『いつまでも降り止まない、雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
いつまでも降りやまない、雨
雨が降っている。 なかなか降りやまない。
私は今、気になる人とカフェにいる。
なかなかやまないねと会話を何回しているだろうか。
この状況に、早くやんでほしい気持ちと
やんでほしくない気持ちがある。
この時間が止まればいいのに。
ここ最近 ずっと雨が続いている
そのせいか 彼女は頭痛と精神不安定に陥っていた
"前"の彼女の引き継ぎだろうか。
今も彼女は辛そうに頭を抑え 唸りながら教室の隅で
蹲っていた。
大丈夫?と聞くのが 普通だろう
でも 聞いたところで彼女は きっと否定はできない。
彼女を余計に追い込むような野暮な言葉なんて 言えない。
つまり 俺にはどうする事もできない。
彼女の痛みを無くすことも
彼女の苦しみを分かち合うことすらも。
ただ傍にいてやるぐらいしか できなかった。
彼女は雨が好きだ。
雨の雫が葉を打つ音や 雨粒と傘が作る音
雨の埃っぽい匂い
雨で濡れた花
せつなそうなその雰囲気も。
そう言っていた。
でも 俺は嫌いだった。
だって 君があんまりにも 辛そうだから。
俺が 無力だって事を実感するから。
まだ 雨はやまない。
…彼女の唸りも。
いつまでも 降り止まない雨。
雨が降っている。
この2日間雨はやまない。
まるで空が泣いているようだ。
私の心のように深く深く途方もない思いに駆られているかのように。
だが、きっと雨はいつかやんでしまうのだろう。
私の心を置き去りにして。
いつまでも私の心に寄り添ってはくれない。
だけどいつの日か見たあの蒼い蒼いよく晴れた空のように私の心も空のように晴らすことができるだろうか。
いつまでも降り止まない、雨
外はざあざあと雨が降っていた。アンは部屋の中から降りしきる雨と、その向こうを眺めている。
しかし雨は強く遠くは見通せない。
「……」
アンの唇は強く噛まれている。彼女の手元には何枚もの紙が握りしめられていた。くしゃくしゃの紙にはたくさんの数字が書き連ねられていて、近くの机にはペンとインクが放り出されている。
部屋の中は整然と片付けられていてアンの几帳面な性格が伺える。それだけに握りしめられた紙と散らかった机が目立った。
少ししてアンの視線の先に動きがある。雨の中を傘を刺した男女が歩いていく。
アンは唇を噛むのを止めてカーテンを閉めた。
それは数刻前のことだった。街の外れにある食堂の店主のアリスと経営担当のフィンが、アンの実家である牧場へやってきた。
いつもどおりアンはアリスと納品する食材の相談をして、その後フィンと価格や頻度について決めた。それはいい。いつもどおりだし、アリスがおみやげにとアンに持ってきてくれた焼き菓子はいつもどおりに美味しかった。
問題はその後だ。アンがアリスに加工肉の試作を出していたら、フィンと雑談をしていたアンの母親が言ったのだ。
「フィンはしっかりしているわね。アンももう少ししっかりしてくれたらいいのだけど」
「そう? アンは十分頑張っているし、俺だってアンやアリスの前でいいカッコしてるだけだよ」
そのやり取りを聞いて、アンは噴火しかけた。怒鳴り散らさずに済んだのはアリスが素早く気付いて部屋に返してくれたからだ。
どうして母はいつまでもアンを子供扱いするのだろう。フィンと比べてそんなにも自分は幼いだろうか。彼女は別にフィンのこと自体はどうとも思っていない。
だというのに、母は(父も)やたらとフィンと比較するようなことを言う。
それに対するフィンのあっさりした返しも腹立たしい。まったく相手にされていないのがわかる。
そんな風にいちいち怒り狂うから幼いと言われてしまうのだと察しているからこそ、母からの比較もフィンの返事もなにもかもに腹が立ち、腹が立つ自分にもがっかりする。
カーテンを閉めても雨の音は部屋に満ちている。アンは紙を投げ捨てて、ベッドに倒れ込んだ。
「いつまでも降り止まない雨」
私と同じだね…。そう思いながら雨を眺めた。
今日は彼との記念日。付き合って1年。雨の日でも
お互いに行きたいところ見つけて、天気は雨でも
私達の顔は晴れてるねって。笑いながらそう言ってたのに。
今、スマホに映る画面は別れよの3文字。
何がいけなかったのかな。
雨と私の涙は今日1日 止む事はなかった。
いつまでも降り止まない、雨。もうすぐ梅雨到来。
蒸し蒸しして、髪の毛も爆発する季節。
楽しく過ごすには…、洒落た傘を差してみたり。
雨でも構わず散歩してみたり。
紫陽花もそろそろ見事に咲くだろう。
かき氷を食べてサッパリしたいかも。
アマガエルとか見られたらテンション上がりそう。
でもその前に、今の寒暖差を乗り切らないと。
なんだか体調悪くなりそう。
毎年来る梅雨だけどいつの間にか、梅雨は明けて忘れてしまう。
とりあえずは、過ごしやすくしたいなー。
テーマ:いつまでも降り止まない、雨 #193
『毎日雨、雨、雨。つまらん季節だな』
憂鬱そうにベランダに目を向け呟くのは、
僕のベットの上で何故か膝を抱え座っているあやかし。
「君、人間といていいの?」
僕はそう言って彼の隣に座る。
『あやかしというのは人間と違って自由だ。
ワイが何をしていようが
誰かにとやかく言われる筋合いはない』
フンと鼻を鳴らす。
いや、僕が困っているんだけどなぁ。
そう心のなかで思うとジロリと目を向けられる。
僕はびくっとして自然に背筋が伸びる。
『人間はいつまでも降り止まない、
雨に退屈だと思わんのか』
「退屈だとは思わないよ。
だって、こんなに音が溢れている」
『音?』
僕は黙って目を閉じる。
窓に雨が叩きつけられる音がする。
裏山の方からはカエルの鳴き声がかすかに聞こえる。
退屈なんか感じないさ。
僕が目を開けるとあやかしは僕をじっと見つめていた。何も言わずただまっすぐに見つめられる。
『気に入った』
ただそれだけを言うと、
フッとそのあやかしは消えてしまった。
いつまでも降り止まない雨は
まるでわたしの
あのひとへの想いみたい
もう そろそろ
止んでもいい頃なのに
# いつまでも降り止まない、雨 (152)
ざあざあ。
雨が降っている。
独り言を全て掻き消してしまうほどの、大きな水音が存在を主張している。
暗くてどんよりとした空の下。
人が立っているのを、呆然としながら眺めた。
その人の足元に転がっている、たくさんの穴が空いた傘。
その人が身に纏う、綺麗な黒色をした服。
髪から、服から、滴る水なんて気にしない。
雨風さえも、空気となんら変わらない、自分に害の無いもののように見えているのか。
目に雨が入っても、水が頬を伝っても、空を見上げ続けている。
「何をしているの?」
誰か分からないその人は、こちらを見ずに答える。
「待っているの。」
「誰を待っているの?」
「お天道様。」
「どうして?」
「傘が壊れちゃったから。お天道様が、会いに来てくれるのを待っているの。」
「自分から、会いには行かないの?」
そこまで問い掛けて、その人はゆっくりとこちらを向いた。
「だって、雨、止まないんだもの。手足が悴んで、歩けないから。」
あぁ、怠惰な人なんだな。
軽蔑的な視線に、その人は顔を顰めた。
だってそうじゃないか。
恵みを与えてくれる、大切な存在のはずなのに。
雨宿りも、家に帰りもしないくせに、都合の悪い時だけ雨のせいにして。
けれど。
そうする事で、楽に生きる事が出来るのは事実だ。
全部全部、知らないフリで。
「あなただって、同じでしょ。雷が落ちても面倒なんだから、大人しく待ってようよ。」
そうだ。
傘は壊れた。
服もびしょ濡れで、寒くて。
自分から何かを求めて動くのは、疲れてしまった。
「お天道様は、きっと来てくれる。」
そう、向こうから来てくれる。
雨が降っているのなら、仕方無い。
寒くて冷たいところで、静かに休んでいよう。
雨はしばらく降り続ける。
今も、絶対に降っている。
目で見えているものが、ずっと昔のフィルムの中の映像だったとしても。
___ 3 いつまでも降り止まない、雨
あついあつい
汗がどんどん湧き出してくる
たまらず水筒のなかのこおりを頬張る
あまりのつめたさに、
最初はつめたいとかんじなかったが
しだいにつめたさを感じていった
あついあつい
あついあつい
雨の少ないこの地域にも
何ヶ月ぶりに雨の予報だろう、と
祖父は歯の抜けた笑顔で言っていた
そうか
雨が降ったのは久しぶりなんだ。
どのくらいのどがかわいていたのか
もうわからなくなっていたのだ
僕が祖父も祖母もころしてから
すっかりずぶ濡れだったので
雨にも気が付かなかった
あついあつい
あついあつい
外には雨が降り続いている
あついあつい
あついあつい
あついあついあつい
いつまでも降り止まない、雨
降り止まない雨は好きだ。
雨を言い訳に、出かけないで家にいる。
雨を言い訳に、頭痛と言って横になる。
冷えるねと言って、愛犬を抱き寄せる。
雨だから、庭の草取りもしなくていい。
雨だから、別に元気出さなくてもいい。
雨だから、洗濯物を2回も3回も干さなくていい。
雨でも仕事には行かなきゃならない。
濡れると冷える。
気持ちが晴れ晴れとしなくても
それは雨のせいだから
気にしなくていい。
気持ちが上がらなくても
それは雨のせい。
いつまでも降り止まない雨。
其れを部屋で眺める。
急に降ってきた雨なのか、走っている人がいる。
その中に僕の友達がいた。
彼奴は僕の家を知っている。
嫌な予感が頭をよぎった。
と思ったら運悪く目が合ってしまった。
最悪だ…。
僕がいるのを確認するとインターホンを鳴らした。
「はぁ…」
仕方無く部屋を出て、階段を降り、玄関の扉を開けた。
が、いなかった。
扉を奥まで開いた。
「ウグッ!……何すんのさ!」
「驚かそうとしてた奴が何言ってんだ?」
「バレてたの〜、つまんない」
…屑が。
「でっ?用は其れだけか?じゃあな」
そう言って扉を閉めようとした。
「ちょっと!この雨の中、傘もせず帰れっての!?」
「あぁ、そうだが、それが?」
「あのね〜、私…」
「鍵を無くして家に入れないし、親も仕事で呼べない、だろ?」
「よく分かっているじゃないか」
雨も強くなってきてるしこんな中で帰らせたらこいつは絶対に風邪をひく。はぁ…、仕方無い。
「ほら、上がれよ」
「さっすが〜!」
「先風呂場いけよ?絶対に!!!」
「はいはい」
当たり前というように風呂場に行った。
ったく、本当に変わんねぇな。
外を見ないで寝てれば良かった。
そんなことを考えていると、風呂場から彼奴が帰って来て、窓から雨を見ていた僕に言った。
「いつまで経っても降り止まない雨を見てるよりも、私と話している方が楽しいだろう?」
「それ、自分で言っていいのか?」
否定はできなくはない…、けど。
「でも、実際はそうでしょ?本当は誰よりも私と話している時間が好きなんでしょ?」
自信家で、性格が屑で、人の話を聞こうとしない癖に、こういうときだけ、観察眼が働く友達を持つと大変だ。
はぁ、本当に最悪だ。
「うん、君なんかと話している時間が一番楽しいよ」
「なんかって、酷いなぁ」
そう言いながら、やはり当たり前のようにソファに座りくつろいでいた。……殴りてぇ。
「ねぇ、私はねそういうところとかで優しくしてくれる君が________。」
急に雷が鳴った。
其のせいで最後まで声が聞こえなかった。
「んっ?なんか言ったか?」
「はぁ〜、チビ」
「今すぐ外に出されたいか?」
「ウソデスゴメンナサイ」
暫く、言い合いが続いていた。
雨で気分が沈まないのかと聞かれたら僕は沈まないと、答えるだろうな。
だって、こうやって話しているだけでもたのしい友達がいるから。
いつまでも降り止まない雨の中、僕らは家で話していた
#13
いつまでも降り止まない、雨
雨っていいよね 心地よい
雨は私の泣き声をかき消して
僕自身を消してくれるみたいで
とっても僕は好きだよ
母の育てた白いバラの
うつむいたその花びらに
ぽつりぽつりと雨が落ちる
母の育てた蒼い紫陽花の
まだ固く瞳を閉じた蕾の上に
ぽつりぽつりとなみだが落ちる
母の育てた薄桃色のテッポウユリに
母の育てた薄紫のルリマツリに
母の育てた陽に向かって顔を上げ
母の時を共に刻んだ クレマチスに
ぽつりぽつりと 天の涙が降り注ぎ
あいしていると 音楽を奏でる
天から愛された母は眠りについて
その時を永遠に止め
そばで独り手を握る私は
ただ ただ 途方に暮れて
いつまでも降り止まない、雨
「いつまでも降り止まない、雨」
ぴちゃん、ポチャン、ザァアァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ーーーー
窓の外から聞こえる五月蝿い雑音は生活音とともに
私の耳に入ってくる。雨、止まないな。…そうだ、
洗濯物。雨なのに、ベランダに干しっぱなしだ。…
…まぁ、いいか。どうせもうぐちゃぐちゃだし。
めんどくさい。ここから動きたくない。雨の音を窓
辺で聞きながら、また少し、昼寝でもしようか。洗
濯物は、次起きた自分に任せるとして。今はもう少
しだけ、このままで。
「いつまでも降り止まない、雨」
1度降ってしまえば死ぬまで降り続ける
一生やまない雨..。
寒くて、辛くて、泣きそうになる。
死ねば楽になれるとまで考えてしまう。
どうすれば雨はやむのですか....。教えて...。
見慣れた景色を所々揺らがせて。
聞きなれた音を緩やかに遮って。
そんな世界が、思ったよりも心地よくて。
窓辺に佇んだまま、じっと空を見上げた。
そう言えば、雨は嫌いって言ってたっけ。
鬱陶しいし、外に出れないし、セットも決まらない、なんて、拗ねて不貞腐れて。
宥めるのが結構大変だったっけ。
意外と気が合ってはいたけど、これだけは合わなかったなぁ、なんて思い出して苦笑する。
ーーー懐かしい、なぁなんて思うくらいには、時間が経ってるんだよな。
”いつまでも降り止まない、雨”が、少しだけ煩わしく感じたのは、らしくない感傷に浸ったせいかもしれない。
いつまでも降り止まない、雨
【いつまでも降り止まない、雨】
さっきまであんなに晴れてたのに
急な夕立と思い本屋の軒先へ駆け込んで、取り敢えずハンカチで濡れた頭と服を軽く払う。
通りを行き交っていた人々も、突然の雨に駆け足で私の前を通り過ぎて行き、瞬く間に人気は全く無くなっていた。
出掛ける時の空は快晴で、まさか雨が降るなんて思いもよらなかった。
買い出しに行った帰りに、滝の様な雨に降られてしまったのだ。
軒先から空を見上げ、溜め息を吐く。
それでも夕立ならこうして少し待っていれば雨足も弱まって、そんなに濡れずに帰れるだろうと、私は走って帰るのを諦めた。
だが予想に反して雨の勢いは衰えず、雨雲は益々濃くなるばかりだ。
「どうしよう、ちっとも止まないんだけど……」
ポツリと呟き、しばらく思案してから決心したように自分の住むアパートがある方角を見据えた。
普段ならこの辺りからアパートまで歩いて約5分。雨足と荷物の量を考えて走っても、同じ位の時間で着けるだろう。きっと見るも無残な位全身ずぶ濡れになるだろうが、幸い独り暮らしだ。すぐシャワーを浴びて冷えにさえ気を付ければ良いだけの事だし、もう今日は出掛ける予定も無い。
覚悟を決めて、私が軒先を飛び出そうとしたその時。
「あれ、どうした? こんな所に突っ立って」
その声に振り向くと、そこには古ぼけたビニール傘を差した恋人が立っていて、驚いた。いつもならこの時間はまだ仕事中のはずなのだ。
厳密に言うなら定時はとうに過ぎているのだが、最近繁忙期である彼はずっと残業続きだった。
「そっちこそどうして? 仕事は?」
「強制終了。倒れられても困るからって、今週から二人ずつ交替で早く上がる事になってね。それより君はこんな所で―――」
何してるの? と続けるつもりだったであろう彼の言葉は、困った様な笑みに変わった。
「雨宿りだよね。どう見ても」
「うん……晴れてたし雨降ると思わなかったから、傘持って来てなくて」
そんな私に、彼は「ホラ」と自分が差していた傘を少し傾けた。
「入んなよ、送ってくから」
「良いの?」
「そりゃ勿論。あ、報酬は晩ご飯ね。手料理で!」
「お安い御用。じゃあ、お願いしちゃおうかな」
私が即了承すると、彼は満面の笑みを浮かべた。
「ホント!? やった、言ってみるもんだなぁ。……さ、そうと決まれば行こう!」
上機嫌で子供の様に笑う彼を見て、雨に降られて何となく沈んでいた私の心はいつの間にか浮上している。止まない雨を、これ程喜んだ事はない。
「ホラ、早く入って」
「うん」
相合い傘って、生まれて初めてかも。
うっかりそう思ってしまった私は少し照れ臭い様な、くすぐったい様な気持ちで差し向けられた傘に入る。
こうして彼と一緒に歩き出した私は、並んで歩けるのが嬉しくてつい彼の横顔を見ていた。
雨の日も晴れの日も、こんな風にずっと2人でこの先歩いて行けたら……そう思いながら。
アパートに到着すると、私は彼を先にバスルームへ向かわせた。
流石に足元だけは濡れてしまったが、雨宿り中に彼が来てくれたお陰で私はほとんど濡れていない。ならば、彼がシャワーを使う間に『報酬』の準備をしてしまった方が良いと思ったのだ。
「あ、忘れてた」
その前に着替えとバスタオルを用意しなければと、洗面所に向かった。
付き合い始めて5ヶ月弱。いつの間にか部屋には彼の着替えや生活用品が増え、今では2~3日泊まっても全く支障が無い程になっている。
着替えとタオルを持って行きカゴに入れておくと、シャワーを浴びている彼に扉越しに声を掛けた。
「着替えとタオル、カゴの中に入ってるから」
「おー、判った」
そして私は脱ぎ捨てられたワイシャツを拾い上げる。
「このシャツと靴下洗濯するから、新しいの着てね」
そう告げると、先刻まで着ていたシャツと靴下を洗濯機に入れ、次にスーツを手に取った。洗う訳にはいかないので、乾くかどうかは微妙だが、取り敢えず干すしかない。
「あれ?」
上着の形を整えようとした時、片側がずぶ濡れな事に気付いた。いくら1つの傘を2人で使ったとは言え、この濡れ方は不自然だ。
しかしすぐに、その原因に思い当たった。
スーツが濡れている片側は、私が並んで歩いていた反対側だったのだ。
私はほとんど濡れていない―――それは彼が傘の大部分を私に差していたという事に他ならない。
部屋に着いた時にすぐに気付けなかった自分を悔い申し訳ないと思いつつも、私はこの然り気無い優しさが嬉しかった。
そして自分が彼に大事に思われているのだと、素直に信じた。服が濡れるのも構わず、彼の想いの証である上着を胸に抱いて再び声を掛ける。
「今日は送ってくれて有難う」
「ん? 急にどうしたの」
「まだお礼を言ってなかったな、と思っただけ」
「どういたしまして。はは、真面目か」
「……すぐご飯用意するね」
あんな雨の中、私を見付けてくれて有難う。傘に入れてくれて、雨から守ってくれて有難う。キミの恋人で居られて……私は幸せだよ。
恥ずかしくて、面と向かっては言えそうもないけど。
その代わり、今日は彼の好きなチキン南蛮にしようと決めて、キッチンに戻った。
ナチュラル
大気や
身体や
感情を激しく動かし
パッケージされていない雫が落ちる
その時きこえるのは
雷鳴
いつまでも鳴り止まない
拍手喝采
※いつまでも降り止まない、雨
いつまでも降り止まない、雨
最初は小雨だった
そのうち大粒の雨となって、すべてを洗い流していく
穏やかで澄んだ川が、濁流になる
まるで叫んでいるみたいだ
けれど、激しい雨音にかき消される
きっと私の涙も気付かれない
私の叫びも聞こえない
叶うなら、ずっと止まないで欲しい
晴れたら笑わなきゃいけないから
心の中の雨に気付かれないようにしなきゃいけないから