『お祭り』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
地元のお祭りで一度だけ、酒屋が出店したことがある。
学校のグラウンドで純米酒を売るなんて、あれが最初で最後でなかったろうか。
黄色みを帯びた甘い酒は、町内会伝統の焼きそばに不思議とよく合って、ついでに焼き鳥を添えれば完璧だった。
今年も祭はやらないらしい。
【夏祭り】
今日はお祭り
カラフルな浴衣に
履き慣れない下駄
そして見慣れない君の姿にドキッとする
あんなに着たくないと言っていた浴衣
赤く染めた頬
とても愛おしい
二人で仲良く歩く
その時
手があたってしまった
二人共顔が赤い
でもそれをきっかけに
手と手が絡み合う
とても暖かい
君の横顔がとても美しかった
〈お祭り〉
今夜は、歩行者天国。
屋台がつらぬき、裸電球や提灯が
浴衣姿の、子どもたちを照らし出す
仕事に追われ、祭りの賑やかさから路地に入り
家に帰ると、可愛らしい鉢に入った金魚たちと目が合う。
聞くと、母親がひとりですくってきたんだと
半分寂しそうに…半分楽しそうに言った…
そんな昔の事を考えていると
今じゃ、歳を重ね現実はモノクロがかったもんだなぁ…
急に、疲れがどっとおしよせる。
優しい思い出は、いつでも心をあたたかくしてくれる
もう、若くはないんだけど…
そういいながら、そっと笑みがこぼれたら
地球も笑った気がした。
祭りの賑やかな音と、静止画の私は
人並みを想像しながら、薄暗い部屋で誰かのイビキを聞きながらひとり飲みをした…
グラーフ・ツェッペリン
貴方は、かつて世界中を熱狂させた飛行船を知っているだろうか。
1929年8月15日、『伯爵』と名付けられたその巨大な飛行船は、20名の乗客と、40名の乗組員を乗せて世界一周をする旅に踏み出した。
ドイツ生まれの白い鯨ははるか極東のこの日本にもやって来た。
その鯨はとても美しかった。
その鯨は世界中の人々に愛されていた。
かつて、飛行船は戦争において恐怖の対象だった。
かつて、飛行船は街や都市を破壊するために作られた兵器だった。
彼女は、この世界をどう見ていただろう。
人は翼を持たないから、未知なる空へ憧れを抱く。
その形はやがて飛行機となり、飛行船となり、効率良く人を殺傷するために洗練された形になる。
つまり、兵器となる。
飛行機や飛行船は、それを望んでいただろうか?
誰かを傷つけるために生まれてきたかったのだろうか?
鯨の伯爵は幸せだ。たくさんの人々を運び、ただ、少しの汚れもない空を泳ぎ続けたのだから。
親戚であるヒンデンブルク号が爆発事故を起こすまで、彼女は懸命に働いた。
彼女の最期は、再び始まった戦争により、身体をバラバラに解体され、骨となる金属の部品を兵器に転用されたものだった。
僕は思う。
彼女ほど、美しく儚い生涯はないだろうと。
お祭りか。家にいると時々祭りっぽい音が聞こえる時があるな。年に数回くらいだと思うけど。どんな音か忘れたけどああ祭りやってるんだなって音だ。
駅のほうでもたまに祭りの準備をしてるのを見ることがある。近所のも駅のも参加したことはないけど。一人で行ってもしゃあないしな。
子供のころには祭りに行ったことあるんだろうけどうろ覚えだ。子供のころにいい思い出はあったんだろうけど全然覚えてないな。思い出はいつだって嫌なものしかない。
祭りというと今日はFGOフェスだ。八周年記念に二日間行われるお祭りだ。俺は行かないけど今は配信で情報を見れるから楽しみ。
祭りには興味ないけどこの手の自分が興味あるゲームやアニメなんかの催しは行きたくなるね。貧乏人だから行く金も時間もないんだけど。
調べたらフェスのチケットいい値段するんだよな。適正価格なんだろうけど俺には手の届かない価格、というかその金であれを買えるとか思っちゃうタイプ。
しかしこんな災害級なんて言われる暑さの中でよく外に出かける気になるものだ。俺はエアコンつけてる家の中でも暑くて仕方ないってのに。
羨ましいものだその生命力が。俺にもそのくらいのバイタリティがあればもっと人生楽しく生きられるのにな。
子どもの頃、季節は今の時節だったろうか
皆んなで遊んでいると、
祭囃子が風に乗って、
聞こえてくることがあった。
わたしのふる里で、祭りといえば獅子舞。
それは賑やかなものではなく、
どこか寂しげな調べであったが、
それが聞こえてくると胸が高鳴り、
「お祭りやってる!行こう行こう!」と
その方角に当てずっぽうに
飛び出すのだった。
今思えば、祭囃子の練習を
していただけだったかも知れないし
ほんとうに祭りだったかもしれない。
いつもたどり着けずに終わってしまった、
子どもの頃の思い出。
お題『お祭り』
「これください。」
「へいよ。お嬢ちゃん。」
お金を払うと、わたあめを渡してくれた。
「きれいな浴衣だね。さてはデートだな?」
にやりとおじちゃんが笑う。その顔に悪意はないが、心にチクっとささるものがあった。
「あはは、1人なんです。」
貼り付けた笑顔と取ってつけたような明るい声で言ってのける。するとバツが悪そうに「すまねぇな。」と言われた。別に構いやしない。夏祭りに、高校生が1人で来るなんて珍しいだろうから。
「ねぇ聞いて!今日はね念願の夏祭り!ヨーヨーを買ってきたんだけど…ほら、この模様とっても綺麗でしょ?あとね、金魚すくい…で…えと、何匹取ったかな。いち、に……さん……ううん、きっとあなたがいたらもっと取れただろうに。すぐに網が破れてだめだった。私、ほんと不器用だよね。器用なあなたが羨ましいよ。…………あっ、射的もやったよ!いっっ発も当たらなかった!去年はあなたがほしい景品を取ってくれてたっけ。あれってコツが居るの?てか結構重くない?支えるのだけで精一杯だったんだけど。あれ、もしかして軟弱だっていってる?ひどぉい!………あっ、これも買ってきたの、じゃがバターに、綿あめに、焼きそば、たこ焼き、りんご飴!これぜんぶ私が食べるためなんだからあげないよ。太るって?デリカシーないなぁ。夏祭りくらいたくさん食べたいの!!…ちなみにさ、浴衣姿になにか言うことないわけ?可愛いとかさぁ……」
私はお墓の前で、これ以上ないくらいはしゃいで騒ぎ立ててみる。返答はもちろんないし、周りに人もなく静まりかえっている。
5分くらい続けたが、バカバカしくなって口を閉ざした。散っていく花火を見ながら、今は甘すぎる綿あめを口に入れた。花火がぼやけていく。暖かいものが頬を伝う。
「帰ろ………何やってるんだろ。」
墓に背を向けた。その瞬間、
『浴衣姿、すごく似合ってるね。今年もお祭り楽しかった。ありがとう。』
声が聞こえた気がして振り返った。誰もいないし何も変わらない。気のせいかもしれない。
でももう少し一緒にいることを決め、お墓のそばによって、綿あめを口に入れた。とても甘くて、心が暖かくなった気がした。
やっと誘えた君とのお祭り
浴衣は気合い入りすぎかな?
なんて色々考える
君の隣で歩くだけでドキドキしちゃう
色んな屋台まわって
手とか繋げたらいいな
お祭り上手く行きますように
─────『お祭り』
お祭り。今年は、何年ぶりかに、夏祭りに行った。普段は、最近、冬の祭りにしか行けてなかったから。しかも、今年は、友達とでは無く、愛する彼氏兼未来の旦那と💕だからか、いつもより、体も心も暑く感じたし、いつもより楽しめた♡明日で遂に付き合って半年♡そして、来月は、2人でプール💕心から愛する彼氏と付き合えた今年は、例年より、楽しみも幸せもいっぱいだ。これからも永遠に貴方の隣にいたい…今のままの私じゃ、駄目かな…?こんな私じゃ、貴方の隣、努まらないかな?それでも、永遠に貴方の隣にいたいのです…例え、周りが何と言おうと、私達は、私達だし、周りの話に呑まれたくは無い。だって、私達には、私達の人生があるから…来年からは、もっと、貴方と、イベントに沢山行ったり、今よりもっと、沢山の2人だけの思い出を作っていきたいなぁ…
喧騒。囃子。提灯。
至る所に人間がいて、そのだれもが笑顔で、幸せそうで、きっと心から祭りを楽しんでいる。──ああ。
うれしいなあ。よろこばしいなあ。きみたちが、とってもかわいくて。きれいで。素敵に着飾って。この祭りを祝ってくれて。
きみたちにとっては、ひと夏の思い出に過ぎないのでしょう。惰性で続く風習なのでしょう。本来の祈りを覚えてる人間は、きっともう、いないのでしょう。
それで良い。それで良いのです。きみたちの営みを、繁栄を、幸福を垣間見ることができたなら。私はそれだけで報われるのです。
笑顔。歓声。喜色。
ああどうか、きみたちの、またこれからの一年に──幸の多からんことを。
それだけを、この社の奥底から、ずっとずっと願っているのです。
お祭り
涼しげな和の装いで鯔背な姿
あなたの隣で夜風を感じ
微笑みを交し歩こうか
ジメッとした梅雨が明け夏になっていく。
暑さに酔いしれて馬鹿になって羽目を外したくなる。
でもそんなに事を思っても中々出来ない。そういう友もいない…
錯覚でも何でも良いから自分も夏を感じたい。
そうだ、お祭りに行こう!
夏の長い日中を経て夜を迎えた町はまだ昼間の熱を伴ったまま。そんな熱気で溢れた石畳を歩く人々の間を縫うように下駄を鳴らしながら早足で抜ける小さな影。浅葱鼠の浴衣に柔らかな紺鼠の兵児帯を合わせたまだ小学校低学年程に見えるその少年は、舞うように人混みを通り抜けていく。
屋台沿いから少し逸れいくつかベンチが設けられた所謂休憩所の区画で呑気にたこ焼きを頬張りながらその姿を認めた少女は、思わず感嘆の声を漏らした。
「あの子凄いねぇ」
「どの子?」
「ほらあの子。今かき氷屋の前らへんでグレーっぽい浴衣に紺か黒かの帯してる」
「……そんな子いる?」
「小さいからなぁ」
ほら今お面屋さんの前にいるよ。少女はそう言葉にしようとして、こちらを見つめる狐の面と目が合った。子供に人気のアニメキャラクターや特撮ヒーローのお面が並ぶ屋台を背に、少年は先程までの流れるような動きが嘘のように静かに佇んでこちらを見つめていた。
直接目の見えないお面越しでも確証があった。今、目が合っている。
浴衣姿で屋台の白熱灯の灯りを背にそこに立つ少年はいやに幻想的で。狐の面も相まって随分と絵になっていた。
その狐の面が微かに上にずらされ現れた口元が悪戯に笑う。そっと小さな手の人差し指がそこに当てられた。
「その子まだいる?」
友人の声に意識を引き戻された少女は、少しの逡巡の後に静かに首を振った。
「……ごめん。もういないみたい」
「そっか。その子、なにが凄かったの?」
「んー…………ナイショ」
「なにそれ」
呆れる友人に謝罪を返し、ふわふわと兵児帯を揺らしながら軽やかに人混みへと消えてゆく背中を見送る。
そう、内緒。ただの野狐か御使い狐か。もしかしたら神様、はたまた別の何かかは知らないけれど。
お忍びを邪魔するのは、野暮ってものだ。
/お祭り
【お祭り】
それを見た瞬間、心臓が止まるかと思った。
「どうかな、変じゃない?」なんだ、この天使は。
恥じらう赤い頬が白い肌に映え、まるでりんご飴のよう。
なんで浴衣姿ってこんなに可愛いのだろう。
「ぜ、全然。変じゃないよ」可愛すぎて、むしろ目に毒。
でも素直に褒められないから意気地なしなんて言われる。
今日だって、君を誘ったのは僕ではなく友人だった。
口だけで誘う勇気のない僕に焦れて、声をかけてくれた。
おかげで夢のような時間を過ごせることになった。
君が受け入れてくれた理由はわからないけど、今はいい。
今日を楽しみにしていたという君の言葉を僕は疑わない。
来てくれただけで嬉しいから、別にお世辞でも構わない。
君は意外と活発で、いろんな屋台に興味を示した。
射的も型抜きも自信満々だったけど失敗。
何食べようと選んだかき氷で見事に青くなった舌を出す。
無邪気に笑う君は楽しそうで、僕も子供みたいに笑った。
はぐれないように、と言い訳をして手を繋ぐ。
手汗が心配だとか、僕より温かいなとか。
そんなことを思いながら、つい早足になってしまった。
だから君に言われるまで、足が痛いと気づけなかった。
罪悪感でいっぱいの僕に、君は優しい言葉をくれる。
「私こそごめんね」って。君が謝る必要などないのに。
屋台の通りから離れ、人通りの少ない場所で座って休む。
その時、大きな音と同時に、夜空に鮮やかな花が咲いた。
「たーまやー、とか言っとく?」君が悪戯っぽく笑う。
その笑みに射抜かれて、また鼓動が早くなる。
「言っとこうかな」返事ではない、気持ちの話。
どうせ花火の音に掻き消されて聞こえないだろうけど。
お祭りについて書くことあまりないなあ。なぜならお祭りにはあまり行ったことがないから。というのも人混みがあまり好きではない。けれども数少ない経験の中でお祭りについて印象的だったことは以下のことです。
すなわち初めて付き合った彼女と行った七夕。付き合って1,2ヶ月で七夕の日を迎えたのだが、その時初だったこともあって、なかなかうまくしゃべれない僕がいた。2,3時間デートしてたんだけど喋ったのが2,3言ぐらい。まぁそういう風にした結果は1ヶ月後くらいにふられたっていう感じ。
2つ目の思い出としてはこれも七夕の思い出だったんだけど、それもまた違う彼女との思い出で彼女の浴衣に肉のタレが着いちゃったという思い出。それで彼女がひどく悲しんでいたのを見て僕も少しいたたまれない気持ちになったというなんとも言えない思い出。まぁそんなこともあったんだけど、その彼女とはフランクに話せる関係で続いたので結構楽しい時期が続いた。
祭りまた行きたいなあ。非日常だよね。ハレとケを大事にしたい。
何百年も続く
伝統のお祭り
神様を敬い
神様に捧げる祈り
いつからだろうね
お祭りは
神事からイベントに変わっていった
夜空に打ち上げられる花火も
屋台のりんご飴も
子どもたちがワクワクする
イベントになっていった
平和なのかもしれない
船乗りだった頃の話。給養員は甲板掃除を終えると夜食のお結びを握る。30個あまりの高菜結と胡麻結びがラップをかかえて並んでいる午後8時。給養員は作り終えるとすぐいなくなるもんだから、船幽霊かなと思う。我らの深夜ワッチがおわる午前3時。お祭り騒ぎが始まる。食卓に30個余りの握り飯がない。通路を覗くと、航海長が口をもぐもぐしながら歩く航海長を見た。皿の上には3つのおむすびが乗っている。それを運用長。本当のお祭り騒ぎが幕を上げた
祭ってさ、
うん。
興業なの?慣習の維持装置なの?それとも、
ちょっと待った。
なに?
あんた、また面倒なこと考えてるね。
考えるのに建前を使えるほど器用じゃないよ。
.....。でもさ、それ、祭の楽しさをばらしちゃってるというか。
うん。だから君に話してみた。
うん?
いい加減なこと言ってきれいな部分を見せあうだけの相手じゃない、ってこと。
君も大概たらしこんでくるね。嫌いじゃないけど、案外ベビー級な――愛情表現するんだね。
愛情表現いうなよ。
そういうのを愛情表現っていうんだよ。いや、だから嫌いじゃないのさ。
恥ずかしくなってきた。もういい。この話題中止。ああもう、手を握るな。
君と初めて来たお祭り。
家族と来たときは感じなかった気持ちの昂り。
君もりんご飴みたいに頬が赤く染まっていた。
君と見た花火は世界一輝いていた。
真夏の猛暑日
僕は今日亡くなった大好きな祖父と幼い頃 毎年行っていた家の近くの神社で行われるお祭りに来ている。
祖父が亡くなって以来行けていなかったお祭り。ところが中学の頃 出会った友達の尋と毎年来るようになった。
今日僕がこのお祭りに来ている理由も尋と遊ぶ約束をしているからだ。
尋とは中学の頃よく放課後も遊んでいたが、高校が違うためや、忙しいのもあり遊ぶ頻度は落ちていった。それでも毎年のお祭りは絶対に会う約束をしていた。
いつもの鳥居の前で。
神社は賑わい、普段人が居ないのが嘘のように思えた。
僕がお祭りの雰囲気に浸っていると、後ろの方から「仁」と僕の名前を呼ぶ声がした。
振り返ると紺色の甚平姿の尋が手を振っていた。
尋の姿を一見して今日に気合いを入れていることは一目瞭然だった。今日のお祭りが楽しみで、という考えではないかと予想した。
「甚平なんて新鮮でいいねお祭りっぽいよ」と僕が言うと
「いやぁ〜久しぶりに仁に会えるし、来年受験だから夏祭り楽しみたいじゃんだから気合い入れてきちゃってさ。」と。
大体予想は的中した。
淡い夕焼けに屋台の赤い光が映える時間帯
僕たちは久しぶりの再会で思い出話をしながら屋台の通りを歩いた。
鳥居からまっすぐ長い参道にそって多くの屋台が並んでいる。焼きそば屋、わたあめ屋、ラムネ屋、射的屋…
尋がラムネを片手に近くのベンチに腰掛けて「そう言えば」と近況報告に話題を変えた。
ラムネを1口飲み「仁は神様はいると思うか」と話し始めた。
僕は突然の哲学的な質問に驚き回答を悩んでいると尋がこう続けた。「俺の友達は将来の夢とか進路とか聞いてもてきとうに答えるやつで夏の進路相談もてきとうに済ませるようなやつだったのに、こないだ急に学校帰りに神様に会ったとか言い出して俺に熱く夢を語ってくれて今進学する為に勉強めっちゃしてるんだよ。夏バテとかなのかなって…あ、バテてはいないか?」
きっと覚悟ができたから今自分にできることをやろうって前に走れる。
僕も見習わなければ。きっかけはなんであれ行動に移さないどダメだ。
変われない。
「僕も変わらないと。」
自省していると。近くの焼きそば屋の方から大きな音がした。反射的に振り向くとそこには倒れる鉄板と少女があった。
周りが騒然とする。
僕は走って向かった。
体が勝手に走っていく。少女は火傷をしていた。辺りの状況から熱々の鉄板が落ちてきて火傷をしたと考えた。鉄板が重いことも他の怪我の可能性も考え、救護テントに少女を運び手当をした。幸い火傷以外の怪我はなかった。お礼をしたいと名前を聞かれたが、お気持ちだけで充分です。と言い残してその場を後にした。
その間 尋は屋台を元に直してくれていた。
いつも僕が突っ走って行くのを止めずに何も言わずに協力してくれる尋。
彼が、彼こそが頼れる人間であり、人のために行動できる人間だと思う。
僕とは違う。僕は優しい訳では無い。本当の人助けはできない人間。そう考え込む僕に
「仁はさ昔からすごく優しくて、頼りになってヒーローみたいだな。さっきも無心で助けてただろ?やっぱりじいさんのヒーローの念が仁に宿ってるんだな」と尋腕を組み感心したように言った。
「優しくないよ。ただ利用されて!面倒事を押し付けられるだけで…僕がもっと頼り甲斐のあるしっかりした人間できてたら。僕のせいなんだよ。」感情が押さえられずに声を荒げて、泣き出しそうになりながら話す僕に冷静で力強い声色で「仁は悪くない。」と言ってくれた。
僕は涙が止まらなかった。
ずっと悩んでいたこと。辛かった。
「変わらなくっていい。仁がやりたくない事はやらなくっていい。仁が助けたいと思った時に助ければいい。義務にしてひとりで背負い込まなくっていいんだよ。面倒事を押し付けてくる方が悪い!」
尋は力強く僕を励ましてくれた。
肯定してくれた。
もう空は深い青
打ち上げ花火と屋台の光
涙で光露と電色が混ざり僕の視界は万華鏡だった。
3話 ※今までのを見て頂けるとさらに…