい?!!」
「めぼしいものはないようだ」
こちらも異常なし。

「そうか……。他に何か……あ」
「どうした?」
何があった……?

「スノードロップの花が」
「……花?」

ここまで花なんか見なかった。
もしかすると、何かの手がかりになるかもしれない。

「うわああああ!!!やめろ!!!やめるんだ!!!!」
「どうした?!」
おい、返事をしろ!!

──────────────────────────────────

ようやく再会できた。
この時を、ずっと待っていたの。

まさかこんな簡単に取り戻せるなんて思いもしなかった。
彼にもあんな隙があるなんて……。

私はとても幸せよ。本物のあなたに会えて。

──────────────────────────────────

「……ふふふ……ふふふふふ。
ははは!ハハハハハ!!!」
あいつが笑い始めた瞬間、メッセージが届いた。

“ランダム 意思 舞台 感覚 出会い 書物 居間 程度 緯度 流浪 華麗 来世 時間 系統 列島 概念 薔薇 場合 来週 で 語彙 免税 那由多 猿 意図 ! オットマン 欲望 駒 礼儀 日常 記事 づ 板 眠り ! 工事 連絡 晴れ 所謂 隠れん坊 始末 メッセージ 戸 異化 迂闊 奴 大学 黄泉 ! キミ 模試 歌詞 盥 探偵 脳 サイエンティスト 能力 画像 青葉 ルアー 鴨 眠り ! ”

「……?!」
なんなんだこれは……?

「何もわからない……どうすれば……?」
何かできることはないか、自分は渡された端末をいじってみた。

わからない……わからない……どうすれば……?
「位置情報だ!!」
そうか、位置情報を見れば居場所がわかるはずだ───

「……残念!!!引っかかったね〜!!!」
「お人形遊び用とはいえ、ボクがこんな貴重な空間のデータを本当に削除するとでも……?!」

「浅はか!!!余りにも考えが浅はかだよ!!!
そんなはずがなかろうよ!!!」

「ボクは“彼女”と手を組んでこの空間を共同管理しているんだ!!!」

「ホントは“彼女”のことなんかどーだっていいけど!!!どうしても構造色の髪の彼が欲しいって言うから仕方な〜く捕まえたんだよ。そしたらそっちのキミもおまけで付いてきた、ってわけだ!!!」

「ボクは宇宙を管理などしていない!!!ただ宇宙にいるだけの“マッド・サイエンティスト”!!!得たいものがあれば手段など選ばない!!!」

「おい、何を───」
……そうか、そうか。

「キミたちには悪いが、この空間ごと───」

「模型になってもらおうか!!!」

「それじゃあ、せめてもの弔いとして、綺麗に標本にしてあげよう。今までどうも、世話になったね。」

「……よくもぼくらを騙したな!!」
馬鹿だった。こんな話に騙される方がどうかしている。

前ここに来た時見た街並みがどんどん戻っていく。

「フフフ……さぁて問題です!!!」
「このスノードロップの花を引っこ抜いたら」
「何が起こるでしょう?!!」

「まあ、キミらはせいぜいそこで見ているがいい」
「くそっ……くそっ……!!」
終わった。もうどうにもならない。

多幸感と絶望感が入り混じる。
自分は、ぼくは、世界の一部と───

「えーい!!!つーかまーえた!!!!!……あ」
「……ケッ、逃げられたか!!!だが正体はほぼ掴めたぞ!!!」

「ほらほら、キミらも見たまえ!!!このスノードロップ!!!花言葉はご存じかい?!!お手元の端末で調べてみたまえ!!!少なくとも味方に贈るような代物じゃあないよ!!!」

「……つまり、どういうことだ……?」
何が言いたい?

「ボクは今までもこれからも、キミたちの味方だ……ってことさ!!!」

「何を今さら!」
別にもうどうだっていい。

「悪かったよ、悪かったって!!!ほら!!!この通りだ!!!だがキミたちのおかげで原因を特定できそうだ!!!」

「ボクはちゃんと公認宇宙管理士なんだって!!!ほら!!!これ認定証!!!ホンモノだぞ?!!」

バキーーン!!!

「おい今何をした?!!!認定証を真っ二つに?!!!正気か?!!!再発行の手続き面倒くさいからイヤなんだよーー!!!!」

「もう何も言うまい」
知るか!!!

「ちょっ、やめ、暴力はいけないよ!!!説明する、時間を、くれ、たまえ!!!」

「……落ち着いたかい……?これには深〜い訳がある!!!」

「構造色のキミには少々申し訳ないが、キミを使ってヤツをおびき寄せたのは事実……。その点については謝ろう。本当に申し訳なかった。」

「この空間に、キミに異常に執着しているアイツは必ずここに戻ってくるに違いないと踏んでいたから、ボクは敢えて一ヶ所脆弱なセキュリティポイントを作った!!!」

「本来ならここはボクら以外から認識できないはずだが、彼女の一部がこの空間に残っていたから、完全に切り離すことはできなかったようだ。だからまた現れた!!!これも計画通り!!!」

「ついでに、ヤツにこの計画がバレると厄介だから、したくないのは山々ながらキミたちを騙すことにした!!!ボクの迫真の演技、ちゃーんと見てくれたかい?!!」

「まあその甲斐あって、重要なデータをヤツから抜き取れたうえに!!!容易に位置を追跡できるようにもできたよ!!!本当だって!!!ホントだってば!!!」

「しかし……キミたちも見たまえ!!!これが『未知の存在』の正体だ……!!!」

自分たちは端末に映されたデータを見た。
「これ……分かるかい……??彼女、動いているのすら奇跡だよ……。詳しいことは後で解析するが、キミたちに伝わるように言うとすれば『1万年前の車が現役で、しかもメンテナンスなしで動いている』状態……かな?」

「そしてそんな状態の車が膨大なエネルギー、つまり燃料を抱えている。考えてもみたまえ。キミたちならどうなると思う?」

「いつ壊れるか分からない機械と」
膨大なエネルギー。

「そうだ。……答えは単純明快!!!宇宙規模の大爆発が起きる!!!しかも近いうちに、ね!!!」

「分かるかい?!!!めちゃくちゃ危険なんだよ!!!だからますますヤツを確保しないといけない!!!」

「分かったかい……?このタイミングで話をしても信じてもらえないかもしれないが……この通りだ!!!ボクを助けてくれたまえ〜!!!」

頭を地べたに擦り付けん勢いで頭を下げている。

「……。」
はぁ……。

「……どう、でしょうか……??」

「それなら」
この話が本当なら。

「分かった」
もう一度、信じてみよう。

「ああああありがとうございます〜!!!本当〜にごめんね〜!!!」
泣きそうな顔でいつものやかましさを取り戻した。

全く……。

「……それはそうと」

まだ何かあるのか?

「キミ、公認宇宙管理士の認定証を壊したね……??」

「いくらで再発行出来るかご存じかい……?また、認定証の破損は重罪だぞ……?これでキミの寿命があと100万年伸びても知らないよ……?」

必要経費だろ。
それに、あんな振る舞いをしたあと混乱せずにはいられない。

「ホントにゴメンって!!!」

でも、
「でも、」

あんたが自分たちを信頼してくれていたから、あんなことができたんだよな。

「あーー!!!お腹空いたよーー!!!ご飯食べに帰るぞー!!!」

「全く、呑気なもんだ」
完全に同意だ。

「とにかく!!!一難は去ったね!!!」

それはそうと、そこの君、ここまでよく読んだね!!!
書き手もやりがいを感じているに違いないだろう!!!
代わりにお礼を言っておくよ、どうもありがとう!!!

実はこの文章には隠しているものがあるんだ。
もしお時間があれば、見つけてくれたまえ!!!

4/9/2024, 12:17:31 PM