『ここではない、どこかで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ー傷ー
いつまで経っても癒えない傷ってあると思う
いつか乗り越えられますように、とか
いつか前を向ける日が来ますように、とか
そんなことは望んでない
そんな日が来たら、
この傷が癒えてしまったら、
君が本当に遠くへ離れていってしまう気がするんだ
君の抱えていた傷を僕が半分持てるように、
せめて僕の中で生き続けてほしい
そんな願いを込めながら
一生その傷と共に生きたい
渇ききった草木一つ見えぬ砂漠の沿岸に、縄で縛られた人々の群れがあった。
彼らは皆々藁で結ばれた積荷を背負い、鋭い砂利石に血が滲んでも歩き続けていた。
彼らはそうせねばならなかった。
逃げ出せば、馬上の者たちによって、煙のでる筒で殺される。喉がいくら渇いても、空きっ腹が消えなくとも、死ほどたえがない恐怖はなかったのだ。
二日は歩いただろうか、途中で何人かが脱落し、砂漠に小さなオアシスを作ったものの、大部分は生き残っていた。
海上の大きな家に彼らは搭乗し、陽の光が一つも入らぬ部屋に詰め込まれた。
暗闇、蒸し暑く不衛生な部屋には、病気と恐怖が蔓延した。
血反吐と汚物によって、酷い匂いが充満していたが、もはやそれを違和感と覚えなくなるほど、彼らは恐怖に慣れてしまっていた。
船員に身体を売って助けを乞う者、踊り狂う者、見えぬ朝日を浴びるもの、謀略を企む者。その空間では、もはや狂気は一種の日常であった。
だが、天はまだ彼らを見離してはいなかった。
彼らが船に詰め込まれて、約一ヶ月の時が経たころだ。甲板は、暗がりと伝染病が広がり、彼らは憔悴しきっていた。もはや誰もが母語の形を忘れてしまったのか、波の音だけが響いていた。
突然、激しい衝突音と共に船が揺れる。
すし詰めの彼らもぶつかり合い、多少の混乱が生じたものの、すぐに落ち着きを取り戻した。
「今のはなんだ、何かぶつかったんじゃないか」一人がひそひそと言った。
「海には怪物がいるというから、きっとその類だ、俺たちは食われちまうんだ」
周囲が喚き立つ、それは死に喜んでいるのか、悲しんでいるのかもわからない悲鳴だ。
不意に戸口が開かれると、彼らの声はぴたりと止んだ。過度な会話には、鞭打ちが待っている。身体を震わせ、懺悔する。騒ぐべきでなかったと。
だが、その思いはつゆ知らず、彼らの見たのは意外なものだった。
白い人、手には筒と鞭がある。その恐怖は変わらない。しかし、その体には節穴が現れて、腕に抉れた赤い傷ができていた。
誰がはじめるでもなかった。
合図を待つことなく、彼らは白い悪魔を殴りつけた。呆気に取られたそれは、猛然たる野蛮を受け、次第に動きをとめた。
久しく光の下に現れた彼らの眼には、もう一つの大きな家と、青々しい海があった。
船上には、赤くなった悪魔の遺体と、
槍と筒で悪魔たちを成敗する彼らによく似た人々がいた。
互いに言葉は伝わらない。
だが、その境遇と憤怒が同じものであることは、どこまでも明白だった。
彼らは反旗を翻し、悪魔を追い詰めた。
鞭で叩き、海に落とし、怪物への供物とした。船上に既に悪魔はなく、残ったのは”彼らたち”だった。
その日の彼らは病に罹ったかの如く、踊り歌い、食らった。
短くも長い晩餐は終わり、似た人々は船に戻っていった。彼らもまた、船内を調べ、行き先を羅針盤に定めた。
『ここではない、どこかへ』
はるか先の故郷を目指し、船はどこまでも進むのだった。
ここではない、どこかで、またであえるといいな
ここではダメだ
いまのままではいけない
ここじゃない、どこかで……
またきっと、ちがうところで
ここではないどこかに、
これではないなにかに
いまではないいつかに
何か、忘れてきてしまったような気がして、振りかえる。
いまではない””もしか”に
自分ではない”だれか”と
この世界ではないどこかで
約束したことを忘れてしまったような気がして。
帰り道をなくしてしまったような気がして。
「ここではい、どこかで」
ここではない、どこかで産まれていれば、、
ここではない、どこかで育ってれば、、
この辛い思いも、私を苦しめる経験もしなくてすんだかも。
でも、、
ここではない、どこかで今を生きていれば、、
君と出逢えなかった。
南極大陸の端っこで待っている
新しい宇宙への階段が
溶け落ちてのびてくるのを
暫くは誰も来そうにないので
ここではない、どこかで
やまびこ返しの練習をする
放課後カーテンの裏側
「ここではない、どこかで」
人の話や
体験談に
思い馳せては
夢に見る
いつか自分も
行ければいいと
せめて思いを
歌にする
ここではない、どこかで
座って、背もたれに寄り掛かって、目を閉じて、感じたい。
日の光、暖かさ、心地良い風、葉の揺れる音...。
私の全てで感じて、ゆっくり、呼吸がしたい。
日々の中で必死に感じようとする一瞬ではなくて、
肩が軽くなり、心から安らぎを感じられるくらい...
そんな幸せなこと、願っても良いのだろうか。
いや...。
長男が作ったワラの家も,次男が作った木の家も,オオカミによって吹き飛ばされてしまった。2匹の子ブタは,自分たちが馬鹿にしていた,末の弟が作ったレンガの家は,オオカミがどんなに頑張っても,びくともしなかった。そして,夜になった。屋根の上で何者かが動き回っているようだ。末の弟の子ブタが,暖炉の火をおこし,大きな鍋をかけ,油を,ぐつぐつと煮込みはじめた。3匹は,息をひそめて待った。何者かが,勢いよくエントツを通って降りてくる。直後,悲鳴に絶望が重なったような叫び声が,レンガの家の中に響き渡った。 「熱い,熱い,助けてくれ!」赤い服を着て,白いヒゲをたくわえた,その老人は,荷物のたくさん入った大きな袋を置いたまま,家の外に飛び出して行った。その後3年間,世界の子ども達にクリスマスプレゼントが届くことはなかったという。そしてサンタクロースが,エントツを,くぐることもなくなり,全世界から,エントツつきの家は姿を,消していくことになるのだが,それはまた,別のお話である。
テーマ『ここではない、どこかで』
何か、特別な自分だと信じたかった
どこか、理想通りの世界だと思い込みたかった
けれど、思い描いたものは全部妄想で
手のひらに残されたのは、たったちっぽけな私と
ただ、大勢の中の一人という つまらない肩書だった
今いる場所が、間違いなのだと思った
ここではない、どこかで生きればきっと
私は、私ではないナニモノかになれるだろうと願った
ちっぽけな私が、心の底から憎かった
価値がない。生きている意味なんて分からない。
ホント、なんで存在しているのだろうかと。
苦しみもがきながら、それでも私は生きている
朝起きて、朝食を食べて、靴を履いて出かける
青空に、一筋の飛行機雲が走っていた
……ああ、綺麗だな
題.ここではない、どこかで
また逢えるといいね。
三途の水が溢れてなければ。
古今和歌集 哀傷 829番
「ここではないどこかへ」
揺れる電車のなかで、
僕はふと隣にいる彼女のことを考えた。
横目で見ると、彼女は何かを探すように、
ただ窓から星空を眺めている。
短すぎるぐらい短く髪を切り揃えた彼女の横顔は、
初めて出会ったときよりも、
その凛とした美しさがいっそう際立っていた。
見て、先生。
これだけ髪が短ければ、私だと分からないでしょ?
肩まであった長い髪を、
男である僕よりも短く切ってきたのは、
僕を驚かせたかったからだという。
それは嘘だ。
彼女は、全て捨ててしまいたかったのだ。
『女』としての自分も、
これまでの過去も、
そして、あの母親も。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
僕たち以外は誰もいない車両では、
電車の揺れる音がまっすぐに脳に響いてくる。
下を向いた僕の自問自答と迷いも、
かき消そうとしているようだった。
これでいい、これで良かったんだ。
彼女にとっても、僕にとっても。
すうっと息を吸い、顔を上げて彼女に目をやると
さっきまで星空を見つめていたその美しい瞳は、
僕の姿だけをはっきりと映しだしていた。
「先生、だいじょうぶ?」
一瞬の沈黙は、電車の揺れる音だけではなく、
僕の心臓の高鳴りを大きく自覚させるのに役立った。
トクン、トクンと身体の奥から
わきあがってくるこの音は、僕の瞳の中に彼女が、
彼女の瞳の中に僕がいることの幸福の音だと思った。
「だいじょうぶだよ」
僕は、今の自分でできうる限りの笑顔で言った。
そして、少しおどけた声で。
なぜかわからないけど、そうした方がいいと思ったから。
「そう?」
ほほえんだ彼女のくちびるは、少し震えていた。
大人びていると思っていた表情は、
すっかり16歳の少女に戻っていた。
ああ、そうだ、彼女だって不安なんだ。
星空を眺めていたのも、これから僕たちがどこに行くのか、
自分の頭の中で探していたんだ。
僕たちが出会ったこの街を
僕たちは捨てていくんだ。
たとえ存在を拒絶された場所であっても
二人にとってはここが今まで世界のすべてだった。
不安にならないはずがない。
僕は視線を外さないまま、彼女の手を握った。
彼女も、握り返してくれた。
それだけで、また、幸福が溢れてくる。
なんとかなる、絶対なんとかなる。
ここではないどこかに、僕たちの居場所はきっとある。
ここではない、どこかで
ここではない、どこかで
あなたとめぐり逢えたら
それは運命なのでしょう
〈ここではない、どこかへ〉
自分の中にない物を
外に探しに行っても
見つからない気がする
まわりの環境は自分の思考が
現象化したものだから
自分の今世のミッションを
今の場で掘り下げることに
エネルギーを使いたいな
また必ず会えるような、そんな気がしているんだよ
それは何故か、訳もなく確信めいていて
君の事思い出す日、確実に少なくなってる
それでも二人だけの何かが、消えずにずっと傍にあるんだよ
いつか必ず会える、静かにそう感じているんだよ
今は心遠く、他人より離れていても、
もう、永遠を思った愛を無くしてはいても、
二人また会える
もしかしたらそれは、遥か遠い未来の事かもしれない
きっとそうなんだ
今この生でなく
次の
きっと違う星で
そう
ここではない、どこかで
「ここではない、どこかで」
朧月みたいに貴方は奥では輝いてるのに
まだ霞んでる。
寒い冬の朝の霧のように貴方は消えてしまうから。
私はただいつか貴方のように霧になりたい。
其れが叶わぬのなら雲になりたい。
雲になれないのならそこから降る雨になりたい。
もっと言うのなら雪でも雹でも霰でも構わない。
私は貴方のように小さな水の雫になりたい。
そうして消えてしまったら、貴方のように朧になりたい。
貴方はまだ朧の中にいますか?
いつか朧から抜けたなら月のように輝いて私を、
水の雫になった私を、
見つけ出して照らしてくださいね。
(朧の夜月 ここではない、どこかで)
ここではない、どこかであなたは一人でポツンと生きている。
悲しいことも辛いこともいつも一人で抱え込んでいる。
でも、本の中だととても楽しく生きていられる。
また会おうね、きっと出会えるから
ここではない、どこかで
【ここではない、どこかで】
ここではない、どこかでいいから。
また会ってみたいと思う。
また話してみたいと思う。
また見つめてたいと思う。
また笑いあいたいと思う。
また抱きしめたいと思う。
また愛しあいたいと思う。
ここじゃない、どこかじゃなくて。
今この場所でもいいよ。だから、どうか……
君と会えたらいいなと思う。
何も無くたっていい。ただ、また会えたらそれでいい。
次はもっと素敵なところで。
『ここではない、どこかで』